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【続編・神々の祭日】囚われの貴公子
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宝石の飾りと共に編まれた髪の先が腰まで伸び、あたたかな色を失って神々しい銀髪に変わった。
側頭部からは巻き角が伸び、袖の膨らんだ白く美しいコットと煌びやかな飾り布はそのままに、尾が針を剥き出しにして服を突き破って伸びる。
その先端がレオンの元に届き、ナイフを持つゲーロの手首に巻き付いて締め上げた。
「ヒイいッ……! 化物……!!」
背後の傭兵頭が、怯えたような悲鳴を上げてナイフをガランと床に落とす。
ギレスはあんぐりと口を開けたまま椅子の上で固まっていた。
(カイン……!? 正体を見せてしまっていいのか!?)
訝しく見守っていると、彼は尾をゲーロから離し、ゆっくりとギレスの方に近づき始めた。
「……召喚の必要はねえよ。俺自身が神だからな」
痩せた貴族は腰を抜かして椅子から転げ落ち、逆にレオンと傭兵頭のいる方へと四つん這いで逃げてくる。
「な、な、な……!」
彼は言葉にならない叫びをあげながら後ろを振り返り、指差しながら呻いた。
「お、オスカー……!? そ、その姿は……っ、お、……おっお前が神だったのか……!?」
「いかにもその通りだ。王を殺したのもこの俺だ――本当の名を知りたいか?」
カインがゆっくりとした仕草でこちらを振り向く。
冷たく見える程に青白い肌と、隙なく整った美しい容貌。服がいつもの黒衣では無いせいか、その姿は神と呼ぶのに一層相応しいように見える。
心を強く揺さぶられるのを感じ、レオンは胸の奥から込み上げるものを感じながら心で呼び掛けた。
(カイン……っ)
一瞬、彼の紅玉のような瞳が少しだけ剣呑さを薄める。
だがその表情には酷薄な笑みが浮かび、感情までは読めなかった。
レオンの前で地肌の透けたオカッパ頭がガクガクと頷き、声を上げる。
「神よ、お名を……!」
「アビゴールだ。覚えておけ……覚えておけるものならな」
含みのある言い方にハッとした。
(カイン……お前は、ギレスをどうするつもりで……)
問いたいが、彼らの前で訊くことは勿論不可能だ。
「アビゴール……味方に付ければ戦で負けることはないという、騎士の神では無いか……! その銀の髪、ヤギの巻角、そして白く美しい尾……! 伝承の通り、何という美しさだ……!」
落ちくぼんだ目を見開いて激しく感動している貧相な貴族を前に、カインは面倒そうに眉を顰めた。
やがてギレスがその気配を察したのか、口早に願いを唱え始める。
「わっ、私のこの身を不死にしてくれ……っ! 神よ、どうかこの私に、神の助力をっ!!」
懇願された神はこの上なく冷たい瞳で彼を見下ろしながらニヤリと笑った。
「いいだろう……お前に不死を賜る。神の助力を得た人間の身がどうなるのか、その身をもって知るがいい」
レオンの胸に密かな疑問が浮かぶ。
――今のカインにはそんな力はないはずだ。
だとすると彼は――。
固唾を呑んで見守る中、白い尾が天井近くまで振り上げられる。その先端に突出した細く長い針が、狙いを定めるようにギレスの方を向いた。
「な、何を……!?」
「少し痛えかもしれねえが一瞬で済む。我慢して動くなよ……!」
カインの尾が目にも止まらない速さで振り下ろされ、その針がブスリとギレスの首の動脈に深く刺さった。
「あえあぁっ……!? あふうぅ……」
間抜けな叫び声が上がり、ドクッドクッと何かが流れ込む音が地下室に響く。
その音が長く強く続くことに、レオンは震撼した。
(あれは……昔、俺がよくやられていたやつじゃないか……?)
