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第七章 孤独な鳶は月に抱かれて眠る
106 守護者の村
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「あの……!」
緊迫した空気を物ともしないユエは、二人の間に割り込んで「なにか知ってるんですか?」、まるでカイトを守るように盾になった。
その行動にパチパチと瞬きで驚きを表して、ウィノはふわっと舞い上がって距離を取る。
「……いくつか仮説は浮かんだ」
「っ……!それは」「けれど、それを今言うことはできない」「どうして」「根拠のない段階で話すべきではないから」「でも」「仮説を補強する材料が必要」「材料……?」
会話の間、妖精はユエとカイトの頭上を円を描いて飛んでいた。ふわふわとつかみどころがない飛翔に、地上ではやきもきとしてしまう。
考えがまとまってから、ウィノはピタリと停止する。
「君は確かこう言っていた。『守護者の村』を解放することが目的だと。その目的は、わたしと会った後でも変わりない?」
「え、もちろん。聖会の悪事をそのままにはしておけないもの」
「……そう、それならわたしも優先順位を変える」
「優先順位?」
聞き返したのはカイトだ。
「わたしがなによりも優先するのは、『妖精の鍵』の発見。けれどあてもなく探すよりは、情報集めのために『守護者の村』に戻るのも悪くない。君たちが求める材料も、あの場所にならあるかも」
「……それは、俺たちに協力してくれるということか?」
「できることならしよう。できないことはできないが」
持って回った言い方で協力を申し出た妖精は、さらに「状況が変わった。『妖精の谷』と『守護者の村』について、もう少し詳しい説明をしておこう」と態度を軟化させた。
しかし気を引いておきながら、すっかり暮れた空を見て「そろそろ寝ないと」と大真面目に話を打ち切る。
妖精流の冗談かと思いきや、「妖精にとって睡眠不足は寿命を削ることになる」と何やら恐ろしいことを言われて、一行も引き止めることはできなかった。
***
「また明日、同じように笛を吹いて」
そう言い置いて、妖精は空の彼方へと姿を消した。
見送った一行も坑夫たちに借りている小屋へと戻り、時間にしてほんの一時間そこらのやり取りについて、やっと感想を言い合うことができた。
「なーんか、想像とちがったなー、妖精」
「ね。物語とかではもっと可愛らしいっていうか、可憐っていう印象だったのに」
「ちょっと怖かった」
ヘロン、ラーク、アスカの子ども三人組は、ウィノの老獪な態度や口調にかなり気圧されたらしい。
「まあ、確かに想像とはちがったけど、信用できそうって点では及第点じゃないか。落ち着いていて、口が堅そうだし」
アイビスは高評価のようだ。
「信用?どうかな。俺はまだ、千年前から生きてるなんて、信じられないんだけど」
クレインは反対に猜疑的で、ジェイもそれにうなずく。
「すごいです……信じられないです……はぁー、ついてきてよかった。こんなすごい体験ができるなんて……!」
妖精の存在自体に夢見心地のフローラ。
「どうなってんだ……?本当にあの小さなからだに内臓が詰まってるのか?どうやって飛んでるんだよ。仮死状態ってそんなことできんのか……?」
妖精の生態に興味津々なのは、ガレノス医師。
「俺は、妖精がそんな突飛なウソつく理由ねぇと思うけどな。それに、疑ってこちらの信用を落とすよりかは、とりあえず信じてみて、協力を取りつけておいたほうがいいだろうよ」
フェザントの意見がもっとも堅実で、それにカイトも同意する。
「メーディセインの解放に妖精が協力してくれるなら、最初の想定よりもずっと早くコトは進むかもしれん。なんせ、あれだけはっきりと誰の目にも明らかな『証拠』が、自ら語ってくれるんだからな」
ベレン卿の配下たちは、主人の出迎えや聖会の見張りなどに散っていて、この場には残っていない。
今日一日で劇的に変わったこの状況を、依頼主にも早く報せておくべきかとカイトは思ったが、すぐに、むしろなるべく引き延ばそうと考えを翻す。
今は自分のことで手一杯で、妖精研究家のベレン卿のことまでとてもかまっていられないからだ。
ベレン卿には何の前触れもなくウィノに会ってもらって、騒動はその一回に収めてしまったほうが効率がいい──ということで、妖精の存在はひとまずこの場に居合わせた者の胸に留めておくことになった。
******
翌日、ラークが笛を吹いて、同じ光景が繰り返される。
妖精を待つ間、ユエはこっそりあくびを噛み殺した。色々と考えてしまってなかなか寝つけなかったのだ。
隣のカイトをこそっと見上げる。彼も昨夜はいつもより寝返りが多かったはずなのに、それをおくびにも出さないで澄ましている。
(すこし、怖いな……)
ユエの中からは昨日のようなワクワクが消えている。妖精が嵐を運んでくるような、ハラハラとした心配が止まらないのだ。
ユエはカイトが『妖精の谷』出身かもしれないという話が出たとき、単純に、もしかしたらカイトは長寿である妖精の血縁で、だから長生きなのかもしれないと、そんな希望を持ってしまった。
それか、何か妖精の秘術のようなもので寿命が延びた、などという妄想をしたり。
ウィノが二百年の寿命を千年に延ばしたと表明したことで、後者の可能性が俄然高くなり、希望はさらにふくらんだ。
けれど──ウィノのあの反応を思い返すと、とてもそう単純な話ではないと気を引き締め直さなくてはならない。
カイトとは、千年生きている妖精でさえ初めて出会った、反則的な存在なのだろうから。
***
「話は約千年前に遡る」
あいさつもそこそこに語り始めたウィノを、十一人でぐるりと取り囲むようにして座り、昨日よりもずっと落ち着いた雰囲気で聞く態勢を作る。
「君たちが呼ぶところの『純血』が生まれなくなって、我らが選んだ道は延命だった。その時生き残っていたのがわたしを含め百二十七人。昨日話したように、仮死状態になって寿命を延ばすことになった」
ドワーフがクリストバル・トリエンテひとりだったのに対して、妖精の生き残りの人数に意外と多かったんだな、とざわつく。
しかしウィノは質問は受け付けないとばかりに進んでいく。
「しかし全員一斉に眠ってしまっては危ない。仮死状態になると自力で目覚めるのは困難で、外から起こしてもらわなければならなかった。そのため見張り役としてひとりだけ起きていることになり、その役は数年ごとに交代し、全員で回していくことになった」
ここまで聞いて、ユエの中に(もしかして)が浮かぶ。
ウィノとの初対峙に「他に仲間は?」と尋ねたら「今はひとり」と返された。その時の『今は』に引っかかる。
(もしかして、妖精はウィノ以外にも生きて……?)
