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一章
踊るなら
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しかし、アルベルトを誘うのは至難の技でした。
なぜなら、彼の周りには常に誰かしらがいて、次々にダンスを誘ったり、話しかけていたからです。
女の子たちはもちろん、今夜だけ呼ばれた来賓客まで、アルベルトに群がっていました。
「まるで光と虫だな」
マリーの横にいた、背の高い少年が半笑いでつぶやきます。珍しい白銀の髪にも驚きましたが、少年もアルベルトに劣らない、綺麗な顔をしていました。
「虫?」
マリーが聞き返すと、少年は独り言を聞かれたことが罰が悪そうに目をそらします。
「羽虫って光に集まるだろ。そっくりじゃないか」
マリーは「羽虫ね」とアルベルトのいる辺りを見つめます。
「やっぱり皆、明るいところが好きなのね」
「君も行きたいんだろ?」
白銀の少年は見透かしたように笑います。
「僕でよければ、踊ろうか?」
「え?」
思わぬ申し出に、マリーは少年を仰ぎ見ます。
「彼には及ばないけど、僕だって、ピアノの腕は領主様に褒められたんですよ」
「…私、音楽会はほとんどいなかったから」
「音楽会だけじゃない。ほとんど、まともに出席してないでしょう。マリー・ブライス」
「なぜ名前を?」
「知ってるさ。僕もブライスだから」
「まぁ」
少年は、冷笑しました。
「本当に、なにも知らないんだな。君は」
クロード・ブライスは、マリーの従兄弟でした。
とは言っても、クロードの家は田舎で農家も続けているそうで、家に牛小屋や馬小屋があるそうです。
「牛?馬?あなたは馬には乗れるの?」
「もちろん」
くるくると踊りながら、クロードは器用にマリーを誘導します。
「あなた、ダンスも上手なのね」
「練習したんだよ。こんな場所は初めてだから、恥をかかないように」
「恥なんて。ダンスの先生より踊りやすいわ」
お世辞ではなく、マリーは本当にそう思っていました。
クロードは身長差を感じさせないほどタイミングよくあわせてくれるので、マリーは蹴躓くことなく踊ることが出来ました。
けれど、クロードは僕なんて全然ダメだよ、肩をすくめます。
「何人かにダンスを誘ってみたんだけど、先約があるからって断られた」
「先約?」
「彼だよ」
クロードの視線の先には、楽しそうに踊るアルベルトがいました。
「彼、そんなに有名だったのね。知らなかったわ」
「フォルツァだよ」
クロードは、憎々しげに呟きます。
「我らがブライス家の敵さ」
なぜなら、彼の周りには常に誰かしらがいて、次々にダンスを誘ったり、話しかけていたからです。
女の子たちはもちろん、今夜だけ呼ばれた来賓客まで、アルベルトに群がっていました。
「まるで光と虫だな」
マリーの横にいた、背の高い少年が半笑いでつぶやきます。珍しい白銀の髪にも驚きましたが、少年もアルベルトに劣らない、綺麗な顔をしていました。
「虫?」
マリーが聞き返すと、少年は独り言を聞かれたことが罰が悪そうに目をそらします。
「羽虫って光に集まるだろ。そっくりじゃないか」
マリーは「羽虫ね」とアルベルトのいる辺りを見つめます。
「やっぱり皆、明るいところが好きなのね」
「君も行きたいんだろ?」
白銀の少年は見透かしたように笑います。
「僕でよければ、踊ろうか?」
「え?」
思わぬ申し出に、マリーは少年を仰ぎ見ます。
「彼には及ばないけど、僕だって、ピアノの腕は領主様に褒められたんですよ」
「…私、音楽会はほとんどいなかったから」
「音楽会だけじゃない。ほとんど、まともに出席してないでしょう。マリー・ブライス」
「なぜ名前を?」
「知ってるさ。僕もブライスだから」
「まぁ」
少年は、冷笑しました。
「本当に、なにも知らないんだな。君は」
クロード・ブライスは、マリーの従兄弟でした。
とは言っても、クロードの家は田舎で農家も続けているそうで、家に牛小屋や馬小屋があるそうです。
「牛?馬?あなたは馬には乗れるの?」
「もちろん」
くるくると踊りながら、クロードは器用にマリーを誘導します。
「あなた、ダンスも上手なのね」
「練習したんだよ。こんな場所は初めてだから、恥をかかないように」
「恥なんて。ダンスの先生より踊りやすいわ」
お世辞ではなく、マリーは本当にそう思っていました。
クロードは身長差を感じさせないほどタイミングよくあわせてくれるので、マリーは蹴躓くことなく踊ることが出来ました。
けれど、クロードは僕なんて全然ダメだよ、肩をすくめます。
「何人かにダンスを誘ってみたんだけど、先約があるからって断られた」
「先約?」
「彼だよ」
クロードの視線の先には、楽しそうに踊るアルベルトがいました。
「彼、そんなに有名だったのね。知らなかったわ」
「フォルツァだよ」
クロードは、憎々しげに呟きます。
「我らがブライス家の敵さ」
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