【R18】竜の器【完結済】

かすがみずほ@3/25理想の結婚単行本

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和平会議

淫らな誘惑

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 場にいた誰よりも納得できていなかったイドリスは、即座にラファトに詰め寄った。
「お前、色々とっ、何ということを……!! カミールのこと、俺は聞いていなかったではないか!?」
「王妃の書簡をあらためていて手に入れた、単なる『副産物』だからな。――だが、楽しめる余興だっただろう? 王妃のあの慌てぶりは」
 余りにも嗜虐的なその物言いに、イドリスは息を呑んだ。
「こ、これでは約束が……!」
 ラファトは平然とした顔をしている。
「お前との結婚のことは、黙っていると約束した覚えはない」
「そっちの話も腹立たしいが、和平の条件の方だ……っ」
「そちらについては、私は何一つお前との約束は違えていないぞ。莫大な賠償金は課していないし、王都を焼いてもいない。アルスバーンの国体も一応、消し飛んだ訳ではない。実質、二人のみの処分で和平が手に入るのだ。寛容すぎると言っても差し支えない条件だと思うが?」
「しかし、一国の王妃を幽閉と言うのは……下手をするとゼシルと戦争になるのでは――」
「安心しろ。あの王妃の兄とて、妹一人の為に勝てぬ戦を仕掛けてくるほど馬鹿ではない。……しかしイドリス、何故そんな浮かぬ顔をする。あの女はお前にとっては、長年煮え湯を飲ませてくれた憎い仇だろう。少しは喜んだらどうだ」
「……俺は女子供に復讐して喜ぶような心は持ち合わせていない……!」
「ふっ。我が妻はお優しいのだな。……そもそもお前の価値を分かっていないこの国の者どもに、何の情けをかける必要があるものやら……」
 鼻で笑って、ラファトはイドリスの背中を長椅子の上で抱き寄せた。
「お前の偽物の弟とやらは、追放先で消えて貰うとしよう。あの髪色でも担ぎ出す者がいないとも限らんからな。禍根は残さぬ方が良い……」
 口付けをこめかみに受けながら、イドリスは焦った。
「やめろ、カミールは何も知らん子供だ! 無実の人間を殺すな……!」
 その庇うような言葉に、ラファトの顔がむっとしたようになる。
「お前のその論理は私には理解できん。王子として生まれて何も知らんなどと言うことがあるか? ――まあ、妻のお前がどうしてもと言うなら考え直してやっても良いが……一つ条件がある」
「一体何だ……!」
 怒りもあらわにイドリスが尋ねると、ラファトはここに来て初めて『夫』の顔になり、無邪気な笑顔で要求してきた。
「お前がここで私のものを口でするというなら、あの少年の命は助けてやっても良い」
 身体中の産毛がざわっと逆立ち、イドリスの心はマグマが噴火したような激しい憤りに包まれた。
 やはりこの男は人でなしだ。
 なぜこの時機にしかもこの場所で、そんな発想になるのか全く理解できない。
「こっ、こんな場所でそんな娼婦のような真似を……っ、俺にさせるつもりかっ!」
「出来ないと言うのならこの話は終わりだな」
 長椅子を立ち上がろうとしたラファトのジャケットの裾を、イドリスは無言で強く掴んだ。
「……。どうした?」
 繊細な睫毛に縁取られた瞳が楽しそうに細まる。
 イドリスは首の後ろまで真っ赤にしながら、消え入るような声で呟いた。
「して……やる……」
 即座に座り直したラファトの藍緑色の虹彩が、興奮で異様に煌めく。
「では、お前が自分で準備するがいい」
 イドリスは長椅子の上で体を斜めにラファトの方に向け、震える手を伸ばした。
