三鍵の奏者

春澄蒼

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第四章 地下に眠る太陽のカケラ

番外編 二人の王

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 当代のドワーフ国王は、民に人気がない。

 その要因の一つは、その容姿にある。
 醜いのではない。あまりにドワーフらし過ぎるのだ。

 がっしりした体躯に、彫りの深い精悍な顔つき。赤茶の巻き毛に、立派な髭。
 ドワーフといって誰もが思い浮かべる、典型的な容姿。

 そんな正にドワーフらしい王は、常に弟と比べられてきた。

 ドワーフにしては細身の長身で、甘い顔立ち。こげ茶の髪は緩く波打ち、髭は綺麗に整えられている。
 そんな王弟は、派手好きで新しいもの好き。
 厳格で堅実な兄王とは、性格も真逆だった。

 民たちは、堅苦しくしかめっ面の兄よりも、華やかで愛想のいい弟を持ち上げた。


 発展著しく、今や世界で存在感を増す隣国ヴェルドットと比べ、自分たちの国が停滞しているように感じていた国民は、国王をその停滞の象徴として見て、弟を変化の象徴と見たのかもしれない。

 折しも世界は外交の時代に入っている。
 自国の見慣れた文化よりも、異国の文化が華やかに見えても仕方がない。

『ドワーフらしくないモノ』が流行となり、さらに王と王弟の明暗を分けた。


 さらに国王の評判を下げたのは、純血主義である。
 時代に逆行するようなそれに、民は反発。いち早く反対の姿勢を示した王弟に、より一層支持は集まった。


 そして──『純血の少女』の登場。

 王は常に逆境の中にいた。


******
「……陛下」
 宰相が声をかけると、王は伏せていた顔を少しだけ上げる。
「少しはお休みになりませんと」

 曖昧に頷いた君主にお茶を出すと、宰相は話し相手になるために、近くに控えた。

「……まさか本物が現れるとは……」
「……まだ両親は見つかりませんか?」
「ヴェルドットに逃げたのは賢い。もう尻尾も掴めん」

 報告書を手渡された宰相は、『純血と断定』という文字に思わずため息が出た。

「アレは全く……浅慮にもほどがある。『純血』など、本物ならばなおさら、慎重にならねばならぬものを」
「民は動揺しております。このままではあの幼い少女ひとりに、ドワーフの歴史も人も国もがのしかかることに……」

 王の憂いはいつも、国のこと民のことを思ってだ。
 それを知る側近たちは、現状に歯がゆい思いばかりしていた。


 そんな中、もう一つの騒動が起こる。
 王が持つ『太陽の間』の鍵の盗難事件である。

 それは王家の宝物庫にあった。
 警備兵が扉の前に立ち、扉には鍵、そしてさらに鍵を守るための保管庫にも鍵──二重にも三重にも堅い守りが施されていた。

 それが手品のように消えたのだ。

 誰も目撃者はなく、証拠もない。そして鍵の他に盗まれたものもない。

 それを知った一部の者が、先走って「犯人は王弟だ!」と発してしまったため、王はそれを利用して、王弟との対立に決着をつけることにした。

 表向きは王弟の仕業と決めつけたフリをしながら、王は犯人の追跡を続けていた。
 だが雲を掴むように、行方は要として知れない。

『純血の少女』の養い親も見つからない。
 彼らが王弟からされた仕打ちを考えれば、王側の要求次第で、反旗を翻すこともあるだろう。

 だが彼らは、すでに国や王族というものに信用をなくしてしまったのか、王側に助けを求めても来ないのだ。

 少女本人を説得しようにも、心を閉ざしてしまっていて何の反応もない。


 いよいよ、鍵の盗難を理由にして、武力で解決を──と、考えざるを得なくなっていた、その時。

 今度は『純血の少女』が行方をくらませた。


 その情報は、王弟が知るのとほぼ同時に、王の元へも届けられた。
 犯人と思われる旅芸人の一座を追うと、向かった先はヴェルドット。様々な符号が隣国を指している。だが──国王はそれだけはあり得ないということを、よく知っている。


