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59、不治の病
しおりを挟む「・・・ん・・・朝か・・・リシェ・・・ん?・・・リシェ!?」
いつも目が覚めるとリシェリアの姿を確認するアリエル。しかし、寝台にはいつもいるはずのリシェリアがいない。部屋から飛び出し、叫ぶように大声でリシェリアを探し回る。
「リシェ!リシェ!どこにいるんだ!リシェ!」
夫婦の寝室を抜け、リシェリアの部屋に飛び込むと、愛しいリシェリアの姿を見つけた。アリエルはリシェリアに近寄ると、崩れるように床に膝をつき、縋るようにリシェリアの腰に抱きついた。
「ぐずっ・・・りしぇ・・・うっ・・・りしぇぇ・・・」
「アル様おはようございます、どうなされたのです?」
「うっ・・・おき、たら・・・りしぇが・・・いな、かったぁぁ・・・うくっ・・・」
「アル様泣かないでください。先に起きてしまってすみません」
「うっ・・・ぐすっ・・・かってに、いなく、なるな・・・」
「はい、ごめんなさい。昨日湯あみしてなかったので、フローラさんにお願いしたんです」
「陛下、いい大人の男がぐずって泣くなんて格好悪いですよ?」
「だっでぇ・・・りしぇが・・・いないなんてぇぇ・・・」
「ふふっ、アル様、今日は体調が悪いのですね?」
アルエルは涙で濡れた瞳で顔を上げると、リシェリアを不思議そうに見つめる。
「おれは、たい、ちょうは・・わるく、ないぞ?」
「いいえ、アル様は体調不良です」
「・・・何を、言って、るんだ?」
「ふふっ、体調の不良のアル様は寝台に寝かせませんとね」
困惑するアリエルを立ち上がらせると、引っ張って寝台へと向かう。
「リシェ、俺は元気だ。体調は悪くない」
「いいえ、今日はアル様は体調が悪い日なのです」
なぜか言い張り譲らないリシェリア。フローラが言葉をかける。
「陛下、リシェリア様は、昨日陛下にお世話をして貰ったのが嬉しくて、同じ事をして差し上げたいのではないですか?」
「フ、フローラ、しかし、俺は体調は悪く・・・そう、体調は悪くない・・・が、俺は病気だ。一生治らん病気だった」
「えっ・・・そ、そんな・・・何の病気なのですか!?治らないなんて・・・そんな・・・嫌です!アル様死なないでください!!」
リシェリアはアリエルの胸に飛び込むように抱きつき、涙目になって訴える。治らない病気だという言葉に驚いて取り乱した。
「リシェ、俺の病気は死ぬことはない。しかし・・・一生治らんのだ・・・」
「・・・嫌です・・・そんな・・・うっ・・・」
「陛下、いたずらはよしてください」
「フローラさん?」
「陛下は病気なんてしてません。ピンピンしてます。きっと、恋の病とでも言いたいのでしょう?」
アリエルはリシェリアの髪を手で梳くように頭を撫で、顔を覗き込む。
「あぁ、そうだ。俺は毎日、毎日リシェに恋している。この病気は一生治らんぞ?ずっと面倒見てくれるか?」
「・・・アル様の意地悪・・・本気で心配したんですよ・・・」
「わ、悪かった!しかし、恋の病は治らんのだ。リシェしかこの病を癒すことはできんのだぞ?」
「仕方ないですね。私がお世話して差し上げますわ!」
結局、アリエルがした事と同じ事をリシェリアもした。そしてそれ以上もしようとした。
「アル様、恋の病は湯あみしても問題ないですわ。さぁ、お背中流しますわ!」
「い、いやっ、風呂は自分で入れる!」
「ダメです、病なのですから、湯船で沈んだらいけませんでしょう?ここは大人しく言う事を聞いてください!」
「そのお願いは聞けんぞ!一人で入らせろ!」
離宮では、しばらく追いかけっこが続いていた。
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次回
【アリエルside】
俺の俺も元気だ・・・
一人の女に対して恋が一回で終わらないなんて聞いたことがない。
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