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【アリエルside】俺の宝物
しおりを挟む大聖堂の扉が開いて、リシェが侯爵に手を取られ少しずつこちらに向かって来る。
結婚なんてできるはずがないと諦め、俺の人生はあのまま辺境で終わりを迎えるのだと思っていた。人生わからないものだな。国中の男どもより、俺を選んだ女がいるのだ。俺が一番信じられないでいる。
今日リシェは本当の意味で俺の嫁になる。毎日不安だった。どこの誰にとられるかもしれない不安。毎朝目が覚めたらリシェがいなくなってるんじゃないかと、目が覚めるのが怖かった。それはこれからも変わらないだろう。
兄上は穏やかな顔になったな。元王妃を自身の元に引き取ると言った時には、こんな女にまだ愛情を注げるのかと思ったものだが・・・兄上も寂しかったのかもしれないな。本当の意味での家族は・・・兄上にはいなかったのかも・・・しれないな。
アイスフォードは・・・なんだ、あれ・・・笑いながら泣いている。感動ではないな。祝いたいが心底祝えないといった表情だな。それもそうか、あんなに綺麗なリシェ・・・本来なら隣にはお前が立っていたんだもんな。お前は確実に手に入れていたんだぞ?何年もお前の隣にはリシェがいた。無条件に愛する、愛してくれる存在がずっと側にいたんだ。
「陛下、娘を・・・リシェリアをよろしくお願いします」
侯爵、いや、もうすぐ公爵だな。元王妃ミカエラが犯した不貞の相手がナッティルド公爵だった。その娘も今回事件に加担し、当事者にもなった。醜聞が表沙汰になると、貴族達は公爵家から距離を置き、勢いを失うと経営が立ち行かなくなった。そこで俺は、空いたままにしておいても公爵領が衰退しては困ると、リシェリアの父であるブルスト侯爵を公爵に格上げし、領地を任せることにしたのだ。リシェが無事に戻ってきた時の為にと奮闘していたブルスト侯爵だったが、結果、領地の税収も上がり国に貢献した形となった。だから婿に入るマルクは、次期公爵家の当主となる。その上で空いた侯爵位には考えている事がある。俺の後を継いで、辺境の騎士団長を任せていたルクストを王都に呼び寄せようと思っている。近衛の副騎士団長が、家の爵位継承で退団することになったのだ。その後にルクストを起用し、侯爵位を与える算段だ。
神父には俺が言葉を伝えたいから、何も言わないでくれと言ってある。いる必要ありますか?と言われたが、格好は必要だろう?リシェに呼びかけ、ベールを上げると、可愛い嫁が何事かと俺の顔を見ている。
「リシェ、今日という日を迎えられた事、嬉しく思っている。こんな俺にもずっと寄り添い向き合ってくれた。俺は結婚というものを、諦めていた。人生を・・・諦めていたんだ。しかし、お前という光が差し込んだ。俺は今でもお前と結婚できるのが夢なんじゃないかと・・・覚めてしまうんじゃないかと、まだ信じられずにいるんだ。だが、もう誰にもリシェを渡さない。手放すことはできないのだ。俺に捕まってしまった事、後悔してももう遅いぞ?俺は全力でお前だけを愛する事をここに誓う。リシェリア・ブルスト侯爵令嬢、俺の・・・俺のたった一人の妃になってくれ」
もうお前以外いらない。それが俺の気持ちだ。
「・・・はい・・・アル様、アリエル・アルタイル様・・・私も誓います。覚悟なさいませ、私がアル様を離しませんわ」
っ・・・みんなの前でそんな宣言するのか・・・そんなに俺の事を・・・愛してるのか?・・・もう我慢ができん!俺はリシェを抱き上げた。
「誓いのキスを」
リシェ、愛してる。これからもずっと一緒にいてくれよ?リシェは俺の宝物だ。大事な、大事な宝物だ。
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次回
格好よくリードしたいのに・・・
応援ありがとうございます!
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