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5.家電に驚くメリザンド
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吸血鬼から移されたメリザンドの病気を治す。
そう旅の目的がはっきりしたところで、僕は自分の恰好を眺めた。
さすがに、エルフとかのいる世界でスーツ姿で歩いていたら……悪目立ちしてしょうがない。
他に着られそうなモノと言えば、山賊から奪った服だろう。とりあえずノミとかはいないようだけど、赤の他人の着ていた服を身に着けるというのは何とも気持ち悪い。
僕は家電の中に洗濯機があることを思い出した。
「ちょっと、洗濯してくるよ」
「え? 洗濯ですか?」
「うん」
僕は服を脱ぐと、痛んだら困るモノなどをネットカバーに包み、洗濯機の中へと放り込んだ。
そして、スイッチを入れると……洗濯機の中に水が注水されていく。
「やっぱり、普段僕が使っているのと同じやつか」
僕は辺りを見回すと、ちょうど液体洗剤も置かれていたので、規定量を測り取ってから洗濯機の中へと入れた。そしてふたを閉めると、隣で見ていたメリザンドも不思議そうに眺めている。
「な、何ですか……この魔導器は?」
「これは洗濯機。勝手に服を洗ってから水気まで取ってくれる機械だよ」
「キカイ?」
「まあ、見ていてくれればわかるよ」
水がたっぷりと注がれると、やがてパネルに35と表示された。
「35分後にできるよ」
「は、はい……」
メリザンドは相変わらず洗濯機を眺めているが、僕は備え付けられているミニ冷蔵庫の中をチェックしてみた。
開けると冷気が出てきたので、しっかりと機能しているようだ。中に入っているのは未開封で2リットルのお茶と水のペットボトル飲料が1つずつ。
あとはヨーグルトとジャムとチョコレート菓子か。これは全部、僕が自分のアパートに入れていたものと同じだ。
というか、お米は5キログラムくらい残っていて、他にもカップ麺とか、缶ビール1箱とか、パスタとか……僕がアパートに残したモノが一通りそろっている。
洗面台の周りを見てみると、石鹸とか予備の洗剤とか、歯ブラシのストックとか、シャンプーとリンスのストックとか、色々なモノが出てきた。
「ハンディウォシュレットや髭剃りもある……これなら十分に生活できそうだ」
念のため蛇口を捻って水やお湯が出ることを確認したら、僕は満足しながらメリザンドのいる居間へと戻った。
「これらの道具は……ぜんぶ、貴方のモノなんですか?」
「うん、この世界に来る前に僕が持っていたり使っていたものだよ」
彼女は今度はクーラーを見ていたので、僕はリモコンを操作して実際に稼働するのかをチェックしてみた。どうやら問題はないようだ。
「う、動いた!? 風が……出てきます!」
「送風モードにしたからね。ところで……今日はこの後、どこかに外出する予定とかはあるのかい?」
「いいえ。そろそろ夕方なので、今日はもう休もうと思います」
「わかった。じゃあ、シャワーの使い方を教えるから来て」
僕は浴室に案内すると、シャワーの使い方をメリザンドに伝えた。
「この細い穴から、お湯が雨のように出るんですね」
「確かに不思議だよね」
僕はしみじみと頷きながらメリィを見た。
「シャンプーとリンスはここ、こっちにはボディソープがあるから使ってね。このくらいの量を使えば十分にきれいになるよ」
「ありがとうございます。早速、試してみます」
シャワールームから出た彼女は、炊飯器に驚くという反応もしてくれたが、食事をしながらこの世界のことを聞くと、すっかり元の表情へと戻っていた。
「じゃあ、この世界で生活するには……冒険者になるしかないんだね」
「ほとんどの場合、仕事の仕方は父親か弟子入り先の親方から教えてもらうことになりますからね……」
さすがに、中世ヨーロッパに似た世界らしく、騎士の子は騎士に、農民の子は農民に、職人の子は職人に、宗教関係者の子は宗教関係者になっているようだ。
ところが、職業にも例外はあり、冒険者、売春婦、旅芸人、そして浮浪者というのは、比較的に経験や技術がなくてもなれる職業のようである。
特に冒険者は、一括千金を得るチャンスもあるため、貴族や騎士の隠し子から難民や犯罪者まで、様々な立場の人間が職業として選択しており、実際に名声を得て勇者や英雄になる者もいるようだ。
「まあ夢破れて力尽きる人は、成功者の何千倍もいるんだろうけどね」
「きっとそうでしょうね……ですが、考えようによっては、人がすぐにいなくなってしまうから、常に新しい人が冒険者になれるとも言えますよね」
確かに、モノは考えようである。凄くブラックな業種かもしれないけど……。
【明日に備えて就寝するメリザンドと主人公】
メリザンド
固有特殊能力1:フルハウス
身長165センチメートル 体重55.5キログラム
本作のヒロイン。炎の精霊と、大地の精霊から加護を受けたハイエルフ。
吸血鬼に噛まれたため、自分自身も吸血鬼になる病にかかっているが、今は封印によって病の進行を遅らせている。山賊に捕まっていたところ、主人公が乱入する形で救出され、今は仲間として一緒に行動している。
フルハウスは、相手に住み心地の良い家を提供することができる特技だが、異世界人であるリューノに部屋を提供したら、家電一式やシャワールームなどが付いてきたという。
経験 C ★★★★
近接攻撃能力 C ★★
中距離攻撃能力 B ★★★★★
遠距離攻撃能力 C ★★★
物理防御力 B ★★★★★(ミスリルローブ装備)
魔法防御力 B ★★★★★★
スタミナ・体力 C ★★★
