1 / 17
1.追放された冒険者
しおりを挟む
「お前はクビだ!」
何の話だと思いながら、声のする方に視線を向けると冒険者パーティーがいた。
位置関係からリーダーと思しき男は、バカにしたように立場の弱そうな戦士を罵っており、パーティーメンバーの女たちも、面白がったりはやし立てたりしながら、気の弱そうな戦士を罵っている。
「待ってくれ。僕はタンク役としてみんなを魔物から守っているんだ!」
「なーにがタンクだよ。今月お前は何体の敵を倒したぁ?」
小生は、この無能リーダーの言葉に小さくため息をついた。
タンクとは言わばチームの盾だ。敵の侵入を身体ひとつで止め、安全に他の戦士たちが戦えるように配慮するポジション。それに攻撃力まで求めるのは、あまりに贅沢すぎるだろう。
それにはやし立てるだけで、無能リーダーを止めない女たち。
誰もが冒険者だというのに身体に傷らしい傷がない。ここまで見事に守ってもらっているのに、感謝の意を表すどころか、恩を仇で返すようなマネをするとは……
「無能ヤロー、慰謝料を払え……武器もアイテムも全部おいていけ!」
そう言いながら冒険者パーティー一団は、武器を構えてタンク役の戦士を脅していた。
「……わかったよ」
タンク役の青年が、全ての武器を置くと……無能リーダーは不適に笑いながら言った。
「よし、これはせんべつだ!」
「う、うわ……や、やめろぉ!」
そう言いながら無能リーダーは、タンク役の青年を切り伏せると、ゲラゲラと大笑いしながら去っていった。
「…………」
冒険者パーティーの気配がなくなったので近づいてみると、元タンク役の青年はうつ伏せに倒れたまま血を流していた。
「…………」
さらによく近づいてみると、小生は驚きのあまり声を上げそうになった。
あれほど間近で斬りつけられていたのに、致命傷を受けていないのである。
追放側は間違いなく、何のためらいもなくヒトを殺傷できる精神構造の持ち主だろう。その攻撃を受けて生き延びるということは、タンク役として十分すぎるほどの技術がある。
小生は額にあるユニコーンホーンを出現させると、彼の傷口の消毒と傷そのものの治療、それから繊維に働きかけてシャツも新品同然に修復した。
「痛みが……引いていく……?」
「ひどい目に遭ったね」
元タンク役の青年が振り返ると、小生の姿を見て驚いていた。
「き、きみは……うわさのユニコーン!?」
「うわさかどうかはわからないけど、旅をしているウマだよ」
そう答えると、青年は嬉しそうに笑った。
「一度でいいから会ってみたいと思っていたんだ……」
彼はためらってはいるが、興味がありそうに小生を眺めてきた。
「助けてくれてありがとう、そ、その……」
「……どうしたんだい?」
「どうして、旅を……続けているのか気になったんだ。君ほどのユニコーンなら、ウマの群れにいた方が……安心だし、子供もできると思うんだ」
「小生が旅をはじめた理由か……」
小生は、昔を懐かしみながら空を見上げた。
「…………」
「…………」
なんとなく笑うと、再び彼を見た。
「君が真の戦士となったとき、また会えそうな気がする……その時に答えようかな」
そう答えると、青年もしっかりと小生を見て笑った。
「わかった。今日の治療費は……その時に出世払いする、ということでいいか?」
小生は、確かに……と思いながら頷いた。
「ちなみに小生は、このまま西の海岸まで旅をするよ。君はどこに行くんだい?」
青年は「奇遇だね!」と言いながら答えた。
「僕の実家は、その近くの漁村にあるんだ……ご一緒してもいいかい?」
小生は、なるほどと思った。
久しぶりに良い話が聞けるかもしれない。
小生はハミや鞍といった、人が乗ることに必要なアイテムを魔法の力で出すと、青年はとても驚いていた。
「こ……こんなことが!」
「せっかくだし……なにかおもしろい話を聞きたいな。背中に乗りながら気ままに話をして欲しい」
「そ、そんなことで良ければ……」
こうして、追放された元タンク役の青年と、少し旅をしてみることにした。
「ところで君……変わったズボンを履いてるね」
「これは、ジャージという、父の形見の衣服なんだ……」
「なるほど……つまり転生者2世なんだね」
――――
【作者のひとりごと】
筋肉質にする調整に成功しましたが、身体に傷跡をつけることは残念ながらできませんでした。
使っているのは無料版なので、有料登録すると……話は違ってくるのかもしれません。
ちなみに、追放ニセ勇者のイラスト作成にもチャレンジしてみましたが、目の下に隈を入れることや、悪人面にすることに失敗し、ただのイケメン兄さんに……
めげずにどこかで作ってみたいものです。
何の話だと思いながら、声のする方に視線を向けると冒険者パーティーがいた。
位置関係からリーダーと思しき男は、バカにしたように立場の弱そうな戦士を罵っており、パーティーメンバーの女たちも、面白がったりはやし立てたりしながら、気の弱そうな戦士を罵っている。
「待ってくれ。僕はタンク役としてみんなを魔物から守っているんだ!」
「なーにがタンクだよ。今月お前は何体の敵を倒したぁ?」
