三鍵の奏者

春澄蒼

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第六章 追憶の海に花束を浮かべて

84 黄昏

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 海はカイトを歓迎し、そして拒絶している。

 一年前とも、とも、変わったようで変わらない海。昏く冷たく、そして重い。

 逆らわずに、流れに身を任せる。
 右に左に、上に下に、渦は身体を弄ぶが、少しずつ確実に、底へと引きずり込まれている。

 底に待つのは、死神か悪魔か──カイトは自分でもおかしいと思いながら、微笑んでいた。



 普通の人間では到達し得ない、深い深い海。
 カイトであっても、水圧に骨が軋み、視界はとても良好とは言えない。
 それでも次第に、身体が環境に慣れてくる。

 いつも三割に保っている力の制御を少しずつ緩め、カイトの基準で七割ほどまで解放している。身体が保つぎりぎりだ。
 ここまで解放すると、軽く一時間は潜水していられることは、過去に試した。その仕組みは、本人もよく分かっていない。人魚のようにえらはないため、水中で呼吸できている訳ではないのに、空気がなくても苦しくはないのだ。


 しかし時間は有限だ。

 急ぐほどでもないが、無駄な時間を使うつもりもないと、大渦の根元をひた目指す。



 カイトの瞳が船の残骸を写すと、それまでの荒くれが嘘のように、海は急に静まり返った。生きているものは何もないと思えるほどの、異常な静けさ。


 海そのものが、息を潜めている。


 カイトはゆっくりと、その船へ向けて泳ぎだす。肌を刺すほどの冷たい水をかき分け、光の届かない闇の底へと沈んでいく。
 とは違い、拍子抜けするほどあっさりと骸骨の前へ到達する。

 目が、合った。

 ユランをかたどった船首の像を抱いて、ジャン・ノーはにぃぃっと嗤う。


 そうか、とカイトは最後の答えを見つけた。

(そうか、ユランだけじゃない。お前、自分が死んだことにも気づいていないのか)


 百年ぶりのに、骸骨は愉しそうにカタッと歯を打ち鳴らした。



******



「カイト……!」
「待て、ユエ!」
 後を追いかけたユエを、ヘイレンが後ろから羽交い締めにして止める。
「離せ……っ」
「待て待て!言われただろう?海には入るな、と」
「でも……っ!」


 手すりから身を乗り出したユエは、カイトの姿を探して海面に視線を彷徨わせる。しかし波紋が消える頃には、彼の気配すら感じられなくなっていた。

 泣きそうな目で振り払われたヘイレンは、バンザイして一歩下がると、「カイトにはなにか考えがあるんだ。……たぶん、な」とこの男にしては弱気に付け加える。

 ヘイレンの弱気にユエは不安を煽られたが、カイトに「特に」と名指しされたこともあって、衝動に任せるのは危険だと、必死に自分を説得する。

「カイト……」
 祈るように手を胸に当て、海を見つめる。


 その隣にヘイレンも立ったが、並んだ二人以外はまだ、立つことはおろか声を出すこともできずに、時間が止まったように動かない。──動けない。

「まさか」と「あり得ない」が交互に浮かんではかき消し、浮かんでは消し……とてもカイトの『今』に気を向ける余裕はない。


 もちろんユエも、頭の中は「?」でいっぱいに埋まっていた。
 それでもユエが他の仲間たちと異なっていたのは、そんな疑問より優先するものがあるから。

 真実や過去をあばくことより、カイトの身を案じることが、この時のユエの最優先だった。


 そして時は容赦なく針を進めていく。
 議論する間も、結論を出す間もなく。


 最初に気がついたのは、ユエ。正確には、ユエの中から、だった。

「……え」
 ぞわぞわ、という悪寒が胸を突く。びくん、と身体がけいれんし、ユエは膝を崩してうずくまる。
「な、に?これ……」

「おい、どうした?」
 ヘイレンが心配するほど、がたがたとユエの全身が震えに支配されていく。

 腕で身体を抱き締めても、ますます酷くなるばかり。爪の先まで戦慄が届いてから、やっと身体に心が追いついた。
「こわい……」

 それは純粋な恐怖。

 ユエの中で、ユエのものではない恐怖が花を開く。


 ヘイレン以外もユエの周囲に集まり始めたところで──海がドクンと波打った。
「うわ!」「揺れるぞ!気をつけろ!!」

 一度だけの波紋は、船底を撫でて去る。
 一瞬の静寂の後、二度目、三度目の波が無秩序に海をかき乱す。自然のものではない乱雑な波に、一同は手すりにすがりついて耐えた。

