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8.それぞれの誓いを胸に
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「いらっしゃい、レイモンド」
「お招きありがとうございます、アメリア様」
レイモンドを華やかな笑顔で出迎えてくれた可愛らしい女性は、ソフィアの母親だ。
「よく来たね、レイモンド。ソフィアはちょうど出かけた所だよ」
ソフィアの父であるブランドンに促され、彼と向かいの椅子に腰を下ろした。すぐにお茶の支度が整えられる。
「この秘密のティーパーティーも、もう終わりになってしまうのね」
ブランドンの横でお茶を飲みながら、アメリアはクスクスと笑った。
秘密のティーパーティーとは、レイモンドとソフィアの両親によるお茶会のことだ。レイモンドは10年前からソフィアの外出中に、この屋敷にお邪魔してソフィアの両親と一緒に過ごしていたのだ。もちろんソフィアは全く何も知らない。
このお茶会はレイモンドにとって、ソフィアの話を聞ける数少ない機会であり、ソフィアの両親に自分をアピールするチャンスでもあった。
「レイモンドも明日には私達の息子になるのね」
「本当によく頑張ったよ、君は」
ソフィアの両親に、こうして受け入れてもらえた事は本当にありがたい。
「ソフィアの婚約者は、兄ではなく自分の方がふさわしい」
10年前、レイモンドの言葉を大人達は笑い飛ばした。当然と言えば当然だろう。政略結婚が当たり前の家柄において、8歳の子供の恋心などとるに足らないものだ。
ただ一人アメリアだけがレイモンドを笑わなかった。それどころか目を輝かせ、レイモンドに賛成してくれたのだ。いや、賛成というより、興奮していたと言う方が正しいかもしれない。
兄のアルフレッドとソフィアの婚約を望んでいたレイモンドの両親は、もちろん最後まで猛反対で激怒していた。その両親をうまく説得してくれたのもアメリアだった。
後になぜアメリアはあっさりと自分を認めてくれたのか尋ねてみたことがある。
「だって素敵じゃない」
瞳をキラキラさせながらアメリアは言った。
「一目惚れしたお姫様のために相応しい地位を得ようと努力するイケメン平民なんて、物語みたいでロマンチックだわ……」
もちろんソフィアは姫ではないし、レイモンドも平民ではない……
だがアメリアの中ではそういったレイモンド達を主役とする恋物語が出来上がっているようだ。
「乙女チックだな」
ブランドンはそう言って顔を緩ませた。普段は厳しいことで有名なブランドンも、ベタ惚れな妻の前では判断が鈍るのかもしれない。
本当に大丈夫だろうか?
ソフィアの両親の軽さは多少心配だったが、この二人のお陰でレイモンドはソフィアと結婚できるのだから感謝しかない。
とうとう明日は結婚式だ。
やっとここまできた……
明日にはソフィアを自分のものにできる。
ソフィアと婚約さえすれば満足できるかと思っていたが、それではまだ足りなかった。
「ソフィーは私のものだ」
そう宣言できることがこの上なく嬉しい。
式当日はとてもよく晴れて気持ちがいい日だった。見上げた空はとても澄んでいて青い。
空が高いな……
早いものでもう秋なのだ。
ソフィアはもう準備を始めただろうか?
式の準備が忙しいソフィアとは、近頃まともに話す事ができていない。
もうそろそろ我慢の限界だ。ソフィア不足でおかしくなりそうだ。
レイモンドはポケットから小さな箱をとり出した。中には花のモチーフの指輪が入っている。
ソフィアは喜んでくれるだろうか?
