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襲い来る魔の手
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「まぁた、そんなことを言って。盛りなんてあっという間だよ。そりゃあ、あんたみたいな器量良しにこんな寂れた村の男じゃ釣り合わないかもしれないけど……」
そんなことを言われても、幸菜には良い返事をすることはできない。
恋愛経験に乏しいというのもあるだろうが、そもそも晩婚化が当たり前の現代で育った幸菜の価値観ではまだまだ早すぎる話だ。村の人たちをそういう目で見たこともない。きっと今後もそうだろうと思ってすらいる。
「村の人たちは大好きです。でも、私にとってみんなは家族みたいなものなんです。だから結婚とか……そういうことは、考えられません」
「そうは言うけどねぇ……」
後悔してからじゃ遅いんだよ、と妙が嘆く。
だが、本当に考えられないのだ。みんながみんな分け隔て無く好きで、でも恋愛の相手としては誰も選べない。
たとえ生涯独身を通すことになろうとも、これはどうしようもないことだと幸菜は腹を括っていた。
それだから、余計妙に気を遣わせてしまうのだろうけれど。
「あら? ……なんだか外が騒がしいですね」
明かり取りの窓から入り込む喧騒が耳をつく。小窓からは外の様子は見え辛いが、人が集まっているらしいことだけはわかった。
この村で、こんなにも荒々しい声が上ったことはこれまでになかった。喧嘩、ならまだいいが、もしかしたら誰かが大怪我をしてしまったのかもしれない。
訝しんで立ち上がりかけた妙を制して、幸菜は外に顔を出した。
「--っ! 二人とも隠れて!」
幸菜の厳しい顔つきと声に加耶がびくりと肩を揺らす。妙が加耶を抱き上げて幸菜に手を伸ばした。
しかし、身を隠すには遅すぎた。
幸菜の二の腕に締め付けるような痛みが走る。
「あ、ああ………」
妙の顔色が蒼白に変わる。加耶は先程とは比にならないほど震えていた。
幸菜の腕を掴む男はそれらを歯牙にもかけない。冷酷な眼差しが彼女たちを射抜いた。
「出ろ。抵抗は死を意味すると思え」
慈悲のかけらもない冷たい声音に、二人はひたすらに頷いた。
立っていることがやっと、うまく足に力を入れられない二人を煩わしそうに見て、引き摺るように幸菜を強く引いた。
明らかに農民とは違う男が「武士」と呼ばれる者であることは幸菜にもわかっていた。
この村に来る前、現代にいた頃。歴史の授業のいつかに見た資料と同じ身形の男が目の前にいるのだ。
目的は侵略か、兵糧か。
せめて後者であることを心から願った。
そんなことを言われても、幸菜には良い返事をすることはできない。
恋愛経験に乏しいというのもあるだろうが、そもそも晩婚化が当たり前の現代で育った幸菜の価値観ではまだまだ早すぎる話だ。村の人たちをそういう目で見たこともない。きっと今後もそうだろうと思ってすらいる。
「村の人たちは大好きです。でも、私にとってみんなは家族みたいなものなんです。だから結婚とか……そういうことは、考えられません」
「そうは言うけどねぇ……」
後悔してからじゃ遅いんだよ、と妙が嘆く。
だが、本当に考えられないのだ。みんながみんな分け隔て無く好きで、でも恋愛の相手としては誰も選べない。
たとえ生涯独身を通すことになろうとも、これはどうしようもないことだと幸菜は腹を括っていた。
それだから、余計妙に気を遣わせてしまうのだろうけれど。
「あら? ……なんだか外が騒がしいですね」
明かり取りの窓から入り込む喧騒が耳をつく。小窓からは外の様子は見え辛いが、人が集まっているらしいことだけはわかった。
この村で、こんなにも荒々しい声が上ったことはこれまでになかった。喧嘩、ならまだいいが、もしかしたら誰かが大怪我をしてしまったのかもしれない。
訝しんで立ち上がりかけた妙を制して、幸菜は外に顔を出した。
「--っ! 二人とも隠れて!」
幸菜の厳しい顔つきと声に加耶がびくりと肩を揺らす。妙が加耶を抱き上げて幸菜に手を伸ばした。
しかし、身を隠すには遅すぎた。
幸菜の二の腕に締め付けるような痛みが走る。
「あ、ああ………」
妙の顔色が蒼白に変わる。加耶は先程とは比にならないほど震えていた。
幸菜の腕を掴む男はそれらを歯牙にもかけない。冷酷な眼差しが彼女たちを射抜いた。
「出ろ。抵抗は死を意味すると思え」
慈悲のかけらもない冷たい声音に、二人はひたすらに頷いた。
立っていることがやっと、うまく足に力を入れられない二人を煩わしそうに見て、引き摺るように幸菜を強く引いた。
明らかに農民とは違う男が「武士」と呼ばれる者であることは幸菜にもわかっていた。
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目的は侵略か、兵糧か。
せめて後者であることを心から願った。
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