セックスする時にレオンの抵抗があまりに激しいと、カインは針で自分の体液を血管に流し込むことがあった。
少しなら痛みや不安を感じなくなって快楽が増すが、多ければ体の自由が効かなくなり、意識が朦朧として記憶もあやふやになった事を思い出す。
王都への旅の最後で量をしくじられて大変な事になった事を思い出し、レオンは青ざめた。
「カイン、死んでしまうぞ……!?」
ギレスを殺してしまうのは流石にまずいのではと、思わず声を上げる。
目の前では憐れな男が白眼を剥き、穴という穴からダラダラと液体を垂れ流し始めていた。
「あっ……あひいいぃ……体が、体があああ、熱いいいいい」
目玉が裏返ったままギレスがもがき、ゲーロに向かって助けを求めて腕を伸ばす。
その悪夢のような光景に赤毛の大男は半狂乱の悲鳴を上げ、入ってきた鉄の扉に飛びついた。
「たっ、助けてくれえぇ!!」
破らんばかりの勢いで戸を開け放ち、ゲーロが泣きながら逃げ出してゆく。
ギレスの首からはやっとカインの尾が抜き出され、開いた穴からダラリと血が垂れた。
その体が何かに操られているような動きでフラフラとゲーロを追う。
「あ~~……神の国があ~~……神が見えるぅ~~……ヘヒハハハハ……」
鉄扉の外に出て二、三歩歩いた後、彼はバッタリと床に倒れて細かく痙攣を始めた。
どうやら意識を失ってしまったらしい。
その尋常ではない様に恐ろしくなりながらレオンはカインの方を向いた。
「お前、あの男に何を……」
眩しいような美貌がふっとほの暗い微笑を浮かべ、長い睫毛を伏せる。
「俺の……『神の血』を致死量ギリギリに入れた。あいつは脳味噌をやられて発狂するか、良くてここ数年程度の記憶を失うかだ……」
「神の血……」
自分は何という恐ろしい物を体に入れられていたのだろうと両脚が震える。
「ゲーロを追わなければ……それに、ヴィクトルの手当も――カイン、俺の両手の鎖を切ってくれ」
ギシギシと鎖を軋ませながら頼んだ。
だが、カインは恐ろしくなるような満面の笑みを浮かべ、大きく首を振った。
「断る」
側頭部からは巻き角が伸び、袖の膨らんだ白く美しいコットと煌びやかな飾り布はそのままに、尾が針を剥き出しにして服を突き破って伸びる。
その先端がレオンの元に届き、ナイフを持つゲーロの手首に巻き付いて締め上げた。
「ヒイいッ……! 化物……!!」
背後の傭兵頭が、怯えたような悲鳴を上げてナイフをガランと床に落とす。
ギレスはあんぐりと口を開けたまま椅子の上で固まっていた。
(カイン……!? 正体を見せてしまっていいのか!?)
訝しく見守っていると、彼は尾をゲーロから離し、ゆっくりとギレスの方に近づき始めた。
「……召喚の必要はねえよ。俺自身が神だからな」
痩せた貴族は腰を抜かして椅子から転げ落ち、逆にレオンと傭兵頭のいる方へと四つん這いで逃げてくる。
「な、な、な……!」
彼は言葉にならない叫びをあげながら後ろを振り返り、指差しながら呻いた。
「お、オスカー……!? そ、その姿は……っ、お、……おっお前が神だったのか……!?」
「いかにもその通りだ。王を殺したのもこの俺だ――本当の名を知りたいか?」
カインがゆっくりとした仕草でこちらを振り向く。
冷たく見える程に青白い肌と、隙なく整った美しい容貌。服がいつもの黒衣では無いせいか、その姿は神と呼ぶのに一層相応しいように見える。
心を強く揺さぶられるのを感じ、レオンは胸の奥から込み上げるものを感じながら心で呼び掛けた。
(カイン……っ)
一瞬、彼の紅玉のような瞳が少しだけ剣呑さを薄める。
だがその表情には酷薄な笑みが浮かび、感情までは読めなかった。
レオンの前で地肌の透けたオカッパ頭がガクガクと頷き、声を上げる。
「神よ、お名を……!」
「アビゴールだ。覚えておけ……覚えておけるものならな」