 この騒動の鍵を握る第三者の存在──国内の勢力でもなく、ヴェルドットでもない。他の国か……?そうならば、目的は何だ?確かにこの国を混乱させることには成功している。だがそれにしては、やり方が遠回りだ。


 国王であるはずの自分が、もっとも蚊帳の外に置かれていることに、王は焦りを感じざるを得ない。

 そんな矢先、純血の少女を攫った犯人について、有力な情報が上がる。



***
「盗賊団……?」
 諜報員からもたらされた作り話のような報告に、王は訝しげに聞き返す。

「はい。一種の都市伝説のような存在でしたが、今回の騒動に大きく関わっているようで」
「……噂には聞いたことがあります。『盗まれたものを盗み返す』──特に貴族たちの間で恐れられているとか……」

 宰相のその言葉に、王は「義賊のようなものか」と納得して頷いた。

「実はこの盗賊団に結びついたのは、『太陽の間』の鍵を追っている時のこと。それも偶然と言いますか……」
 言い淀む諜報員に、「つまり……鍵の盗難事件と少女の誘拐、どちらも同じ犯人ということか?」と、王が先んじて結論を言い放った。

「……!それは本当ですか?」
 目を見開く宰相に、諜報員は「おそらく……」と曖昧な返事だ。

「証拠はないということか?」
「はい。それにその盗賊団は実行犯ではありますが、我らが求める犯人ではないかと。盗賊団に依頼を出したものがいます。純血の少女の方はおそらく両親。そして鍵の方は──」
「弟か?」
「いえ……」
「それでは一体誰が……?」
「……我らの調査では、ヴェルドットの貴族に行き着きました」


 予想外の展開に顔を見合わせる王と宰相。目線で会話をして、「その貴族とは?」と宰相が先を促すと、諜報員は三つの家名を挙げた。

「ふん。あちらの『純血主義者』か……とうとう行動に移したということか」
「そうですね。ですが……から何の報告もないのは……?」
「気づいていないのか、それとも……あえて、なのか……」

 王と宰相の間でだけ通じる会話。踏み込めない空気を察して、黙って待っていた諜報員に、王が問いかける。

「……盗賊団に接触はできそうか?」
「はい」
「では、鍵の件は伏せて、我らが掴んでいる情報は、純血の少女の件だけだと思わせろ。その上で取引を持ちかける」
「取引、ですか?」
「ああ。ただし相手は盗賊団ではなく、少女の両親ラサージェだ。こちらの要求はひとつ──嘘をついてもらうこと」
「嘘、ですか?」
「『自分たちの娘は純血ではない』という嘘だ。その嘘を生涯貫き通してもらう」



******
 そうして盗賊団に接触したはいいが、王たちは完全に自分たちが後手に回っていることを、思い知らされることとなった。

 盗賊団は国王さえも知らない、この国の──いや、この世界の秘密をもその手中に収めていたのだ。



******
 血を流さずに内乱を収めた王は、最後の懸念を払拭するために、ある場所へと向かっている。

 供は腹心の宰相のみ。護衛の一人もいないなど考えられないことだが、これが伝統なのだ。
 その場所に、武器は持ち込まない。それが信頼の証。

 ドワーフ国王だけに教えられる地下道──玉座を動かすと床にその入り口が現れる──を東へ進む。国境までは大昔にドワーフが生活道として使っていた道、その先は約二百年前に新たに整備された道だ。

 最後にハシゴを登って、扉を押し上げる。この瞬間、ドワーフ国王はいつも、穴から顔を出すモグラになった気分になる。

「……待たせたか」
 部屋には先客がいた。イスに腰掛ける同年代の男と、その後ろに立つ年かさの男の二人だ。

「いやなに、気にするな」
 座ったまま気軽に返事をする男。ドワーフ国王相手に、これだけ砕けた態度を取れるのは、この人物くらいのものだ。


 部屋はそう広くない。家具も最低限、中央に机がひとつと、イスがふたつだけ。
 窓はない。そもそも壁に扉もない。出入り口は、今、ドワーフ王と宰相が上がって来た床の扉と、そしてあと二人が使ったもうひとつの床の扉だけ。

