デルモニア紀行

富浦伝十郎

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帝都デリドール

依頼するゴブリン

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「…御立派な騎士様と聞いておりましたが、皇女殿下でいらしたとは!」
ホールの床に平伏して呻く会頭。
帝都屈指の商会の会頭だけあってマルグリッドと面識があるのか。
白銀の鎧と腰に吊るペネトレーターは一度目にすれば忘れないからな 。

「ジェームズとやら、苦しゅうないぞ」
俺はマルグリッドの口調を真似て声を掛ける。
「面を上げよ」
額を床に付けていた会頭が顔を上げた。
その表情は 『やっぱり皇女様じゃないの!』 と言っている 。
マルグリッドは女として大柄という訳ではないからな。 
背丈は今の俺とさして変わらない。 ”変装スキル” の効果もあるかもしれん。

「其方は何か勘違いをしておるようだ」
俺は自分を指して言う。
「我は神命を受けたる騎士。 名を”アキラ” という。 ・・そう心得よ」
俺はマルグリッドになり切って続ける。
『仮面を付けてるんだから察しろよ』  というニュアンスを漂わせた。

「は、はは~っ」
会頭が再び平伏する。
大商会を率いるデキる男だ。 バカではない。
「よいか、要らぬ推測は為にならぬぞ。 吹聴すれば身を亡ぼすと知れ」
それでも念は押しておく。

「はい、このジェームズ しかと弁えましてございます。  ”アキラ” 様!」
平伏したまま答える会頭。

「・・・ならば良い。 ついては其方に頼みがある」
俺は "本題" を切り出した。




「? わ 我が娘を救って頂いた ”アキラ” 様の御依頼とあればなんなりと!」
会頭は恭順の意志を明らかにする。
「・・何でしたらギルドに提示しました報酬も今ここで!」
俺は右掌を翳して会頭の言を抑えた。
「我に報酬など不要だ。 
「こ、これは御無礼をっっ!」
額を床に擦り付ける会頭。

「我は神命を受けて動いておる故な」
そう言いながら俺は隣に立つノーラを示す。
「ここな娘はノーラと云う。其方の娘を救った後に別所にて救い出した」
紹介されたノーラは会頭に丁寧なお辞儀をした。
「リンデロンの商家の娘だという。 両親は賊に奪われたとか」
「それはまた哀れなことで・・」
会頭が少女を見上げて呟く。

「であろう? この娘を其方に頼みたいのだ」
俺はノーラの顔を見る。
「これからずっと我が付いていてやることは出来ぬのでな」
( ゴブリンでなければその選択肢もあったかも知れない )
「其方の処で面倒をみてやってくれぬか?」


「畏まりまして御座います!」
会頭が即答する。
「 アキラ殿の御依頼、このジェームズ必ずや果たして見せましょうぞ」
( おう 頼もしいな! )
それを聞いたノーラが一歩前に出た。
「ノーラと申します。 此度は御迷惑をお掛けしてしまい申し訳ありません」
会頭に向かって頭を下げる。
「何でもしますのでどうぞ宜しくお願い申し上げます!」
「先程からの短い間柄だがこのように健気な娘だ。宜しく頼む」
「お任せあれ!」
力強く答える会頭。

「それは有難い。 このアキラ恩に着るぞ」
俺は腰を落として労いの言葉を掛ける。
「も、勿体なきお言葉!」
会頭がまた額を床に押し付ける。 
「娘を救って頂いた上にそのような! ジェームズ一生の誉れに御座います!」
ジェームズいい奴だな。贔屓にしてやろう。




「・・という訳だ。 ノーラ。 此処で励むのだぞ」
俺は少女の肩に手を置いて諭す。
( 年齢は俺とそう違わない筈だが )
「はい。アキラ様。 御恩に報えるよう頑張ります!」
少女の言葉に頷いて俺は踵を返す。

「我はもう往かねばならん。 では両名とも達者でな !」
平伏したままのジェームズと拝礼したままのノーラを残して屋敷を出た。
夜の帝都を風のように走る。



 ・・・”人助け” ってバトルより気持ちイイかもな! 








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