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【ディアルドside】重なる後悔

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彼女を感じられない毎日は過ぎていく
後から知ったが、彼女はある時を境に領地にこもり、家庭教師をつけたらしい
学園には出てこなかった



「・・・夜会か・・・クラウディア嬢がいないなら・・・意味がない」




そう言葉にする僕に、両親は、行ってみないとわからないだろう?といつも送り出す
結婚をしないと言い出すのではないかと思っているのか最近は、いろんな令嬢を勧めてくる
嫌だ、僕は、クラウディア嬢じゃないと嫌なんだ・・・




両親の顔を立てるためと自分に言い聞かせながら参加する夜会
つまらない・・・
なんか、令嬢達が囲んでくる・・・
正直面倒だ・・・
・・・
・・・
帰りたいな・・・
・・・
・・・
・・・





綺麗なクリーム色の髪だ・・・
!?
あ、あれは・・・クラウディア嬢!!!
会えなかった数年の間に、背も伸びて、女性らしい身体つきになり、色香を纏っていた
恋焦がれたクラウディア嬢がいる・・・
吸い込まれるように、少しずつ足が動き始めていた
腕に令嬢達がまとわりついて僕を引き止めようとしたが、そんなの構っていられない
その中にはあのクリスティア嬢もいた




視線で追っていたら、クラウディア嬢が庭園へと足を向けたようだった
昼間ならまだしも、夜の暗がりで、しかも酒が入った男もたくさんいるというのに・・・
危ない!彼女が危険だ!
後をついていくように歩き出す
途中人混みに紛れ、一度見失ってしまった
どこだ!
クラウディア嬢!
クラウディア!
僕の、クラウディア!!


その時だった





「や、やめてください!」




庭園の暗がりから、微かに叫んだような声が聞こえる
確証は持てないが、もし、これがクラウディア嬢だったら・・・
そう思うと、なりふり構わず駆け出した
近付くにつれ、男の声が聞こえてきた




「早く孕ませたいよ。僕だけのクリスティアになってくれよ」



襲われているのはクリスティア嬢?
いや、先程フロアにいたはず・・・では・・・
嫌な予感がした
きっとこれはクラウディア嬢だ
駆けている速度を限界まで引き上げ、必死に声のする方へと向かう



「き、君は・・・クラウディア嬢・・・僕はなんて事を・・・間違うだなんて!」




やはり!!





「いや、君に誘われたんだ、君が悪い!クリスティア嬢と違って君は身持ちが悪いんだな!あぁ、そうだ、君に嵌められたんだ!」





「ぐえっ!」




気付けば男を殴り飛ばしていた
地面にうずくまっている
・・・この男は伯爵家の次男ではないか・・・確かクリスティア嬢に懸想していたはず
暗がりで見分けがつかなかったか・・・
くそっ・・・俺のクラウディアに触れやがって、許さない!!




その後の俺は冷静だった
近くを通った近衛騎士に言付けし、伯爵令息を婦女暴行の罪で投獄させた
そして、クラウディア嬢の両親であるレバノール夫妻を呼んでもらった
このときばかりは娘が心配であろうと思ったからだ
だが、後に後悔した
言った言葉がまずかったらしい



「クリスティア嬢は後で侯爵家に送り届ける。クラウディア嬢を先に屋敷に帰してくれ」

「アバンス公爵令息様・・・クリスティアの事、よろしくお願いします」



深々と頭を下げられて気付いた
違う・・・俺は、クラウディアが心配なだけだ
クリスティア嬢の事はどうだっていい
後で公爵家の馬車で送らせるだけだ



そうしてまた後悔がやってきた






ーーーーーーーーーーーーーー

次回

【ディアルドside】

安心するだろうと思っての事だったが・・・どうやら間違ったようだ

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