 そしてその、もうひとつの地下道は、の王城へと繋がっている。

 イスに座って向かい合った二人は、さっそくいつもの挨拶を交わす。

「それではドワーフ国王よ、話し合いを始めようか」
「始めよう、よ」

 小さな部屋の、四人だけの会談──こんな場でふたつの国の命運が決められていることは、歴代の国王と宰相しか知らない秘密。


******
 ドワーフ王国とヴェルドット国、二国の関係は二百年前に遡る。
 二百年──ヴェルドット建国当時のことである。

 国には民に知らされない秘密がたくさんあるものだ。
 ドワーフ王国とヴェルドット国におけるその最たるものが、両国の関係である。


 そもそもヴェルドットとは、ドワーフの密かな支援を受けて建国された国なのだ。


 約二百年、戦乱続くこの地方を憂いていたのは、ローランド・ヴェルドットだけではなかった。当時のドワーフ国王も同様に、周辺国の安定を望んでいた。

 これまで人間の国とは対立してきたドワーフたちだったが、そんなことばかりでは立ち行かないことに、そろそろ気付き始めたのだ。

 人間と協力関係を結ばなければ──動き始めたドワーフ国王の元に接触してきたのが、ローランド・ヴェルドットだった。


***
 ローランドは、誰よりも新しい世界を思い描いていた。

 当時の世界の中心は西であった。
 長い伝統のある国々。他国を蹂躙して奪った資源。奴隷制によって潤う生活。聖会の本拠地が置かれ、神すらも支配する傲慢さ──そんな西国は東側を、貧しい未開の地とバカにしていた。

 そして東側は、それに反発するでなく、その評価を自ら受け入れてしまったのだ。

 しかしローランドは違った。

 伝統?そんなもの、これからいくらでも作れる。
 寒冷地で作物は育たないが、大山脈の鉱物がある。人の手が入っていない自然がある。
 奴隷がいないから、人は働く。そして働いた分だけ成果が出れば、労働にやりがいを感じることができる。


 最大の要因である亜種についても、ローランドは新しい価値観を提示したのだ。

 亜種の存在を否定する方が愚かだ。亜種が生まれることを受け入れればいい。

『亜種が下だ』という風潮は、そもそも西側のものだ。なぜ我らが、西側の価値観を押しつけられなければならない?

 先入観を取っ払えば、亜種とは厄介者などではなく、むしろ大きな可能性を秘めているのではないか。その才能は、宝になるのではないか──?


 それまでの亜種といえば、秘匿されるだけの存在だった。亜種が生まれた家はその事実をひたすら隠し、他人との接触を断ち、酷い時は一生幽閉される。

 殺されるか奴隷となる西側に比べれば、まだマシだったが、それでも当時は、亜種を公の場に出すことなど考えられなかった。


 だがローランドは、その亜種の存在こそがこの地方が浮上する鍵になると考えた。

 言うならば、まだ誰も価値を見出していない原石──だが磨き上げれば、必ず誰の目にも美しく映る宝石となるはずだ、と。


 国内で亜種に対する偏見を変える傍ら、ローランドが次に目を向けたのが、ドワーフ王国だった。

 ドワーフ王国が東側に追いやられて以降、この地方の国々とは、小競り合いはあったが大きな戦はしていなかった。
 もちろん友好的とまでは言えなかったが、強い恨みを持つこともなかったのだ。


 そして双方にとって、ちょうどいいタイミングでがやってきた。


 鉱物や武具を売る場、地下にない資源や食料が欲しい、ドワーフ王国。
 できたばかりの国を安定させるために、後ろ盾が欲しいヴェルドット。

 表立って動けば、世界中の非難を浴びることになるため、あくまで陰ながらの協力体制を築いてきた両国だ。

 最初は打算で始まったこの関係だったが、すぐにもっと深いものとなった。
 ローランドと当時のドワーフ国王は、互いに相手に敬意を抱き、王としてだけではなく、個人として親交を深めていった。

