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第一章 欲張り転生

no8...カグラの神スキル

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  エンシェントデビルを倒してから、頭の中に鳴り響くレベルアップの声が止まらない。どうやら私は相当レベルが低かったらしい。というか、この声はどうなってるの。誰?

〉レベル上がったんじゃね?
〉そりゃそうだろ、あんなの倒したらな
〉悪女の癖に強すぎるだろ
〉いや、やべーのはあの剣だろ絶対

 他のモンスターを警戒して、私は一度カースアイの通路へ退避した。もしかしたら、このカースアイがいるからエンシェントデビルは入ってこら来られなかったのかもしれない。

「レベルアップしましたって声が止まらないんだけど」

『なるほど よほど低知能だったようだな』

「知能関係なくない?! あ、止まった」

〉あの通路反則だよな
〉近づいたモンスターは即死だもんな
〉安全地帯ってわけか
〉いやいや普通即死するからな
〉なんであの女には効かねぇんだ?

 とりあえずコメントは無視して、さっそく私は自分に対して《ちょっと鑑定》を使ってみた。エンシェントデビルの時もチラッと見たけど、Lv2になったおかげで前より詳しいステータスが表示された。

=======================
名 前:ベネッサ・ユーリーン
種 族:人間(テイマー★)  レベル:20
固 有:王家の血筋
スキル:ちょっと鑑定Lv2 モブテイムLv1 光魔法Lv1 配信魔法Lv1 超級神剣術 神剣献上 雷神魔法Lv1
=======================

 改めてみても結構項目が増えてる。増えたのは種族、レベル、固有の三項目だ。やっぱり職業?はテイマーになってるんだね。

「ねぇ、種族やレベルはわかるけど、固有ってのは何かな?」

『固有とは 産まれつきの素質や種族固有のスキルの事だ』

 ふーん。私って王族の血筋なんだ。処刑される時に「王子をたぶらかし」って言われてるくらいだから、王子と接点を持てるくらいの貴族って事だよね。遠い親戚に王族がいたとか? なんせ私は自分のことすら知らない。
 てっきり赤ちゃんからやり直せるのかと思ったのに、転生したら既に成人した女性で、しかも処刑直前とだいぶババを引いた感じだ。

「《王家の血筋》《神剣献上》ってあるけど、この《神剣献上》ってのは?」

『鑑定を使え まぁ貴様では 見られぬと思うが』

 言われて少しムカっとしたので《ちょっと鑑定》を使ってみたけど【 解析不能 】と出てしまった。《王家の血筋》に関しても同様だった。きっと《ちょっと鑑定》のレベルが足りないんだ。悔しい。

「カグラに関係する事なんでしょ? 教えてよ」

『我を装備した者に付与されるスキル それが《神剣献上》なのだ』

「なのだって、いや説明になってないよ。どういう効果なの? あれ? なんか雷神魔法ってのが増えてるね」

 私は雷神魔法に《ちょっと鑑定》を使ってみた。

=======================
雷神魔法 〈アクティブスキル〉 雷神のごとき雷による攻撃を行う
 Lv1:ライジングボルト:強力な電撃を放つ(低確率で麻痺)
=======================

 電撃魔法だ! ただ光るだけの光魔法とは違う。ちゃんとした攻撃魔法みたい。でも電撃? そこまで考えて、私は先ほどの戦闘を思い出した。

「あれ? これってさっきのエンシェントデビルが持ってたスキルじゃなかった?」

『ほう ただの阿呆ではないようだな』

「だからアホって……。はぁ、もういいや。つまり、エンシェントデビルから奪ったってこと?」

『左様 それが我の持つ《神剣献上》の効果也』

 倒した相手のスキルを奪うスキル? とんでもない性能だわ。自動攻撃だけだったら、これで神剣?と疑問を抱いたけど……。さすがに自分のことを神剣と呼ぶだけはあるわね。

『スキルは 魔核を砕くことで奪取が可能だ』

「ま、魔核?」

『魔物の核で 魔核だ すべてのモンスターの体内に存在する紫色の宝石の事だ』

 エンシェントデビルはカグラが一瞬で倒してしまったので、そんなモノを見る余裕なんて全くなかった。粉々になっちゃったしね。

「これって、カグラが雷神魔法を選んだの?」

『否 奪えるスキルは選べない』

「へぇー、ランダムかー」

 どんなスキルをエンシェントデビルが持っていたか忘れちゃったけど、すごく便利なスキルを持っていた気がする。今度会ったらもう一度《ちょっと鑑定》をしてみよう。

「あ、ところでさ、長い付き合いになりそうだから言っておくけど」

『なんだ』

「あんた、さっきの必殺技みたいなの、なんとかならないの?」

『神技 冥空絶炎斬のことか?』

「そう、それよ! 完全に厨二病丸出しじゃないの!」

『厨二病? 我は病気になどにならぬ』

「いやそうじゃなくて……まぁいいや」

 小っ恥ずかしい技名を直してもらおうと思ったけど、そういう技というかスキルならどうしようもない。

 幸い配信で声は流れていないみたいだし、私が我慢すれば済む話だと感じた私は、早々にこの話題をやめた。

「話を戻そうか。魔核を砕けば砕くほど、私もどんどん強くなるって事?」

『そうだな』

「ちなみに神級鍛治師のマサラさんって、このダンジョンにいるの?」

『さぁな 我も気が付いたら岩に刺さっていたからな』

 カグラも記憶が飛んでるんだ。うーん、剣が記憶喪失ってのも変な話だけど……。もしかしてマサラさんに記憶を消されたとか? いや、わかんないけど。

「カグラがここに来たのって、いつくらい前の話?」

『我の記憶にあるダンジョンとは 少々様変わりしている 恐らく百年単位で昔のことかもしれぬ』

 そ、そんなに前なんだ?! うーん、仮に百年単位で昔の話なら、この近くにはいないか……。もしこの中に住んでる的な話なら助けてもらおうと思ったけど、誰もいないと思って動かなきゃだめだ。

「んっ」

 動いて喋ったから喉が渇いてきた。いつまでもここにいるわけにもいかないし、水も食料も無しでは本当に死んでしまう。私はため息を吐くと重い腰を上げた。

〉いつまで座ってんだよコイツ。あ、動いた。
〉もうさ、穴に水でも流して水攻めしたらどうだ?
〉それいいな

 コメントでは不満が爆発してる。生きててすみませんねぇ。だが進みたいのは私も同意だ。まずは水の確保が最優先。

「ねぇ、この辺に地底湖みたいな水が飲めるところあるかな?」

『先ほどの場所を左の壁に沿って歩くと 鍾乳洞がある その先に地下水が沸いていたな』

「本当?!」

『まぁ どれほど前の記憶かわからんがな』

「いいよいいよ! 望みがあるだけでも!」

 水が飲める。希望があるとわかると少し元気になってきた。できれば果物とか、何か食料もあるといいんだけどな。がんばろ私!

――配信累計時間:2時間20分
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