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14、王妃の過去と願い
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「上二人の時は義務感だったわ。王族の、世継ぎを産む事が私の役目。
二人とも女児だった事で、周りからは男児を望む声が大きくなって、心身的に疲れ切っていたわ」
王妃は当時の事を思い出しながらぽつり、ぽつりと言葉を紡いでいく。
「子を産むには厳しい年齢に差し掛かって、側妃を求める声が大きくなっていった。
そんな中、陛下は、周りを鎮めるために必死になってわたくしを庇ってくださった。
側妃はいらぬ、求めぬ、私の妻はエリアナだけだと。
その姿を見たわたくしは、もう一度だけ男児を望んだわ。
でも、産まれた子はミーティア・・・また女児だった」
室内が静まり返る。
「私は産後の肥立ちが悪く、寝込んでしまったわ。
ベッドから起き上がる事もできずに、ただただ時間を過ごす毎日だった。
でも、産まれてきた子には何の罪もない。
どんな子だって、わたくしがお腹を痛めて産んだ子で、可愛い事には違いないわ」
余程辛い過去だったのだろう、王妃の瞳からは涙が落ちた。
「王妃殿下こちらを」
バージルはハンカチを差し出す。
「ありがとう。あなたがミーティアを見つけてくれて本当によかった」
王妃は、静かに涙を拭う。
「姉二人の名前は、産まれた季節に咲いていた花の名前をつけたわ。
花のように、みんなを癒し、愛されるような娘になって欲しかったから。
でもミーティアの時は、わたくしの心が限界を迎えていて、男児がどうしても欲しいと望んで産んだ子なのに、我が子に向かって、産まれた事の喜びを向けてあげる事ができなかった。
母親失格だと思ったわ。
わたくしは産まれたばかりの子を、ミーティアをしばらく乳母に頼む事にしたわ。
そんな事があったから、わたくしはあの子にだけ花の名前ではなく、ミーティア、流星という名をつけた。
この子の願った事が叶いますようにって」
「それで、ミーティア王女殿下のお名前だけが、花の名前ではなかったのですね」
言葉に詰まった王妃に、テオドールが声をかける。
「あの子が5歳の時、お茶会であった事を後で侍女から聞いた時、心臓が止まるかと思ったわ
私がつけた名前であの子を苦しめた。
顔を合わせるのが怖かった。
でも、数日ぶりに顔をあわせた娘は、本当に我が子かと疑う程に変わっていたわ。
とてもいい方向に・・・少々物語が好きで、夢見がちになったのかと思っていたけれど違ったわ。
ミーティアの名前を褒めて、笑顔にしてくれた騎士様がいるって。
どれ程わたくしの心が救われたか」
そう言った王妃は、涙で滲んだ瞳でバージルを見つめる。
「侍女やメイドに聞いても、どこの騎士かわからず、茶会の警備にあたっていた第一の騎士に聞いても知らぬで、お礼を言いたくても言えなかった。
少し経って、ミーティアが寝言であなたの名前を呼んだの。
すぐに調べさせたわ・・・運命だと思った・・・あの時はすぐにお礼を言えず・・・感謝します、ありがとう」
王妃は深く頭を下げた。
「王妃殿下、頭をお上げ下さい!!」
焦ったバージルが声をかける。
「ミーティアには幸せになって欲しいの。
ここからはわたくしのわがままよ、あの子の願いを叶えたい。
10年前のあの日から、わたくしは王妃として、あの子にできる事を最大限してきたつもりよ。
それはこれからも同じ。
バージル、あの子の差し出した手を取ってくれないかしら。
あの子は王女で、あなたは子爵家の次男・・・いろんなものが立ちはだかるわ。
それでもわたくしは、あの子の横にはあなたがいて欲しいと思うの。
わたくしね、あなたの母になりたいわ」
王妃は自身の過去を悔やんでいた。
