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エルサとそれぞれの恋
しおりを挟む「あの・・・何か?」
マクシミリオンからの視線があまりにも不躾で、エルサは睨みをきかせる。
「あ・・・あっ、す、すまない!つい・・・そ、そうだ!ご令嬢は剣を振るのですよね?女性にしては珍しい」
「あら、女性が剣を振るってはダメかしら?」
「ダメとかではない。ただ、珍しいからな」
「辺境では、緊急時に自らの身を守れない者はただの足手まといです。自らの身くらい自身で守らねばなりません。だから剣を握り、剣を振るうのです」
「す、すばらしい考えだ。王都の女性にも聞かせてやりたいくらいだ」
「何か勘違いされておりませんこと?」
「勘違い・・・?」
「えぇ、王都にいる女性は、王都にいるなりの役割があります。社交やら、政略結婚やらと、自身の身を持って婚家と国を繁栄させていく役割があるのです。私には私の・・・辺境伯令嬢として、国境を守らねばなりません。だから、私は剣を取るのです。それぞれの役割があり、それぞれに必要な事をしているだけ。だから私がやっている事が偉いとかでも、素晴らしいとかでもないのです」
エルサは表情を変えず、淡々と説明する。マクシミリオンがエルサに興味を持っても、エルサがマクシミリオンに興味を持つことは・・・ないかもしれない。マクシミリオンは唖然としていた。素晴らしい矜持の持ち主。女性を剣を持つべきだというのかと思えば、それぞれにそれぞれの役割があると説いた。
「それは・・・そう、だな・・・」
マクシミリオンは、年下の、しかも女性にここまで言われるとは思っておらず、驚いた。だが同時に封じていた何かが溢れてくる。そう、レティシアの自分をしっかりと持っている所、そして強さ。マクシミリオンは見つけたとばかりに目を輝かせる。その表情の変わり様にエルサは怪訝な顔を向ける。
「何ですの?」
「い、いや、すまない。ただ・・・」
「ただ?」
「・・・」
エルサはあいもかわらず怪訝な表情を向ける。マクシミリオンはぽぉっとエルサの顔を見ている。その様子を見ていたコルテオはまた気付いてしまった。マクシミリオンが恋に落ちた事。図らずともレティシアの様に強く、しっかりと自分を持った女性であるという事。高位貴族の男達はそういう女性に弱いのだろうか。いや高位貴族の男だけじゃないかもしれない。少なくとも自分もそうだと気付いてしまったから。
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