デルモニア紀行

富浦伝十郎

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帝都デリドール

暗黒街のゴブリン

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 西の大門へと続く大通りの半ばで北側に曲がり、城壁の下まで走った。
この辺りから帝城外宮の境壁までがデリドールの ”暗黒街” だ。
その最奥部。

 ”ガルドス一家” のアジト、というより要塞と言った方が近いような建物がある。
ガルドスは帝都周辺の盗賊・山賊の元締めだ。
通行人への強請・たかりから民家・商家への押入強盗、果ては壁外での山賊行為までを幅広く仕切っている。( ”山賊” と言ってもアジトは市内にあるのだ )
先般の”誘拐屋”一味の様に ”上” の方と特殊な繋がりがある訳ではない。
物凄い使い手が揃っている という訳でもないが何しろ人数が多い。
”数"で勝負する。


 表立って ”お上” に噛み付いて行くことはないので軍に討伐されることは無い。
”悪い系” の纏め役的存在、として御目溢しされている、というのが実情だろう。
これを 殲滅掃除する。


 個別に見れば一味の全員が "賞金首" であると言っても過言でないくらいだ。
”依頼” を受けての仕事となれば高額な報奨金と賞金を受け取れる。
まあ "悪事" ではない。 ( もう金は腐る程あるけどな! )

 俺は二つ程手前の角からアジト前の様子を伺った。
( 初日の "締め" とすることができるか?)


  アジトは石造りの2階建て。 入口の前には ”若い者” が三人。
建物前の通り、というか小さな広場で屯してぺちゃくちゃと喋っている。
”誘拐屋” 達のアジトのような ”罠構造” となった必殺の迎撃態勢とは言えない。
雰囲気もダレている。  ピリピリした緊張感が皆無だ 。
先般の ”火魔法使い” とは雲泥の差だ。
( 三人くらいで油断してるんじゃねーよ! )


 剣士としてこの ミッションを受けたのは Lv40迄もう少し、という時だった。
フルプレートで固めて突入し、切って切って切りまくる、てお仕事。
難度から言えば "誘拐屋" 一味( Lv50でもキツかった )の時よりも低い。
 ・・・・・
今夜だって ”こっち” を先にしても良かったのだ。
位置的に教会(鐘楼)から遠いので後回しにしたに過ぎない。



「!」
ここまで考えて俺は はっと我に返った。
( 油断してるのはどっちだよ ! )
舐めて掛かってたのは俺の方じゃないか。
・・そういう時はどうなったか思い出せ 。


 俺は深呼吸をして気合を入れなおした。 集中力をMAXまで高める。


 ・ ・ ・ 見せてやろう。Lv19ゴブリンの全力を。





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