 ザザーン、ザザーン、という大きく長い波形が終わると、ザザ、ザザ、と小さく小刻みな波に変わる。



 次に気がついたのは、メイ。
「な、にこれ……海が、おびえている……?」

 次いで、クレイン。
「……波が、逃げていく」


 二人に説明を求める前に、異変は全員の目に見える形で現れる。

「見ろ、大渦が……」
 ヘイレンが指差した先、左回りに円を描いていた大渦が歪み始めていた。渦に逆らう波が起こり、波同士がぶつかって白波が立ち、弾き飛んだ飛沫が雨のように降る。

 左回りと右回り、正反対の波が互いに押し合い、一時の均衡が訪れた。

 しかしそれはすぐに崩れ去る。

 海面から海底へ海を引きずり込んでいた大渦が、まるで時間を逆戻りするように、底から海を押し上げてくる。ぽっかりと空いていた穴が、下から埋められていくように。


「くる……!」
 ユエの言葉と同時に、ぼこ、と海面が盛り上がった。

 重たい海をかき分けて、空へと顔を出したのは──人魚の像。
 彼女を先頭に、ぼこぼこ、と舳先、手すりまでが姿を現すと、「ああ、船だ」と誰もが同じ台詞を心の中で呟いた。

 その船は、前半分しか存在しない。マストは根元付近で折れて失われ、後ろ半分は、用がないとばかりに海底に置き去りにされたのだろうか。

 甲板が海面とほぼ同じ高さまで来ると、時間の巻き戻しは、そこで終わった。

 その場所に大渦があったことなど夢だったように、海は凪いでいる。

 人魚の涙ディア・メロウ号は、百年ぶりに太陽の元へと帰還した。
 太陽は半身だけを水平線から覗かせて、今日最後の陽を浴びせる。


 その光景を、一同は現実感なく見ていた。
 過去に連れ戻されたようではなく、おとぎ話に迷い込んだ気分で。


 と同じ時刻、同じ場所。
 これは、あの日の続き。


******


 ギンっ!キン、ガンッ!!


 止まった時を動かしたのは、剣が撃ち合う音。

 波の音も風音も、魚が跳ねる水音も鳥の羽音も、場違いな金属音のために鳴りを潜めている。甲高い音と鈍い音が混ざって、剣音は一直線に耳へと響いた。


 音が届いてから、目が動くものを捉える。

 音の中心は、海に浮かぶ甲板。まるで海上の闘技場のようなその場所で、誰かと誰かが撃ち合っている。

「カイト……?」

 遠過ぎて輪郭しか見えなくても、その片割れがカイトだと、すぐにユエは気づく。
 相手はぼんやりとして判然としないが、カイトと互角に渡り合っていることは遠目にも分かった。

 ユエの瞳がカイトの姿を捉えると、冷や汗をかいていた全身に温かな血が巡り、少しだけ震えも治った。
 まだ立てそうにはないが、舌を噛まずに口を開くことはできそうだ。

 ユエは振り返ると、仲間たちの様子を一人ずつうかがっていく。


 いけすから飛び出したメイを、クウェイルが抱えている。
 老執事とヘイレンの部下は、操舵室にいるのか姿は見えない。
 クレインとジェイは、互いの身体を支え合うようにして立ち尽くしている。
 片膝をついたフェザントが、子ども三人をその腕の中にかばっていた。
 アイビスとヘイレンは並んで手すりを掴んでいる。どちらも顔を海に向けているが、アイビスの瞳はなにも映していないように見えた。


