82 / 211
第二王子アークトゥルス
第二王子は絶望し切望する
アークトゥルスは力なく、ラビリアの隣に倒れるように横になった。
「ラビィ・・・」
「アーク様・・・」
「こんなことになってしまって・・・すまない」
「謝らないでください。まるで過ちを犯したいみたいではないですか」
「過ち・・・」
「アーク様、心配はいりません。そんなに怯えないでください」
「・・・怯える・・・?」
アークトゥルスの身体は小刻みに震えていた。ラビリアに言われるまで、自身が震えているとは気づかなかった。
(僕は怯えて・・・何に・・・ラビィを傷付けた・・・失うのが怖い・・・)
「ラビィ・・・」
アークトゥルスは縋り付くように、しっかりとラビリアを抱きしめた。ラビリアは、アークトゥルスの髪を梳きながら優しく頭を撫でた。
「らびぃぃ・・・うっ・・・ひくっ」
「アーク様、何も心配はいりません。ラビィはここにおりますよ?」
「らびぃぃぃ・・・らびぃぃ・・・うぐっ、ぐずっ・・・らびぃぃ・・・」
ひとしきり泣いて落ち着いてくると、冷静になった頭にある事が浮かんできた。
「ラビィ、結婚式を早めよう」
「何故です?」
「こんな事になってしまった以上、もし子ができてしまったら、お腹が目立ってしまうだろう?婚前交渉もよくないし・・・」
「心配は入りませんよ?」
「しかし!結婚式は大事だ!一生に一度だぞ?それを最高の状態でできなかったなんて、悔いしか残らないじゃないか・・・」
「アーク様、私を見てください」
「ラビィ・・・」
「ご心配いりませんと言ってるでしょう?」
「何故だ・・・どうして・・・あっ、そうか、そうなんだな・・・こんな僕は嫌いか・・・捨てるのか・・・」
「何を言ってるんです、捨てませんよ。一度屋敷に戻って、お父様にこうなる事の許可を貰いました。その後、王太子様のところへ行き相談をした上で、馬車を出してもらったのです。避妊薬を飲みましたので、なんの心配もありませんわ」
「ラ、ラビィ!身体は大丈夫なのか!?・・・そこまで・・・してくれていたのか・・・」
「アーク様はきっと気にされると思ったのです。お優しいアーク様の事です、きっと盛大に後悔なさると思っておりました。後悔して辛い思いを持ったままにはして欲しくなかったのです」
「ラビィ・・・僕の事は何でもお見通しか・・・」
「何年一緒にいると思っているのです?もう、小さいうさぎではないのですよ?」
アークトゥルスはラビリアの肩に顔を埋める。
「お願いだ・・・僕を・・・僕を、捨てないで・・・」
「捨てません、捨ててあげません。ラビリアはアーク様のものです。アーク様が手放さない限り、離れてあげません」
「手放すわけないよ!こんないい女、手放すわけないだろう!」
「ふふっ」
「なんで笑うの・・・」
「こんな弱ったアーク様初めてです」
「格好悪い・・・僕は嫌だ。格好いい僕だけ見せたいのに」
「それでは飽きてしまいますわ」
アークトゥルスは慌てて顔を上げる。
「えっ!?それは困る!絶対に嫌だ!ラビィに飽きられてしまったら・・・僕は生きる屍になってしまう・・・」
「そこは死んでしまうとかではないのですね?」
「あぁ、ラビィがこの世にいる限り、僕はこの世から離れられる気がしない。だから死ぬ勇気はない」
「聞いてください。私のお父様の話。お母様に言ったそうです。君の魅力は誰も気付かなくていい、僕だけが知っていればいいんだって。あのお父様がそんな事を言うのですよ?
弱いところも、格好悪いところも全て含めてアーク様です。私だけに見せてください。皆様が知らないアーク様は、私だけのアーク様です。格好悪いアーク様も愛おしいのです」
「ラビィ・・・もう、僕はラビィなしでは生きていけないよ・・・ラビィは僕にとっては空気のような存在だな。いつも当たり前にある。なかったら息ができなくて苦しくて死んでしまう」
「アーク様がきちんと息ができるように。当たり前の毎日が大切に思えるように、いつまでもお側におりますね」
「ラビィ・・・ありがとう・・・愛してる。ラビィだけをずっとずっと愛すると誓う。だから、どこにも行かないで。僕の側にいて・・・ラビィ、愛してる」
ーーーーーーーーーーーーーーー
次回
またかくれんぼが始まったよ
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
黒の神官と夜のお世話役
苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
[完結」(R18)最強の聖女様は全てを手に入れる
青空一夏
恋愛
私はトリスタン王国の王女ナオミ。18歳なのに50過ぎの隣国の老王の嫁がされる。最悪なんだけど、両国の安寧のため仕方がないと諦めた。我慢するわ、でも‥‥これって最高に幸せなのだけど!!その秘密は?ラブコメディー
【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております
紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。
二年後にはリリスと交代しなければならない。
そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。
普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041