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いつもと違って別人

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「・・・ん・・・」


頭がズキズキする。身体が熱い。苦痛に顔を歪めながらも、眠っているレティシアが腕の中にいる事に安堵する。じっと寝顔を見ているとレティシアが目を覚ました。


「・・・ウィル、おはよう?」

「・・・あぁ・・・おはよう」

「ウィル・・・熱いわね。体調悪いんじゃないの?風邪、かしら?」

「・・・風邪?」

「どこか痛む?」

「頭が痛いな、ズキズキする」

「他には?」

「痛いところはない」


そう言いながら、ウィルフレッドはレティシアをぎゅっと抱きしめる。


「でも、いつもと違うわ」

「違う?何が?」


いつもと違うと言われ、何のことを指しているのか分からず、抱く力を少し緩めて顔を覗き込んできたウィルフレッド。


「声が違うのよ」

「あぁ・・・そう言う事か」

「なんだか変な感じね。ウィルが別人みたい」


その言葉を聞いてウィルフレッドは焦りを見せる。縋るように、眉を下げて必死に訴える。


「俺は俺だ!別の人間なんかじゃない!」

「別人だって言ってるわけじゃないわ。ただ、今、愛してるなんて言われても、ウィルから言われてる気がしないってだけの事よ?」

「大問題だ」

「じゃあ、早く治さないとね?」

「そうだな」


ウィルフレッドはレティシアを引き寄せると、首に顔を埋めて擦り寄り甘える。


「ウィル、食事はとれそう?」

「・・・あまり」

「でもお薬飲まないといけないわ。少しでもいいから食べましょう?」

「・・・薬は・・・」


言い淀むウィルフレッドの様子に、レティシアは間髪入れずに言葉を放つ。


「あら、あーんしてあげようと思ったんだけど?」

「食べる!」

「いい子ね」


子ども扱いされようが、レティシア相手ならなんだっていいのである。レティシアに構ってもらえるなら、苦い薬でも、食欲がなくても、なんだってやってみせる。ただ、内容は子ども染みてはいる。幼少期に聡明な子息だったと言われていたように、手のかからない子だった事。甘えを知らぬまま、それが公爵家の跡取りだと自分でそう解釈し育ってきた。その為、レティシアに甘える事が、ウィルフレッドの人生で初めての事であり、他を知らないのだ。自分の大事なおもちゃや絵本をとられて大泣きする子どもの気持ち、今なら大いに理解できる気がする。そんな事をウィルフレッドは思っていた。昔、幼かった弟が、知り合いの子息が遊びにきた時に、おもちゃの取り合いになり大泣きした。どうしてもそれではないとダメだと大泣きするルシアンを見て、他にもたくさんあるのにと呆れていたが、今ならわかる気がする。レティシアはおもちゃではないが、替えがきかない。あの時のルシアンも、そうだったのかもなと考えていた。






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次回

人間、一つや二つ、苦手はあるさ・・・













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