上 下
269 / 524

休暇二日目⑥今は幸せ?

しおりを挟む


二人と対峙したイザベラは、緊張の面持ちで向かいのソファに腰をかけた。メイドが入れたての紅茶をおくと、そっと退室していった。


「突然ごめんなさい。ゲオルグ様が怪我をされたと聞いたわ」

「えぇ、今は薬が効いているのか、眠っています」

「イザベラ嬢・・・いや、辺境伯夫人、大変な時にすまない。俺が師匠に援軍など頼まなければこんな事にはならなかった。判断を誤った俺のミスだ」

「アバンス団長様は何も悪くないですわ・・・辺境伯様も、使命感を持って出かけていかれましたもの。それに、命に別状はないと医師からも言われておりますので・・・」


イザベラは緊張しながらも、ウィルフレッドにそう答えた。


「あ、あの!・・・あの時は本当にすみませんでした。私・・・何故あのような事をしてしまったのか・・・」


イザベラの手が震えていた。


「本当に、申し訳ありませんでした!」

「イザベラ様、謝罪を受け入れますわ。それで・・・一つ聞きたいことがありますの」

「な、何でしょうか・・・」

「今、幸せですか?」


何故そんな事を聞くのだろうとイザベラはレティシアの顔を見る。真意が掴めない。


「・・・し、幸せかどうかは・・・まだわかりません・・・でも、皆さんよくしてくれて・・・辺境伯様もお優しくて・・・私にここにいていいと、ここが私の居場所だと言ってくださいました」

「王都に戻りたいと思いますか?」


イザベラはその言葉にビクッと身体を揺らした。


「・・・も、戻りたいとは思っていません・・・王都に私の居場所はありませんから・・・」

「ゲオルグ様は、あなたにとって居場所でしかないのでしょうか?夫としては見れないという事ですか?」

「わ、私が・・・私が妻でいいんでしょうか・・・こんなにも優しい方なのに・・・」

「ここで生きていくと、覚悟なさったのですよね?」

「えぇ、私はここで生きていきたいと思っています」

「それを聞けて安心しました。ゲオルグ様と話せなかったのは残念です。私たちはこれで失礼しますね。ゲオルグ様によろしくお伝えし」

「ま、待ってください!」


イザベラが急に大きな声を出した事に、二人は驚いた。


「あ、あの・・・目が覚めてお二人が帰った事を知れば残念がると思います。な、なので・・・屋敷に滞在されては如何でしょうか・・・部屋はたくさんありますから」

「いいのですか?」

「えぇ、準備させますので」


イザベラの言う通り、二人は辺境伯邸に滞在する事になった。準備された客間に通された二人が寛いでいる頃、イザベラは使用人達に、滞在の旨を伝えおもてなしをするよう話していた。


「・・・辺境伯様がこのような時に、私が勝手に判断してしまった事・・・後から怒られるかしら」

「そんな事ありませんよ。お気になされることはありません」

「そうですよ、奥様。寝ている当主様が悪いのです」

「旦那様が奥様を怒るなら、皆で盾になって差し上げますよ」


使用人達の温かい励ましに、ここに嫁ぐことになってよかったと心から思ったイザベラだった。






ーーーーーーーーーーーーー

次回

それでも不安に思われますか?


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

二番煎じな俺を殴りたいんだが、手を貸してくれ

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:404pt お気に入り:0

狂愛アモローソ

BL / 連載中 24h.ポイント:234pt お気に入り:5

妖精のいたずら

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,803pt お気に入り:393

ラグナロク・ノア

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:213pt お気に入り:3

さよならイクサ

現代文学 / 完結 24h.ポイント:695pt お気に入り:0

アンバー・カレッジ奇譚

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:92pt お気に入り:0

逢魔刻に氷菓を手折り

BL / 完結 24h.ポイント:14pt お気に入り:40

処理中です...