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休暇二日目⑥今は幸せ?
しおりを挟む二人と対峙したイザベラは、緊張の面持ちで向かいのソファに腰をかけた。メイドが入れたての紅茶をおくと、そっと退室していった。
「突然ごめんなさい。ゲオルグ様が怪我をされたと聞いたわ」
「えぇ、今は薬が効いているのか、眠っています」
「イザベラ嬢・・・いや、辺境伯夫人、大変な時にすまない。俺が師匠に援軍など頼まなければこんな事にはならなかった。判断を誤った俺のミスだ」
「アバンス団長様は何も悪くないですわ・・・辺境伯様も、使命感を持って出かけていかれましたもの。それに、命に別状はないと医師からも言われておりますので・・・」
イザベラは緊張しながらも、ウィルフレッドにそう答えた。
「あ、あの!・・・あの時は本当にすみませんでした。私・・・何故あのような事をしてしまったのか・・・」
イザベラの手が震えていた。
「本当に、申し訳ありませんでした!」
「イザベラ様、謝罪を受け入れますわ。それで・・・一つ聞きたいことがありますの」
「な、何でしょうか・・・」
「今、幸せですか?」
何故そんな事を聞くのだろうとイザベラはレティシアの顔を見る。真意が掴めない。
「・・・し、幸せかどうかは・・・まだわかりません・・・でも、皆さんよくしてくれて・・・辺境伯様もお優しくて・・・私にここにいていいと、ここが私の居場所だと言ってくださいました」
「王都に戻りたいと思いますか?」
イザベラはその言葉にビクッと身体を揺らした。
「・・・も、戻りたいとは思っていません・・・王都に私の居場所はありませんから・・・」
「ゲオルグ様は、あなたにとって居場所でしかないのでしょうか?夫としては見れないという事ですか?」
「わ、私が・・・私が妻でいいんでしょうか・・・こんなにも優しい方なのに・・・」
「ここで生きていくと、覚悟なさったのですよね?」
「えぇ、私はここで生きていきたいと思っています」
「それを聞けて安心しました。ゲオルグ様と話せなかったのは残念です。私たちはこれで失礼しますね。ゲオルグ様によろしくお伝えし」
「ま、待ってください!」
イザベラが急に大きな声を出した事に、二人は驚いた。
「あ、あの・・・目が覚めてお二人が帰った事を知れば残念がると思います。な、なので・・・屋敷に滞在されては如何でしょうか・・・部屋はたくさんありますから」
「いいのですか?」
「えぇ、準備させますので」
イザベラの言う通り、二人は辺境伯邸に滞在する事になった。準備された客間に通された二人が寛いでいる頃、イザベラは使用人達に、滞在の旨を伝えおもてなしをするよう話していた。
「・・・辺境伯様がこのような時に、私が勝手に判断してしまった事・・・後から怒られるかしら」
「そんな事ありませんよ。お気になされることはありません」
「そうですよ、奥様。寝ている当主様が悪いのです」
「旦那様が奥様を怒るなら、皆で盾になって差し上げますよ」
使用人達の温かい励ましに、ここに嫁ぐことになってよかったと心から思ったイザベラだった。
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次回
それでも不安に思われますか?
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