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第10話
離れていく指先を千穂の視線が追う。無意識だったのに、なんとなく熱が消えて物足りなく感じてしまった。
(……物足りないって……いやいや、なに考えてるのわたしは!)
ありえない思考にびっくりしつつ、頭を切り替えようと千穂から話を振った。
「……あの、市ヶ瀬さん」
「なんだ、KAHO」
名刺も渡した。千穂の名前も知ったはずだ。
それでも彼は、千穂をKAHOと呼ぶのをやめない。
「そう呼ぶのはやめてくれませんか」
「人違いだからか?」
ずっと言い張っていた否定文句を告げられ、千穂は一瞬、息を詰めた。
「……いいえ、もうそれは言いません」
「へえ。じゃあやっぱりあんたはKAHOなんだな」
「……、……そう、です」
(……ああ……)
認めてしまった。
会って二度目の相手に。
それもほとんど知らない相手に。
「ははっ、俺の目に狂いはねえだろ」
市ヶ瀬はずいぶん楽しそうだ。機嫌もいい。
それもそうだ。ずっとKAHOを探していたと話していた。やっと見つけることができたのだ、嬉しいだろう。
しかしなぜなのか。どんな理由でKAHOを探していたのか。
それを訊いてみたくなった。尋ねる権利だってあるはずだ。
なぜなら千穂が、彼の求めていたKAHOという幼女の成長した人物なのだから。
* * *
きっかけは、二十二年前。いま現在、千穂が勤めるフェアリーキッズプロダクション社長、姫菱夕美――彼女の提案からであった。
『うちの千穂を、キッズモデルに?』
『そう! どうかしら』
姫菱は当時、大手キッズモデル事務所に勤務していた。二十年以上も前の話だ。
そこでマネージメントを主としてばりばり働いていた姫菱は、ちなみにまだこのとき独身である。そのため、時間があればちょくちょく千穂の家へ遊びにきていた。
姫菱と千穂の母親は、小学生のころからの幼なじみである。一時期、互いの進学で東京と地元という距離ができたが、連絡は取り合っていたようだ。
千穂の母親が就職のため上京してから再び交流を持つようになる。その後、母親が結婚してからもそれは変わらなかった。互いに仕事と育児で時間が合わないことも多かったが、姫菱がキッズモデル事務所に勤めていることもあって、たびたび千穂に会いにきていたと聞く。
そして、千穂が三歳を迎えたばかりのころだ。姫菱が千穂の母親にキッズモデルへの勧誘をしたのは。
最初に話を受けたとき、母親は断るつもりでいたらしい。姫菱の仕事は理解しているが、自分の子ども――すなわち千穂が、人前に出て行動できるタイプではないと見抜いていたためだ。さすが親である。娘の性格はよくわかっていた。
しかし、ここで諦めなかったのが姫菱だ。
当時、彼女は多くの子どもたちの可能性を見出すことを目標としており、そのひとりに千穂も含まれていたようだった。友人の子どもだからという理由ではなく、自分が見て、接した上で判断したという。
そこまで何度も勧誘してくれるなら……と、母親はキッズモデル事務所への所属を認めたそうだ。
しかし、大手だといってもフェアリーキッズプロダクションと仕事の有無に差異はない。オーディションで仕事を勝ち取るという形式が、この時代も主流であった。
多くの子どもが在籍する事務所。その中で、千穂はぱっとしなかった。なにか特別な特技も、目立つ容姿もない子どもだ。クライアントの目に止まらないのは当然である。
事務所へ所属してからの仕事は、キッズ向け雑誌のモデルと、同じくキッズ向け衣料品店のチラシ掲載のみ。
勧誘した手前、姫菱はなんとかオーディションに受かるようできるだけの手助けはしてくれた。だが、千穂本人にそこまでの熱意がなかったため、芽が出ることはなかった。
そう、このとき千穂にキッズモデルとして売れたいというやる気がなかったのだ。自分からやりたいと望んで始めたことではないのも理由のひとつ。まだ幼い子どもだ。事務所が開催するスクールに通うよりも、友人と遊ぶほうに楽しみを覚えていたのも理由のひとつ。