ユエだけでなく、カイトやアイビスもその可能性に気づいてそわっと身動ぎしたが、質問をして中断するより、最後まで話してもらったほうがいいとぐっと我慢した。
「『守護者の村』とはもともと、人間と我らの交流の場だった。友好的だった時代は、村人が我らと外から訪ねてきた人間を仲介して……──けれど戦争の時代に入ると、村は砦になった。人間を谷へと踏み込ませないための砦。そして我らが眠ることを選んでからは、谷を隠す隠れ蓑に」
「なるほど、だから『守護者』か」
カイトのつぶやきには敬意が込められていた。
聖会が調べるまで妖精の痕跡を発見できなかったのは、村人たちが完全に秘密を守ったからこそ。『妖精の谷』という物理的なものだけでなく、情報という目に見えないものまでも守り切ったのだ。
「見張り役がひとりで足りたのは、村人たちのおかげ。まだドワーフや人魚と交流があったころは使者になってくれたり、外の世界の情報収集をしてくれたり、兄弟たちが眠っている間の話し相手になってくれた。約六百年は平和に過ぎた。けれど──ある日突然、それは崩れ去る」
「っ……!山津波……」
故郷が滅びた原因についてガレノスから聞いていたカイトだったが、この時初めて、それで命を落とした人について具体的に想像した。
母親、父親、血のつながった親戚、家族同然の村人たち──顔も知らない彼らの死を。
ウィノの仮面のように貼りついた表情にも、微かに哀惜がよぎる。
「そう、山津波。信じられないほどの雨が一気に降り、ひと晩で景色が一変した。あの夜のことは、決して忘れられない」
「その時ちょうど、ウィノが見張り当番だったの?」
思わず質問を挟んでしまったユエだが、受け付けてくれるようになったのか普通に答えが返って来る。
「いいえ、わたしは眠っていた。君たちが舟で見た崖、あの上で我らは眠っていた」
「えっ、あんなに上で?」
「そして眠っていた我らごと、崖は崩れた」
「え……?」
「わたしが起きたのは、崖崩れによる衝撃によって。はじめ、なにが起きたのかまったくわからなかった。真夜中、土砂降りの雨、月明かりもない。とにかく周囲の兄弟たちと手を取り合って避難した。状況が把握できるようになるまでにかなりの時間を要し、夜が明けるころには──すべて土と水に埋もれていた」
誰もが、災害のあまりにも非情な仕打ちに言葉をなくす。特に現場を直接見たカイトとユエとフローラの三人は、今のメーディセインの美しさが過去の残酷さを覆い隠しているようで、やるせない。
「メーディセイン──『守護者の村』で生き残った者は?」
答えを知っていても、カイトは訊かずにはいられなかった。
「いない──いいえ、わたしの知る限りいなかった。君が現れるまでは」
カイトの出自についての真偽は、ここでの議論は無意味だと共通認識していたため、どちらも触れない。
「……では、妖精の生き残りは?」
「百二十七人のうち、三十三人が寿命によりそれより前に死を迎えていた。残りの九十四人のうち、その時に命を落としたのが五十七。つまり残ったのはわたしを含め、三十七人」
「三十七……いや、それでも三十七人は生きているんだな」
その人数を多いと取るか少ないと取るか迷ったカイトだが、ウィノひとりよりは多いに決まっていると無理やり前向きに考えを切り替え──かけたが、それはできなかった。
嫌な予感がひしひしと迫ってくる。
メーディセインが妖精所縁の地であることは、もう疑う余地がない。では、聖会がその地で見つけた、妖精の痕跡とは──?
カイトが考えをまとめる前に、ウィノは語りを再開した。話は佳境に入っている。ひとまず集中をそちらへ戻すことにした。
「山津波で失くしたのは、兄弟や友の命だけではない。『妖精の鍵』の行方が知れなくなったのも、その時」
「鍵……!」
「鍵を守る役目も、見張り役が担っていた。そしてあの山津波の夜の見張り役とともに、鍵はどこかへいってしまった」
「でもそれってつまり、メーディセインに埋まってるってことじゃないの?水の中か、土の中か」
「我らもそう考えて、何年も、何年も……結局三百年探した」
「三百……」
「あそこにはないのだと判断せざるを得なかった。しかし捜索範囲を広げようにも、我らだけではとても無謀。だから君たちに協力してもらおうと考えた」
ウィノが現状には触れずにこのまま話を畳もうとしている気がして、そうはさせるかと「メーディセインは今どうなってるんだ?」カイトは切り込んだ。
「それは……」
「お前以外の三十六人は?妖精の谷でまた眠っているのか?聖会がやっていることをどれだけ把握している?『再生の水』のことは?メーディセインは妖精たちにとっても大切な場所なんじゃないのか?それなのに一度も解放を願うような言葉は出てこない。それどころか鍵の情報のついでのような扱いだ。それでいいのか──?」
「カイト……!」
グイッとユエに腕を引っ張られて、自分がムキになっていたことにカイトも気づく。そして並べ連ねた言葉で、ウィノを殴っていたことも。
表情にこそ変化はなかったが、無意味に、そして不規則に開いたり閉じたりする背中の羽が、妖精の動揺を表していた。
カイトが詫びるより早く、ウィノは「そう、わたしは焦っているのかもしれない」と自分でも意外そうにつぶやく。
「焦る?」
「鍵を、早く見つけなければ、と」
「どうしてそこまで急ぐ?」
「時間がないから。兄弟たちが全滅しようと、わたしひとりが生き残ってさえいれば、なんとかなる。けれど鍵……鍵が見つからなければ、すべては無意味」
「全滅って……」
不穏な単語を拾ってユエがギョッとすると、ウィノはピタッと口を閉ざす。その行動からは、言うつもりのないことまで言い過ぎたという失敗が伝わってくる。
「……話したくないことまで無理やり聞き出すつもりはない」
冷静を取り戻して、カイトは口調を和らげる。しかしそれでも主張だけはしておくことにした。
「だが、メーディセインについてはできる限りの事前情報がほしいというのが本音だ。乗り込むにあたって、予期せぬものに遭遇し動きが鈍ることがないように」
ウィノはしばらく熟考してから、現在に繋がるように時系列を進めてくれることを選んだ。
「災害の後、残った我らはまた同じように延命してきた。以前と変わったのは、見張り役の仕事が鍵の探索になったことと、眠る場所が崖の上から下へと移ったこと。山津波で湖ができて、あの場所は外界から閉ざされた。そしてあの災害は『守護者の村』だけでなく、近郊の村々にも大きな被害を出し、住めなくなった土地から離れる者も相次いで、土地に詳しい者が消えていった。そのため、あえて危険を冒してまで湖を渡るような奇特な人間はいなかった。──彼らがやってくるまでは」