「……ヘイレン、船をもう少し近づけられないか?」
 会話ができそうなのはヘイレンだけだと判断したユエは、座り込んだまま隣を見上げる。

 カイトの忠告は『なにかが起こるまで、船を動かすな』だった。だから『なにかが起こったら、動かしていい』のだとユエは了承した。


「…………え、ああ、分かった」
 一拍遅れて返事をしたヘイレンは、覚束ない足取りで操舵室へと向かう。

 すぐに動かせるよう火は落としていなかったから、それほど時間はかからずに白い煙が空へ伸びた。ヘイレンと部下の二人で錨を巻き上げると、老執事が舵を取る。

 ゆっくりと船は、舳先を人魚の像に向けて動き出す。


 船が動き出しても、ヘイレンがユエの隣に戻ってきても、甲板にいる者たちは時が止まったように動かない。

 しかしそれも当然のこと。

 カイトの話ですでにいっぱいだった頭では、今の状況をすんなりと処理できるはずがない。
 深海に沈んでいたはずの海賊船が浮かんできただけでも受け止めきれないのに、なぜカイトは闘っているのか、誰と闘っているのか──そんなところまで思考を広げられない。


「ふ、ぅあ……っ!」
 ユエの中で、震えが再び隆盛する。

 ここから逃げ出したいという本能を、カイトのそばに行きたいという決意で飼い慣らそうとするが、ままならないのは心より身体だ。
 二筋の奔流が身体の中で暴れまわっているように、あっちでもこっちでも衝突が起きる。

 カイトに近づくにつれ、流れは激しくなるばかり。

 それに耐えるため目をつぶっていたユエは、「あれは……なんだ……?」というヘイレンの呆然とした声に、おそるおそる目を開けた。


 人魚の涙ディア・メロウ号の甲板は海に沈んでいた年月をにじませ、木材がどす黒く変色している。夕焼けの赤が甲板を撫でる海面に反射して、眩しさに目を細める。


 そして──信じられないものを目の当たりにする。


「夢か、これは……」
「ははは、だったら悪夢だな。それも史上最強の……」
「もぉ、ちょっと……あたまがついていかないんだけど……?」

 考えることを放棄した面々から、感想が垂れ流しに出てくる。彼らは同じ顔をしていた。口は半開きで目は虚ろ、そしてなぜか笑ってしまう。

 こんなもの、正気では見ていられないとばかりに。



 カイトの剣の相手は、骸骨だった。


 骨にボロ布をひっかけて、カタカタ軽い音を立てながら、手には大振りの剣を握っている。
 左のあばらが一部砕けている他は、こんな感想はおかしいが、きれいに骨がそろっていて、そう貧弱には感じない。

 どうして骸骨が動くんだ、というごく常識的な疑問は、誰の口からも発せられない。
 自分の目か頭が狂ったのかと、そちらをまず考えた。そして隣と目を合わせて、見えているのが自分だけではないと知って、安心する。

 安心したら次に襲ってくるのは、狂ったのは世界なのかという心許なさだった。


 一同からさらに常識を奪っていくのは、骸骨と平然と闘っているカイトの姿だ。

 ユエが人間になった時、アスカを見つけた時──自分たちの信じていた世界が崩れる時は、これまでにも経験してきた。それでもそこには、いつもカイトがいた。

 これまでは、彼について行けばよかったのだ。
 自分たちの前を歩く先導者で、揺るぎない導きの火が常に灯っていた。
 ──それを失った。いや、最初からカイトは、そんな都合のいい存在ではなかったのだ。

 守りの砦だと信じ込んでいたカイトは、むしろ──世界を壊す側だった。



 そして悪夢は、さらに深みへと──。



「ぐ、ぁぁ……っ!」
 ユエの胸が、千々に千切れるほどの激痛に襲われる。骸骨を見た途端のこと。

 約一年ぶりの再会だ。
 あの時はまだ知らなかった。あれが人魚の涙ディア・メロウ号の船長、ジャン・ノーだとは。

 ギンッ!!