素早さ C ★★★★
技量・要領良さ B ★★★★★
索敵能力 B ★★★★★
そう旅の目的がはっきりしたところで、僕は自分の恰好を眺めた。
さすがに、エルフとかのいる世界でスーツ姿で歩いていたら……悪目立ちしてしょうがない。
他に着られそうなモノと言えば、山賊から奪った服だろう。とりあえずノミとかはいないようだけど、赤の他人の着ていた服を身に着けるというのは何とも気持ち悪い。
僕は家電の中に洗濯機があることを思い出した。
「ちょっと、洗濯してくるよ」
「え? 洗濯ですか?」
「うん」
僕は服を脱ぐと、痛んだら困るモノなどをネットカバーに包み、洗濯機の中へと放り込んだ。
そして、スイッチを入れると……洗濯機の中に水が注水されていく。
「やっぱり、普段僕が使っているのと同じやつか」
僕は辺りを見回すと、ちょうど液体洗剤も置かれていたので、規定量を測り取ってから洗濯機の中へと入れた。そしてふたを閉めると、隣で見ていたメリザンドも不思議そうに眺めている。
「な、何ですか……この魔導器は?」
「これは洗濯機。勝手に服を洗ってから水気まで取ってくれる機械だよ」
「キカイ?」
「まあ、見ていてくれればわかるよ」
水がたっぷりと注がれると、やがてパネルに35と表示された。
「35分後にできるよ」
「は、はい……」
メリザンドは相変わらず洗濯機を眺めているが、僕は備え付けられているミニ冷蔵庫の中をチェックしてみた。
開けると冷気が出てきたので、しっかりと機能しているようだ。中に入っているのは未開封で2リットルのお茶と水のペットボトル飲料が1つずつ。
あとはヨーグルトとジャムとチョコレート菓子か。これは全部、僕が自分のアパートに入れていたものと同じだ。
というか、お米は5キログラムくらい残っていて、他にもカップ麺とか、缶ビール1箱とか、パスタとか……僕がアパートに残したモノが一通りそろっている。
洗面台の周りを見てみると、石鹸とか予備の洗剤とか、歯ブラシのストックとか、シャンプーとリンスのストックとか、色々なモノが出てきた。
「ハンディウォシュレットや髭剃りもある……これなら十分に生活できそうだ」
念のため蛇口を捻って水やお湯が出ることを確認したら、僕は満足しながらメリザンドのいる居間へと戻った。
「これらの道具は……ぜんぶ、貴方のモノなんですか?」
「うん、この世界に来る前に僕が持っていたり使っていたものだよ」
彼女は今度はクーラーを見ていたので、僕はリモコンを操作して実際に稼働するのかをチェックしてみた。どうやら問題はないようだ。
「う、動いた!? 風が……出てきます!」
「送風モードにしたからね。ところで……今日はこの後、どこかに外出する予定とかはあるのかい?」
「いいえ。そろそろ夕方なので、今日はもう休もうと思います」
「わかった。じゃあ、シャワーの使い方を教えるから来て」
僕は浴室に案内すると、シャワーの使い方をメリザンドに伝えた。
「この細い穴から、お湯が雨のように出るんですね」
「確かに不思議だよね」
僕はしみじみと頷きながらメリィを見た。
「シャンプーとリンスはここ、こっちにはボディソープがあるから使ってね。このくらいの量を使えば十分にきれいになるよ」
「ありがとうございます。早速、試してみます」
シャワールームから出た彼女は、炊飯器に驚くという反応もしてくれたが、食事をしながらこの世界のことを聞くと、すっかり元の表情へと戻っていた。
「じゃあ、この世界で生活するには……冒険者になるしかないんだね」
「ほとんどの場合、仕事の仕方は父親か弟子入り先の親方から教えてもらうことになりますからね……」
さすがに、中世ヨーロッパに似た世界らしく、騎士の子は騎士に、農民の子は農民に、職人の子は職人に、宗教関係者の子は宗教関係者になっているようだ。
ところが、職業にも例外はあり、冒険者、売春婦、旅芸人、そして浮浪者というのは、比較的に経験や技術がなくてもなれる職業のようである。
特に冒険者は、一括千金を得るチャンスもあるため、貴族や騎士の隠し子から難民や犯罪者まで、様々な立場の人間が職業として選択しており、実際に名声を得て勇者や英雄になる者もいるようだ。
「まあ夢破れて力尽きる人は、成功者の何千倍もいるんだろうけどね」
「きっとそうでしょうね……ですが、考えようによっては、人がすぐにいなくなってしまうから、常に新しい人が冒険者になれるとも言えますよね」
確かに、モノは考えようである。凄くブラックな業種かもしれないけど……。
【明日に備えて就寝するメリザンドと主人公】
メリザンド
固有特殊能力1:フルハウス
身長165センチメートル 体重55.5キログラム
本作のヒロイン。炎の精霊と、大地の精霊から加護を受けたハイエルフ。
吸血鬼に噛まれたため、自分自身も吸血鬼になる病にかかっているが、今は封印によって病の進行を遅らせている。山賊に捕まっていたところ、主人公が乱入する形で救出され、今は仲間として一緒に行動している。
フルハウスは、相手に住み心地の良い家を提供することができる特技だが、異世界人であるリューノに部屋を提供したら、家電一式やシャワールームなどが付いてきたという。
経験 C ★★★★
近接攻撃能力 C ★★
中距離攻撃能力 B ★★★★★
遠距離攻撃能力 C ★★★
物理防御力 B ★★★★★(ミスリルローブ装備)
魔法防御力 B ★★★★★★
スタミナ・体力 C ★★★
素早さ C ★★★★
技量・要領良さ B ★★★★★
索敵能力 B ★★★★★
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