暴君は野良猫を激しく愛す

藤良 螢

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焦燥

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「他の誰ぞから贈られた物など捨ててしまえ」

 不愉快だとそう言って性急に単衣さえ剥ぎ取ると、彰久はようやく満足げに笑みを刻んだ。
 なんて心の狭い、と思いもするが、許容してしまうあたり自分も大概なのだろう。思わず苦笑してしまうと、ぎらりと彰久の目に獰猛な光が見えた。

「随分と余裕のようだな?」
「え、っひあ!?」

 仕置きとばかりに胸の頂をきつく吸われ、背が弓なりに反る。堪える間も無く口を出たかん高い嬌声に、彼はくつくつと喉奥で笑う。そして、今度はまた労わるような、存在を確かめるようなゆっくりと優しい愛撫を再開した。

(あつい)

 触れ合う肌も、重なる唇も。混じり合う視線さえ。
 壊れ物を扱うかのように触れてくる手が幸菜を高揚させる。体の奥底からも、彼が欲しいと渇望する。
 もっととせがんで伸ばした手に、今度は彼が苦笑した。

「もう少し待て」
「なん、で……」

 そんなことを言わないでと切なさに涙を滲ませる幸菜に、彰久は宥めるように触れるだけの口付けをいくつも落とす。
 あまりにも優しい数々に流されそうになって、それは嫌だと懸命に首を振る。
 いやだいやだと耐え忍んでいた時でさえ、彼に欲しがられたいと望んでいたことは否定できない。彼への想いを自覚してからも、離れて恋焦がれた日々を送った今は尚更だ。

「素直はいいが、今は……な。我慢が利かなくなる」

 我慢なんてしなくてもいいのに。
 涙に濡れた目でじっと見つめると、彼は困った顔をするが望むものを与えてくれる素振りはない。待てと言った通り、慎重な手付きで幸菜の中に指を差し入れた。

「っ……ふ」

 丹念にならされ熱の籠った吐息を漏らすと、「やはりな」と呟き彼が目を細めた。探るように、確かめるように動く指は快感を与えてくれるが、どうしても物足りない。
 今日という日にまで意地悪をするのかと詰る目で睨んだ。

「そんなに睨むな。お前とて、痛い思いをしたくはないだろう?」

 今日だからこそだ、と言う彼に幸菜は首を傾げる。しかしそれも、次の瞬間には答えを突きつけられた。
 縋るように彼の首に回していた腕の片方を取られ、おもむろに彼の下肢に触れさせられる。

「っあ……」

 思わず体を跳ねさせた幸菜に、彰久はわかったかと息を吐いた。
 慰めとばかりに寄せられた唇に、理解の追い付かない頭が怯えを見せる。しかし後ろに逃げ場があるわけもなく、覆い被さり口内を蹂躙する彼の舌に翻弄された。
 離れた時の彼の眉間はもどかしげに皺を刻んでいた。理性と欲望の入り交じる瞳は恐ろしいのに、艶かしくて蠱惑的といえるほどだった。

「……ごめん、なさい」
「何を謝ることがある。感謝したいくらいだ」
「でも……」

 尚も申し訳なさそうにする幸菜に、もういいとその口を塞ぐ。柔く喰む口づけで甘やかし、気の緩んだ一瞬の隙に指を激しく動かした。

「っんん!!」

 くぐもった声はそれでもよく聞こえた。
 忙しく胸を上下させる彼女を見下ろして、悪どい笑みを浮かべる。

「まだ先は長いんだ…………飢えなどすぐになくなるぞ」

 覚悟しておけ、と言外に告げられる。獲物にありつく獣の如く舌舐めずりする彼に、背筋をひやりとしたものがはしった。
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