含みのある言い方にハッとした。
(カイン……お前は、ギレスをどうするつもりで……)
問いたいが、彼らの前で訊くことは勿論不可能だ。
「アビゴール……味方に付ければ戦で負けることはないという、騎士の神では無いか……! その銀の髪、ヤギの巻角、そして白く美しい尾……! 伝承の通り、何という美しさだ……!」
落ちくぼんだ目を見開いて激しく感動している貧相な貴族を前に、カインは面倒そうに眉を顰めた。
やがてギレスがその気配を察したのか、口早に願いを唱え始める。
「わっ、私のこの身を不死にしてくれ……っ! 神よ、どうかこの私に、神の助力をっ!!」
懇願された神はこの上なく冷たい瞳で彼を見下ろしながらニヤリと笑った。
「いいだろう……お前に不死を賜る。神の助力を得た人間の身がどうなるのか、その身をもって知るがいい」
レオンの胸に密かな疑問が浮かぶ。
――今のカインにはそんな力はないはずだ。
だとすると彼は――。
固唾を呑んで見守る中、白い尾が天井近くまで振り上げられる。その先端に突出した細く長い針が、狙いを定めるようにギレスの方を向いた。
「な、何を……!?」
「少し痛えかもしれねえが一瞬で済む。我慢して動くなよ……!」
カインの尾が目にも止まらない速さで振り下ろされ、その針がブスリとギレスの首の動脈に深く刺さった。
「あえあぁっ……!? あふうぅ……」
間抜けな叫び声が上がり、ドクッドクッと何かが流れ込む音が地下室に響く。
その音が長く強く続くことに、レオンは震撼した。
(あれは……昔、俺がよくやられていたやつじゃないか……?)
セックスする時にレオンの抵抗があまりに激しいと、カインは針で自分の体液を血管に流し込むことがあった。
少しなら痛みや不安を感じなくなって快楽が増すが、多ければ体の自由が効かなくなり、意識が朦朧として記憶もあやふやになった事を思い出す。
王都への旅の最後で量をしくじられて大変な事になった事を思い出し、レオンは青ざめた。
「カイン、死んでしまうぞ……!?」
ギレスを殺してしまうのは流石にまずいのではと、思わず声を上げる。
目の前では憐れな男が白眼を剥き、穴という穴からダラダラと液体を垂れ流し始めていた。
「あっ……あひいいぃ……体が、体があああ、熱いいいいい」
目玉が裏返ったままギレスがもがき、ゲーロに向かって助けを求めて腕を伸ばす。
その悪夢のような光景に赤毛の大男は半狂乱の悲鳴を上げ、入ってきた鉄の扉に飛びついた。
「たっ、助けてくれえぇ!!」
破らんばかりの勢いで戸を開け放ち、ゲーロが泣きながら逃げ出してゆく。
ギレスの首からはやっとカインの尾が抜き出され、開いた穴からダラリと血が垂れた。
その体が何かに操られているような動きでフラフラとゲーロを追う。
「あ~~……神の国があ~~……神が見えるぅ~~……ヘヒハハハハ……」
鉄扉の外に出て二、三歩歩いた後、彼はバッタリと床に倒れて細かく痙攣を始めた。
どうやら意識を失ってしまったらしい。
その尋常ではない様に恐ろしくなりながらレオンはカインの方を向いた。
「お前、あの男に何を……」
眩しいような美貌がふっとほの暗い微笑を浮かべ、長い睫毛を伏せる。
「俺の……『神の血』を致死量ギリギリに入れた。あいつは脳味噌をやられて発狂するか、良くてここ数年程度の記憶を失うかだ……」
「神の血……」
自分は何という恐ろしい物を体に入れられていたのだろうと両脚が震える。
「ゲーロを追わなければ……それに、ヴィクトルの手当も――カイン、俺の両手の鎖を切ってくれ」
ギシギシと鎖を軋ませながら頼んだ。
だが、カインは恐ろしくなるような満面の笑みを浮かべ、大きく首を振った。
「断る」
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