お嬢さんはある日森の中で熊さんに出会った

agapē【アガペー】

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49、宰相の想いに応えるのは



「アリエル・モーガン様、いえ、アリエル・アルタイル様」

「その名で呼ぶな、シグルド」


近寄ってきたのは国の宰相である、シグルド・イグニス。アリエルの学園時代の同期でもある。


「お見事でした。全ての事を一夜で片付けられましたな」

「あぁ、全てはリシェの為だ」

「リシェリア様・・・お久しゅうございます」

「宰相様、お久しぶりでございます」


フロアにひしめく貴族達が三人の会話を聞き漏らすまいと、固唾を飲んで見守っている。


「あなた様に悲劇が起きて、行方不明となったと聞いた時は、本当に悔やみました。国にとって惜しい方を失ったと。まさか、アリエル様の元にいらっしゃるとは知らず・・・ご無事でなによりでした」


先の断罪で、たくさんの主要貴族、そして二人の王子と側近、筆頭公爵家までもこの場におらず、国王から、全ては宰相にと託されている。この場にいる全員が、宰相の意図を少しずつ感じ始め、次の言葉を待っている。


「宰相、大事な仕事があるんじゃないか?俺達にかまうな」

「そういうわけにはいきません」

「・・・何を企んでいる」


シグルドはアリエルの正面に立ち、姿勢を正し、まっすぐに射るように見つめる。


「アリエル・モーガン辺境伯当主様、貴殿に次代の国王になって頂きたい!」


フロアにいる全員が静かに見守り、アリエルの言葉を待っている。


「何を言ってる、俺も元は王族。あいつらと血が繋がっているんだぞ?同じ血が流れている」

「それは間違いありません。しかし、私は、リシェリア様のお姿をずっと見て来ました。アイスフォード殿下に寄り添い、王子妃教育を頑張って続けてこられ、外交や事業に関する見聞も広めておいででした。私の知る、どのご令嬢よりも、未来の国母にふさわしい。そんなリシェリア様が選んだお方です。アリエル様、私はあなたを幼い頃から存じ上げております。あなたは本当に民を想っている方だ。外見のせいで怖がられる事も多々ありました。しかし、他を想って動くあなたは、とても優しいお方なのです。リシェリア様の様子を見ていればわかります。本当にお二人は互いを想っておいでだ。私は、アリエル様・・・あなた以外の王は考えられません。ご決断を!」


シグルドは深く、深く頭を下げた。アリエルはしばし考えると、シグルドに視線を戻す。


「シグルド・・・頭を上げろ」


宰相シグルドは、頭を上げると、アリエルの言葉を待つ。


「俺は王になりたいとは思わん。地位など不要だ。今の生活にも不満はない。国王になる利点が思いつかん」

「アリエル様・・・しかし!」

「だが、少々誉めてやる。お前はリシェリアをきちんと評価している。そしてリシェリアと同じ事を言った。俺が民想いだと。俺だけの意見で言えば、答えは却下だ。宰相よ・・・最後にチャンスをやろう」

「チャンス?なんでしょうか?」

「俺の進退を決めるのは俺じゃない」

「それは・・・」

「俺が今後どうして欲しいか、どんな俺でいて欲しいか」


アリエルはシグルドから視線を移す。


「お前が決めろ、リシェ」



ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

【アリエルside】

リシェが選んだ俺か・・・

さぁ、どうする?


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