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まがいものの天使
その様子をダンテが見逃すはずもない。
「おい、ショーン、ティファはやらんぞ」
「?」
隣でダンテが何を言い出したのだろうと、スティファニアは不思議そうに見つめる。やるとやらないとかそんな話は一切していなかったはずだ。一体何の話でどこから会話が切り替わったのだろう、自分が話を聞いていなかったのだろうかと。
「滅相もありません!で、ですが、天使様は愛でる分には構いませんよね?」
天使を愛でる?伝説か何かの話をし始めたのか。それにしても料理人が焦っているのがわかる。料理人は確かに天使と言った。辺境では、言い伝えなどがあり、天使に会うことができるということなのだろうか。スティファニアは困惑しながらダンテの顔をじっと見つめていた。
「愛でる分には構わん。だが手を出してみろ。罰くらいじゃすまされんからな」
ぶんぶんと料理人は首を勢いよく縦に振り、もちろんですと頷いている。ダンテは料理人に罰くらいじゃ済まされないと言った。やはり言い伝えや伝説の禁忌に振れれば、どんな屈強な男であろうと無事では済まされないもだろう。食事も済ませ、ダンテがスティファニアを食後の茶に誘い、今は、サロンでくつろいでいる。
「ダン様」
「なんだ?」
「辺境の地では天使様にお会いできるのですか?」
「天使?・・・あぁ・・・そうだな。今は辺境にいる」
「今は?という事は、天使様は場所を移られる事があるのですか?」
「うむ・・・移ることもあるやもしれん。だが、天使はこの辺境の地をとても気に入ってくれたようだ」
「そうなのですか?・・・あの・・・」
「ん?」
「私も会えますでしょうか?」
「天使にか?」
「はい!」
「・・・毎日見ているだろう」
ダンテの何を言っているんだと言わんばかりの態度に、スティファニアは困惑する。まさか、辺境伯邸の誰かが天使だというのだろうか。斜め上の発想をし始めたスティファニアに、ダンテはもう一言付け加える。
「鏡を通してな?」
「・・・鏡?」
ますますわからないといった表情のスティファニアに、ダンテはくつくつと笑い、白状する。
「天使はお前だ、ティファ」
「へっ?・・・わ、私ですか!?」
ダンテが何を言いだしたのかと一瞬固まってしまった。天使というのは、こんな容姿ではないはずだ。天使と例えるならば、実家の侯爵家の妹、ミレイニアのような可憐な少女を指すのではないかと思う。きっとダンテも、辺境伯邸の皆も、ミレイニアを見れば、自身がまがい物の天使であったと気付くだろう。そんな事が頭をよぎったスティファニアの顔からは、表情が抜け落ちていた。
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