 カイトとつば迫り合いをして弾かれた骸骨が、近づいた船に今気づいたように、あごを上げる。

 闇へと続く眼窩が、真っ直ぐにユエを捕らえる。

 目が、合った。

「あ、ぁぁ……っ」
 氷水が浴びせられたように、ぎゅうっと心臓が縮こまる。ユエの中の、ユエのものではない恐怖が、ぶあっと最高潮に達した。

(これ……っ、わかった、こんなに怖がってるのは──)

 勝手に逃げ出そうとする身体を押し留めたのは、骸骨と一緒に視界に入ったカイトだ。ユエと骸骨の間に悠然と立ち、ひたとユエを見据えている。

 目を合わせる。

 それで、もう大丈夫だと思えた。

 手すりを支えに、ゆっくりと時間をかけて立ち上がる。まだ完全ではないが、自分の身体の制御が少しずつ自分の手に戻ってきているのは感じられる。

 カイトとジャン・ノーの二人舞台に、ユエが遅れて上がる。
 三人がそろうのを待っていたように、夕陽が動き出す。

 黄昏時──昼と夜が、光と闇が、聖と邪が交錯する。


 そして、夢と現が共演する。


 黄昏の光に照らされて、骸骨を覆い隠すように輪郭が生まれていく。
 黄昏の闇に紛れて、漆黒の髪がなびいた。


 そこにいたのは、もう骸骨ではなかった。


 長めの黒髪、灼けた肌、闇をまとうような黒一色の衣装──魂だけでなく、肉体も黄泉の国から奪い返して、ジャン・ノーはにぃぃと嗤う。


 ユエはそれを見て、確信を持った。
(俺の中の『人魚の鍵』だ……!)

 ユエの中にあって、ユエのものではない恐怖──それは目の前のこの男に対するもの。
 ジャン・ノーに支配された百年間に、教え込まれたもの。


(鍵が、ジャン・ノーを怖がってる……)



「正解」だと教えるように、ドクンと心臓が高鳴った。


******


 ジャン・ノーが肉体を取り戻していく過程を、カイトはじっとつぶさに観察していた。
 恐れや混乱はない。
 この展開を具体的に予想はしていなかったが、何が起きても不思議ではないと心構えはできていた。

 懐かしい、それが最初の感想だ。

 百年前の、憤りや虚しさは蘇らない。
 これが長い年月が与えてくれる優しさかと、諦観を再確認しただけ。


 ジャン・ノーは自分の変化に頓着していないのか、その間、ずっと斜め上を見つめていた。


「……久しいな」
 カイトはジャン・ノーの注目を自分の方へ逸らすために、大きめの声で呼びかける。

「……なぁに言ってる、?久しいぃ?ずぅっと、一緒にいたじゃないか」
 粘っこい口調も、光を反射しない黒々とした瞳も、全てを嘲笑するような口許も、生きていた時と寸分違わない。


「やぁっぱり、お前がユランを隠していたなぁ?」
 カイトを通り越した先を、ジャン・ノーは粘着質な視線で舐める。
 ざわっと、カイトの肌がさざめいた。

「……はユランじゃない」
「くはっ、言い訳がよりにもよってそれかぁ?カイトぉ、お前も冗談を言うんだなぁ……?」


 やはりか、と自分の予想が当たっていたことに、カイトはわずかに眉根を寄せた。

 ジャン・ノーは、ユエのことをユランだと勘違いしている。
 だから、カイトも他の人魚も拒絶した深海へ、ユエだけを受け入れたのだ。彼女が鍵を取り戻しに来たのだと。ヤツはその時をずっと待っていた。

 そして──ユランを今度こそ支配するつもりなのだ。『死』という鎖で、地獄の底に囚えて。


 カイトが抱いた泡沫の哀れみは、ジャン・ノーの言葉にかき消える。

「おいおい、ユラン?どうして髪を切ったぁ?もったいない。指を入れて梳くのを、楽しみにしていたのになぁ」
「……言っているだろう、あれはユランじゃない。ユランは──」
「カイトぉ、お前は梳いたんだろぅ?匂いも嗅いだのかぁ?あの髪に鼻をうずめて、あの肌に触れて、あの鱗を舐めてぇ?……羨ましいねぇ」

 これもジャン・ノーらしいと言えばそうだった。相手の心を逆なでする言葉を選び、そして周囲にも聞かせて苛立ちを広げていく。

 もしこれを聞いていたのが本当にユランだったなら、カイトは悠然と受け流すことができた。

 ジャン・ノーがしつこいほどにカイトとユランの仲を囃し立てるのは、今に始まったことではない。
 実際に二人の関係を疑っていたこともあるが、それ以上に、周囲に聞かせることで仲間内に不信感を芽生えさせ、亀裂を生むという目的の方が大きかったのだろうと、カイトは考えていたから、その思惑にまんまと乗ることはないと冷静さを保てたのだ。


