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20.処k……コホン、天馬スマイル
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エントリーを済ませ、海賊船に戻ってもミホノシュヴァルツ号は、天馬スマイルを継続していた。
怖いんですけど。本当に怖いんですけど、僕は何も気づかないふりをしながら、隣で笑っていることにした。だって、本当のことを話せば、エリンとかリーゼ辺りが怖がるからな。
ちなみに帰りは僕とシュヴァルツ号だけでなく、あの有翼人の少女も一緒だった。
なぜかと言えば……シュヴァルツ号が、さっさと買い戻するように告げたからである。
『あの意地の悪そうな金持ちどもだ。吾らが何のためにホースレースに参加しているのか知ったら、先手を打ってくるかもしれん』
『奴隷商人に金のことを聞かれたら、売掛金を回収できたとでも言えばいいだろう』
このセリフを、天馬スマイルで言うんだから迫力がある。
ニッパーやマーチル辺りは、シュヴァルツ号が上機嫌だからいいことがあったと思っているようだが……逆です。いまハラワタが煮えくり返っているので、くれぐれも地雷発言はしないように。
ちなみに、察しのいいヤーシッチとオフィーリアは、シュヴァルツ号が完全にブチ切れモードなことを察していた。
「一体、何があったんですか?」
「馬鹿な成金どもがトラの尾を踏みまくったんだ……明日、血の雨が降らないことを祈る」
「そ……そうなのか……」
こうして有翼人の少女ハルフリーダは、新たに僕たち海賊団の一員になったワケだが、ウイスキーデビルの持っていた金貨は、これでほぼ使い切ってしまい……もう小銭しかない。
明日のレースで負けたら、文字通り一文無しの海賊団になってしまうが……ここは、コイツの天馬スマイルにかけるとしよう。
こうして、食事も終わって明日のレースを待つだけとなったけれど、寝る前にミホノシュヴァルツ号の様子を見ると、やっと普通の表情に戻っていた。
せめて夜くらいはぐっすりと眠るかと安心したら、渡り鳥が飛んできた何かをさえずったら、再び耳を倒してお怒りモードになっていく。
コイツ、さすがに眠れないんじゃないかと思ったら、15分後には眠っていたからシュヴァルツ号のメンタル構造は凄い。
翌朝になって、再びシュヴァルツ号が寝ている甲板へと向かうと、コイツは横倒しになって眠っていたが、僕の脚音を聞いてゆっくりと起き上がった。
『そろそろ時間か?』
「ああ、腹ごしらえを済ませたら行こう」
ここでは普通の表情をしているシュヴァルツ号だったが、いざレース会場へと到着した時には、再び天馬スマイルを浮かべていた。
何だか、段々と怖くなってくるんだが……大丈夫か?
僕たちが着いたときには、まだ成金連中のほとんどは来ていなかったが、係員に断って準備運動をさせていると、やがて成金たちは自慢のウマと乗り手たちを用意してレース会場に姿を見せた。
どの駿馬や一角獣も、しっかりと毛並みを整えられているうえに、タテガミを三つ編みにしている奴までいる。
ミホノシュヴァルツ号も、恥ずかしくないように毛並みとかを整えてきたんだけど、観客たちのいる場所から見れば、貧乏人の乗るみすぼらしいウマという感じに見えてしまうだろう。
うちの船の女性5人と、ドワーフのニッパーが応援に来てくれたが、観客の多くが優勝候補の3頭ばかりを応援しているから完全にアウェイだ。
さて、この状況でシュヴァルツ号はと言えば……相変わらず天馬スマイルをしていた。
『ところでエッケハルトよ』
「なんだい?」
『先日のハルフリーダのウマが行方不明になった件だがな』
「うん」
『実は、ある成金が故意に盗み出して彼女をハメたことが、ある情報筋から明らかになった』
普通なら、何だとくらいのことは言うところだが、僕はそれよりもシュヴァルツ号が天馬のように微笑みながら言っていることの方に恐ろしさを感じた。
何というか、まるでコイツが、笑顔の仮面をつけたまま喋っているように見える。
「それは……誰だ?」
『いずれ自分から尻尾を出すさ。吾の恰好をよく見て欲しい』
そう言われて僕は驚いていた。
よく見ればコイツ……前脚2本と後ろ右脚にテーピングをしている。それだけでなく、しっかりと金持ちどもが座るVIPルームに視線を向けている。
これってもしかして、盗まれたウマに扮して……窃盗成金にプレッシャーをかけているのか!?
