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15.リンゴの木を見つける
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ゴブリンを退けて数日後。
小生はこの日も自分のペースで、除草作業をしていた。
「この草、美味しいね」
「そうですね。このシーズンは草もよく伸びるし食べ頃です」
「みんなも最近、食が細っているよ。今のうちに食べないと冬が大変だ」
「は、はい!」
小生の働きかけが功を奏したらしく、他の牝馬たちも次々と除草作業をはじめた。冬になると、この辺りは雪で閉ざされてしまうため、今のうちにタップリと食べて、皮下脂肪を付けて置くべきだ。
「小生は、かなりたくさん食べたし……少し見回りしてくるよ」
「それなら、私もお供させてください」
「じゃあ、一緒に行こうか?」
「はい!」
仲良く並んで歩こうとしたら、青毛娘は小生の2歩後ろを付き従うように歩いてくる。
「そこまで気を遣わなくてもいいよ」
「いいえ、貴方は群れのボス。私は家来です」
「別にそういうの……決まってないんだけどなぁ」
「いいえ、私が決めました」
青毛娘は大人しそうに見えて、意外と芯の強さがある女の仔だ。小生の副官として充分な資質を持っているのかもしれない。
「…………」
そんなことを考えながら森の中を歩いていくと、少し甘い香りが漂ってくる。その方角に視線を上げると、小生の大好物のリンゴの木があり、美しい白い小さな花を咲かせていた。
「見事なものだね!」
そういうと、青毛娘もにっこりと笑ってくれた。
「今までは、ゴブリンや例の5頭が怖かったので、ここまで来れませんでしたが……今年からは、リンゴにありつくことも出来るかもしれませんね」
今まで頑張った甲斐があったと思いながら話を聞いていたが、よく考えればリンゴの樹の下に下草が沢山生えていてけしからん。なぜ、下草がけしからんのかといえば、雑草が多ければリンゴの木の栄養分の取り分が減ってしまうのである。
これは、除草部隊の出番だろう。
「よし、ハニー……食べて応援だよ!」
「え? 何を食べるのですか? まさかリンゴの木??」
「固くて齧れないよ(笑) そうじゃなくて下草の方さ!」
「ああ、下草を食べればいいのですね?」
「うん! たっぷりと食べて、リンゴの木に栄養を行き渡らせる! そして、秋になったら……グフフフフ……」
「……あなた。ひどい顔ですよ」
とりあえず青毛娘に言われ、小生は表情だけは元に戻すことにした。
だけど、リンゴの木のために草を食んでいるだけで、何だかリンゴをかじっているような甘みを感じてしまう。ここに生えているのはあくまで草だ。リンゴではない。
そう自分に言い聞かせているのだけど、やはりリンゴの花は可憐で美しく、その香りがなんてことない草まで、美味しく感じさせていることに気付かされる。
「まさに……花見だよ」
「え……?」
青毛娘は、こちらを見た。
確かに異性と2頭だけで、白く可憐な花を見ながら草を食むなんて、これいじょう幸せなことはない。きっと青毛娘も満足してくれているだろう。
おや、よく見れば青毛娘は恥ずかしそうに頬を赤らめている。さすがに2頭きりでのリンゴの花見なんて、ちょっと刺激が強すぎただろうか。
彼女は草を食むと言った。
「わかりました……あなた」
「ん、どうしたんだい?」
なるべく、普段通りに答えを返すと、彼女はよりじっと小生を見てきた。
「…………」
「…………」
「どしたの?」
「いえ、貴方が鼻を見ろと言ったので……」
「…………」
「…………」
どうしてそうなった!?