「それが約二十年前、か。それで、ちょうどそのとき見張り役だったのが──?」
「そう、わたし。大山脈で鍵を探していて、何日かぶりに帰ってみたら、もう『守護者の村』は完全に占拠されていた」
「それじゃあ、他の妖精たちは……?」
「彼らに──囚われている、といっていい」
予想が当たったことに、カイトは低く唸る。
これで、どうやって聖会がメーディセインを妖精所縁の土地と判断したのか、その疑問は解けたが、この答えは決して喜ばしいものではない。
「人質がいるとなると……」
単純に制圧すればいいという話ではなくなったな、と作戦の変更に頭を悩ませるカイトに、しかしウィノは「……人質、とは考えていないかも」
「……どういう意味だ?」
「彼らにとって、妖精は『人』ではないという意味」
「……っ」
察しのいい何人かは、囚われた妖精たちがどのような扱いを受けているのかを想像してしまって、顔を思いっきりしかめた。
「もし、かして……」
そしてさらにその先まで想像したのは、カイト。
「『再生の水』、とは──」
しかしその想像がどこまで当たっているかは、静かな口調でウィノに「それについては、わたしにも確信がない」と言われてしまったから、確かめることはできなかった。
「……やはり不思議なんだが」今度は責める空気をできるだけ排除してカイトは訊く。「仲間たちが囚われているのに、やはり優先するのは『妖精の鍵』なのか?」
「わたしは焦っているし、諦めていた」
「諦め……って、仲間の命を、か?」
「助け出すことを。見ての通り、我らは人間と渡り合うには小さ過ぎる。隙をついてひとりくらいなら助け出すことはできたかもしれないけど、失敗してわたしまで捕われてしまうことだけは避けなければならなかった」
それは自分の命を惜しんで仲間を見捨てた、ということではない。『優先順位』の言葉通り、仲間の命よりも勝る使命があるという強い決意が、瞳の奥に潜んでいる。
三十三人もの命を犠牲にしても、見つけ出さねばならない『妖精の鍵』とは──?
(いや、鍵だけじゃない。妖精と『妖精の鍵』、両方が無事にそろうことが重要なのか……?鍵を使えるのは純血だけ。つまりウィノは、鍵を使うために探している……?いや、だが、三百五十年前までは鍵は手元にあった。その時点では使うつもりはなかった……?使っても意味がなかった?ではその時と今では、なにがちがう……?)
つらつらと考え込んでいるカイトを一瞥して、ウィノは「今わたしが話せることはこのくらいだ。補足くらいならできる。その範囲での質問なら受けよう」と話を締めくくった。
ほとんどは質問役はカイトに任せようと身を引いたのだが、考え込んでいたカイトが乗り遅れた隙に、「はいはーい!!」元気に手が挙がる。
「あのさ!妖精は人の心が読めるってホント?!」
意表を突いたヘロンの質問に、張り詰めていた空気が一気に緩んでいく。
「おいおい、まず聞くことがソレか?」呆れ返るフェザントにもヘロンは、「なに言ってんだよ、すっげぇ大事なことだろ!だって心がぜんぶ読まれてたら、すっげぇ恥ずかしいじゃん!」となぜか胸を張る。
「心を読む、とは少しちがう」ウィノは真面目に答えてくれるつもりらしい。「我らが感じ取るのは、人の変化。心音・呼吸の乱れ、体温の上昇、瞬きの回数、筋肉の動き──そういうものから総合的に判断して、感情を読み取る」
「ん?んん~?それってラークとはまたちがうってこと?」
「ラーク、とは?」
「あ、こいつのこと!」「ちょ、ヘロンっ!」「こいつ、妖精の亜種なんだよ。あ、亜種って知ってる?」「亜種?」「あれ、知らない?亜種ってのはねー……ラーク!」「ふえっ?!」「説明、任せた!」「え、ええーーー!?」
いきなり矢面に立たされたラークはあたふたとし、妖精と目が合って狼狽えはしたが、思い切って「あの!」口を開くと「は、はじめまして!ぼく、ラークと言いますっ」自己紹介から始めた。
「オレ!オレはね、ヘロンっつーの!」「はいっ!アスカ!!アスカはね、ドワーフで──」「オレ、人間!」「あのっ、亜種っていうのは──」「空を飛ぶのってどんな気持ち?」「なー!なー!羽!!羽見せてよ!」「待ってよ、ぼくが喋ってるんだからっ」「オレが先だろ?!」「ヘロンがぼくに任せたくせにっ」「ウィノが持ち上げてくれたら、アスカも空飛べる?」「っ!」「っ!」「オレっ、オレもオレも!!」「空っ、飛べるのっ?!」
緊張が解けたことで、それまで溜まっていた好奇心が溢れ出した子ども三人は、いつも以上にはしゃいで三重奏が止まらない。
さすがのウィノも、勢いに押されて身体が逃げている。
「お・ま・え・ら!ちょっと落ち着け!!」
べし!バシ!ベシ!とフェザントに頭を叩かれて、やっと収拾がついた。
けれど「ゴホン」とわざとらしく咳払いしたフェザントは、「で、飛べるのか?飛べないのか?」子どもたちと同じキラキラした目で聞き直した。
よく見てみるとフェザントだけでなく、他の大人組も期待を隠せずそわそわとしている。
その期待を一身に背負って、ウィノは答えた。
「ひとりではむり」
「あぁー……」
「十人いれば、子どもひとりなら持ち上げられる」
「おぉーー!!」
『空を飛びたい』という夢想は何も、子どもだけのものではなかったらしい。
そんな力の抜けるやり取りがあって、堅苦しい質疑応答はどこかへ行ってしまった。
この適応力と柔軟性が一行の持ち味で、妖精すら巻き込んで和気藹々とした雰囲気を作ってしまう。
空を飛ぶという議題の後、「亜種とは」とか「感情を読むとは」というヘロンの最初の質問に戻って、憧れの妖精にご教授願うラークの照れ具合をからかいつつ、盛り上がっていく輪。
そこからわざと外れたカイトは、ちょうどいい、と考えの続きに没頭する。
(三百五十年前にはなくて、今はあるもの──それは純血の存在)
その一角であるユエは、みんなと一緒になって笑いながらも隣の気配にも敏感に反応して、カイトがちらっと向けた視線に(なに?)と視線で返す。
とりあえず(なんでもない)と首を振っておいて、思考をさらに進める。
(三種の純血が全員そろうのを待っていた……?しかし千年前には、純血も鍵も完全にそろっていた。つまり千年前には使えなかった……?使わなかった?使う必要がなかった?)