それと同時に、ミーティアの幸せを誰よりも望んでいた。
娘に関わるなという事ではなく、その手をとって欲しいと。
二人とも女児だった事で、周りからは男児を望む声が大きくなって、心身的に疲れ切っていたわ」
王妃は当時の事を思い出しながらぽつり、ぽつりと言葉を紡いでいく。
「子を産むには厳しい年齢に差し掛かって、側妃を求める声が大きくなっていった。
そんな中、陛下は、周りを鎮めるために必死になってわたくしを庇ってくださった。
側妃はいらぬ、求めぬ、私の妻はエリアナだけだと。
その姿を見たわたくしは、もう一度だけ男児を望んだわ。
でも、産まれた子はミーティア・・・また女児だった」
室内が静まり返る。
「私は産後の肥立ちが悪く、寝込んでしまったわ。
ベッドから起き上がる事もできずに、ただただ時間を過ごす毎日だった。
でも、産まれてきた子には何の罪もない。
どんな子だって、わたくしがお腹を痛めて産んだ子で、可愛い事には違いないわ」
余程辛い過去だったのだろう、王妃の瞳からは涙が落ちた。
「王妃殿下こちらを」
バージルはハンカチを差し出す。
「ありがとう。あなたがミーティアを見つけてくれて本当によかった」
王妃は、静かに涙を拭う。
「姉二人の名前は、産まれた季節に咲いていた花の名前をつけたわ。
花のように、みんなを癒し、愛されるような娘になって欲しかったから。
でもミーティアの時は、わたくしの心が限界を迎えていて、男児がどうしても欲しいと望んで産んだ子なのに、我が子に向かって、産まれた事の喜びを向けてあげる事ができなかった。
母親失格だと思ったわ。
わたくしは産まれたばかりの子を、ミーティアをしばらく乳母に頼む事にしたわ。
そんな事があったから、わたくしはあの子にだけ花の名前ではなく、ミーティア、流星という名をつけた。
この子の願った事が叶いますようにって」
「それで、ミーティア王女殿下のお名前だけが、花の名前ではなかったのですね」
言葉に詰まった王妃に、テオドールが声をかける。
「あの子が5歳の時、お茶会であった事を後で侍女から聞いた時、心臓が止まるかと思ったわ
私がつけた名前であの子を苦しめた。
顔を合わせるのが怖かった。
でも、数日ぶりに顔をあわせた娘は、本当に我が子かと疑う程に変わっていたわ。
とてもいい方向に・・・少々物語が好きで、夢見がちになったのかと思っていたけれど違ったわ。
ミーティアの名前を褒めて、笑顔にしてくれた騎士様がいるって。
どれ程わたくしの心が救われたか」
そう言った王妃は、涙で滲んだ瞳でバージルを見つめる。
「侍女やメイドに聞いても、どこの騎士かわからず、茶会の警備にあたっていた第一の騎士に聞いても知らぬで、お礼を言いたくても言えなかった。
少し経って、ミーティアが寝言であなたの名前を呼んだの。
すぐに調べさせたわ・・・運命だと思った・・・あの時はすぐにお礼を言えず・・・感謝します、ありがとう」
王妃は深く頭を下げた。
「王妃殿下、頭をお上げ下さい!!」
焦ったバージルが声をかける。
「ミーティアには幸せになって欲しいの。
ここからはわたくしのわがままよ、あの子の願いを叶えたい。
10年前のあの日から、わたくしは王妃として、あの子にできる事を最大限してきたつもりよ。
それはこれからも同じ。
バージル、あの子の差し出した手を取ってくれないかしら。
あの子は王女で、あなたは子爵家の次男・・・いろんなものが立ちはだかるわ。
それでもわたくしは、あの子の横にはあなたがいて欲しいと思うの。
わたくしね、あなたの母になりたいわ」
王妃は自身の過去を悔やんでいた。
それと同時に、ミーティアの幸せを誰よりも望んでいた。
娘に関わるなという事ではなく、その手をとって欲しいと。
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