ソフィアのために、レイモンド自身が一生懸命デザインしたのだが、あまりにも悩みすぎて出来上がりがギリギリになってしまった。
さぁ、そろそろ時間だ。
明るい祭壇の前でソフィアを待つ。
レイモンドの前には自分の両親、兄のアルフレッド、ソフィアの両親に侍女のサラ、そしてソフィアの親友のイザベラ王女などたくさんの参列者がいる。
皆に祝福されソフィアと結婚できる……あぁ、なんて幸せなのだろうか。
扉が開きソフィアが姿を現した。
ウェディングドレスを纏うソフィアはまるで光輝いているかのように眩しかった。この世にこれ以上美しいものはきっとないだろう。
かわいいソフィア。
ソフィアをつくる全てが愛おしい。
今までもこれからも、ソフィアのことを自分以上に愛する人間はこの世にはいないだろう。
愛しているよ、永遠に……
レイモンドはソフィアに手を差しのべた。
☆ ☆ ☆
結局お腹はへっこまないままだったわね……
控え室の姿見の前で、自分のお腹をポンポンっと叩いた。
絶対にレイモンドのせいだわ。
結婚式にむけてダイエットをしている私に、せっせとお菓子を差し入れしてくるんだから。
レイモンドの持って来るお菓子はどれも美味しすぎるのだ。食べるのを我慢しようと思っても、結局手がとまらなくなって食べすぎてしまう。
「レイと一緒にいたら太っちゃうわよ」
「たとえ太って牛みたいになったとしても、きっとソフィーは世界一かわいいよ」
レイモンドとのティータイムで恨みがましく言った私に、レイモンドは満面の笑みを返してくる。同じだけお菓子を食べてもスタイル最高のレイモンドが憎たらしい。
「笑ってるけど、本当に牛になってもしらないからね」
「そうなったら、それはそれで嬉しいな。牛になったソフィーには誰も言い寄ってこないだろうからね」
私は冗談のつもりで言ったのだが、レイモンドは冗談ではないような真剣な目をしている。
まさか本気でそう思っているの……?
牛になったらさすがのレイモンドにも愛想つかされそうな気がするので、やっぱりお菓子はほどほどにしておくことにした。
鏡にうつる自分を見る。
さすがスーパー補正下着!!
今日のために新調した下着のおかげでキレイなくびれができている。このドレスの下には、お腹の贅肉たっぷりだなんて誰にも分からないだろう。
「お綺麗ですよ」
サラと鏡越しに目があった。
「このドレス、ちょっとかわいらしすぎたかしら?」
私の選んだウェディングドレスは、ふんわりとしたプリンセスラインだ。
スカートにはフリルがたくさんでかなり可愛らしい。腕や鎖骨部分の肌は極力出したくないということで、総レースのロングスリーブになっている。
栗色のゆるいウエーブヘアを後ろで大きな編み込みにし、マーガレットやかすみ草など白い花で飾り付ける。
「まぁ。お花の妖精さんみたいね」
いつも通りメルヘンチックな事を言いながら、母からブーケが渡された。白のダリアにうすいピンクのコスモスで作ったブーケはドレスにピッタリだ。
「ソフィア、おめでとう」
母の言葉に、ソフィアの瞳にうっすらと涙が浮かんだ。
「ありがとう、お母様」
私、絶対に幸せになるからね。
ドアが開かれ、式場内にゆっくりと一歩歩み出した。
レイモンドの姿を確認し、思わず足が止まりそうになってしまった。
なんて素敵なのかしら……
騎士の正装なのだろう、スラっとした濃紺の衣装を身につけたレイモンドはいつも以上に精悍で凛々しかった。
あんなに素敵な人が私の夫になるなんて……
私とレイモンドの婚約が世間に発表になった時には、多くの令嬢がショックで寝込んだらしい。それほどまでに人気のレイモンドが私を選んでくれた事が、とても嬉しかった。
彼女達はレイモンドの相手が私だと分かった時どう思ったかしら?
若い令嬢達は、相手が私ならまだチャンスはあると思ったのではないだろうか?
いつかレイモンドを奪おうと機会をうかがっているかもしれない。
最初にプロポーズされた時は私も思っていた。レイモンドはまだ若いから、いつか私より若い子に気持ちがうつって去って行ってしまうと。
でも……そんなことはさせない。
もうレイモンドのいない人生なんて考えられない。たとえ若くて可愛いお嬢様がやってきても、レイモンドの隣を譲るつもりはない。
大勢の参列者に見守られながらソフィアはレイモンドに向かってゆっくりと歩いていく。レイモンドがソフィアに向かって優しく微笑んだ。
「私、レイモンド ブルースターは、あなたを一生守り、幸せにすることを誓います」
レイモンドが愛おしむような目で私をを見つめている。
「わたくし、ソフィア キャロットリーは、あなたに出会えたことに感謝し、生涯変わることなく愛し続けることを誓います」
レイモンドが私の手袋を外し、左手の薬指に指輪をはめてくれる。
「キレイ……」
宝石でできた小さな花がいくつもついた可愛い指輪だった。緊張で硬くなっていた頬が思わず緩む。
「喜んでくれたみたいで良かった」
顔をあげると嬉しそうに笑っているレイモンドと目が合った。
「ありがとうございます。とっても嬉しいです」
レイモンドが私のベールをあげた。
そっと抱き寄せ、頬に優しくキスをくれる。
「ソフィー、愛してるよ。もう一生離さない」
うん。一生離さないで。
年をとってから、やっぱり若い子が良かったなんて言わせないからね!!