 しかし、百年前と今では状況が違う。
 今、ジャン・ノーの前にいて、言葉を聞いているのは、ユエだ。

「黙れ……!」
 ねじ伏せるような言葉が口をついた。
 構え直した剣の切っ先で喉元を指し、睨みつけたカイトは、すぐにそれを後悔する。


「ふは、ハハハ!はっはは!!」
 天を見上げて嘲笑すると、ジャン・ノーはこれを待っていたとばかりに厭な目でカイトを舐めつける。
「やぁっと、本心を見せたなぁ、カイト。これで楽しみが増えた。お前に見せてやるよぉ。ユランが俺の手に堕ちるところをぉ」

 心の底から愉しそうに、ジャン・ノーは天を仰いで声を張り上げる。
「ユランん、待ってろぉ!!カイトの目の前で、お前のナカを俺の剣で貫いてやるからなぁ……!くははっ!!」

 狂ったように嗤いながら、ジャン・ノーはユエに剣先を向けた。


 ぶあっとカイトの頭が赤く染まる。
 挑発だと分かっていながら、ユエに向けた剣をカイトは思いっきり叩き落としていた。

 ガンっ!!

 間髪入れず、ジャン・ノーの剣が翻る。
 完全に乗せられたカイトは、防戦一方になってジリジリと後退させられる。

 本格的な撃ち合いに突入した。


******


 一方、船の上から海面を見下ろしていた仲間たちにも、人魚の涙ディア・メロウ号の二人のやり取りは伝わっていた。


「はは、骸骨が人間になったぞ」
 少し前から、もうどうにでもなれと諦めたフェザントが乾いた笑いで言う。

「……浮かんできたのが人魚の涙ディア・メロウ号だよな?」
「そう、だと思う……」
「ってことは、あいつがジャン・ノー?で、合ってる?よな?」
「たぶん……」
「……なんか、カイトと知り合い、みたいに見えるんだけど?」
「……名前、呼んでたね……」

 ヘロンとラークが、目の焦点はまだ合っていないながらも、何とか状況を把握しようと二人で確認を始めている。

 子ども二人に引っ張られるように、大人たちもせめて見て聞いた範囲だけでも確認しようと、口々に呟き始めた。

 しかしすぐに沈黙が帰ってくる。

 分からなくなったのではなく、結論に達してしまったからだ。これが正解な訳はないと理性が言っても、これ以外はあり得ないと感覚が背中を押す。

 全く自信も確信もない結論に、正解か不正解かを判じる人間を求めて、視線はヘイレンへと集中する。

 それを当然と受け止めるかと思われたヘイレンは、厳しい表情で一同を見つめ返す。
「……言っておくが、俺に正解を求められても困る」
「え……」
「俺だって初耳の話ばかりだ。まあ確かに、多少の予測を立てることはできていたが……それはあくまで予測であって、自信満々にお前たちに解説できるほどの『事実』は俺の手の中にない」


 婉曲的な言い回しだったが、つまりヘイレンも自分たちとそれほど立場は変わらないのだということは伝わった。教える側ではなく、教えを請う立場なのだと。

 一同は途方に暮れる。
 ちょうど沈みゆく太陽に重なるように、照らしてくれていた光が減り、足元がおぼつかなくなる感覚に襲われた。

 カイトに続いて、ヘイレンまでもが先導の火を消してしまった。行先を照らす光はなく、自分自身の光だけで今立っている場所を照らすのみ。


 そんな中──「鍵だ……」

「ユ、エ……?」
「なぜだか分からないけど、でも俺には分かる。俺の中にある『人魚の鍵』が、この事態を引き起こしたんだ……!」

 太陽とは違う、おぼろげな月の光。
 意外過ぎる人物から、淡い光明が差し込まれる。

「あれは確かに、人魚の涙ディア・メロウ号とジャン・ノーだ。俺は実際に沈んでるのを見た。それでたぶん……船が浮かんできたのも骸骨が動いてるのも、『人魚の鍵』の力だと思う」
「ど、どうしてそんなこと分かるんだっ?」