小生は、この無能リーダーの言葉に小さくため息をついた。
タンクとは言わばチームの盾だ。敵の侵入を身体ひとつで止め、安全に他の戦士たちが戦えるように配慮するポジション。それに攻撃力まで求めるのは、あまりに贅沢すぎるだろう。
それにはやし立てるだけで、無能リーダーを止めない女たち。
誰もが冒険者だというのに身体に傷らしい傷がない。ここまで見事に守ってもらっているのに、感謝の意を表すどころか、恩を仇で返すようなマネをするとは……
「無能ヤロー、慰謝料を払え……武器もアイテムも全部おいていけ!」
そう言いながら冒険者パーティー一団は、武器を構えてタンク役の戦士を脅していた。
「……わかったよ」
タンク役の青年が、全ての武器を置くと……無能リーダーは不適に笑いながら言った。
「よし、これはせんべつだ!」
「う、うわ……や、やめろぉ!」
そう言いながら無能リーダーは、タンク役の青年を切り伏せると、ゲラゲラと大笑いしながら去っていった。
「…………」
冒険者パーティーの気配がなくなったので近づいてみると、元タンク役の青年はうつ伏せに倒れたまま血を流していた。
「…………」
さらによく近づいてみると、小生は驚きのあまり声を上げそうになった。
あれほど間近で斬りつけられていたのに、致命傷を受けていないのである。
追放側は間違いなく、何のためらいもなくヒトを殺傷できる精神構造の持ち主だろう。その攻撃を受けて生き延びるということは、タンク役として十分すぎるほどの技術がある。
小生は額にあるユニコーンホーンを出現させると、彼の傷口の消毒と傷そのものの治療、それから繊維に働きかけてシャツも新品同然に修復した。
「痛みが……引いていく……?」
「ひどい目に遭ったね」
元タンク役の青年が振り返ると、小生の姿を見て驚いていた。
「き、きみは……うわさのユニコーン!?」
「うわさかどうかはわからないけど、旅をしているウマだよ」
そう答えると、青年は嬉しそうに笑った。
「一度でいいから会ってみたいと思っていたんだ……」
彼はためらってはいるが、興味がありそうに小生を眺めてきた。
「助けてくれてありがとう、そ、その……」
「……どうしたんだい?」
「どうして、旅を……続けているのか気になったんだ。君ほどのユニコーンなら、ウマの群れにいた方が……安心だし、子供もできると思うんだ」
「小生が旅をはじめた理由か……」
小生は、昔を懐かしみながら空を見上げた。
「…………」
「…………」
なんとなく笑うと、再び彼を見た。
「君が真の戦士となったとき、また会えそうな気がする……その時に答えようかな」
そう答えると、青年もしっかりと小生を見て笑った。
「わかった。今日の治療費は……その時に出世払いする、ということでいいか?」
小生は、確かに……と思いながら頷いた。
「ちなみに小生は、このまま西の海岸まで旅をするよ。君はどこに行くんだい?」
青年は「奇遇だね!」と言いながら答えた。
「僕の実家は、その近くの漁村にあるんだ……ご一緒してもいいかい?」
小生は、なるほどと思った。
久しぶりに良い話が聞けるかもしれない。
小生はハミや鞍といった、人が乗ることに必要なアイテムを魔法の力で出すと、青年はとても驚いていた。
「こ……こんなことが!」
「せっかくだし……なにかおもしろい話を聞きたいな。背中に乗りながら気ままに話をして欲しい」
「そ、そんなことで良ければ……」
こうして、追放された元タンク役の青年と、少し旅をしてみることにした。
「ところで君……変わったズボンを履いてるね」
「これは、ジャージという、父の形見の衣服なんだ……」
「なるほど……つまり転生者2世なんだね」
――――
【作者のひとりごと】
筋肉質にする調整に成功しましたが、身体に傷跡をつけることは残念ながらできませんでした。
使っているのは無料版なので、有料登録すると……話は違ってくるのかもしれません。
ちなみに、追放ニセ勇者のイラスト作成にもチャレンジしてみましたが、目の下に隈を入れることや、悪人面にすることに失敗し、ただのイケメン兄さんに……
めげずにどこかで作ってみたいものです。
0
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
相続した畑で拾ったエルフがいつの間にか嫁になっていた件 ~魔法で快適!田舎で農業スローライフ~
ちくでん
ファンタジー
山科啓介28歳。祖父の畑を相続した彼は、脱サラして農業者になるためにとある田舎町にやってきた。
休耕地を畑に戻そうとして草刈りをしていたところで発見したのは、倒れた美少女エルフ。
啓介はそのエルフを家に連れ帰ったのだった。
異世界からこちらの世界に迷い込んだエルフの魔法使いと初心者農業者の主人公は、畑をおこして田舎に馴染んでいく。
これは生活を共にする二人が、やがて好き合うことになり、付き合ったり結婚したり作物を育てたり、日々を生活していくお話です。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
