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50、新たな国王誕生
しおりを挟む「俺は王になりたいとは思わん。地位など不要だ。今の生活にも不満はない。国王になる利点が思いつかん。俺だけの意見で言えば、答えは却下だ。俺の進退を決めるのは俺じゃない。俺が今後どうして欲しいか、どんな俺でいて欲しいか・・・お前が決めろ、リシェ」
「へっ!?私がですか?」
「あぁ、俺の身体はもう俺だけのものじゃないからな。俺はお前だけのものだ。俺が向かう所にリシェは道連れだ。だからお前が選べ」
「・・・では・・・私がどう決めても文句は言いませんね?」
「あぁ、いいぞ」
「アル様、私、騎士をしているアル様が大好きです。民の皆さんをこの大きな優しい手が守ってくれている・・・でも、場所が変わろうと、地位が変わろうと、アル様はアル様で何も変わりませんわ。だから、アル様・・・私はアル様が作る国が見たいですわ。アル様の側で、この国の未来を。幸せな未来を見せてくれませんか?」
「はぁ・・・宰相どうだ?俺のリシェは美しい上に最高だろう?」
「はい、最高ですな」
「きゃぁっ!」
アリエルは勢いよくリシェリアを抱き上げるとズンズンと観衆の前を進んでいく。その後ろを宰相シグルドが続く。アリエルの進む方向には、自然と道が出来ていた。誰もが遮らず、今か今かとその時を待ち、その場所へと誘うように。
アリエルが向かった先には、国王になった者のみが座ることの許される玉座があった。
アリエルは玉座に腰を下ろすと、観衆に見せるように、片膝にリシェリアを座らせ、腰に手を回した。
「皆の者聞いてくれ!俺の大事な女が俺に国王になれと言った。だから俺は国王になる!異論がある奴はいるか!」
アリエルが全員に向かって声を上げるが、誰一人声をあげる者はいなかった。
「宰相、これで満足か」
「えぇ、国王陛下アリエル様!」
フロアは歓喜に満ち溢れ、拍手喝采の嵐となった。アリエルが手をあげて静止を促す。
「この際だ、皆に言っておく。俺はこの外見だ。女に好かれた事がない。この中には俺を避けてきた女もいるだろう」
アリエルはゆっくりとリシェリアに視線を向ける。
「俺は、このリシェリア・ブルスト侯爵令嬢にベタ惚れだ!俺の妃になるのはリシェリアただ一人だ。だから地位や金、権力に目がくらむ女はいらん。もちろん薦めてもくるな。リシェリアは俺の最大の弱点だ。使い方を間違うな、うまく使いこなせ!貶めようとしたり、害そうとする奴は命はない、覚えておけ!」
アリエルの言葉は力強く、リシェリアを守る為には効果絶大であった。最大の弱点であり、うまく使いこなせという言葉にいろんな反応があっただろう。国王の唯一の弱点。リシェリアの事に関すると弱いアリエルを動かそうとするならば、リシェリアをうまく使えば事を動かすことができるという事だ。
この言葉は、単に利用価値があるという事を言っているのではなく、自分はリシェリアの能力を高く買っていて、蔑ろにするなという意味が込められていた。王子妃教育を受けてきたリシェリアなら、間違った判断もせず、王都から長い間離れていたアリエルにとって、一番信頼できる相手でもあるのだ。言葉をはき違え、ズルく利用しようとする者、リシェリアを害そうとする者は容赦なく潰すと宣言をしたのだった。
ここに、たった一人の妃を溺愛し続ける、国王アリエル・アルタイルが誕生した。
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次回
【アリエルside】
今さら寄ってくる女などいらん
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