 詰め寄ったアイビスに、ユエは不思議なほど冷静な声を返せた。
「こんなことできるのは、『人魚の鍵』だけだ」

 理屈も何もあったものではないが、妙に説得力があって、アイビスはたじろぐ。
 そしてユエからは、妙な迫力がにじみ出ている。

「……ぜんぶ、カイトだったんだ」

 それはユエだけが、暗闇の中を手探りで進んでいたから。この時一同がユエに対して抱いたのは、敗北感をまとった感嘆だった。

「すごい」と思ったのだ。


 ユエはただの一度も、カイトに対する不信感を持たなかった。世界を壊すカイトをいとも簡単に受け入れて、向ける愛情は変わらない。

 カイトが何者であろうと、どんな過去を背負っていようと、ユエの気持ちは変わらない。

 他が乗り越えられないと諦めかけていた壁を──いや、壁の存在すら信じたくなくて目を逸らしていたのに、ユエだけはそれを「そんなことより!」と簡単に迂回して行ってしまった。


 そして、周囲がまだ壁の向こう側に残っていることにも気づかずに、ユエは前だけを向いてどんどん進んでいく。


「あのおとぎ話は、ぜんぶカイトの実体験だったんだ。ここで戦ったのも、ユラン姫を看取ったのも、遺言を託されて海に潜って、でもカイトは辿り着けなくて……だから、俺に頼んだ──」

『人魚を助けるのは俺の趣味みたいなもの』
 パッとユエの脳裏にその台詞が浮かんだ。

 カイトがメイに言った言葉──これは戯言でも誇張でもなかった。真実カイトは、メイとユエ以外にも多くの人魚を助けてきたのだ。

 どちらが先だったのだろうと、ユエはふと疑問を持つ。

 ユラン姫の遺言が先だったのか、『人魚の鍵』を手に入れる目的が先だったのか──(カイトはどんな気持ちだったんだろう……?俺を助けたのも、鍵に執着したのも、もしかしてユラン姫のためだった……?)

 カイトが百年前から生きているという奇怪よりも、ユエを不安がらせるのはそんなことだ。

(もしかして……俺とユラン姫が似てるから……?)
 先ほどのジャン・ノーの言葉に、ユエはうっかりと乗せられて不安を募らせる。

(カイト……)
 否定が欲しくて海を覗き込むと、海上闘技場の闘いは佳境を迎えていた。


******



 カイトは自分が不利であることを悟っていた。

 とにかく足場が悪過ぎる。
 濡れて滑るだけならまだしも、時折海水が押し寄せて足を取られるし、揺れは不規則で読めない。

 相手も同じ条件なら泣き言も言っていられないが、どうも海はジャン・ノーの味方をしているらしい。

(いや、味方というより、海がヤツを避けているのか……)
 カイトは自分が跳ね上げた水飛沫に「ちっ」と舌打ちをして、ジャン・ノーが着地した場所から水が引いていく様子に「ちっ」もう一度鳴らしてしまう。

 剣の腕はほぼ互角。
 だからこそ、些細なきっかけで均衡は崩れる。


 大きく揺れた船にカイトがたたらを踏むと、「くっ……!」そこにちょうど海藻が張りついていて、ずるっと左足が滑った。
 体勢を崩した瞬間を見逃さず、剣が真上から振り下ろされる。
 ギン……!二つの剣が十字を造るや否や、無防備な懐に蹴りが入った。

「ぐ、……っは」カイトは舳先ギリギリまで吹き飛ばされたが、追撃を何とか躱して二撃目に備え──「カイト……!!」

 叫び声に集中は乱される。
 ジャン・ノーと立ち位置が入れ替わり、見上げたカイトの視界に、手すりから身を乗り出したユエの姿が否応なしに飛び込んでくる。

「ばっ……!危ない……!」
 落ちたらどうする?!というカイトの忠告が言葉になる前に、海は嫌がらせのようにザンッと波立って──「ユエ!!」前のめりになっていたユエの身体が、グラっと揺れた。

