暴君は野良猫を激しく愛す

藤良 螢

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初めて

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 裏腹に、熱く硬いものが押し付けられる。自ら望んだもののはずなのに一度抱いた怯えは拭い去れず、逃げかけた腰を彰久が強く掴んだ。

「待っ、ーーーーっ!!」

 制止する間も無く体の中心を貫かれ、襲ってきた強烈すぎる衝撃に目の前を光が散った。はくはくと口だけが息も吐かずに開閉する。
 これでもかというほど解されたはずなのに、いざ受け入れると圧迫感が凄まじい。内側から灼きつけてくるそれは呼吸さえ満足にできないほど苦しくて、けれどそれを上回るほど満ち足りた気分になった。

 目の前の彰久は、額に玉のような汗を浮かべている。堪えるように眉間にしわを寄せる顔には余裕など欠片も見当たらない。
 すぐにでも動きたいだろうに、皮膚の柔らかな場所に吸い付いたり舌を這わせたりして幸菜の緊張を軽減させようとしていた。
 一つ一つがかけがえなく、そしてこれ以上ないほど熱くさせる。夢幻ではないのだと知らしめ、幸福感と充足感が胸をしめる。

「おい……?」

 全てを幸菜の中に埋め込んだ彰久の声は少し掠れていた。
 こめかみを熱いものが伝っている。泣いているのだと、どこか他人事のように自覚した。
 この涙が、彼を誤解させているのだとわかっている。けれど、もう止まらないのだ。
 我慢して、自分の中に閉じ込めてきたものが、今溢れている。

「……って、……も…………」

 震える喉が響かせた声もまた、震えていた。しゃくり上げる声は情けないと思いながらも、形振りなど構っていられなかった。

「好きって……、言ってもいいですか………?」

 許しを請う幸菜を、僅かに瞠った彰久の目が射抜く。必死で繋ぎ止めていた糸がついに切れた。
 彰久は荒々しく舌打ちすると、一気に腰を打ち付けた。
 声もなく喘ぐ幸菜の耳元で、激情を滾らせた低音が唸る。

「当たり前のことを……! もう、我慢なぞしてやれんぞ。二度と逃すものか!」
「っあああ! んっく、あぁっ、あっぁ…!」

 彰久が激しく動くたびに、幸菜の頭の中でいくつもの星が散る。怒濤の嵐のような快感に、我を忘れそうになるのを必死に抗っていた。
 好きだなどと、その程度で足りるものか。愛という言葉さえ生温い。
 伝えきれないもどかしさが、彰久の動きをより大きなものへ変えていく。

「お前はっ、俺のものだ……!」

 ぱちんと一際大きな星が弾けた。幸菜は何度か大きく痙攣し、やがてくったりと体を弛緩させた。
 乱れた息遣いが静けさを取り戻した座敷に響く。
 ぼんやりと白む意識の中で、一つ二つと降り注ぐ口づけを感じた。果ててもなお力強く自分を抱きしめる腕は、間違いなく彼のもの。

「…………幸菜、ーーーー……」

 初めて呼ばれた名前と、甘くも狂おしいその響きを確かに聞いて、幸菜はゆっくりと目を閉じた。
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