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この世界には
簡易便座で篠崎さんの前で排泄させられたあとで、ほとんど身体中の気力を失ったように力の抜けた僕は、首輪をつけられて、いつも夜に連れて行かれるシャワーまで連れて行ってもらった。
汗だくになった体を全部流してもらって、篠崎さんがタオルで丁寧に身体を拭いたあと、「ユウくん、これ履いてね」と、足元にオムツを用意される。
「なんで、オムツ……」
「今日もお仕事いかなきゃいけないから。昨日と同じようにちゃんと自分で替えるんだよ」
白いふわふわのオムツを見ているうちに、さきほどまでだらだら泣き続けていた涙がやっととまった両目にじわっとまた新たに涙が浮かんでくる。
「いやです……」
ぽつ、と声がこぼれる。
「しのさきさっ……おしごと、いかないで……くださいっ」
目の前の篠崎さんに、僕は思いきり抱きついて、わあっとまた泣き出す。
「自分でやるのいやです……っ。一人は嫌です」
「ユウくん、でも……お仕事だからね」
篠崎さんが困ったような声でそう言いながら、僕の背中を宥めるように撫でるけど、涙はとまらない。
「いやですいやですいやですいやです」
今日もこれから、一日中ひとりぼっちで、篠崎さんの帰りを寂しく待っているなんて嫌だ。嫌だ。嫌だ。
涙も、涎も、ぜんぶ篠崎さんの胸に染み込んでいく。
「いかないでください、いかないでください。ずっと、ずっと、そばにいてください」
篠崎さんを引き止めるように僕はぎゅっと篠崎さんにしがみつく。
ずっと一緒に、ずっと一緒にいてほしい。
「わかったよ、ユウくん。今日はお仕事お休みにするね」
篠崎さんが僕を抱きしめたまま耳元優しい声で囁く。
「……っ」
そして、篠崎さんにしがみついていた僕は、最も簡単に、ふわっと、体を抱き上げられる。
篠崎さんが僕を抱っこしたまま、シャワー室を出て、そして、そのまま檻のなかではなく、この篠崎さんの仕事部屋の扉から、外の廊下へと出ていく。
たった四日間だったけどずっと見ていた部屋から、廊下にでると、一気に外が眩しく感じる。
篠崎さんは廊下から、そのまま寝室へと僕を抱き抱えたまま連れていって、大きなベッドの上にそっと僕をおろした。
「今日で、監禁はおしまいね。最後まで、ちゃんと頑張れて偉かったよ」
篠崎さんがそう言って、するりと僕の首にまいていた太い首輪を外す。
「ユウくん。私のパートナーでいてくれて本当にありがとう」
そして、ずっと手枷をはめられて痣になった手首を撫で、篠崎さんが手の甲にキスをし、足枷をはめられて痣になった足首を撫で、僕の足元に跪いて足の甲にキスをする。
「ぼ、ぼくのほうこそ……っっ、僕の方こそっ……篠崎さんのためになにもできない、篠崎さんに与えられてばっかで……なにも……」
まだ涙をながしている僕の足元で、篠崎さんが困ったような顔になり、
「なんでそんなこと思うの? そんなわけないでしょ」
と、早口で返してくる。
「ぼく……篠崎さんのために指を切ったり、できないし」
篠崎さんの勢いにおされるまま、ついぽろっと口をついてしまった言葉に、篠崎さんは一瞬、なんのことかよくわかっていない顔をして、少し考えを巡らせるような沈黙ののち、「ああ」と呟いて「青斗に変なこと吹きこまれたんだよね」と、すっと目を細める。
「ちが、ちがぃます……っ!!」
咄嗟に、否定する。
たしかに青くんにも指を切ったっていう昔のパートナーの話を聞いた。でも、そのときはほとんど意識が朦朧としていて……。
「前に、SMバーに行った時、そういうのが好きだって話してたから。アクロ……なんとかって」
あのデートのあと、軽い気持ちでネットで単語を検索してみたら、なんだかずらずらとすごく僕にとっては未知のことが書かれていて、なんだか怖くなってすぐに調べるのをやめてしまった。それからほとんど忘れていたけれど、ホテルで青くんがぽろっと溢した昔のパートナーの話を、檻の中でふと思い出した時、記憶が掘り起こされた。篠崎さんはそういうのが好きなんだって……。
篠崎さんは、まだ僕の足元に跪いたまま、ベッドに腰掛けた僕の左手をそっと、もちあげた。