皆に祝福されながら、絶対レイモンドを手放さない、改めてそう心に誓うのだった。
「お招きありがとうございます、アメリア様」
レイモンドを華やかな笑顔で出迎えてくれた可愛らしい女性は、ソフィアの母親だ。
「よく来たね、レイモンド。ソフィアはちょうど出かけた所だよ」
ソフィアの父であるブランドンに促され、彼と向かいの椅子に腰を下ろした。すぐにお茶の支度が整えられる。
「この秘密のティーパーティーも、もう終わりになってしまうのね」
ブランドンの横でお茶を飲みながら、アメリアはクスクスと笑った。
秘密のティーパーティーとは、レイモンドとソフィアの両親によるお茶会のことだ。レイモンドは10年前からソフィアの外出中に、この屋敷にお邪魔してソフィアの両親と一緒に過ごしていたのだ。もちろんソフィアは全く何も知らない。
このお茶会はレイモンドにとって、ソフィアの話を聞ける数少ない機会であり、ソフィアの両親に自分をアピールするチャンスでもあった。
「レイモンドも明日には私達の息子になるのね」
「本当によく頑張ったよ、君は」
ソフィアの両親に、こうして受け入れてもらえた事は本当にありがたい。
「ソフィアの婚約者は、兄ではなく自分の方がふさわしい」
10年前、レイモンドの言葉を大人達は笑い飛ばした。当然と言えば当然だろう。政略結婚が当たり前の家柄において、8歳の子供の恋心などとるに足らないものだ。
ただ一人アメリアだけがレイモンドを笑わなかった。それどころか目を輝かせ、レイモンドに賛成してくれたのだ。いや、賛成というより、興奮していたと言う方が正しいかもしれない。
兄のアルフレッドとソフィアの婚約を望んでいたレイモンドの両親は、もちろん最後まで猛反対で激怒していた。その両親をうまく説得してくれたのもアメリアだった。
後になぜアメリアはあっさりと自分を認めてくれたのか尋ねてみたことがある。
「だって素敵じゃない」
瞳をキラキラさせながらアメリアは言った。
「一目惚れしたお姫様のために相応しい地位を得ようと努力するイケメン平民なんて、物語みたいでロマンチックだわ……」
もちろんソフィアは姫ではないし、レイモンドも平民ではない……
だがアメリアの中ではそういったレイモンド達を主役とする恋物語が出来上がっているようだ。
「乙女チックだな」
ブランドンはそう言って顔を緩ませた。普段は厳しいことで有名なブランドンも、ベタ惚れな妻の前では判断が鈍るのかもしれない。
本当に大丈夫だろうか?
ソフィアの両親の軽さは多少心配だったが、この二人のお陰でレイモンドはソフィアと結婚できるのだから感謝しかない。
とうとう明日は結婚式だ。
やっとここまできた……
明日にはソフィアを自分のものにできる。
ソフィアと婚約さえすれば満足できるかと思っていたが、それではまだ足りなかった。
「ソフィーは私のものだ」
そう宣言できることがこの上なく嬉しい。
式当日はとてもよく晴れて気持ちがいい日だった。見上げた空はとても澄んでいて青い。
空が高いな……
早いものでもう秋なのだ。
ソフィアはもう準備を始めただろうか?
式の準備が忙しいソフィアとは、近頃まともに話す事ができていない。
もうそろそろ我慢の限界だ。ソフィア不足でおかしくなりそうだ。
レイモンドはポケットから小さな箱をとり出した。中には花のモチーフの指輪が入っている。
ソフィアは喜んでくれるだろうか?