 若いローランドに年上のドワーフ国王が、教師さながら様々なことを教えた。国のことから歴史のこと、はたまた鉱物の見分け方やドワーフ伝統の料理まで──。

 そうしてできた繋がりは、始まりとなったその二人の死後も、両国の王に受け継がれたのだ。


***
 こうして二百年、ドワーフ国王とヴェルドット王はこの場所で、王として、また時には個人として、会談を重ねてきた。

 代によってはうわべの付き合いになる時もあったが、当代は始まりの二人に匹敵するほどに、互いを信頼している。
 それは年が近いこともあったが、何よりも考え方が近かったからだ。

 自分を名君だとは思っていない。だが、賢君になるために努力は惜しまない。

 二人は時代の流れを感じていた。
 自分たちの代で、二百年続いたこの関係が変わるだろうことを。


 その布石のひとつとして、二人が打ったものこそ、ドワーフ国王の『純血主義』であったのだ。
 だがそれは、思わぬところと結びついて、予想もできない展開となった。


 純血の少女の登場から始めて、先日アスカと交わした取引までを語ると、ヴェルドット王は驚愕を落ち着けるように、足を組み替え背もたれに体重を預ける。

「驚くことばかりだろう?」
「……驚く、なんてものじゃないな……」

 細かい部分を確認するヴェルドット王の様子を、ドワーフ王は観察する。
 この反応は自然なものだろうか?何か繕っていることはないか?隠していることはないか……?

 ヴェルドット王を見極めたドワーフ王は、気づかれないようにホッと息を吐いて、「実は」と真正面から話すことに決めた。


「鍵の盗難に、そちらの貴族が関わっている」
「なん、だと……?!」

 真実驚愕したヴェルドット王を見て、「やはり気づいていなかったのか」と詳しい説明をする。

 盗賊団に依頼した三貴族の名を出すと、ヴェルドット王は少し考えて「まさか……」と何かに心当たった様子を見せる。

「やつらの動向は逐一報告させていたが、不審な行動となると……アレか!娘に何度か接触していたな」
「娘……?だが彼女は、ドワーフに対して特に差別意識は持っていないのだろう?」
「だから見逃した……!確かにシンシアは血にこだわりはないし、亜種やドワーフを差別はしない。が……我らの常識の通じないところがある」

 一瞬父親の顔をのぞかせて、ヴェルドット王は深いため息をつく。

「シンシアは妙に、初代ローランドとその妹ローサ姫に強い興味を持っていた。ドワーフがどうとか国がどうとかではなく、自分の興味で手を貸したということも考えられる」

 確かめなければ、とうなだれるヴェルドット王に、ドワーフ王は「いや、少し待ってくれ」と止める。

「だが──」
「鍵──いや、『太陽のカケラ』と呼ぶのが正しいか……とにかくそれに関しては、少し様子を見ることになったのだ。実行犯であるはずの盗賊団が、それを取り戻してくれると言うのでな」
「信用できるのか?」
「分からん。だが、シンシア王女が関わっているのならなおさら、我らは知らないフリをした方がいい。騒ぎ立てれば、それだけ奴らを喜ばせることになる」