ウィノの話の中で引っかかった言葉がいくつかあった。──『現状維持』『種ごとに意見の相違』『延命』
(千年前……三百五十年前……そして現在……何が変わった?何が変わっていない?)
突然、カイトの背中をゾワッと寒気が駆け上がる。
そっとその原因を盗み見て、理由を言葉にすべく考えをまとめる。
(現在、三種の純血がそろい、あとは『妖精の鍵』で鍵も三本そろう。けれど千年前とちがうのは、すべてを妖精だけが握っていること……)
人魚とドワーフは一度純血が途絶え、知識を失った。けれど妖精だけは、千年前の記憶そのままに存在し続けてきた。
ユエとアスカは鍵について詳しく知らないのだ。唯一、ウィノだけが知識をすべて握っている。
つまりそれは、騙そうと思えば簡単に騙せてしまう──ということではないか。
(もし、鍵に三種を人間に変える以上の力があったとして、それがどんな力なのかは、使ってみるまで俺たちにはわからない……千年前には使うことができなかったのは、人魚とドワーフに反対されたから、とか……?『意見の相違』はこれか?)
カイトの中で急速に、ウィノへの不信感が芽生えていく。
(俺たちは『妖精』というだけで、ウィノを信じ過ぎていないか……?)
『信用していない』と最初に宣言されたことで、自分たちがウィノの信用を得ることばかりを考えて、一方的な構図になっていたことに気づく。
それから、『答えられる』『答えられない』とはっきり言われたことで、嘘をつかれる可能性や、騙される可能性を完全に除外していたことも。
「……!」
盗み見ていたはずのカイトの目を、翠の虹彩が射抜いた。カイトが猜疑心を抱くことを、そこへ至る過程すら含めてすべてお見通しとばかりに。
取り繕うとしたカイトだが、ラーク以上に感情を読める妖精相手にそれは無意味だとすぐに気づき、むしろ挑発的に睨み返した。
二人の間の静かな攻防は、決着がつくことなく終わる。
カイトはウィノを疑ったまま、そしてウィノは自分を疑うカイトをそのままに放置した。
どちらも理解していたのだ。
この決着がつくのは、メーディセイン奪還の後になると。
そのためカイトは、他の仲間たちがあの手この手で世界の謎や鍵の秘密を聞き出そうとする中、ひとり沈黙を保っていた。
******
「明日……と明後日も来られない」と言い残して、ウィノは夕暮れの空に飛び立った。
ヘロンたちが苦労して聞き出したところによると、妖精は本来一日活動し、一日眠るという活動周期なのだという。そしてその睡眠は他の種とは少し違っていて、かなり深い、ちょっとやそっとのことでは自力で起きられないほど深い眠りなのだとか。
そうして身体を休めることが、妖精の長い寿命に繋がっていたのだ。
つまり寿命を延ばすための仮死状態は、妖精のもともとの生態をより高めた結果、可能になったものらしい。
ウィノの昨日の発言「睡眠不足は寿命を削る」は冗談でも比喩でもなく、言葉通りの意味だった。そして昨日、今日と続けて起きていたウィノは、その睡眠不足を明日、明後日で回復しなければならないらしい。
「寝てる間、俺たちが守ってやるぜ!」とヘロンはウィノを自分たちの寝床へと誘ったが、やはりまだ完全に信用されていないからか、バッサリと断られてしまったのだった。
「ちぇー、信用ねぇなー」
「妖精ってどこで寝るんだろうね。木の上とかかな?」
「お花の中とか?」
「ウィノの言い方からすると、仮死状態になって寿命を延ばす方法は妖精にしか適応できなかったっぽいな」
「だろうな。できたなら、人魚もドワーフも生き残ってたはずだろうさ」
「年齢をどう数えていいかわからないって言ってたのは、だからなのかな」
「ユエ、それどういう意味?」
「仮死状態のままの何十年、何百年は、なにもしないで寝てるだけだったってことでしょう?その間って、ほんとに『生きている』とは言えない、みたいな」
「あー、なるほど。確かに千年のうちのほとんど眠って過ごしてたら、堂々と千才です、とはならないかも」
「もしかしたら起きてる時間の合計だけでいくと、ウィノも妖精の本来の寿命の二百年以内に収まってるのかも」
ウィノの話の検証で熱気冷めやらぬ小屋から、カイトはこっそりとユエを散歩に誘った。仲間たちはそっと抜け出す二人を見ないフリしてくれる。
夜の山に白い息が雲のように漂う。
「きれい……」
冬の澄んだ夜空には、星が手で掴めるほど近く瞬いている。
体温を分け合うように寄り添ってしばらく見上げていたが、赤くなったユエの鼻にチュッと音を立ててキスを落として、カイトは近くの鉱山の入り口のひとつである洞窟に向かって手を引いた。
寒さを凌ぐためなら小屋へ戻ればいいが、ここで帰っては、わざわざ抜け出して二人きりになった意味がない。
岩場に腰を下ろしたカイトは、自分の外套で包み込んだユエを膝の上に座らせると、「耳、冷たくなってるな」外気にさらされているそこを指でくすぐる。
するとそんなつもりはなかったのに、「んっ」とくすぐったさに震えたユエが潤んだ目で見つめてくるから、思わず、冷えた唇も労ってやりたくなってしまった。
唇の表面が口の中と同じ温度になるまで口づけを交わしていると、いつのまにかカイトも本来の目的を忘れて、このために二人になったような気がしてきたが、「それで……なにか話があったんじゃないの?」ユエの言葉で思い出し、服の中に侵入しようとしていた手を止める。
「ユエ、ウィノのことをどう思う?」
仕切り直して、カイトは目的を果たす。
「どうって?信用できるかってこと?」
「ああ」
「うーん……まだよくわからないけど、種族よりも個人を見てる人なんじゃないかなって気はする」
