デルモニア紀行

富浦伝十郎

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赤土帯

ウインドブレード 2

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 ヨーコがストーンショット零式を更に調整して創り出した岩塊は灰白色。
デフォの岩塊の1/10 以下の密度だからか質感は軽石とチョークの中間くらい。
( 軽くなる程色調が明るくなるのかも ) 
建材としては削り易くて断熱性に優れる、という感じだ。
俺とヨーコはその灰白色の岩塊に向かってウインドブレードを撃ちまくった。


「う~む」
俺は岩塊に空いた直径1mの穴を眺めて腕を組む。
「こんなもんか?」
岩塊には径1mの穴が開いている。 その穴の深さはやはり1m強。
それ程掘れていない。
密度が低いとは言え岩は岩。 空気の刃ではプリンを掬うようにはいかない。
俺とヨーコは夫々100回のWBを撃ったので既にスペルはマスターしている。
この作業 が捗るようにWBを調整アジャストしてみよう。

 完熟カンストしたことで初期より威力が上がったWBの射程は30m強。
この岩塊の切削作業にはそんな射程は不要だ。 数十センチあればいい。
30㎝の切痕も大き過ぎる。半分で良い。 
威力( 射程×ストローク) を下げてインターバルリキャストタイムを短縮しよう。

「連射×10 ウインドブレード! 」
シュガガガガガガガガガガッッ!

 今までとは比較にならない速度で岩塊が削られていく。 削岩機よりも速い。
最初に開けた穴から入って俺が右側、ヨーコが左側へと内腔を削り拡げていく。
その傍にはワムタンが控えている。
「ワムタン、頼む!」
俺とヨーコが切削作業を止めて岩塊の外に出る。
〔 マカセテ! 〕
ワムタンが息を吸う。そして円形の口を窄ませて岩塊の中に息を吹き込んだ。
俺達の膝まで積もっていた石灰紛のような塵芥が綺麗に吹き飛ばされる。
「ワムタンナイス!」
空かさず岩塊に飛び込む俺とヨーコ。 切削作業を再開する。 
これを何度も繰り返し岩塊の内腔は拡がっていった。

「そろそろか?」
内部を削られた4mの岩塊は径1mの入口を持つ半球ドームの様相を呈して来た。
「ヨーコ、いいか?」
一応ヨーコには許可を求める。
「宜しいのでは?」
何だかそっけない返事だな。( まだ根に持ってるのか? )
全くAIてのは良く分からん。 
「じゃあ代るぞ。 アキラフォーム!」
俺はヨーコに憑依して人間形態となり装備を解除した。

〔 マスター マタネルノ? 〕
ワムタンが訊いて来た。
〔 ミンナヨブ! 〕
「うん。 そうしよう」
今は怖いオネーサンもいないからな。
俺は他の5匹のワームを呼び出した。

「それじゃまた宜しく頼むな」
〔〔〔〔〔〔 アイ! 〕〕〕〕〕〕 
ワーム達の返事を聞いて石のカマクラに入る。

「よし、やろうか」
俺はWBを更に細密な条件に設定して "内装" の仕上げに取り掛かった。









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