そのため、ほとんどキッズモデルとして活躍できない日々を過ごしていた。
ところが事務所へ入って二年目の、千穂が五歳の誕生日を迎えたころ。世界的なブランドの広告モデル、そのキッズ部門のオーディションの話が舞い込んできた。
対象年齢は、四歳から六歳。日本人らしい容姿であること。知名度やこれまでの仕事経験を問わないというオーディション内容であった。
これに目をつけたのが姫菱である。千穂の年齢も容姿も当てはまっていた。きっと選ばれるのは同年代の、すでにいくつも仕事をこなした経験のある子役だろうとだれもが予想していたが、受けるのは自由だ。
それに姫菱が注目した点は、オーディションで仮の撮影を担当するカメラマン。彼は日本を代表するカメラマンであり、本番も撮影を任されたメインスタッフだ。彼が映す被写体は、一流のモデルだろうと新人俳優だろうとそれこそ売れない芸人だろうと、被写体のリラックスした素の魅力を切り取ると言われていた。
そんな彼が今回参加する。いい経験になるのではないかと姫菱は考えたようだ。
そして千穂は、彼女に連れられオーディションに参加することになる。だがオーディション当日の日付が問題であった。
『……お遊戯会』
『ええ。その日なのよ』
タイミングの悪いことに、その日は千穂が通う幼稚園のお遊戯会本番であった。前々から練習を重ね楽しみにしていたお遊戯会。だがオーディションによって不参加となる事態に、千穂の機嫌は最高潮に低かった。
それはオーディション会場へ着いても変わらない。ほかの子どもが続々とオーディションを終える中、千穂の機嫌は上昇する兆しを見せなかった。
そんな中で迎えたオーディション。有名なカメラマンの前で、千穂はにこりともしなかった。むすっと、泣くのを我慢しているような膨れっ面。オーディションを見守る姫菱も母親も、「これはだめだ」と諦めの境地であったという。
だが彼だけは違った。レンズ越しに千穂を撮る壮年のカメラマン。彼はふっと口元を緩めたと思えば、カメラを構えたまま千穂の名前を呼んだ。
「門倉千穂ちゃん」
大人の男の、落ち着いた声だった。けれど、従わずにはいられない引力がある。その効力はふてくされた子どもの千穂にも効き目があり、千穂は導かれるようにレンズへ顔を向けた。
それから数枚、シャッター音を切る音が続く。
『はい、終わり。お疲れさま』
『……ありがとーございました』
オーディションはこの時点で終了。大人組はだれも受かるはずがない、と信じきっていた。その考えが覆るのが、数週間後、事務所へ届いた合格の知らせである。
これにはオーディションへ同行していた姫菱はもちろん、千穂本人や母親も耳を疑う結果だった。どうしてあの態度で? と疑問に思いながら迎えた本番当日。
そこでオーディションのとき撮影してくれたカメラマンの手で撮られた写真が、のちに「KAHO」というキッズモデルを一躍有名にした世界的ファッションブランドの広告写真である。日本人として初めて起用されたニュースとともに、取り上げられたのはそのキッズモデルの表情だ。
見る人々の足を止めさせる――愁い顔。
街中のいたるところで貼り出されたそれは、モデルが幼女だという現実を霞めるほど目を奪われる力があった。日本を代表するカメラマンが撮影したニュースと相まって、一時期、世間の話題を独占していた。
名前を本名ではなく「KAHO」という芸名に変えたのは、当時の所属事務所代表の意向だ。この仕事を機に売り出す、との事務所内での決定によるものだが、結果的にその判断がのちの千穂の人生を助けるものとなった。
本来なら、スター街道を走っていたかもしれない。いや、その可能性はじゅうぶんにあった。話題性と、大手事務所の後ろ盾、そして子役という活動期間の短さ。どれを欠いても無理な展開だが、この時点で条件は満たされていた。
しかし、この仕事以降、KAHOと名乗るキッズモデルが表舞台で活躍することは一度としてなかった。
