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休暇三日目⑨部屋に駆け込んだ妻

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「・・・ん・・・」


また眠ってしまったのかとうつろに考えていたゲオルグ。そこにノックの音がする。


コンコンコン


「失礼します」

「なんだ、ジルか・・・」

「そんな不満そうなお顔を」


ジルと呼ばれる老執事は、くつくつと喉を鳴らしながら笑っている。


「笑うなよ・・・」

「これは失礼しました。いやぁ・・・旦那様も奥様も可愛らしい方だなぁと思いまして」

「イザベラが可愛いのは認めるが、オジサンの俺に可愛いはないだろう・・・」

「いえいえ、お二人とも実にお可愛らしい。先程の奥様のお姿を旦那様にもお見せしたかったですな。誠に残念です」

「何があった?」

「奥様ときたら、旦那様の部屋から出てきた途端、頬を両手で覆われたかと思えば、真っ赤な顔をなさって、ゲオルグ様が、私の事を好きと・・・と思い出されながら身をふるふるさせておいででしたよ?こうやって」


目の前で老執事がその真似をして見せるが、ゲオルグは何を見せられているのだとなんとも言えない表情になった。


「おほんっ、失礼しました」

「あぁ、いつ止めればいいものか悩んだよ」

「とにかく、お二人とも想い合っておいでで、使用人一同嬉しく思っておりますよ」

「そうか・・・ところでイザベラは?」

「それがですね・・・」

「何かあったのか?」

「お部屋に篭られてしまって、何度お声がけしても返事がなくて」

「何があったんだ・・・?体調が悪いとかではないよな?」

「それもわからず。目撃したメイドによりますと、泣きそうな真っ赤な顔をして部屋に慌てて駆け込んだと」

「何?泣きそうだった?誰かが何かをしたというのか!?」


ゲオルグはいてもたってもいられず、無理矢理起きあがろうとする。


「・・・うぐっ・・・」

「旦那様!ご無理はいけません」

「だが、イザベラが!」

「お手を貸しますので、ゆっくりお願いします」

「あ、あぁ・・・すまん」


ジルの手を借りて、ゆっくりと寝台から起き上がったゲオルグ。肩や腕に痛みは走るものの、脚には異常がない。気持ちが焦り、寝衣のまま、部屋を飛び出してしまった。その姿に、掃除中だったメイド、通りかかった騎士達もギョッとしていた。冷や汗をかきながら、一つ挟んだ隣の部屋のドアを必死に目指す。


ドンドンドン!!


勢いがつきすぎて物凄い音をたててドアを叩いたゲオルグ。


「旦那様、そんなに大きな音を立てては奥様が驚かれますよ!」

「あ・・・す、すまん」


ガチャリ・・・


控えめにあいたドアの隙間。怯えながら出てきたイザベラが外の様子を伺っている。ドアの正面にいたゲオルグの姿は視界には入らず、隙間からジルの微笑む姿だけが見えていた。








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次回

身体も痛いが・・・心も痛いな




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