レアモンスターの快適生活 ~勇者や魔王に目を付けられずに、楽して美味しくスローライフしよう~

スィグトーネ

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29.台風の到来

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 ウマウマ団の事件の翌日。
 いつも通りに草を食んでいたのだが、ふと風向きが普段と違うことに気が付いた。
「……ねえハニー?」
「なんでしょう?」
「風……何だか、湿っぽいんだけど……」
 青毛娘も、空に視線を向けると、やがて頷いた。
「そうですね……何だか、嵐が来そうな予感が……」

 2頭で顔を見合わせた直後に、渡り鳥が忙しそうに飛んでいった。
 それだけでなく、地面からツチノコも顔を出したが、その表情はとても深刻そうだ。
『おい、ボス栗毛』
「なんだい?」
『少しずつだけど、でっかい嵐が迫っているぞ……お前らも充分に気を付けろよ?』
「う、うん!」
 小生たちもまた、しっかりと腹ごしらえを済ませると、森の中に退避することにした。
 岩山もあるのだが、あそこは近くに川が流れているし、多くの雨にさらされると土砂崩れなどが起きて閉じ込められたり、最悪だと生き埋めになる恐れもある。
 例え雨に濡れたり、折れた枝にぶつかったとしても、森の中の方がまだ安全だろう。

 少しずつ空が暗くなっていくと、青毛娘の母親や妹たちも、不安そうに空を見上げていく。
「何だか、だんだんと風が強くなってきてるね」
「雨も……降り始めた」
 彼女たちが言うように、雨が降りはじめると、ものの2分ほどで地面を打つほど強い雨が降りはじめた。小生の身体もどんどんと雨に濡れていって重くなっていく。
 近くにいた青毛娘も、他の妹たちも次々と雨水に濡れたころには、風も出てきて本格的な嵐になった。
「みんな、飛ばされないように気を付けて!」
「うん!」

 その直後、「うわーーーーーー」という声と共に、何かが強風に煽られながら飛んでいった。何だか聞いたことがある声だったが、今のは何だったんだ。
 思わず青毛娘と目が合った。
「ねえ、今の……」
「……野鳥ですね」
 なるほど。枝か何かに掴まっていたけど、こらえ切れなくなって飛ばされてしまったという感じだろうか。こうなってしまったら小生も助けてはあげられないから、自力で何とかして欲しい。

 もうしばらく、群れの全員で雨風に耐えていると、今度は違う声で「ひゃあーーーーーーー!」という声が聞こえてきた。これも何だか聞いたことがある声だ。
 再び青毛娘に視線を向けると、彼女も頷いて答える。
「ちらっと見えましたが、人間の女狩人でした」
「ああ……3流ハンターか」
 恐らく、ハントをしに森に入って来たところで嵐に遭遇。避難しようとして失敗したとか、そんなところだろうか。小生も助けることはできないし、助けたところで何の利点もないから、別にどうなっても構わない。

 更にもうしばらくの間、群れの全員で雨風に耐えていると、今度は更に違う声で「どわあーーーーーー!」という声が聞こえてきた。これも聞いたことがある声だぞ。
 またしても青毛娘に視線を向けると、彼女は心配そうな表情をして言った。
「今のは……ツチノコですね。大丈夫でしょうか?」
「ああ見えてしっかりしてるし、大丈夫だろう……多分」
 ツチノコのことだから、風の様子でも確認しようと、枝にでも登ったところで強風に吹き飛ばされたという感じだろうか。身体も細長いのだから、どこかに絡みついて事なきを得て欲しいところである。

 木々がギシギシと音をたち、小生の脚元にも枝が落ちてきたとき、またしても「ぎょえーーーーーー!」という声が聞こえてきた。この品の無い声にも覚えがある。
 青毛娘に視線を向けると、彼女は興味がなさそうに言った。
「今のはゴブリンです。さっさと、どこかに飛ばされて欲しいです」
「特に頭が軽いから、遠くまで飛んでいくだろうね」
 ゴブリンのことだから、巣穴に水でも入り込んだり、土砂崩れに巻き込まれて、巣から出たところで飛ばされたのだろう。よく見ると錐揉みで飛ばされて行くのだからシュールだ。

 雨水が木々の隙間を通過し、小生の顔を打ち付けるようになったとき、またまた『きんきゅうじたーーーーーヴぃ!』と言いながら飛ばされていく者がいた。
 青毛娘も小生を見てきた。
「今のは……スライムキングとスライムたちですね」
「……どうして、彼らが飛ばされるんだ!?」

 スライムはしっかりと木にしがみついているはずだ。どうして飛ばされたのかを考えてみたが、けっきょく理由はよくわからなかった。

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