まるで煙のように消えた、幻の子役。当時はそう噂されていたものの、あとを絶たず生まれる話題に、いつのまにやら人々の記憶からも消え去っていった。
それが「KAHO」の真実だ――表向きの。
KAHOが芸能界を引退するに至った原因は、別にあった。言うなれば、裏の真実である。
けれどこれは人々の目や耳に触れずに、伏せるべきものだと大人たちが判断した内容である。成長したいま、千穂も彼らの判断に賛成だ。もし公表されれば、傷つく人間が生まれる。それはもちろん……KAHO本人であった。だから彼女を守るために大人が動いたのだ。
過去に起こったことは、口にすべきではない。当時の関係者が口をつぐめば、世に出る可能性も限りなく低い。だから千穂も、周囲の大人も、KAHOの存在をひっそりと消した英断を胸のうちにしまったまま、いままで口外してこなかった。
けれども、この決断で歪められた人生がある。進むはずだった未来から逸れた歩みがある。
あの撮影のあと、千穂たち門倉親子は、東京を離れ母親の実家がある長野へ引っ越した。姫菱もこの件が契機となり、のちに大手事務所を退職し、いまのフェアリーキッズプロダクションを設立したのだ。
KAHOが『あの件』に巻き込まれなければ……いや、KAHOというキッズモデルそのものが誕生しなければ、起こらなかった変化だ。
真実を知る者はだれもが口を揃えて「KAHOは悪くない」と慰める。しかし裏を返せば、「KAHOがいなければ起きなかったこと」とも捉えられないか。たられば、と仮定の話ばかりにのめり込むのは悪い傾向だ。けれど、思考してしまうのが人間である。
そんな中で、KAHOを探していたという市ヶ瀬。おそらく当時、街中に飾られていた広告写真を撮影したと思われる画質の粗いデータが、彼自身のスマホに存在していた。これが事実なら、二十年も前のデータをいままで引き継いでいたということだ。それはどれほどの執着であるのか。容易に計り知れない。
彼のKAHOへの執心は、言い換えればKAHOに囚われているようにも感じられる。
なにが彼をここまで貫かせたのか。いまなら……いや、千穂がKAHO本人だからこそ訊く権利があるし、尋ねる意味があるのだと思う。
* * *
(……物足りないって……いやいや、なに考えてるのわたしは!)
ありえない思考にびっくりしつつ、頭を切り替えようと千穂から話を振った。
「……あの、市ヶ瀬さん」
「なんだ、KAHO」
名刺も渡した。千穂の名前も知ったはずだ。
それでも彼は、千穂をKAHOと呼ぶのをやめない。
「そう呼ぶのはやめてくれませんか」
「人違いだからか?」
ずっと言い張っていた否定文句を告げられ、千穂は一瞬、息を詰めた。
「……いいえ、もうそれは言いません」
「へえ。じゃあやっぱりあんたはKAHOなんだな」
「……、……そう、です」
(……ああ……)
認めてしまった。
会って二度目の相手に。
それもほとんど知らない相手に。
「ははっ、俺の目に狂いはねえだろ」
市ヶ瀬はずいぶん楽しそうだ。機嫌もいい。
それもそうだ。ずっとKAHOを探していたと話していた。やっと見つけることができたのだ、嬉しいだろう。
しかしなぜなのか。どんな理由でKAHOを探していたのか。
それを訊いてみたくなった。尋ねる権利だってあるはずだ。
なぜなら千穂が、彼の求めていたKAHOという幼女の成長した人物なのだから。
* * *
きっかけは、二十二年前。いま現在、千穂が勤めるフェアリーキッズプロダクション社長、姫菱夕美――彼女の提案からであった。
『うちの千穂を、キッズモデルに?』
『そう! どうかしら』
姫菱は当時、大手キッズモデル事務所に勤務していた。二十年以上も前の話だ。
そこでマネージメントを主としてばりばり働いていた姫菱は、ちなみにまだこのとき独身である。そのため、時間があればちょくちょく千穂の家へ遊びにきていた。
姫菱と千穂の母親は、小学生のころからの幼なじみである。一時期、互いの進学で東京と地元という距離ができたが、連絡は取り合っていたようだ。
千穂の母親が就職のため上京してから再び交流を持つようになる。その後、母親が結婚してからもそれは変わらなかった。互いに仕事と育児で時間が合わないことも多かったが、姫菱がキッズモデル事務所に勤めていることもあって、たびたび千穂に会いにきていたと聞く。
そして、千穂が三歳を迎えたばかりのころだ。姫菱が千穂の母親にキッズモデルへの勧誘をしたのは。
最初に話を受けたとき、母親は断るつもりでいたらしい。姫菱の仕事は理解しているが、自分の子ども――すなわち千穂が、人前に出て行動できるタイプではないと見抜いていたためだ。さすが親である。娘の性格はよくわかっていた。
しかし、ここで諦めなかったのが姫菱だ。
当時、彼女は多くの子どもたちの可能性を見出すことを目標としており、そのひとりに千穂も含まれていたようだった。友人の子どもだからという理由ではなく、自分が見て、接した上で判断したという。
そこまで何度も勧誘してくれるなら……と、母親はキッズモデル事務所への所属を認めたそうだ。
しかし、大手だといってもフェアリーキッズプロダクションと仕事の有無に差異はない。オーディションで仕事を勝ち取るという形式が、この時代も主流であった。
多くの子どもが在籍する事務所。その中で、千穂はぱっとしなかった。なにか特別な特技も、目立つ容姿もない子どもだ。クライアントの目に止まらないのは当然である。
事務所へ所属してからの仕事は、キッズ向け雑誌のモデルと、同じくキッズ向け衣料品店のチラシ掲載のみ。
勧誘した手前、姫菱はなんとかオーディションに受かるようできるだけの手助けはしてくれた。だが、千穂本人にそこまでの熱意がなかったため、芽が出ることはなかった。
そう、このとき千穂にキッズモデルとして売れたいというやる気がなかったのだ。自分からやりたいと望んで始めたことではないのも理由のひとつ。まだ幼い子どもだ。事務所が開催するスクールに通うよりも、友人と遊ぶほうに楽しみを覚えていたのも理由のひとつ。
そのため、ほとんどキッズモデルとして活躍できない日々を過ごしていた。
ところが事務所へ入って二年目の、千穂が五歳の誕生日を迎えたころ。世界的なブランドの広告モデル、そのキッズ部門のオーディションの話が舞い込んできた。
対象年齢は、四歳から六歳。日本人らしい容姿であること。知名度やこれまでの仕事経験を問わないというオーディション内容であった。
これに目をつけたのが姫菱である。千穂の年齢も容姿も当てはまっていた。きっと選ばれるのは同年代の、すでにいくつも仕事をこなした経験のある子役だろうとだれもが予想していたが、受けるのは自由だ。
それに姫菱が注目した点は、オーディションで仮の撮影を担当するカメラマン。彼は日本を代表するカメラマンであり、本番も撮影を任されたメインスタッフだ。彼が映す被写体は、一流のモデルだろうと新人俳優だろうとそれこそ売れない芸人だろうと、被写体のリラックスした素の魅力を切り取ると言われていた。
そんな彼が今回参加する。いい経験になるのではないかと姫菱は考えたようだ。
そして千穂は、彼女に連れられオーディションに参加することになる。だがオーディション当日の日付が問題であった。
『……お遊戯会』
『ええ。その日なのよ』
タイミングの悪いことに、その日は千穂が通う幼稚園のお遊戯会本番であった。前々から練習を重ね楽しみにしていたお遊戯会。だがオーディションによって不参加となる事態に、千穂の機嫌は最高潮に低かった。
それはオーディション会場へ着いても変わらない。ほかの子どもが続々とオーディションを終える中、千穂の機嫌は上昇する兆しを見せなかった。
そんな中で迎えたオーディション。有名なカメラマンの前で、千穂はにこりともしなかった。むすっと、泣くのを我慢しているような膨れっ面。オーディションを見守る姫菱も母親も、「これはだめだ」と諦めの境地であったという。
だが彼だけは違った。レンズ越しに千穂を撮る壮年のカメラマン。彼はふっと口元を緩めたと思えば、カメラを構えたまま千穂の名前を呼んだ。
「門倉千穂ちゃん」
大人の男の、落ち着いた声だった。けれど、従わずにはいられない引力がある。その効力はふてくされた子どもの千穂にも効き目があり、千穂は導かれるようにレンズへ顔を向けた。
それから数枚、シャッター音を切る音が続く。
『はい、終わり。お疲れさま』
『……ありがとーございました』
オーディションはこの時点で終了。大人組はだれも受かるはずがない、と信じきっていた。その考えが覆るのが、数週間後、事務所へ届いた合格の知らせである。
これにはオーディションへ同行していた姫菱はもちろん、千穂本人や母親も耳を疑う結果だった。どうしてあの態度で? と疑問に思いながら迎えた本番当日。
そこでオーディションのとき撮影してくれたカメラマンの手で撮られた写真が、のちに「KAHO」というキッズモデルを一躍有名にした世界的ファッションブランドの広告写真である。日本人として初めて起用されたニュースとともに、取り上げられたのはそのキッズモデルの表情だ。
見る人々の足を止めさせる――愁い顔。
街中のいたるところで貼り出されたそれは、モデルが幼女だという現実を霞めるほど目を奪われる力があった。日本を代表するカメラマンが撮影したニュースと相まって、一時期、世間の話題を独占していた。
名前を本名ではなく「KAHO」という芸名に変えたのは、当時の所属事務所代表の意向だ。この仕事を機に売り出す、との事務所内での決定によるものだが、結果的にその判断がのちの千穂の人生を助けるものとなった。
本来なら、スター街道を走っていたかもしれない。いや、その可能性はじゅうぶんにあった。話題性と、大手事務所の後ろ盾、そして子役という活動期間の短さ。どれを欠いても無理な展開だが、この時点で条件は満たされていた。
しかし、この仕事以降、KAHOと名乗るキッズモデルが表舞台で活躍することは一度としてなかった。
まるで煙のように消えた、幻の子役。当時はそう噂されていたものの、あとを絶たず生まれる話題に、いつのまにやら人々の記憶からも消え去っていった。
それが「KAHO」の真実だ――表向きの。
KAHOが芸能界を引退するに至った原因は、別にあった。言うなれば、裏の真実である。
けれどこれは人々の目や耳に触れずに、伏せるべきものだと大人たちが判断した内容である。成長したいま、千穂も彼らの判断に賛成だ。もし公表されれば、傷つく人間が生まれる。それはもちろん……KAHO本人であった。だから彼女を守るために大人が動いたのだ。
過去に起こったことは、口にすべきではない。当時の関係者が口をつぐめば、世に出る可能性も限りなく低い。だから千穂も、周囲の大人も、KAHOの存在をひっそりと消した英断を胸のうちにしまったまま、いままで口外してこなかった。
けれども、この決断で歪められた人生がある。進むはずだった未来から逸れた歩みがある。
あの撮影のあと、千穂たち門倉親子は、東京を離れ母親の実家がある長野へ引っ越した。姫菱もこの件が契機となり、のちに大手事務所を退職し、いまのフェアリーキッズプロダクションを設立したのだ。
KAHOが『あの件』に巻き込まれなければ……いや、KAHOというキッズモデルそのものが誕生しなければ、起こらなかった変化だ。
真実を知る者はだれもが口を揃えて「KAHOは悪くない」と慰める。しかし裏を返せば、「KAHOがいなければ起きなかったこと」とも捉えられないか。たられば、と仮定の話ばかりにのめり込むのは悪い傾向だ。けれど、思考してしまうのが人間である。
そんな中で、KAHOを探していたという市ヶ瀬。おそらく当時、街中に飾られていた広告写真を撮影したと思われる画質の粗いデータが、彼自身のスマホに存在していた。これが事実なら、二十年も前のデータをいままで引き継いでいたということだ。それはどれほどの執着であるのか。容易に計り知れない。
彼のKAHOへの執心は、言い換えればKAHOに囚われているようにも感じられる。
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