それはカイトの中にはなかった新しい視点で、「もう少しくわしく」とユエをせっついた。
「えっとね、ウィノはおれのことを人魚だからってすぐ信じてもいないし、アスカのこともそんな感じだ。でも人間だからって理由で軽んじたりもしてない。山津波のことを話すとき、妖精の仲間とメーディセインの人間たち、どっちのことも悼んでいたでしょう?」
「確かに、そうだった」
「それに、今、妖精の仲間たちを捕らえているのは人間だけど、だからって人間ぜんぶを恨んだりはしてない。なんというか……うん、公平な人だと思う」
「公平、か」
ユエの評価を聞いて、カイトは自分の感じた不信感を伝えることはやめた。先入観を与えるよりも、ユエ自身の目で見極めてもらったほうがいいと考えを変えたのだ。
ユエの人を見る目を、カイトはけっこう信頼している。
「ね、」
「うん?」
「話ってそれだけ?」
「ああ」
「なら……はやく、続きしよ」
用事は先に済ませて、これで集中できるとばかりに、ユエはカイトの手を自分の服の中に導いていく。
結局最後には、どちらが本題だったのかわからなくなるほど、触れ合う時間のほうが長くなってしまったのだった。
緊迫した空気を物ともしないユエは、二人の間に割り込んで「なにか知ってるんですか?」、まるでカイトを守るように盾になった。
その行動にパチパチと瞬きで驚きを表して、ウィノはふわっと舞い上がって距離を取る。
「……いくつか仮説は浮かんだ」
「っ……!それは」「けれど、それを今言うことはできない」「どうして」「根拠のない段階で話すべきではないから」「でも」「仮説を補強する材料が必要」「材料……?」
会話の間、妖精はユエとカイトの頭上を円を描いて飛んでいた。ふわふわとつかみどころがない飛翔に、地上ではやきもきとしてしまう。
考えがまとまってから、ウィノはピタリと停止する。
「君は確かこう言っていた。『守護者の村』を解放することが目的だと。その目的は、わたしと会った後でも変わりない?」
「え、もちろん。聖会の悪事をそのままにはしておけないもの」
「……そう、それならわたしも優先順位を変える」
「優先順位?」
聞き返したのはカイトだ。
「わたしがなによりも優先するのは、『妖精の鍵』の発見。けれどあてもなく探すよりは、情報集めのために『守護者の村』に戻るのも悪くない。君たちが求める材料も、あの場所にならあるかも」
「……それは、俺たちに協力してくれるということか?」
「できることならしよう。できないことはできないが」
持って回った言い方で協力を申し出た妖精は、さらに「状況が変わった。『妖精の谷』と『守護者の村』について、もう少し詳しい説明をしておこう」と態度を軟化させた。
しかし気を引いておきながら、すっかり暮れた空を見て「そろそろ寝ないと」と大真面目に話を打ち切る。
妖精流の冗談かと思いきや、「妖精にとって睡眠不足は寿命を削ることになる」と何やら恐ろしいことを言われて、一行も引き止めることはできなかった。
***
「また明日、同じように笛を吹いて」
そう言い置いて、妖精は空の彼方へと姿を消した。
見送った一行も坑夫たちに借りている小屋へと戻り、時間にしてほんの一時間そこらのやり取りについて、やっと感想を言い合うことができた。
「なーんか、想像とちがったなー、妖精」
「ね。物語とかではもっと可愛らしいっていうか、可憐っていう印象だったのに」
「ちょっと怖かった」
ヘロン、ラーク、アスカの子ども三人組は、ウィノの老獪な態度や口調にかなり気圧されたらしい。
「まあ、確かに想像とはちがったけど、信用できそうって点では及第点じゃないか。落ち着いていて、口が堅そうだし」
アイビスは高評価のようだ。
「信用?どうかな。俺はまだ、千年前から生きてるなんて、信じられないんだけど」
クレインは反対に猜疑的で、ジェイもそれにうなずく。
「すごいです……信じられないです……はぁー、ついてきてよかった。こんなすごい体験ができるなんて……!」
妖精の存在自体に夢見心地のフローラ。
「どうなってんだ……?本当にあの小さなからだに内臓が詰まってるのか?どうやって飛んでるんだよ。仮死状態ってそんなことできんのか……?」
妖精の生態に興味津々なのは、ガレノス医師。
「俺は、妖精がそんな突飛なウソつく理由ねぇと思うけどな。それに、疑ってこちらの信用を落とすよりかは、とりあえず信じてみて、協力を取りつけておいたほうがいいだろうよ」
フェザントの意見がもっとも堅実で、それにカイトも同意する。
「メーディセインの解放に妖精が協力してくれるなら、最初の想定よりもずっと早くコトは進むかもしれん。なんせ、あれだけはっきりと誰の目にも明らかな『証拠』が、自ら語ってくれるんだからな」
ベレン卿の配下たちは、主人の出迎えや聖会の見張りなどに散っていて、この場には残っていない。
今日一日で劇的に変わったこの状況を、依頼主にも早く報せておくべきかとカイトは思ったが、すぐに、むしろなるべく引き延ばそうと考えを翻す。
今は自分のことで手一杯で、妖精研究家のベレン卿のことまでとてもかまっていられないからだ。
ベレン卿には何の前触れもなくウィノに会ってもらって、騒動はその一回に収めてしまったほうが効率がいい──ということで、妖精の存在はひとまずこの場に居合わせた者の胸に留めておくことになった。
******
翌日、ラークが笛を吹いて、同じ光景が繰り返される。
妖精を待つ間、ユエはこっそりあくびを噛み殺した。色々と考えてしまってなかなか寝つけなかったのだ。
