デルモニア紀行

富浦伝十郎

文字の大きさ
上 下
150 / 153
赤土帯

テイマーの記憶

しおりを挟む


「 ワムタン 」 〔 アイ! 〕
「 ワムロー 」 〔 アイ! 〕
「 ワムスケ 」 〔 アイ! 〕
「 タピタン 」 〔 アイ! 〕
「 タピロー 」 〔 アイ! 〕
「 タピスケ 」 〔 アイ! 〕

 呼ばれたワーム達が元気に返事をする。 
俺は従魔となった6匹のワーム其々に名前を付けた。
適当に付けた訳ではない。 二班・三班構成を組み易く工夫してあるのだ。
こいつらは頭数でいうと分隊以下だが、戦力的には大隊レベルだからな。
( 言っておくが人間達を相手に戦わせるつもりはない ) 

「よ~し、じゃあ皆、 "ホーム" ! 」
俺が指示すると 〔〔〔〔〔〔 アイ! 〕〕〕〕〕〕 ワーム達は一瞬で消えた。
収納に戻ったのだ。
ランドワームは普段は地中に潜んでいる。 地表を徘徊している訳ではない。
彼等にとって俺の収納内は存外居心地が良いのかもしれない。



「・・・それにしても、だ」
一作業終えた俺は溜息とともに呟く。
「どうなってるんだ一体。 ランドワームが従魔になるとか」
俺には "テイム" のスキルは無かった筈なのに。

 ファイナルクエスト(FQ) にはテイマーというジョブがある。 
獣やモンスターを自由に使役できるというものだが人数は極端に少ない。
はっきり言えば不人気職種だ。
武器や魔法で戦う剣士や魔導士と比べて地味だから、というのが第一の理由だ。
パーティの一員として戦闘に参加しても美味しい所は彼等に取られてしまう。
敵を倒してしまうとテイムできないからレベルアップが比較的難しい。
ソロに適したジョブだと俺は思うのだが、実際にテイマーは一匹狼が多い。
俺が会ったテイマーは皆、底知れない感じを漂わせていた。
剣士でタンクだった俺からすれば『不気味な奴等』という感じだ。
そんなテイマーの一人が俺にボソリと呟いた言葉を思い出す。

「モンスターを殺して楽しいか?  飼えばカワイイ奴等だぞ」

 そうだ、思い出した。ゴブリンばかりを使役するという変わった奴だった。
今なら分かる。彼奴の強さが。 俺の様なゴブリンを百匹以上従えていたんだ。
時を越えて寒気が俺を襲って来る。 ( いつだって上には上がいるんだな )




 ヨーコのライブラリを参照しつつ検討した結果、今回の事由が概ね分かった。
テイマーのジョブスキルはテイムではないんだそうだ。
テイムは通常の戦闘スキルの一つなんだって。 だから俺にも出来るらしい。
獣やモンスターはHPが2割を切ると一定の割合で "降参モード" に遷移する。
"大人しく" なるのだ。  (  "捕獲" クエストでお馴染みだ )
残HPが少ない程、此方よりレベルが低い程、確率は高くなる。
この状態から更に低い確率で "恭順モード" に移行することがあるという。
『家来にしてください』 てやつだ。
この状態のモンスターを配下認定すれば従魔になるのだそうな。
従魔を持つとテイムのスキルが付く。
 "降参モード"のモンスターを従魔にできるようになるのだ。
( 俺の場合は是に近い )

 テイマーのジョブスキルはそれよりずっと強力だ。
自分よりレベルの低いモンスターを直接(強制的に)従魔にすることができる。
相手のレベル値と同じMPが必要だというが(俺に言わせれば)些細なコストだ。
スキルの名は "徴用" 。

 空恐ろしい。 ゴブリンの身からすればゾッとするようなスキルじゃないか。






しおりを挟む

処理中です...