 縦に続いているキュロットの股間のホックを外し、下着を押し下げると、そこに収められた美しい形をした雄があらわになる。
「あ……」
 雄の臭気と香の混じった匂いが鼻の中に入り、頭がクラクラした。
 ――萎えていてもなお大きなこれが、充血すると更に雄々しい形になる。
 それが何度も自分の中に出入りしたことを思い出し、きゅうんと腹の奥が疼いた。
 頭の中に囁くような声が聞こえる。
 欲しい、欲しい、……これが早く欲しい……。
 ――こんな腹立たしい状況なのに、なぜ!
 ギュッと目を閉じてその声を振り切り、そのまま太い雄を手のひらで握り込むと、イドリスはラファトの股間に顔を落とした。
 先端にチュ……と口付けると、ラファトの指が頭を撫で、赤くなって汗ばむうなじに降りてくる。
 ゾクゾクとそれに反応しながら、イドリスは唇を開き、滑らかな感触の先端に飴玉のように舌を這わせた。
 ラファトに度重なる口付けで性感を開発されきった唇の中は、もはやどこを擦られても快感を得やすくなっている。
 ぞわりとしたその感覚を我慢しながら、舌を伸ばし、ゆっくりと口の中に陰茎を迎え入れた。
 怖いほどに嫌悪感はない。
 それどころか、陰圧をかけて唇をピタリと雄に吸い付けて擦る程、舌が、粘膜が、ゾワゾワとして気持ちいい……。
 口の中の雄が徐々に熱く高まり、自らイドリスの喉を圧迫する程の硬さになってくると、そこから生じる淫猥な性感にむしろ襲われ、イドリスは甘い呻きを漏らし始めた。
「うっ、ンン……っ」
 ――愛撫しているのは自分のはずなのに、感じやすい唇や口蓋に滑らかな亀頭が擦れるたびに、口付けをされている時のような甘い快感が溢れてくる。
 こんな娼婦のような下卑た行為をさせられているのに、それにすら淫らに反応してしまう自分の身体には絶望しかない。
「……ふ……イドリス、お前が他の男を庇うようなことを言うからだぞ……」
 上顎に雄をぐっと擦り付けられながら喉を塞がれて、意識が朦朧とするのに何故か堪らなく下腹が疼く。
「あぐぅ……っ」
 危うく喉だけで果てかけた瞬間、唇の中のものがズルリと引き抜かれた。
「はぁっ、はっ……」
「上手だ、イドリス。これでいいぞ……あとはお前の可愛い唇にかけておしまいにしよう」
 ラファトが自らの手で雄を擦り始める。
 ――だが、竜の器に理性を奪われていたイドリスに、彼の言葉は聞こえていなかった。
「――手、邪魔だ……」
 ラファトの腕を掴んで自慰を阻止すると、イドリスは舌を伸ばして雄を喉奥まで呑みこんだ。
 じゅっと音を立てて茎にしゃぶりつき、果てはそこから甘露でも出ているかのように亀頭を下品な音を立てて吸引し始める。
「こらイドリス、そこまでしなくて良い……!」
 動揺したラファトがイドリスの頭を抱いて引き離し、口淫をやめさせた。
 だが紫の瞳はもはや焦点が合っていない。
「イドリス……っ」
 イドリスは制止されても我慢できずに、ラファトの腕を振り切ると、長椅子の上でブーツを脱ぎ、更にズボンを下ろし始めた。
「おい、お前こんな所で――」
 自分から仕掛けておいて驚いているラファトの前で、あらわになった筋肉質な脚がすっくと立ち上がる。
 イドリスは振り返って長椅子の背に手をかけると、片膝を座面に乗せて体重を傾け、ラファトの前で豊かな尻を後ろに突き出して見せた。
 その下半身を包むのは露出度の高い下着一枚のみだ。
「……下着は穿いたままの方が、お前は燃えるのだろう……?」
 甘く淫らな声音と共に、イドリスの手が腰裏に回る。
 その中指と薬指の指先が、尻の狭間に入り込んでいる細い下着の紐に引っ掛かり、ス……とそれをずらした。
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