 もっとも避けなければならないのは、戦である──それが二人の共通認識だ。


「やれやれ……奴らが動いたことはこちらの想定の範囲内だが、これでは……」
「国内からではなく、一足飛びにこちらの国を狙ってくるとは……」



******
 ドワーフ王が『純血主義』を表明したことには、いくつか狙いがあった。

 その一つが、ドワーフ、ヴェルドット両国の、差別勢力をあぶり出すことだったのだ。

 ヴェルドットが東地方の盟主にまで登りつめたことで、一部のドワーフに僻みが生まれたのだ。「以前は俺たちの方が上だったのに、今ではヴェルドットに見下されている」と。

 そしてヴェルドット国内にも、「そろそろドワーフと決別しよう」という動きが表れたのだ。このままドワーフと手を組んでいたら、いつまで経っても他国に認められない、と。

 不思議なことにそんな差別意識は、直接関わっている民の間ではなく、関わりが薄いはずの特権階級の間で広がっていた。


 特にヴェルドットの貴族の中には、ドワーフだけでなく、今や自分たちの国を支えている亜種さえも、排斥しようと考える輩がいる。
 何故か彼らは、貴族という称号を得ると、血筋というものにこだわり始めるのだ。

 そして内に認められると、今度は外から認めて欲しくなる。国際的に認められるためには、亜種は不純ということらしい。


 もちろん両王は、今さら過去に逆行するつもりはない。

『純血主義』は作戦だった。
 王がそう表明することで、ドワーフ国内の差別勢力は我先に擦り寄ってきた。そうして王は勢力図を知ることができたのだ。

 そしてヴェルドット国内の方は、反発を強めた者たちを国が監視することで、何か動きがあればすぐに対応できるように備えることができた。

 しかし──シンシアと盗賊団という想定外からの搦め手を、ヴェルドット王は見逃してしまったのだ。


 今回のヴェルドットの三貴族の思惑は、ドワーフ国との関係を悪化させることにあったのだろう。
 それを抑えたのは、盗賊団の手際があまりに良すぎたという、偶然の産物であった。

 だがこれで、公にできないにしても、差別勢力の尻尾を掴むことはできた。




 そしてもう一つ。こちらこそが本命だ。

『純血主義』を唱えることで、少しでも多く、ドワーフ同士で子を成す流れを作ること。


 数十年前から、ドワーフの中にある病気が静かに広まっている。これまで例のなかった症状だったため、国外の医者に診せたところ、原因は日光不足ではないかと診断された。

 これまで地下こそが最適だったドワーフは、人間との混血が進んだことで、もう地下だけでは生きられなくなっていたのだ。

 だがドワーフ王国の国土は、そのほとんどが地下にある。
 慣れ親しんだ地下の生活を変えることも、価値観を覆すことも、すぐにできることではない。

 そのためドワーフ王は、『純血主義』で時間稼ぎをすることにした。

 特に地下深くに暮らす王族や特権階級たちに、なるべく血を濃く繋いでもらい、延命する。
 その間に、大山脈を開墾し、少しずつ地下の町を地上に移動させていく──それが王の計画だった。


 しかしながらこの計画も、今回の新事実を受けて、大きく変更することとなるだろう。

 もはや血を濃く保つことなど、不可能なのだ。



 そして最後にもう一つ。これはおまけのようなもの。
 両国の関係を変えるという、決意表明。

 これまでは、ドワーフ王国が師で、ヴェルドットが弟子のような力関係だった。だがそれは、すでに逆転している。

 しかし両王は、その逆転を望んでいない。

 逆転でなくていい。上か下か、師か弟子か、ではない、対等な関係──これからはそれを築いていこうという、決意表明だ。


******
「人間が全て、三種の血を引いているという真実を、世界中に信じさせることができれば、我らの憂いもかなり解消されるのだがな」
「信じさせる……それが何より難しい。遺跡の調査を進めれば、有無を言わさないような証拠を、突きつけることもできるかもしれんが」

「純血の少女を自由にしてよかったのか?」
「拘束することで、国にこれ以上悪感情を持たれることを懸念した。あのアスカという少女が本気になれば、ドワーフ王国を乗っ取ることなど容易だ」
「それほど、か?」
「ああ。私にはない、人を惹きつける力がある。それも、彼女はまだ子どもだ。これからどう成長するか……幸いにも、両親は良識があるし、アスカ自身も思慮深いようだから──」


 二人の王はすでに失敗を受け入れ、そして新たな道へと歩み出していた。


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