「私の世界にはもうユウくんしかいないのに。ユウくんはいてくれるだけで満たされるし、ユウくんは、ユウくんのままでいてくれることが、私の幸せなんだ。だからさっきはおしまいって言ったけど、本当はずっと檻の中に閉じこめておきたいし、たしかにユウくんが私のそばから離れられないようにユウくんの両足がほしい。でも、足も指も、本当にいらない。ユウくんが痛くて怖いようなことなんか、絶対にしてほしくないから。絶対にしないで」
「お仕置きはするのに……?」
おそるおそる尋ねると、篠崎さんは笑って、そのまま勢いよく僕を正面から抱きしめる。
「ユウくんの、そういうところが可愛いんだ。お仕置きは絶対に嫌なのに、頑張って耐えて、頑張って私の言うこと必死に聞くユウくんが可愛い。可愛い。可愛すぎて本当に甘やかしてしまいそうだった。ユウくんにはずっといい子でいてほしいけど、いい子のユウくんも、悪い子のユウくんも、まるごと愛しい。私の大切なユウくんはどうでもいい心配なんてしないで、ユウくんのままでいてくれればいいんだよ」
篠崎さんが僕を抱きしめたまま、頭の後ろをゆっくりと撫でる。
「でも、僕もっと全部、全部、知りたいんです。篠崎さんの好きなもの、好きなこと、本当は全部応えたいけど……」
本当は、指でも、手でも、足でも、篠崎さんのためにあげられたらいいのに。
「うん、ユウくんがちゃんと耐えられる範囲で、一つずつゆっくり教えてあげる。でも今日はこうしてゆっくりしようよ、ね?」
篠崎さんにベッドの上に押し倒される。二人揃って広いふかふかのベッドの上に横になって、向かいあって僕を見つめる篠崎さんの目が優しくて、胸がきゅんと苦しくなる。
「やっと思う存分可愛がれる」
篠崎さんの指が、僕の鼻の先を撫で、唇を撫で、顎の下を撫で、人差し指と親指で、喉をぐっと絞めるようにして、顔を持ち上げて唇を重ねる。
「……っ……ぁっ」
息が、苦しい。
浅い、酸素を求めて開く口の中に、舌をいれられて、まるで溺れているみたいな心地。もっと、もっと、篠崎さんに溺れていたい。
「……っ、……っっぁ」
長いキス、唇を離すと同時に、締めつけられていた首も解放されて、一気に体に酸素が戻ってくる。
「ユウくんの全部は私のものだし、私の全部はユウくんのものだよ」
「しのさき、さん………っ」
僕は思いきって、僕から篠崎さんにキスをする。篠崎さんの片手が、今度は背中に回されて、ぎゅうっと抱き寄せられる。
篠崎さんの全部、ほしい。
汗だくになった体を全部流してもらって、篠崎さんがタオルで丁寧に身体を拭いたあと、「ユウくん、これ履いてね」と、足元にオムツを用意される。
「なんで、オムツ……」
「今日もお仕事いかなきゃいけないから。昨日と同じようにちゃんと自分で替えるんだよ」
白いふわふわのオムツを見ているうちに、さきほどまでだらだら泣き続けていた涙がやっととまった両目にじわっとまた新たに涙が浮かんでくる。
「いやです……」
ぽつ、と声がこぼれる。
「しのさきさっ……おしごと、いかないで……くださいっ」
目の前の篠崎さんに、僕は思いきり抱きついて、わあっとまた泣き出す。
「自分でやるのいやです……っ。一人は嫌です」
「ユウくん、でも……お仕事だからね」
篠崎さんが困ったような声でそう言いながら、僕の背中を宥めるように撫でるけど、涙はとまらない。
「いやですいやですいやですいやです」
今日もこれから、一日中ひとりぼっちで、篠崎さんの帰りを寂しく待っているなんて嫌だ。嫌だ。嫌だ。
涙も、涎も、ぜんぶ篠崎さんの胸に染み込んでいく。
「いかないでください、いかないでください。ずっと、ずっと、そばにいてください」
篠崎さんを引き止めるように僕はぎゅっと篠崎さんにしがみつく。
ずっと一緒に、ずっと一緒にいてほしい。
「わかったよ、ユウくん。今日はお仕事お休みにするね」
篠崎さんが僕を抱きしめたまま耳元優しい声で囁く。
「……っ」
そして、篠崎さんにしがみついていた僕は、最も簡単に、ふわっと、体を抱き上げられる。
篠崎さんが僕を抱っこしたまま、シャワー室を出て、そして、そのまま檻のなかではなく、この篠崎さんの仕事部屋の扉から、外の廊下へと出ていく。
たった四日間だったけどずっと見ていた部屋から、廊下にでると、一気に外が眩しく感じる。
篠崎さんは廊下から、そのまま寝室へと僕を抱き抱えたまま連れていって、大きなベッドの上にそっと僕をおろした。
「今日で、監禁はおしまいね。最後まで、ちゃんと頑張れて偉かったよ」
篠崎さんがそう言って、するりと僕の首にまいていた太い首輪を外す。
