きぐるみ♡女神伝

きぐるみんZ

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第1章.母 Ⅰ

002縫.『力』の制御と昔話

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 あの日、初めてゴブリンを見た時に自分が何も出来なかった事を朱璃は許せませんでした。
ゴブリンを倒せなかったからでも、自分の身を守りきれるか心配になったからでも、どちらでも無いと思います。

 自分のせいで、お母さんを危険な目に合わせてしまうかも知れない……

 そんな自責の念だったのかも知れません。
でもそんな事全然心配しなくてイイくらい、朱璃のお母さんって本当はスゴい人なんです、実は……

 でも自分の事を許せない朱璃は、あの時偶然出せた力をもっと自由に引き出せる様に練習しよう!とココロに決めました。



 朱璃は家の窓から空を見上げ、ボーっと考え中です。

 現在、窓の外に見えるのは……

 空の一番高い所に見える、まるで鳥の羽根みたいな雲。
空一面に細かい雲片が広がる、まるで魚の鱗みたいな雲。

 ふわぁ~、夏の暑さもようやくひと段落したなぁ。


チュンチュン……チュンチュン……


 このさえずりは、スズメが稲穂をついばみに来たんでしょうか?

 朱璃は両腕を突き上げ、ん~っ!と大きく伸びをします。
シュルンと朱璃の頬を撫でる様に通り抜けるそよ風が、何とも心地良いです。
朱璃は、こう考えました。


 確か……あの時、猛烈に「生きたい!」と願っていました!
ひょっとしたら、“ 生に執着するパワー ” があの形となって現れたのかも知れません。
もしその仮定が合っているのなら、今みたいな練習をしても無意味ですよね。

 生に執着するシチュエーションを作ってあげなくちゃ……
一番手っ取り早いのは……

 ならば、いっぱい運動をして汗を流して、体力をカラッポにしてあげればどうでしょうか?


 方針が決まったので、体力作りも兼ねて最初はあのゴブリンに襲われた家の裏庭を拠点にして、家の周りから走り込みをする事にしてみました!


タッタッタッタッタ……


 家の周りを走るうちに、だんだん強張っていた筋肉もイイ感じにほぐれて来ました。
よし、もうそろそろ家の周りから近所へと少しずつ範囲を広げましょう!


ハッ、ハッ、ハッ、ハッ……ふぅ。


 そして、人目を避けながら過剰なくらい走り込みをした結果……
朱璃はヒイヒイフウフウ言いながら、大量の汗を流してへばって寝っ転がってしまいました。

「よし、今なら……」

 朱璃は右手の平を上にかざしてみました。
すると、目論み通りシャンパンゴールドの “ 帯 ” を放出する事が来たんです!
朱璃は、よしっ!と両手をグーに握って大喜びしました。

 取り合えず、自分の意思でこの帯を放出する事には成功しました。
しかし、“ 生に執着するパワー ” が必要になる様なそんな極限の状況下じゃなくても、ある程度日常生活の延長上でこの帯を身体の一部としてコントロール出来るくらいにまでならないとせっかくの『力』も使い物にはなりません。
それには、どうしたらいいでしょう……?


 この帯を放出した時の「感覚」として……
この帯を顕現して放出させた時に、自分の身体のどこかにある『放出口』から捻り出した感じがあったんです。
恐らく、今回初めて自分の力でこの帯を放出したので……
まだまだこの『放出口』も小さくしか口を開けていないのでは?

 となれば、やるべき方法はひとつ!
次は、とにかく数多くこのシャンパンゴールドの帯を放出させて……
回数をこなして『放出口』を解して、口を大きくしてあげるトレーニングです!



 こうして、朱璃は小学校までは走り込みを中心に、中学校に上がってからは合気道部に入り部活に汗を流しました。
そして、合気道をベースとしてこの帯を自由にコントロール出来る練習をひたすら繰り返しました。

 そのお陰もあって、だいぶこの帯を自由に放出する事が出来る様なりました。
しかし、この帯を放出した後に『放出口』から長く伸ばせば伸ばす程コントロールが効かなくなって来るという問題が発生したんです!
自分の思いの方向、思いの長さに、頭のイメージ通りに動いてくれないと……
これまた、せっかくの『力』が使い物にはならなくなってしまいます。

 どうしよう……

 ウジウジ悩んでいても仕方無い!と朱璃は気持ちを切り替えます。
いくら考えても、答えが出ない日だってあるんです。
こういう時は思わぬ所から答えがひょっこり転がって来るモノです。
気分転換に、部活が終わった後に

「パンケーキ、食べに行こ♪
帰り道にあるファミレス、美味しいんですって♪」

と自転車に乗り、友達とファミレスに寄ってお小遣いでパクついてから帰りました。

 お風呂に入ってふぅ、とひと息つきながらドライヤーで髪の毛を乾かします。
すると、ふと何気にテレビに流れるある番組に目が止まります。
流れていたのは、毎週ひとつずつ日本の色んな昔話を紹介している番組。
ふわんっと漂う髪の毛の甘い匂いにウットリしながら、止めたドライヤーを片手にテレビを見ます。
しかし、次の瞬間……


「コレだぁっ!!!」

ゴン!……ガランガランガランッ!
……ごふぅっ!


















 朱璃は手に持つドライヤーを放り出して、思わずとんでもない一言を口走ってしまいながらテレビに齧り付いたんです!

 果たして、朱璃はこの番組で何を見たんでしょうか……?






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