流星姫は平凡騎士をご所望です

agapē【アガペー】

文字の大きさ
14 / 211

14、王妃の過去と願い

しおりを挟む
「上二人の時は義務感だったわ。王族の、世継ぎを産む事が私の役目。

二人とも女児だった事で、周りからは男児を望む声が大きくなって、心身的に疲れ切っていたわ」

王妃は当時の事を思い出しながらぽつり、ぽつりと言葉を紡いでいく。

「子を産むには厳しい年齢に差し掛かって、側妃を求める声が大きくなっていった。

そんな中、陛下は、周りを鎮めるために必死になってわたくしを庇ってくださった。

側妃はいらぬ、求めぬ、私の妻はエリアナだけだと。

その姿を見たわたくしは、もう一度だけ男児を望んだわ。

でも、産まれた子はミーティア・・・また女児だった」

室内が静まり返る。

「私は産後の肥立ちが悪く、寝込んでしまったわ。

ベッドから起き上がる事もできずに、ただただ時間を過ごす毎日だった。

でも、産まれてきた子には何の罪もない。

どんな子だって、わたくしがお腹を痛めて産んだ子で、可愛い事には違いないわ」

余程辛い過去だったのだろう、王妃の瞳からは涙が落ちた。

「王妃殿下こちらを」

バージルはハンカチを差し出す。

「ありがとう。あなたがミーティアを見つけてくれて本当によかった」

王妃は、静かに涙を拭う。

「姉二人の名前は、産まれた季節に咲いていた花の名前をつけたわ。

花のように、みんなを癒し、愛されるような娘になって欲しかったから。

でもミーティアの時は、わたくしの心が限界を迎えていて、男児がどうしても欲しいと望んで産んだ子なのに、我が子に向かって、産まれた事の喜びを向けてあげる事ができなかった。

母親失格だと思ったわ。

わたくしは産まれたばかりの子を、ミーティアをしばらく乳母に頼む事にしたわ。

そんな事があったから、わたくしはあの子にだけ花の名前ではなく、ミーティア、流星という名をつけた。

この子の願った事が叶いますようにって」

「それで、ミーティア王女殿下のお名前だけが、花の名前ではなかったのですね」

言葉に詰まった王妃に、テオドールが声をかける。

「あの子が5歳の時、お茶会であった事を後で侍女から聞いた時、心臓が止まるかと思ったわ

私がつけた名前であの子を苦しめた。

顔を合わせるのが怖かった。

でも、数日ぶりに顔をあわせた娘は、本当に我が子かと疑う程に変わっていたわ。

とてもいい方向に・・・少々物語が好きで、夢見がちになったのかと思っていたけれど違ったわ。

ミーティアの名前を褒めて、笑顔にしてくれた騎士様がいるって。

どれ程わたくしの心が救われたか」

そう言った王妃は、涙でにじんだ瞳でバージルを見つめる。

「侍女やメイドに聞いても、どこの騎士かわからず、茶会の警備にあたっていた第一の騎士に聞いても知らぬで、お礼を言いたくても言えなかった。

少し経って、ミーティアが寝言であなたの名前を呼んだの。

すぐに調べさせたわ・・・運命だと思った・・・あの時はすぐにお礼を言えず・・・感謝します、ありがとう」

王妃は深く頭を下げた。

「王妃殿下、頭をお上げ下さい!!」

焦ったバージルが声をかける。

「ミーティアには幸せになって欲しいの。

ここからはわたくしのわがままよ、あの子の願いを叶えたい。

10年前のあの日から、わたくしは王妃として、あの子にできる事を最大限してきたつもりよ。

それはこれからも同じ。

バージル、あの子の差し出した手を取ってくれないかしら。

あの子は王女で、あなたは子爵家の次男・・・いろんなものが立ちはだかるわ。

それでもわたくしは、あの子の横にはあなたがいて欲しいと思うの。

わたくしね、あなたの母になりたいわ」

王妃は自身の過去を悔やんでいた。

それと同時に、ミーティアの幸せを誰よりも望んでいた。

娘に関わるなという事ではなく、その手をとって欲しいと。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

贖罪の花嫁はいつわりの婚姻に溺れる

マチバリ
恋愛
 貴族令嬢エステルは姉の婚約者を誘惑したという冤罪で修道院に行くことになっていたが、突然ある男の花嫁になり子供を産めと命令されてしまう。夫となる男は稀有な魔力と尊い血統を持ちながらも辺境の屋敷で孤独に暮らす魔法使いアンデリック。  数奇な運命で結婚する事になった二人が呪いをとくように幸せになる物語。 書籍化作業にあたり本編を非公開にしました。

異世界シンママ ~モブ顔シングルマザーと銀獅子将軍~【完結】

多摩ゆら
恋愛
「神様お星様。モブ顔アラサーバツイチ子持ちにドッキリイベントは望んでません!」 シングルマザーのケイは、娘のココと共にオケアノスという国に異世界転移してしまう。助けてくれたのは、銀獅子将軍と呼ばれるヴォルク侯爵。 異世界での仕事と子育てに奔走するシンママ介護士と、激渋イケオジ将軍との間に恋愛は成立するのか!? ・同じ世界観の新作「未婚のギャル母は堅物眼鏡を翻弄する」連載中! ・表紙イラストは蒼獅郎様、タイトルロゴは猫埜かきあげ様に制作していただきました。画像・文章ともAI学習禁止。 ・ファンタジー世界ですが不思議要素はありません。 ・※マークの話には性描写を含みます。苦手な方は読み飛ばしていただいても本筋に影響はありません。 ・エブリスタにて恋愛ファンタジートレンドランキング1位獲得

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

【短編】淫紋を付けられたただのモブです~なぜか魔王に溺愛されて~

双真満月
恋愛
不憫なメイドと、彼女を溺愛する魔王の話(短編)。 なんちゃってファンタジー、タイトルに反してシリアスです。 ※小説家になろうでも掲載中。 ※一万文字ちょっとの短編、メイド視点と魔王視点両方あり。

お隣さんはヤのつくご職業

古亜
恋愛
佐伯梓は、日々平穏に過ごしてきたOL。 残業から帰り夜食のカップ麺を食べていたら、突然壁に穴が空いた。 元々薄い壁だと思ってたけど、まさか人が飛んでくるなんて……ん?そもそも人が飛んでくるっておかしくない?それにお隣さんの顔、初めて見ましたがだいぶ強面でいらっしゃいますね。 ……え、ちゃんとしたもん食え? ちょ、冷蔵庫漁らないでくださいっ!! ちょっとアホな社畜OLがヤクザさんとご飯を食べるラブコメ 建築基準法と物理法則なんて知りません 登場人物や団体の名称や設定は作者が適当に生み出したものであり、現実に類似のものがあったとしても一切関係ありません。 2020/5/26 完結

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end**

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

処理中です...