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23、童貞オッサンの惚気
しおりを挟む朝から嬉しい衝撃を受けたアリエル。詰所の稽古場に向かう為通路を歩いていると、ルクストが声をかけてきた。
「団長、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
ルクストが何事だ?という顔で覗き込んでくる。
「なんだ、何か言いたい事でもあるのか?」
「えぇ、さっきからずっと頬を抑えてますが、歯でも痛むんですか?」
「あ、い、いや・・・これは、何でも・・・ない」
「?・・・ほっぺに行ってらっしゃいのキスされた夢でも見たんですか?」
「へっ!?あっ、いやっ、あれは・・・夢・・・なのか?」
「えっ!?マジで言ってます?リシェリア嬢にキスして貰ったんですか!?」
「ルクスト、声が大きい!!」
あまりの驚きに、ルクストは叫び声に近い大声が出ていた。
「あぁ、すいません。あまりにも衝撃が大きくて。しかも40手前のオッサンが、ほっぺにキスで喜んでるなんて気持ち悪くてですね・・・」
「き、気持ち悪い・・・気持ち悪いのか・・・」
リシェリアにそう思われたのではないかと、途端にアリエルは不安になった。
「気持ち悪いですよ!その位の年齢なら奥さんいて、行ってらっしゃいのキスなんて当たり前、もしくはもうしなくなってますよ。慣れてなさすぎでしょう・・・」
「悪かったな!俺は女に触れた事もないような男だ。仕方ないだろうが・・・」
「いや、それより、リシェリア嬢がまさかこんな熊みたいな大男が好みだってことがショックですよ!」
「好み?俺がか!?」
「そうでしょう。嫌いな奴にどの場所であろうとキスなんてしませんよ」
「そ、そうなのか・・・」
ルクストにリシェリアの好みだと言われ、困惑しつつも本当にそうだったらとわずかに期待をしてしまうアリエル。そのせいか、騎士達に稽古をつけるにも無駄に力が入り、気付けばほとんどの騎士達がぐったりとしていて体力をほぼ奪ってしまったようだ。
「しまった・・・やっちまったな」
ちょっとやりすぎたと後悔しながら、午後は執務室にこもり書類作業をする。朝からのいろんな衝撃が脳裏に浮かび、ニヤけている事に指摘されるまで気付かなかった。
「団長、ニヤニヤするのやめてください。気持ち悪さが倍増してます」
「なっ・・・ニヤニヤ・・・俺ニヤニヤしてたか?」
「えぇ、本当に気持ち悪いですよ。ほっぺにキスされたぐらいで、そんなにポンコツにならないでください」
「それだけでポンコツになるわけないだろうが!!」
「えっ!!それ以上があったという事ですか!?」
「えっ・・・い、いや・・・えっと・・・」
歯切れの悪いアリエルを見て、ルクストは根掘り葉掘り聞いていく。毎日屋敷に帰ってきてほしいと言われた事。今日も帰りを待っていると言って送り出された事。昨晩はリシェリアから一緒に寝てほしいと言われ、同じ寝台で眠った事。朝の寝顔が可愛くてたまらなかったという事。
「はぁ、オッサンの惚気聞いてるとか、気持ち悪くてため息しかでませんよ・・・」
ルクストは盛大にため息をついて見せた。
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次回
天使がいた
いや、小悪魔だった
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