僕がそう考えている間にも、他の参加ウマたちも着々と準備運動を終えてから、スタート地点に集まってくる。係員たちもレース開始の準備に忙しそうだ。
そろそろなのだろう。
僕たちもまたスタート地点に着く。エントリーは一番最後だったらしく一番外側が僕たちの場所だ。
『あと、気を付けるべき問題が1つ』
「なんだ?」
『あえて遅れて出る。どうやら審判も買収済みのようだからな』
「…………」
その直後にレース開始の合図が出たが、僕たちの目の前にはまだスタッフがいる状況で始まっていた。
これによって1秒ほど遅れることになったが、ホースレースでの1秒は恐ろしく大きなディスアドバンテージになる。
【馬主席から】
怖いんですけど。本当に怖いんですけど、僕は何も気づかないふりをしながら、隣で笑っていることにした。だって、本当のことを話せば、エリンとかリーゼ辺りが怖がるからな。
ちなみに帰りは僕とシュヴァルツ号だけでなく、あの有翼人の少女も一緒だった。
なぜかと言えば……シュヴァルツ号が、さっさと買い戻するように告げたからである。
『あの意地の悪そうな金持ちどもだ。吾らが何のためにホースレースに参加しているのか知ったら、先手を打ってくるかもしれん』
『奴隷商人に金のことを聞かれたら、売掛金を回収できたとでも言えばいいだろう』
このセリフを、天馬スマイルで言うんだから迫力がある。
ニッパーやマーチル辺りは、シュヴァルツ号が上機嫌だからいいことがあったと思っているようだが……逆です。いまハラワタが煮えくり返っているので、くれぐれも地雷発言はしないように。
ちなみに、察しのいいヤーシッチとオフィーリアは、シュヴァルツ号が完全にブチ切れモードなことを察していた。
「一体、何があったんですか?」
「馬鹿な成金どもがトラの尾を踏みまくったんだ……明日、血の雨が降らないことを祈る」
「そ……そうなのか……」
こうして有翼人の少女ハルフリーダは、新たに僕たち海賊団の一員になったワケだが、ウイスキーデビルの持っていた金貨は、これでほぼ使い切ってしまい……もう小銭しかない。
明日のレースで負けたら、文字通り一文無しの海賊団になってしまうが……ここは、コイツの天馬スマイルにかけるとしよう。
こうして、食事も終わって明日のレースを待つだけとなったけれど、寝る前にミホノシュヴァルツ号の様子を見ると、やっと普通の表情に戻っていた。
せめて夜くらいはぐっすりと眠るかと安心したら、渡り鳥が飛んできた何かをさえずったら、再び耳を倒してお怒りモードになっていく。
コイツ、さすがに眠れないんじゃないかと思ったら、15分後には眠っていたからシュヴァルツ号のメンタル構造は凄い。
翌朝になって、再びシュヴァルツ号が寝ている甲板へと向かうと、コイツは横倒しになって眠っていたが、僕の脚音を聞いてゆっくりと起き上がった。
『そろそろ時間か?』
「ああ、腹ごしらえを済ませたら行こう」
ここでは普通の表情をしているシュヴァルツ号だったが、いざレース会場へと到着した時には、再び天馬スマイルを浮かべていた。
何だか、段々と怖くなってくるんだが……大丈夫か?
僕たちが着いたときには、まだ成金連中のほとんどは来ていなかったが、係員に断って準備運動をさせていると、やがて成金たちは自慢のウマと乗り手たちを用意してレース会場に姿を見せた。
どの駿馬や一角獣も、しっかりと毛並みを整えられているうえに、タテガミを三つ編みにしている奴までいる。
ミホノシュヴァルツ号も、恥ずかしくないように毛並みとかを整えてきたんだけど、観客たちのいる場所から見れば、貧乏人の乗るみすぼらしいウマという感じに見えてしまうだろう。
うちの船の女性5人と、ドワーフのニッパーが応援に来てくれたが、観客の多くが優勝候補の3頭ばかりを応援しているから完全にアウェイだ。
さて、この状況でシュヴァルツ号はと言えば……相変わらず天馬スマイルをしていた。
『ところでエッケハルトよ』
「なんだい?」
『先日のハルフリーダのウマが行方不明になった件だがな』
「うん」
『実は、ある成金が故意に盗み出して彼女をハメたことが、ある情報筋から明らかになった』
普通なら、何だとくらいのことは言うところだが、僕はそれよりもシュヴァルツ号が天馬のように微笑みながら言っていることの方に恐ろしさを感じた。
何というか、まるでコイツが、笑顔の仮面をつけたまま喋っているように見える。
「それは……誰だ?」
『いずれ自分から尻尾を出すさ。吾の恰好をよく見て欲しい』
そう言われて僕は驚いていた。
よく見ればコイツ……前脚2本と後ろ右脚にテーピングをしている。それだけでなく、しっかりと金持ちどもが座るVIPルームに視線を向けている。
これってもしかして、盗まれたウマに扮して……窃盗成金にプレッシャーをかけているのか!?
僕がそう考えている間にも、他の参加ウマたちも着々と準備運動を終えてから、スタート地点に集まってくる。係員たちもレース開始の準備に忙しそうだ。
そろそろなのだろう。
僕たちもまたスタート地点に着く。エントリーは一番最後だったらしく一番外側が僕たちの場所だ。
『あと、気を付けるべき問題が1つ』
「なんだ?」
『あえて遅れて出る。どうやら審判も買収済みのようだからな』
「…………」
その直後にレース開始の合図が出たが、僕たちの目の前にはまだスタッフがいる状況で始まっていた。
これによって1秒ほど遅れることになったが、ホースレースでの1秒は恐ろしく大きなディスアドバンテージになる。
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