59 / 153
帝都デリドール
暴露するゴブリン
しおりを挟む「お前達に ”親” はいない」
俺は食堂にいる男達を見回して言う。
「今此処にいない奴等も同じだろう」
居室の方を指差す。
「親の名前や顔を覚えてる奴はいない筈だ」
「・・・・」
誰も言い返して来ない。
「親に捨てられたんじゃない。 親なんて最初からいないんだよ ! 」
「???」
皆がきょとんとした顔をして俺を見る。
「ガルドス。 お前はいつから此処にいる?」
俺はガルドスに問い掛ける。
日に焼けた肌。黒い髪と口髭が特徴の精悍な風貌。 歳は四十前後か。
「? …いつから っていうて」
言い淀むガルドス。
「先月からか? 去年からか? 10年前か?」
問い詰める俺。
「このアジトはお前が建てたのか? それとも奪い取ったのか?」
「・・・知らんわ!」
ガルドスが吐き捨てるように言った。
「そんなん覚えとらん。 ワシは最初から此処におったんじゃ!」
下を向いて首を振るガルドス。
(そうだろうな)
「キケ。 お前はいつ此処に来た? 来る前は何をしていた?」
俺は端っこの手下に問い掛けてみた。
「ガルドスに誘われたのか? それとも自分で来たのか?」
キケはぽかんとした表情だ。 目が泳いでいる。
「? 覚えてませんわ」
( ・・もう十分か )
「・・・もういい。 良く分かった」
俺は徐に収納からポーションを一つ取り出した。
「これを飲んどけや」
両手を壊したガルドスに投げてやる。 手根部の骨折くらいなら治るだろう。
( 「いいのか?」という表情を浮かべながらも躊躇なく服用するのは流石だ)
FQでは切り傷や骨折などの外傷(肉体損傷)は一定の時間が経過すれば修復する。
( ノーラのような”イベント性”を帯びた物以外は所謂 ”病気” も存在しない )
しかし ガルドスには怪我の痛みと無縁のスッキリした頭で聞いて欲しかった。
「肝心な事を教えてやるからよく聴け」
俺は疼痛から解放されたガルドスの後ろに立ちその両肩に手を置いて言った。
「お前らが生まれたのは今夜なんだよ ! 」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる