黒太子エドワード

維和 左京

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第1章 クレシーの戦い

クレシーの戦い

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 はじまりは、単なる小競り合いではなかった。一三二八年に前フランス王のシャルル四世が死んだとき、イングランド国王エドワード三世は、自分がシャルル四世の孫であることを理由に、フランス王位の継承を主張したのである。
 ところが、実際にパリで王位についたのは、シャルル四世の甥にあたる、フィリップ六世であった。エドワード三世は、これを不服として、フィリップ六世に宣戦布告したのである。これが、いわゆる百年戦争の、もともとのきっかけであった。
 しかし、十八年もフィリップ六世がパリの玉座にとどまる状態が続くと、さすがにこれを動かすことは、事実上不可能となってくる。この頃では、もはや王位の要求は戦争を始める口実でしかなくなっていた。
 従って、今回の戦いが始まった理由も、王位の要求というよりは、物資を略奪し、その上で華々しく騎士道の集大成たる戦いに及び、フランスに目にもの見せてくれようという程度が正直なところであった。
 そしてノルマンディーに上陸したエドワード三世の軍は、略奪という一つ目の目的を達成するために、近辺の村を荒らしつつ、敵軍が出てくるのを待ちうける予定だった。
 しかし、ここで手違いが起こる。彼らをイングランドより運んできた艦船が、命令を取り違えて帰国してしまったのである。そこで、退路を断たれたイングランド軍は、ひとまずイングランドの支持者が多いフランドル地方に向かって北進することにした。
 もちろん、イングランドのこの動きには、パリからフランス軍をおびき寄せて迎撃したいという意図も含まれているから、その行軍は自然とゆったりとしたものになる。
 果たして八月に入り、フィリップ六世が軍を編成し、イングランド軍を攻撃しようとしているとの知らせが届いた。それでもエドワード三世は、隊列を乱すことなく北上を続けている。ただしその目的は、もはやフランドル地方に入ることではなく、戦場とするにふさわしい有利な地形を探し出すことであった。
 隊列の中ほどを馬に乗って進む国王エドワード三世に、側近のウォリック伯が馬を寄せてきた。彼は側近の中でも、特に国王が重用しており、思慮に富む博識な人物として知られていた。
「おそれながら、陛下」
「ん? なんじゃ、申してみよ」
 国王に促され、ウォリック伯は少し声量をあげた。博識なだけでなく、近隣諸国に名を知られるほど勇猛な武人ではあるが、生来の声の大きさは持ち合わせていなかった。体格も、周りの武将たちに比べると華奢に見える。
「今回の戦、相手には勇猛で知られるフィリップ六世をはじめ、名だたる貴族はもちろん、ボヘミア王やマジョルカ王など、フランスに直接属さぬ領主たちも、多く参戦しております。ここは大会戦は避け、道すがらの村から略奪を行って、手早く本国に撤退するのがよかろうかと思います」
 馬上がもっとも絵になると称された少壮の国王は、彼の意見を聞くとやや首をかしげ、傍らにいる息子のエドワードに尋ねた。
「息子よ、今の意見をどう思うか」
 父に問われ、エドワードは鋭く整った眉目を彼の方向に向けた。今日のエドワードは特注の黒い鎧兜に身を包み、黒鹿毛の馬に乗るという、全身黒の異様ないでたちであった。その兜の額には、赤字に金獅子の王家の紋章が彩られている。
「ウォリック伯の意見はまさに正論、もっともなことと存じます。しかし、ボヘミア王やマジョルカ王が参戦しているということは、裏を返せば指揮系統が一つにまとまっていないということ。それに引き換え、我が軍は陛下のもとにすべての指揮権がゆだねられております。決して不利な戦いとはならないと存じます」
 彼の意見を聞き、国王は明らかに喜色を満面に出した。国王はもともと政治家というより軍人に近い男であり、派手な会戦こそ彼の望むところであった。
「うむ、よく言った、息子よ。伯の忠告はありがたいが、今回はフィリップの軍を粉々に打ち砕くと決めた。騎士道に乗っ取り、正々堂々、正面からぶつかってくれようぞ」
 国王の言を聞き、これ以上は無駄と判断したか、ウォリック伯は素直に引き下がった。一方、エドワードはうなずいただけであった。彼は戦を好むという面では父と似ていたが、騎士道精神なるものは旧時代の産物であり、まやかしに過ぎないと考えていたのである。
 しかし、精神はどうあれ、エドワードは父の軍事能力を高く評価しており、その点に対しては賛美を惜しむことはなかった。現に、父が国王になってからというもの、スコットランドやフランスとの戦いのほとんどはイングランドの勝利に終わっているのである。
「注進! フィリップ六世の軍が近づいております。二日もすれば我が軍に追いつく模様です」
 早馬が来て、慌しく国王に状況を告げた。
「ご苦労。では、我が軍も陣地を決めねばな」
「陛下、ここより少し進み、ソンム川を渡ったあたりに、クレシーという小さな村がございます。その付近に低い山があり、長弓兵を置くにはうってつけかと存じます」
「おう、わかった。ではそこに陣を敷くとしようか」
 エドワードの意見を、国王は一も二もなく容れた。それは、息子を信頼しているだけでなく、自分が考えていた陣地の候補のうちの一つに、そこが含まれていたことからくるものであった。
 もちろん、国王と異なり、まだ直属の部下を持たないエドワードがそこまでフランスの地形につき知っているのは、ニールの功によるものである。その功労者は、プライベートはともかく、公的には下級貴族の一人に過ぎないため、エドワードたちとは遠く離れた軍の後方に従っているのであった。
 その日の夕方には目的地に着いたイングランド軍は、早速に陣を敷いた。そして兵たちに命じ、罠の作成にかかる。罠といっても簡単なもので、長弓兵に対する騎兵の突撃を防ぐため、長弓兵の前面に杭を打ち、その前に穴を掘るだけである。
 イングランドはフランスに比して騎士の数が少なく、農民兵と職業軍人がその大半を占めていた。職業軍人の中には傭兵のほかに、イングランドに恒常的に雇われ、戦だけを生業とする者達がいた。
 契約を結び、給金をもらっている彼らは、誇り高い騎士たちと異なり、どんな仕事を命じられても、滅多な事では不満を漏らさなかった。そのため、一般的には不名誉とされるこうした罠の作成でも、イングランドは手早くこなすことができたのである。
 その日の夕方と翌日の午前で、罠の作成は終了した。あとは野営をし、兵たちに交互に休息を取らせつつ、フランス軍の到着を待つ。
「きました、フランス軍です!」
 その報が届いたのは、陣を敷いてから二日後、一三四六年八月二十六日の夕方のことだった。夕方と言っても、夏のためまだ日は高く、暮れるまでにあと三時間はあると思われた。折から吹き出した風が、兵士たちに吹きあたり、鎧兜で蒸れた彼らの身体に清涼感をもたらした。
「先頭はジェノヴァの弩隊、それに引き続いてフランス軍重騎兵の模様!」
 報告を聞くと、イングランド軍は一斉に色めき立った。いくら騎士道精神だの騎士の名誉だのと綺麗事を並べ立てても、彼らは基本的に殺戮が大好きで、それ以上に戦闘が大好きな者たちである。敵来たりと聞けば、興奮を隠し切れなかった。
「よし、長弓兵、発射準備! ただし、合図があるまで決して矢を射るな」
 エドワードがやや後方から、兵に向かって指示をする。エドワードは国王のいる本陣から西にいったところに兵を置き、フランス軍がやってくる南に構えを向けていた。
 エドワードの目にも、はっきりと敵兵の姿が捉えられるようになったのは、それからまもなくのことであった。背丈の低い草を踏みつけ、敵の弩兵がじりじりと距離を詰めてくる。
 たぎる血を押さえつつ、正確に敵兵との距離を測る。本来、射程では長弓が約二五〇メートル、弩が三二〇メートルと、弩のほうが長い。しかし、山に陣取っている分、その射程はほぼ互角というところだろう。撃つタイミングを、誤ってはならなかった。
 敵は、隊列が乱れているのがはっきりと見て取れた。弩兵のうちの幾分かに、遅れが見える。我先にとこちらに向かってくる者もいた。ひどいところでは、騎兵が弩兵を追い抜いているところまであった。
 数本の矢が射かかって来ても、エドワードは慌てなかった。敵の主力が射程範囲に入るのをじっと待ち、そこでさっと手を挙げる。
「撃て!」
 号令と同時に、合図の旗が翻り、数千本の矢がフランス軍に向かって放たれた。天を覆い尽くさんばかりの矢の雨は、風を切って飛び、一斉にジェノヴァ弩兵に向かって襲い掛かる。
 一方、ジェノヴァ兵は、隊列の乱れから、同時にイングランド軍に向かって矢を射た者は、その半分に過ぎなかった。あと一分あれば、ジェノヴァ兵も隊列を立て直すか、立て直せずとも、全員が射程距離内に入って撃つことが可能であったろう。その意味では、エドワードの指示は絶妙のタイミングであったと言える。
「休むな、撃て、撃て!」
 エドワードの指揮の下、長弓兵は間断なくフランス軍に向かって矢を射る。弩の十倍のスピードで射ることが可能な長弓は、ジェノヴァ弩兵にとって脅威以外の何物でもなかった。なにせ、自分が一本矢を射る間に、十本の矢が降り注いでくるのである。
 重装備である弩と、連射の効く長弓の差もあるが、それ以上に両軍の兵士の質の差がものを言った。イングランドは、この日のために長弓隊を鍛え上げてきたのである。それに対しフランスがやったことと言えば、名誉ある騎士の勝利を神に祈ったくらいであった。
 そのうちに、混乱したジェノヴァ弩兵は、後退を始めた。しかし、その姿は、誇り高きフランスの騎士たちにとっては、臆病としか映らない。
「邪魔だ、どけ!」
 焦れた騎士たちは、弩兵を振り払うようにして、我先にと前面に出た。それに対しても、矢の雨は身分を差別することなく、平等に降り注ぐ。
 盾を持った勇敢な騎士たちは、矢に怯まなかった。しかし、馬は別である。驚き、前足を上げて大きくいなないたところに、さらに次の矢が降ってくる。落馬するもの、暴走するもの、様々な光景を見せながら、戦いはイングランド有利に推移してゆく。
 それでも、騎士たちの幾人かは、矢をかいくぐり、長弓兵のそばにいる、馬を降りた状態の重装兵に突撃せんと試みた。しかし、それは即座にエドワードの察知するところとなった。
「キルシュ隊およびハーヴィン隊は、遠距離射撃より近距離射撃に切り替える! 近寄ってくる騎士たちに、矢の洗礼を浴びせよ!」
 その号令のもと、二つの小隊は、騎士たちに至近距離から矢を放った。もともと簡易な鎧であれば貫き通せるほどの威力を持った矢である。連続して放たれたのでは、たまったものではない。
 騎士たちは、敵兵の前の杭や穴にてこずるうち、次々に矢の餌食となっていった。そして矢を逃れた者も、疲れきったところで重装兵の槍の錆となるだけであった。
 フランスの騎士たちは鎖帷子の上着の上に、特にあつらえた板金鎧を着ていた。さらに両手に鉄の篭手、頭には頬まで隠れるヘルメットをかぶっている。これでは、素早く動けというほうが無理であった。
 それでも騎士たちは、勇敢だった。エドワードに言わせれば、無駄に勇敢だった。彼らは何度も突撃を繰り返した。馬が矢を身体に受けて用を成さなくなれば、馬を降りて単独で突撃を図った。しかし、そのいずれもが、まともに成果を挙げられぬままに終わった。重い鎧兜を背負い、山の斜面を駆け上がろうというのがどだい無茶なのである。敵兵のもとにたどり着くまでに、足は震え、膝は笑ってしまう。
 進軍ラッパとフランス兵の悲痛な叫びが交互に大量生産され、それが十五回を数えた頃、フランス軍は突撃を諦め、撤退をはじめた。それを見たエドワードは、すかさず次の命令を下す。
「よし、馬の準備を整えよ! これより追撃を開始する」
 エドワードの号令と同時に、馬を降りていたイングランドの騎士たちが、一斉に馬に跨る。フランス軍の間に、黒い疾風が吹きぬけようとしていた。
しかし、その追撃が開始される直前、国王からの早馬が届いた。
「伝令! すぐに兵をまとめ、本陣に帰陣されたしとのこと!」
「ばかな。何があったというのだ」
「勝敗の決まった戦で、これ以上フランス軍を痛めつけるのは、騎士道精神に反する。追撃はせず、戻られますようにとのことです」
「むう……」
 なんたるばかげたことを、とエドワードは内心舌打ちした。騎士道精神など、古びたものをこんなときに持ち出す必要はないであろうに。ここがパーティーの会場であればともかく、今は戦争中なのだ。なぜ相手を労わってやる必要があるのか。
 今、命令を聞かなかったことにしてこのまま坂を駆け下りれば、もはや戦意をなくしたフランス兵たちを、一撃の下に粉砕できるであろう。そうすれば、貴族たちはおろか、フランス国王フィリップ六世すら捕虜にできるかもしれない。
 しかし、総大将たる父の命を無視して独断に走ったとあっては、他の騎士に対する示しがつかない。そのために自らが処罰されるようなこととなっては、それこそ彼にとってばかげた結果となるであろう。
「いいだろう、フィリップ六世よ、その命は次に会うときまで預けたぞ」
 そう決断すると、エドワードは右翼の全軍に向けて帰陣命令を出した。
 イングランド軍は戦死者百人、負傷者三百人だったのに対し、フランス軍の戦死者は千五百人、負傷者は五千人にものぼった。さらにフランス軍は、フィリップ六世の弟であるアランソン公をはじめ、ボヘミア国王やフランドル伯、ロレーヌ公など、名だたる人物が多く戦死した。歴史上名高いクレシーの戦いは、こうしてイングランド軍の完勝に終わった。
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