「あ……っ」華奢な身体が宙へと放り出される。

「ユエ!」後ろから捕まえようと伸びた誰かの手をすり抜けて、蒼い髪がバサっと広がる。

「ユエ!!」
 大きな水音が上がる前に、それより小さな水音をカイトは上げていた。
 剣も放り出して海へ飛び込むと、真っ直ぐにユエの元へと泳ぐ。

 その瞬間、ジャン・ノーのことを忘れていた。
 しかしそれを許さないとばかりに、波が邪魔をして方向感覚を狂わせる。

「っ、は」
 一度海面に顔を出して方向を確認する。
「ユエ!」名前を呼ぶと、「カイト!」思っていたよりも近くから声が返った。

 ユエも同じように海面から顔を出して、カイトへ向かって手を伸ばしている。ユエは船へ戻るよりも、カイトの元へと向かうことを選んでいた。

 お互いに手を伸ばして、距離を縮めていく。

「ああ゛ーーー!!」
 背中にジャン・ノーのひと際狂った叫びがぶつかったが、カイトは振り返る余裕もない。


「ユエ……!」
 指先が触れるまで、とてつもなく長く感じた。
 絡めた指をぐっと引き寄せて、しっかりと手を握る。腰に腕を回して抱き締めても、カイトの動揺はなかなか治らない。

 頭では分かっていた。
 あの高さから海に落ちても大きなケガにはならないはずで、仲間たちが見ていたのだからすぐに救出もされるはずだと。
 そして曲がりなりにもユエは人魚で、いくら海が荒れていようが溺れることはないはず、とも。


 ──分かっていても、身体が動いてしまった。

 遠くから見ているだけでは無理だ。
 自分で直に、温もりを感じて、鼓動を確かめなければ、胸を貫いた冷たい棘は溶けなかっただろう。

 柔らかな肢体を腕の中に閉じ込めて、カイトは久しぶりに息を吸った気がしていた。


 時間にすれば、一時間も離れてはいなかったはずなのに、永遠の別れを乗り越えたように離れ難く感じてしまう。

 それはユエも同じなのか、ぎゅっと腕に力を込めて、もう離れないで伝えるような抱擁が続く。


「カイト、」
 波に揺られてきつく抱き合ったまま、ユエがおずおずと話し始めた。

「あのね、カイト」
「ああ」
「……ゆ──」

 言いにくそうに口ごもったユエに、カイトは濡れて頬に貼りついた蒼い髪をかき上げて促す。
 どんな質問にも答えるつもりだったし、どんな非難も甘んじて受けるつもりだった。

 しかしユエの質問は、カイトの予想の斜め上をいくもの。


「ゆ、ユラン姫とっ、そのっ、こ、恋人だった、の……っ?!」
「……あ?」

 これがユエでなかったら、場を和ませる冗談か、本筋に辿り着く前の緩衝材のような質問だと、カイトは思ったかもしれない。

 しかし──ユエは真剣そのもの。

 カイトの肩に手を回して身体を支え、少し目線が高くなっているユエは、ごく真剣な、そして少しだけ不安そうな瞳で見つめてくる。

「っ、くく……」「か、カイト……?」

 笑われたことにきょとんとするユエを見て、カイトは「はあ、最初に聞くことが、それか……」とため息をつく。

 そのため息は、呆れではなくむしろ──とても愛おしげに吐き出された。

「だ、だって!ジャン・ノーがなんか、それっぽいこと──」「恋人じゃない」

 カイトははっきりと否定した。

「……ほんと?本当に、恋人じゃない……?」
「ああ。俺とユランは──戦友だった。背中を預けて戦った、相棒だ」

 ユエは前提となる質問──『カイトは百年前から生きてるの?』や『ユラン姫と実際に会ったことがあるの?』──にまで言及しないで、ただ「よかった……」と胸を撫で下ろす。

「俺、変なこと考えちゃって……ユラン姫と似てるから、カイトは俺に優しくしてくれたのかなとか、その……」
「昔の恋人に似てたから、手を出したんじゃないか、って?」
「う……だ、だって……」

 眉を吊り上げたカイトと下げたユエは、束の間、二人の世界に入り込んだ。


 心外だと、カイトからコツンと頭突きをもらって、ユエは完全にその疑惑を払拭できる。

「ばかなこと考えるな。そもそも、ユランとお前が似てるのなんざ、髪と瞳の色だけだ。っと、あと鱗の色、か。それ以外は性別から顔の造作から性格からなにから、全てにおいて共通点はないぞ」
「な、なんかそこまで似てないって言われるのも……」
「なんだ」
「だ、だって……カイト、ユラン姫のことすっごく褒めてた……」
「だから、なんだ」
「きれいで、勇敢で、優しいって……全然似てないって言われると、俺は……きれいじゃないし、勇敢じゃないし、優しくないってことかなって──っイタ!」