隣のカイトをこそっと見上げる。彼も昨夜はいつもより寝返りが多かったはずなのに、それをおくびにも出さないで澄ましている。
(すこし、怖いな……)
ユエの中からは昨日のようなワクワクが消えている。妖精が嵐を運んでくるような、ハラハラとした心配が止まらないのだ。
ユエはカイトが『妖精の谷』出身かもしれないという話が出たとき、単純に、もしかしたらカイトは長寿である妖精の血縁で、だから長生きなのかもしれないと、そんな希望を持ってしまった。
それか、何か妖精の秘術のようなもので寿命が延びた、などという妄想をしたり。
ウィノが二百年の寿命を千年に延ばしたと表明したことで、後者の可能性が俄然高くなり、希望はさらにふくらんだ。
けれど──ウィノのあの反応を思い返すと、とてもそう単純な話ではないと気を引き締め直さなくてはならない。
カイトとは、千年生きている妖精でさえ初めて出会った、反則的な存在なのだろうから。
***
「話は約千年前に遡る」
あいさつもそこそこに語り始めたウィノを、十一人でぐるりと取り囲むようにして座り、昨日よりもずっと落ち着いた雰囲気で聞く態勢を作る。
「君たちが呼ぶところの『純血』が生まれなくなって、我らが選んだ道は延命だった。その時生き残っていたのがわたしを含め百二十七人。昨日話したように、仮死状態になって寿命を延ばすことになった」
ドワーフがクリストバル・トリエンテひとりだったのに対して、妖精の生き残りの人数に意外と多かったんだな、とざわつく。
しかしウィノは質問は受け付けないとばかりに進んでいく。
「しかし全員一斉に眠ってしまっては危ない。仮死状態になると自力で目覚めるのは困難で、外から起こしてもらわなければならなかった。そのため見張り役としてひとりだけ起きていることになり、その役は数年ごとに交代し、全員で回していくことになった」
ここまで聞いて、ユエの中に(もしかして)が浮かぶ。
ウィノとの初対峙に「他に仲間は?」と尋ねたら「今はひとり」と返された。その時の『今は』に引っかかる。
(もしかして、妖精はウィノ以外にも生きて……?)
ユエだけでなく、カイトやアイビスもその可能性に気づいてそわっと身動ぎしたが、質問をして中断するより、最後まで話してもらったほうがいいとぐっと我慢した。
「『守護者の村』とはもともと、人間と我らの交流の場だった。友好的だった時代は、村人が我らと外から訪ねてきた人間を仲介して……──けれど戦争の時代に入ると、村は砦になった。人間を谷へと踏み込ませないための砦。そして我らが眠ることを選んでからは、谷を隠す隠れ蓑に」
「なるほど、だから『守護者』か」
カイトのつぶやきには敬意が込められていた。
聖会が調べるまで妖精の痕跡を発見できなかったのは、村人たちが完全に秘密を守ったからこそ。『妖精の谷』という物理的なものだけでなく、情報という目に見えないものまでも守り切ったのだ。
「見張り役がひとりで足りたのは、村人たちのおかげ。まだドワーフや人魚と交流があったころは使者になってくれたり、外の世界の情報収集をしてくれたり、兄弟たちが眠っている間の話し相手になってくれた。約六百年は平和に過ぎた。けれど──ある日突然、それは崩れ去る」
「っ……!山津波……」
故郷が滅びた原因についてガレノスから聞いていたカイトだったが、この時初めて、それで命を落とした人について具体的に想像した。
母親、父親、血のつながった親戚、家族同然の村人たち──顔も知らない彼らの死を。
ウィノの仮面のように貼りついた表情にも、微かに哀惜がよぎる。
「そう、山津波。信じられないほどの雨が一気に降り、ひと晩で景色が一変した。あの夜のことは、決して忘れられない」
「その時ちょうど、ウィノが見張り当番だったの?」
思わず質問を挟んでしまったユエだが、受け付けてくれるようになったのか普通に答えが返って来る。
「いいえ、わたしは眠っていた。君たちが舟で見た崖、あの上で我らは眠っていた」
「えっ、あんなに上で?」
「そして眠っていた我らごと、崖は崩れた」
「え……?」
「わたしが起きたのは、崖崩れによる衝撃によって。はじめ、なにが起きたのかまったくわからなかった。真夜中、土砂降りの雨、月明かりもない。とにかく周囲の兄弟たちと手を取り合って避難した。状況が把握できるようになるまでにかなりの時間を要し、夜が明けるころには──すべて土と水に埋もれていた」
誰もが、災害のあまりにも非情な仕打ちに言葉をなくす。特に現場を直接見たカイトとユエとフローラの三人は、今のメーディセインの美しさが過去の残酷さを覆い隠しているようで、やるせない。
「メーディセイン──『守護者の村』で生き残った者は?」
答えを知っていても、カイトは訊かずにはいられなかった。
「いない──いいえ、わたしの知る限りいなかった。君が現れるまでは」
カイトの出自についての真偽は、ここでの議論は無意味だと共通認識していたため、どちらも触れない。
「……では、妖精の生き残りは?」
「百二十七人のうち、三十三人が寿命によりそれより前に死を迎えていた。残りの九十四人のうち、その時に命を落としたのが五十七。つまり残ったのはわたしを含め、三十七人」
「三十七……いや、それでも三十七人は生きているんだな」
その人数を多いと取るか少ないと取るか迷ったカイトだが、ウィノひとりよりは多いに決まっていると無理やり前向きに考えを切り替え──かけたが、それはできなかった。
嫌な予感がひしひしと迫ってくる。
メーディセインが妖精所縁の地であることは、もう疑う余地がない。では、聖会がその地で見つけた、妖精の痕跡とは──?
