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遠くから見つめるのは

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アイオロスは副騎士団長と第一隊隊長の兼任という事になり、ウィルフレッドに教えを請いながら徐々に仕事を移行して行くこととなった。そして翌日、騎士達に稽古を付けていた時の事。アイオロスの視界に、これまでにはなかった光景が飛び込んできた。いや、意識的に探していた自分がいたから初めて気付いたのかもしれない。


「ミリア嬢・・・」


視界の片隅に映り込んだのは、間違いなく恋焦がれているその人、ミリアだった。ミリアは度々騎士団の稽古を覗きにきていたのだが、これまでアイオロスがそれを意識して探すという行為がなかったが為に、気付かれる事がなかったのだ。ジッと焼き付けるようにアイオロスを見つめるミリア。ふとアイオロスがこちらを向く。そして目があってしまった。


「あっ・・・」


咄嗟にミリアは、被っていたつばの広い帽子を両手で掴みその場にしゃがみ込んでしまった。アイオロスはその姿を見て、照れで隠れたのか!?なんて可愛いんだ!と悶えていた。アイオロスは、ハッと我に帰ると、騎士達に稽古を続けるよう言い渡し、慌ててミリアがいた場所へと駆けて行った。ミリアを見かけた場所まで来ると、未だミリアはしゃがみ込んだままだ。アイオロスが来た事にも気付かないまま。アイオロスが声をかけようと近付くと、ブツブツと小声で何か言っているのが聞こえた。


「素敵・・・やっぱり素敵・・・私の王子様」


ミリアが発した言葉に、まさか俺の事を言っているのかと頬が緩みそうになったが、誰がとは一言も言っていない。はじめは、自身を見に来たのかもしれないと嬉しくなってついここまで来てしまったが、勘違いかもしれないと思うようになった。そうなると、次第に情けない気持ちになる。ミリアが顔を上げぬうちに、アイオロスは足音を立てないようにそっとその場を立ち去った。


「やっぱり何度見ても素敵だわ・・・アイオロス様」


一足遅かった。その名がアイオロスにも聞こえていれば、今、ミリアはもっと赤面する事態に陥っていただろう。残念ながら、その想いが伝わる事はなかった。










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