 俯いていくユエの鼻をむぎゅっと摘んで顔を上げさせると、カイトはふっと笑いかける。
 そして自分でも信じられないくらい甘い台詞が、するっと口から出てきた。

「お前は綺麗よりも可愛い、だな」
「ふ、え……?」
「英雄然とした勇敢さではないが、勇気もある。自分で自分の道を選ぶ勇気だ。他人のために涙を流す優しさも持ち合わせている。それから……愛情深い」
「カイト……っ」
「それでもユランとは似ていない。──似てなくていいんだ」


 カイトの手に、冷たい感覚が蘇る。
 それを振り払うために、ユエの身体を抱き締め直す。

 あの日、この場所で、ユランを見送った。時刻もほとんど同じ頃。呼吸が止まり、鼓動が止み、力が抜けて、冷たくなっていく──その過程をカイトはこの腕で感じていた。


「カイト──」「あ゛あ゛あ゛ーーー!!!」

 二人の世界を破ったのは、獣のような雄叫びだった。

 声と同時にグネグネと波がうねり出す。カイトとユエはぎゅうっと腕の力を強めて、その荒々しさに耐える。


「あっ」心臓のあたりを押さえたユエに、「どうした」とカイトが問うと、「鍵が……!」とだけ言って辛そうに顔をしかめる。

 続きを聞く前に、二人の会話にジャン・ノーの嗤い声が割り込んだ。

「ふはっ、あひゃ、アッハッハ!!髪なんてどぉっでもよかった!それより、ユラン!!お前いつの間に、人間になったんだぁぁぁ?!」

 船の上にいた時は手すりで下半身が隠れていたらしく、ユエが海に落ちて初めて、ジャン・ノーはそれに気づいたのだ。

「やぁーっぱりなぁ!人魚を人間にする方法、あると思ってたぜぇェ!俺が望んで叶わないことなんて、ねえんだからぁァ!」

 引きつったような狂喜の嗤いに、波が逃げ惑って海が荒れていく。

「あ゛ぁァ、待ってたぜェ……!これでやっとお前を──犯せる」


 カイトの全身にチリッと火花が散った。
 実際にはユエに向けられた劣情ではないが、それでもヤツの手が触れる想像が勝手に浮かんで、怒りが頭を焦がす。

 その衝動に身を任せそうになったが、「ね、カイト」ユエの声に引き戻された。

「あの人、俺のことユラン姫だと思ってるの?」
「っ、あ、あ。そうらしい。俺からすれば、どうやって間違えるんだと不思議でならないが……ヤツはユランの死を知らないからな。俺と一緒にいるってだけで、そう思い込んだのかもしれん」

「そっか……ユラン姫が亡くなってもう百年経ってることも、気づいてないんだ……」
「下手したら、自分が死んだことにも気づいていないのかもしれん」
「ええっ?」
「いや、信じたくないのか……自分の思い通りにならなかった現実を、全て拒否するつもりなのかもな」


 カイトは死者が蘇るなどという奇跡を信じていない。
 だからジャン・ノーの今の状態も、真実生き返ったのではなく、残された妄執が具現化されたものだと判断していた。

 壊すべきは、その妄執。

 しかしそれは口で言うほど簡単ではない。


「どうすればいいんだろう」
 心の中で思ったことが耳から聴こえてきて、カイトははっと焦点を合わせる。

「あの人に、自分がもう死んでることと、それからユラン姫がもういないことを信じさせるには、どうすればいいのかな」

 ユエの声が、カイトの頭の中をすっと撫でていく。余計な考えや感情が清涼な水で洗い流されて、残されたひとつの案に不思議と確信が持てた。

「そう、だな……まずはヤツに、自分が死んだことを思い出させようか」
「カイト……?」
「ユエ、手伝ってくれるか?」

 いきなりの頼みごとにユエはびっくり目を見開いてから、「うん!」嬉しそうに快諾した。


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