ソフィアのために、レイモンド自身が一生懸命デザインしたのだが、あまりにも悩みすぎて出来上がりがギリギリになってしまった。
さぁ、そろそろ時間だ。
明るい祭壇の前でソフィアを待つ。
レイモンドの前には自分の両親、兄のアルフレッド、ソフィアの両親に侍女のサラ、そしてソフィアの親友のイザベラ王女などたくさんの参列者がいる。
皆に祝福されソフィアと結婚できる……あぁ、なんて幸せなのだろうか。
扉が開きソフィアが姿を現した。
ウェディングドレスを纏うソフィアはまるで光輝いているかのように眩しかった。この世にこれ以上美しいものはきっとないだろう。
かわいいソフィア。
ソフィアをつくる全てが愛おしい。
今までもこれからも、ソフィアのことを自分以上に愛する人間はこの世にはいないだろう。
愛しているよ、永遠に……
レイモンドはソフィアに手を差しのべた。
☆ ☆ ☆
結局お腹はへっこまないままだったわね……
控え室の姿見の前で、自分のお腹をポンポンっと叩いた。
絶対にレイモンドのせいだわ。
結婚式にむけてダイエットをしている私に、せっせとお菓子を差し入れしてくるんだから。
レイモンドの持って来るお菓子はどれも美味しすぎるのだ。食べるのを我慢しようと思っても、結局手がとまらなくなって食べすぎてしまう。
「レイと一緒にいたら太っちゃうわよ」
「たとえ太って牛みたいになったとしても、きっとソフィーは世界一かわいいよ」
レイモンドとのティータイムで恨みがましく言った私に、レイモンドは満面の笑みを返してくる。同じだけお菓子を食べてもスタイル最高のレイモンドが憎たらしい。
「笑ってるけど、本当に牛になってもしらないからね」
「そうなったら、それはそれで嬉しいな。牛になったソフィーには誰も言い寄ってこないだろうからね」
私は冗談のつもりで言ったのだが、レイモンドは冗談ではないような真剣な目をしている。
まさか本気でそう思っているの……?
牛になったらさすがのレイモンドにも愛想つかされそうな気がするので、やっぱりお菓子はほどほどにしておくことにした。
鏡にうつる自分を見る。
さすがスーパー補正下着!!
今日のために新調した下着のおかげでキレイなくびれができている。このドレスの下には、お腹の贅肉たっぷりだなんて誰にも分からないだろう。
「お綺麗ですよ」
サラと鏡越しに目があった。
「このドレス、ちょっとかわいらしすぎたかしら?」
私の選んだウェディングドレスは、ふんわりとしたプリンセスラインだ。
スカートにはフリルがたくさんでかなり可愛らしい。腕や鎖骨部分の肌は極力出したくないということで、総レースのロングスリーブになっている。
栗色のゆるいウエーブヘアを後ろで大きな編み込みにし、マーガレットやかすみ草など白い花で飾り付ける。
「まぁ。お花の妖精さんみたいね」
いつも通りメルヘンチックな事を言いながら、母からブーケが渡された。白のダリアにうすいピンクのコスモスで作ったブーケはドレスにピッタリだ。
「ソフィア、おめでとう」
母の言葉に、ソフィアの瞳にうっすらと涙が浮かんだ。
「ありがとう、お母様」
私、絶対に幸せになるからね。
ドアが開かれ、式場内にゆっくりと一歩歩み出した。
レイモンドの姿を確認し、思わず足が止まりそうになってしまった。
なんて素敵なのかしら……
騎士の正装なのだろう、スラっとした濃紺の衣装を身につけたレイモンドはいつも以上に精悍で凛々しかった。
あんなに素敵な人が私の夫になるなんて……
私とレイモンドの婚約が世間に発表になった時には、多くの令嬢がショックで寝込んだらしい。それほどまでに人気のレイモンドが私を選んでくれた事が、とても嬉しかった。
彼女達はレイモンドの相手が私だと分かった時どう思ったかしら?
若い令嬢達は、相手が私ならまだチャンスはあると思ったのではないだろうか?
いつかレイモンドを奪おうと機会をうかがっているかもしれない。
最初にプロポーズされた時は私も思っていた。レイモンドはまだ若いから、いつか私より若い子に気持ちがうつって去って行ってしまうと。
でも……そんなことはさせない。
もうレイモンドのいない人生なんて考えられない。たとえ若くて可愛いお嬢様がやってきても、レイモンドの隣を譲るつもりはない。
大勢の参列者に見守られながらソフィアはレイモンドに向かってゆっくりと歩いていく。レイモンドがソフィアに向かって優しく微笑んだ。
「私、レイモンド ブルースターは、あなたを一生守り、幸せにすることを誓います」
レイモンドが愛おしむような目で私をを見つめている。
「わたくし、ソフィア キャロットリーは、あなたに出会えたことに感謝し、生涯変わることなく愛し続けることを誓います」
レイモンドが私の手袋を外し、左手の薬指に指輪をはめてくれる。
「キレイ……」
宝石でできた小さな花がいくつもついた可愛い指輪だった。緊張で硬くなっていた頬が思わず緩む。
「喜んでくれたみたいで良かった」
顔をあげると嬉しそうに笑っているレイモンドと目が合った。
「ありがとうございます。とっても嬉しいです」
レイモンドが私のベールをあげた。
そっと抱き寄せ、頬に優しくキスをくれる。
「ソフィー、愛してるよ。もう一生離さない」
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