カイトが考えをまとめる前に、ウィノは語りを再開した。話は佳境に入っている。ひとまず集中をそちらへ戻すことにした。
「山津波で失くしたのは、兄弟や友の命だけではない。『妖精の鍵』の行方が知れなくなったのも、その時」
「鍵……!」
「鍵を守る役目も、見張り役が担っていた。そしてあの山津波の夜の見張り役とともに、鍵はどこかへいってしまった」
「でもそれってつまり、メーディセインに埋まってるってことじゃないの?水の中か、土の中か」
「我らもそう考えて、何年も、何年も……結局三百年探した」
「三百……」
「あそこにはないのだと判断せざるを得なかった。しかし捜索範囲を広げようにも、我らだけではとても無謀。だから君たちに協力してもらおうと考えた」
ウィノが現状には触れずにこのまま話を畳もうとしている気がして、そうはさせるかと「メーディセインは今どうなってるんだ?」カイトは切り込んだ。
「それは……」
「お前以外の三十六人は?妖精の谷でまた眠っているのか?聖会がやっていることをどれだけ把握している?『再生の水』のことは?メーディセインは妖精たちにとっても大切な場所なんじゃないのか?それなのに一度も解放を願うような言葉は出てこない。それどころか鍵の情報のついでのような扱いだ。それでいいのか──?」
「カイト……!」
グイッとユエに腕を引っ張られて、自分がムキになっていたことにカイトも気づく。そして並べ連ねた言葉で、ウィノを殴っていたことも。
表情にこそ変化はなかったが、無意味に、そして不規則に開いたり閉じたりする背中の羽が、妖精の動揺を表していた。
カイトが詫びるより早く、ウィノは「そう、わたしは焦っているのかもしれない」と自分でも意外そうにつぶやく。
「焦る?」
「鍵を、早く見つけなければ、と」
「どうしてそこまで急ぐ?」
「時間がないから。兄弟たちが全滅しようと、わたしひとりが生き残ってさえいれば、なんとかなる。けれど鍵……鍵が見つからなければ、すべては無意味」
「全滅って……」
不穏な単語を拾ってユエがギョッとすると、ウィノはピタッと口を閉ざす。その行動からは、言うつもりのないことまで言い過ぎたという失敗が伝わってくる。
「……話したくないことまで無理やり聞き出すつもりはない」
冷静を取り戻して、カイトは口調を和らげる。しかしそれでも主張だけはしておくことにした。
「だが、メーディセインについてはできる限りの事前情報がほしいというのが本音だ。乗り込むにあたって、予期せぬものに遭遇し動きが鈍ることがないように」
ウィノはしばらく熟考してから、現在に繋がるように時系列を進めてくれることを選んだ。
「災害の後、残った我らはまた同じように延命してきた。以前と変わったのは、見張り役の仕事が鍵の探索になったことと、眠る場所が崖の上から下へと移ったこと。山津波で湖ができて、あの場所は外界から閉ざされた。そしてあの災害は『守護者の村』だけでなく、近郊の村々にも大きな被害を出し、住めなくなった土地から離れる者も相次いで、土地に詳しい者が消えていった。そのため、あえて危険を冒してまで湖を渡るような奇特な人間はいなかった。──彼らがやってくるまでは」
「それが約二十年前、か。それで、ちょうどそのとき見張り役だったのが──?」
「そう、わたし。大山脈で鍵を探していて、何日かぶりに帰ってみたら、もう『守護者の村』は完全に占拠されていた」
「それじゃあ、他の妖精たちは……?」
「彼らに──囚われている、といっていい」
予想が当たったことに、カイトは低く唸る。
これで、どうやって聖会がメーディセインを妖精所縁の土地と判断したのか、その疑問は解けたが、この答えは決して喜ばしいものではない。
「人質がいるとなると……」
単純に制圧すればいいという話ではなくなったな、と作戦の変更に頭を悩ませるカイトに、しかしウィノは「……人質、とは考えていないかも」
「……どういう意味だ?」
「彼らにとって、妖精は『人』ではないという意味」
「……っ」
察しのいい何人かは、囚われた妖精たちがどのような扱いを受けているのかを想像してしまって、顔を思いっきりしかめた。
「もし、かして……」
そしてさらにその先まで想像したのは、カイト。
「『再生の水』、とは──」
しかしその想像がどこまで当たっているかは、静かな口調でウィノに「それについては、わたしにも確信がない」と言われてしまったから、確かめることはできなかった。
「……やはり不思議なんだが」今度は責める空気をできるだけ排除してカイトは訊く。「仲間たちが囚われているのに、やはり優先するのは『妖精の鍵』なのか?」
「わたしは焦っているし、諦めていた」
「諦め……って、仲間の命を、か?」
「助け出すことを。見ての通り、我らは人間と渡り合うには小さ過ぎる。隙をついてひとりくらいなら助け出すことはできたかもしれないけど、失敗してわたしまで捕われてしまうことだけは避けなければならなかった」
それは自分の命を惜しんで仲間を見捨てた、ということではない。『優先順位』の言葉通り、仲間の命よりも勝る使命があるという強い決意が、瞳の奥に潜んでいる。
三十三人もの命を犠牲にしても、見つけ出さねばならない『妖精の鍵』とは──?
(いや、鍵だけじゃない。妖精と『妖精の鍵』、両方が無事にそろうことが重要なのか……?鍵を使えるのは純血だけ。つまりウィノは、鍵を使うために探している……?いや、だが、三百五十年前までは鍵は手元にあった。その時点では使うつもりはなかった……?使っても意味がなかった?ではその時と今では、なにがちがう……?)
