孤高の英雄は温もりを求め転生する

モモンガ

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16話 リスナール・ネア・ラフォーレ

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 「初めまして、私はこの街…ユランの冒険者を纏めている者です。君の事を聞いても?」

 深呼吸を何度も繰り返し…ようやく言葉を開いたか。

 「にゃあ(おう)」

 右の前足を上げて、返事をすると…エルフは首を傾げた。

 「おや? 喋れないのですか? てっきり意図的に猫のように振る舞っているのかと…」

 「にゃあ?(あん?)」

 何だ? 自分は喋れるからって、俺を馬鹿にしているのか? こっちは猫に転生したばかりで、まだ喋れねぇんだよ!

 「い、いえ! 別に馬鹿にしているわけではないですからね!」

 俺が不機嫌になったのを、感じ取ったのか、エルフは慌てて訂正しだした。

 まぁ…悪気があったわけでは、なさそうだから許すとするか。

 「で、では今から私が質問をしますので、あっているなら、首を縦に頷いてください。違うなら、横に振ってください。宜しいですか?」

 ふむ…まぁいいだろう。

 俺も聞きたいことがある事だしな。

 俺が頷いたのを、確認したエルフは、ほっとしたように息を吐いた。

 「で、では最初の質問です。君はこの街を害する為に来ましたか?」

 かなり勇気を振り絞ったのか…声が震えていた。

 まぁ、確かに恐ろしいよな。自分より30倍の魔力を持った魔物が眼の前にいるんだ。

 俺の気分次第で殺されてもおかしくはないからな。

 まぁ…俺は、ちょっかいを、だされなければ自分から積極的に構う気なんてないがな。

 と…いう事で、首を横に振ると、あからさまに、肩の荷が降りたように…それは重いため息を吐いた。

 「はぁ…良かった。
ん? それじゃあ何をしに、この街に来たんだい?」

 ん? コイツ急に緩くなったな。こっちが素か?

 まぁ、いい…とりあえず覇王級の素材を見せるか。

 ベヒーモスの爪でいいか。

 「にゃん(ほい)」

 エルフの眼の前の机に、3メートルはある爪を収納から出した。

 相手からは、急に現れたと感じるだろう…。

 「今のは空間魔法? 何故魔物が? それよりこの素材は天災…いや、覇王級!?」

 「にゃん(そうだ)」

 「それで、これを売りに来たのかい?」

 顔を横に振ると、俺は2本足で立ち上がり…拳を何度も突き出した。

 「これは君が倒した? まぁ…それだけの魔力量を持っていれば、可能だろうけど…もしかして自慢?」

 クソ! 会話が出来ないっていうのは、不便極まりないな。

 それから何度も、自分の体を動かし、ようやく…。

 「もしかして、覇王級を倒せる人はいるのか…? って話?」

 「にゃあん(そうだ、やっと通じたか)」

 15分くらいはかかったぞ?

 「いや、それがね~5年位までは、次元斬りのヴァイトさんが、いたお陰で覇王級を討伐出来ていたんだけど…。

 炎龍王を討伐していた後、行方知れずでね…僕はあの人が死んだと思っているよ。あれだけ寿命を削り、魔力消費が多い空間魔法使っていればね…当然だよね」

 そう言う、エルフの表情は暗かった。

 てか、俺が死んだのは5年前か。

 そこまで経ってないな。

 「それにね、あの人は空間魔法の使い手だから、やろうと思えばどこにでも、転移出来る。
 だから、間に合わなかったら攻めた。本当に愚かだよね。恩人に石をぶつけるとか……死ねばいいのに」

 今コイツ…ぼそっと毒を吐いたな。

 まぁ、そう言ってもらえると、人間だった時の俺も報われるって事だな。

 「まぁ、と言うわけで、覇王級の魔物が現れたら…滅んじゃうね世界」

 軽いなお前。

 「あっ! でも、君が誰かの従魔になってくれれば助かるんだけどなぁ~」

 なるわけないだろ! どうして、俺がわざわざ助けなくちゃいけない!

 正直、俺は人間は好きじゃない。

 「だよね~」

 顔を横に振る、俺を見て予想していた様に…笑った。

 …まぁ、俺の邪魔をする様な奴がいるなら、人間だろうが、魔物だろうが殺すがな。
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