仕方ないので、鼻腔を大きく開いたり、小さく閉じたりを繰り返したり、アゴを右と左に寄せて白毛オジサンの顔のマネをして変顔をすると、彼女は噴き出しそうになった。
「じゃあ、下草を食べようか」
「そうですね」
しばらく下草を食べて行くと、やはり出るモノは出るのである。
小生はここは自分の領土だと主張するために、でっかい置き土産を残すことにした。
「ちょっと失礼」
「は、はい」
白毛オジサン流に言えば機雷設置を行うと、青毛娘は「おお……」と言いながら小生の置き土産を眺めていた。そんなにジロジロと眺められると恥ずかしいのだが。
「大きさといい、色といい、臭いといい……見事なモノですね」
「いや、ジロジロと見るモノでは……」
その直後に、青毛娘は鼻先を近づけてクンクンと嗅いでいた。
「くっさ!」
「当たり前だろう!」
「100点満点の臭さです!」
「そ、そう?」
「リンゴの甘い香りも台無しになるレベル……これならライバルも威嚇できます!」
「褒めるのかけなすのか、どっちかにしろ!」
【リンゴの花と青毛娘(黒毛君の脳内イメージ)】
日本でリンゴが花を咲かせるのは、基本的に5月の中旬ごろですが、ツーノッパの世界は寒いため、リンゴも6月ごろに花を咲かせます。
花言葉は「選ばれた恋」「優先」「選択」などです。
因みに、競走馬の中にはフジリンゴしか食べない猛者もいたそうです。
小生はこの日も自分のペースで、除草作業をしていた。
「この草、美味しいね」
「そうですね。このシーズンは草もよく伸びるし食べ頃です」
「みんなも最近、食が細っているよ。今のうちに食べないと冬が大変だ」
「は、はい!」
小生の働きかけが功を奏したらしく、他の牝馬たちも次々と除草作業をはじめた。冬になると、この辺りは雪で閉ざされてしまうため、今のうちにタップリと食べて、皮下脂肪を付けて置くべきだ。
「小生は、かなりたくさん食べたし……少し見回りしてくるよ」
「それなら、私もお供させてください」
「じゃあ、一緒に行こうか?」
「はい!」
仲良く並んで歩こうとしたら、青毛娘は小生の2歩後ろを付き従うように歩いてくる。
「そこまで気を遣わなくてもいいよ」
「いいえ、貴方は群れのボス。私は家来です」
「別にそういうの……決まってないんだけどなぁ」
「いいえ、私が決めました」
青毛娘は大人しそうに見えて、意外と芯の強さがある女の仔だ。小生の副官として充分な資質を持っているのかもしれない。
「…………」
そんなことを考えながら森の中を歩いていくと、少し甘い香りが漂ってくる。その方角に視線を上げると、小生の大好物のリンゴの木があり、美しい白い小さな花を咲かせていた。
「見事なものだね!」
そういうと、青毛娘もにっこりと笑ってくれた。
「今までは、ゴブリンや例の5頭が怖かったので、ここまで来れませんでしたが……今年からは、リンゴにありつくことも出来るかもしれませんね」
今まで頑張った甲斐があったと思いながら話を聞いていたが、よく考えればリンゴの樹の下に下草が沢山生えていてけしからん。なぜ、下草がけしからんのかといえば、雑草が多ければリンゴの木の栄養分の取り分が減ってしまうのである。
これは、除草部隊の出番だろう。
「よし、ハニー……食べて応援だよ!」
「え? 何を食べるのですか? まさかリンゴの木??」
「固くて齧れないよ(笑) そうじゃなくて下草の方さ!」
「ああ、下草を食べればいいのですね?」
「うん! たっぷりと食べて、リンゴの木に栄養を行き渡らせる! そして、秋になったら……グフフフフ……」
「……あなた。ひどい顔ですよ」
とりあえず青毛娘に言われ、小生は表情だけは元に戻すことにした。
だけど、リンゴの木のために草を食んでいるだけで、何だかリンゴをかじっているような甘みを感じてしまう。ここに生えているのはあくまで草だ。リンゴではない。
そう自分に言い聞かせているのだけど、やはりリンゴの花は可憐で美しく、その香りがなんてことない草まで、美味しく感じさせていることに気付かされる。
「まさに……花見だよ」
「え……?」
青毛娘は、こちらを見た。
確かに異性と2頭だけで、白く可憐な花を見ながら草を食むなんて、これいじょう幸せなことはない。きっと青毛娘も満足してくれているだろう。
おや、よく見れば青毛娘は恥ずかしそうに頬を赤らめている。さすがに2頭きりでのリンゴの花見なんて、ちょっと刺激が強すぎただろうか。
彼女は草を食むと言った。
「わかりました……あなた」
「ん、どうしたんだい?」
なるべく、普段通りに答えを返すと、彼女はよりじっと小生を見てきた。
「…………」
「…………」
「どしたの?」
「いえ、貴方が鼻を見ろと言ったので……」
「…………」
「…………」
どうしてそうなった!?
仕方ないので、鼻腔を大きく開いたり、小さく閉じたりを繰り返したり、アゴを右と左に寄せて白毛オジサンの顔のマネをして変顔をすると、彼女は噴き出しそうになった。
「じゃあ、下草を食べようか」
「そうですね」
しばらく下草を食べて行くと、やはり出るモノは出るのである。
小生はここは自分の領土だと主張するために、でっかい置き土産を残すことにした。
「ちょっと失礼」
「は、はい」
白毛オジサン流に言えば機雷設置を行うと、青毛娘は「おお……」と言いながら小生の置き土産を眺めていた。そんなにジロジロと眺められると恥ずかしいのだが。
「大きさといい、色といい、臭いといい……見事なモノですね」
「いや、ジロジロと見るモノでは……」
その直後に、青毛娘は鼻先を近づけてクンクンと嗅いでいた。
「くっさ!」
「当たり前だろう!」
「100点満点の臭さです!」
「そ、そう?」
「リンゴの甘い香りも台無しになるレベル……これならライバルも威嚇できます!」
「褒めるのかけなすのか、どっちかにしろ!」
【リンゴの花と青毛娘(黒毛君の脳内イメージ)】
日本でリンゴが花を咲かせるのは、基本的に5月の中旬ごろですが、ツーノッパの世界は寒いため、リンゴも6月ごろに花を咲かせます。
花言葉は「選ばれた恋」「優先」「選択」などです。
因みに、競走馬の中にはフジリンゴしか食べない猛者もいたそうです。
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