「ユウくん。私のパートナーでいてくれて本当にありがとう」
そして、ずっと手枷をはめられて痣になった手首を撫で、篠崎さんが手の甲にキスをし、足枷をはめられて痣になった足首を撫で、僕の足元に跪いて足の甲にキスをする。
「ぼ、ぼくのほうこそ……っっ、僕の方こそっ……篠崎さんのためになにもできない、篠崎さんに与えられてばっかで……なにも……」
まだ涙をながしている僕の足元で、篠崎さんが困ったような顔になり、
「なんでそんなこと思うの? そんなわけないでしょ」
と、早口で返してくる。
「ぼく……篠崎さんのために指を切ったり、できないし」
篠崎さんの勢いにおされるまま、ついぽろっと口をついてしまった言葉に、篠崎さんは一瞬、なんのことかよくわかっていない顔をして、少し考えを巡らせるような沈黙ののち、「ああ」と呟いて「青斗に変なこと吹きこまれたんだよね」と、すっと目を細める。
「ちが、ちがぃます……っ!!」
咄嗟に、否定する。
たしかに青くんにも指を切ったっていう昔のパートナーの話を聞いた。でも、そのときはほとんど意識が朦朧としていて……。
「前に、SMバーに行った時、そういうのが好きだって話してたから。アクロ……なんとかって」
あのデートのあと、軽い気持ちでネットで単語を検索してみたら、なんだかずらずらとすごく僕にとっては未知のことが書かれていて、なんだか怖くなってすぐに調べるのをやめてしまった。それからほとんど忘れていたけれど、ホテルで青くんがぽろっと溢した昔のパートナーの話を、檻の中でふと思い出した時、記憶が掘り起こされた。篠崎さんはそういうのが好きなんだって……。
篠崎さんは、まだ僕の足元に跪いたまま、ベッドに腰掛けた僕の左手をそっと、もちあげた。
「私の世界にはもうユウくんしかいないのに。ユウくんはいてくれるだけで満たされるし、ユウくんは、ユウくんのままでいてくれることが、私の幸せなんだ。だからさっきはおしまいって言ったけど、本当はずっと檻の中に閉じこめておきたいし、たしかにユウくんが私のそばから離れられないようにユウくんの両足がほしい。でも、足も指も、本当にいらない。ユウくんが痛くて怖いようなことなんか、絶対にしてほしくないから。絶対にしないで」
「お仕置きはするのに……?」
おそるおそる尋ねると、篠崎さんは笑って、そのまま勢いよく僕を正面から抱きしめる。
「ユウくんの、そういうところが可愛いんだ。お仕置きは絶対に嫌なのに、頑張って耐えて、頑張って私の言うこと必死に聞くユウくんが可愛い。可愛い。可愛すぎて本当に甘やかしてしまいそうだった。ユウくんにはずっといい子でいてほしいけど、いい子のユウくんも、悪い子のユウくんも、まるごと愛しい。私の大切なユウくんはどうでもいい心配なんてしないで、ユウくんのままでいてくれればいいんだよ」
篠崎さんが僕を抱きしめたまま、頭の後ろをゆっくりと撫でる。
「でも、僕もっと全部、全部、知りたいんです。篠崎さんの好きなもの、好きなこと、本当は全部応えたいけど……」
本当は、指でも、手でも、足でも、篠崎さんのためにあげられたらいいのに。
「うん、ユウくんがちゃんと耐えられる範囲で、一つずつゆっくり教えてあげる。でも今日はこうしてゆっくりしようよ、ね?」
篠崎さんにベッドの上に押し倒される。二人揃って広いふかふかのベッドの上に横になって、向かいあって僕を見つめる篠崎さんの目が優しくて、胸がきゅんと苦しくなる。
「やっと思う存分可愛がれる」
篠崎さんの指が、僕の鼻の先を撫で、唇を撫で、顎の下を撫で、人差し指と親指で、喉をぐっと絞めるようにして、顔を持ち上げて唇を重ねる。
「……っ……ぁっ」
息が、苦しい。
浅い、酸素を求めて開く口の中に、舌をいれられて、まるで溺れているみたいな心地。もっと、もっと、篠崎さんに溺れていたい。
「……っ、……っっぁ」
長いキス、唇を離すと同時に、締めつけられていた首も解放されて、一気に体に酸素が戻ってくる。
「ユウくんの全部は私のものだし、私の全部はユウくんのものだよ」
「しのさき、さん………っ」
僕は思いきって、僕から篠崎さんにキスをする。篠崎さんの片手が、今度は背中に回されて、ぎゅうっと抱き寄せられる。
篠崎さんの全部、ほしい。
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