つらつらと考え込んでいるカイトを一瞥して、ウィノは「今わたしが話せることはこのくらいだ。補足くらいならできる。その範囲での質問なら受けよう」と話を締めくくった。
ほとんどは質問役はカイトに任せようと身を引いたのだが、考え込んでいたカイトが乗り遅れた隙に、「はいはーい!!」元気に手が挙がる。
「あのさ!妖精は人の心が読めるってホント?!」
意表を突いたヘロンの質問に、張り詰めていた空気が一気に緩んでいく。
「おいおい、まず聞くことがソレか?」呆れ返るフェザントにもヘロンは、「なに言ってんだよ、すっげぇ大事なことだろ!だって心がぜんぶ読まれてたら、すっげぇ恥ずかしいじゃん!」となぜか胸を張る。
「心を読む、とは少しちがう」ウィノは真面目に答えてくれるつもりらしい。「我らが感じ取るのは、人の変化。心音・呼吸の乱れ、体温の上昇、瞬きの回数、筋肉の動き──そういうものから総合的に判断して、感情を読み取る」
「ん?んん~?それってラークとはまたちがうってこと?」
「ラーク、とは?」
「あ、こいつのこと!」「ちょ、ヘロンっ!」「こいつ、妖精の亜種なんだよ。あ、亜種って知ってる?」「亜種?」「あれ、知らない?亜種ってのはねー……ラーク!」「ふえっ?!」「説明、任せた!」「え、ええーーー!?」
いきなり矢面に立たされたラークはあたふたとし、妖精と目が合って狼狽えはしたが、思い切って「あの!」口を開くと「は、はじめまして!ぼく、ラークと言いますっ」自己紹介から始めた。
「オレ!オレはね、ヘロンっつーの!」「はいっ!アスカ!!アスカはね、ドワーフで──」「オレ、人間!」「あのっ、亜種っていうのは──」「空を飛ぶのってどんな気持ち?」「なー!なー!羽!!羽見せてよ!」「待ってよ、ぼくが喋ってるんだからっ」「オレが先だろ?!」「ヘロンがぼくに任せたくせにっ」「ウィノが持ち上げてくれたら、アスカも空飛べる?」「っ!」「っ!」「オレっ、オレもオレも!!」「空っ、飛べるのっ?!」
緊張が解けたことで、それまで溜まっていた好奇心が溢れ出した子ども三人は、いつも以上にはしゃいで三重奏が止まらない。
さすがのウィノも、勢いに押されて身体が逃げている。
「お・ま・え・ら!ちょっと落ち着け!!」
べし!バシ!ベシ!とフェザントに頭を叩かれて、やっと収拾がついた。
けれど「ゴホン」とわざとらしく咳払いしたフェザントは、「で、飛べるのか?飛べないのか?」子どもたちと同じキラキラした目で聞き直した。
よく見てみるとフェザントだけでなく、他の大人組も期待を隠せずそわそわとしている。
その期待を一身に背負って、ウィノは答えた。
「ひとりではむり」
「あぁー……」
「十人いれば、子どもひとりなら持ち上げられる」
「おぉーー!!」
『空を飛びたい』という夢想は何も、子どもだけのものではなかったらしい。
そんな力の抜けるやり取りがあって、堅苦しい質疑応答はどこかへ行ってしまった。
この適応力と柔軟性が一行の持ち味で、妖精すら巻き込んで和気藹々とした雰囲気を作ってしまう。
空を飛ぶという議題の後、「亜種とは」とか「感情を読むとは」というヘロンの最初の質問に戻って、憧れの妖精にご教授願うラークの照れ具合をからかいつつ、盛り上がっていく輪。
そこからわざと外れたカイトは、ちょうどいい、と考えの続きに没頭する。
(三百五十年前にはなくて、今はあるもの──それは純血の存在)
その一角であるユエは、みんなと一緒になって笑いながらも隣の気配にも敏感に反応して、カイトがちらっと向けた視線に(なに?)と視線で返す。
とりあえず(なんでもない)と首を振っておいて、思考をさらに進める。
(三種の純血が全員そろうのを待っていた……?しかし千年前には、純血も鍵も完全にそろっていた。つまり千年前には使えなかった……?使わなかった?使う必要がなかった?)
ウィノの話の中で引っかかった言葉がいくつかあった。──『現状維持』『種ごとに意見の相違』『延命』
(千年前……三百五十年前……そして現在……何が変わった?何が変わっていない?)
突然、カイトの背中をゾワッと寒気が駆け上がる。
そっとその原因を盗み見て、理由を言葉にすべく考えをまとめる。
(現在、三種の純血がそろい、あとは『妖精の鍵』で鍵も三本そろう。けれど千年前とちがうのは、すべてを妖精だけが握っていること……)
人魚とドワーフは一度純血が途絶え、知識を失った。けれど妖精だけは、千年前の記憶そのままに存在し続けてきた。
ユエとアスカは鍵について詳しく知らないのだ。唯一、ウィノだけが知識をすべて握っている。
つまりそれは、騙そうと思えば簡単に騙せてしまう──ということではないか。
(もし、鍵に三種を人間に変える以上の力があったとして、それがどんな力なのかは、使ってみるまで俺たちにはわからない……千年前には使うことができなかったのは、人魚とドワーフに反対されたから、とか……?『意見の相違』はこれか?)
カイトの中で急速に、ウィノへの不信感が芽生えていく。
(俺たちは『妖精』というだけで、ウィノを信じ過ぎていないか……?)
『信用していない』と最初に宣言されたことで、自分たちがウィノの信用を得ることばかりを考えて、一方的な構図になっていたことに気づく。
それから、『答えられる』『答えられない』とはっきり言われたことで、嘘をつかれる可能性や、騙される可能性を完全に除外していたことも。
「……!」
盗み見ていたはずのカイトの目を、翠の虹彩が射抜いた。カイトが猜疑心を抱くことを、そこへ至る過程すら含めてすべてお見通しとばかりに。
取り繕うとしたカイトだが、ラーク以上に感情を読める妖精相手にそれは無意味だとすぐに気づき、むしろ挑発的に睨み返した。
二人の間の静かな攻防は、決着がつくことなく終わる。
カイトはウィノを疑ったまま、そしてウィノは自分を疑うカイトをそのままに放置した。
どちらも理解していたのだ。
この決着がつくのは、メーディセイン奪還の後になると。
そのためカイトは、他の仲間たちがあの手この手で世界の謎や鍵の秘密を聞き出そうとする中、ひとり沈黙を保っていた。
******
「明日……と明後日も来られない」と言い残して、ウィノは夕暮れの空に飛び立った。
ヘロンたちが苦労して聞き出したところによると、妖精は本来一日活動し、一日眠るという活動周期なのだという。そしてその睡眠は他の種とは少し違っていて、かなり深い、ちょっとやそっとのことでは自力で起きられないほど深い眠りなのだとか。
そうして身体を休めることが、妖精の長い寿命に繋がっていたのだ。
つまり寿命を延ばすための仮死状態は、妖精のもともとの生態をより高めた結果、可能になったものらしい。
ウィノの昨日の発言「睡眠不足は寿命を削る」は冗談でも比喩でもなく、言葉通りの意味だった。そして昨日、今日と続けて起きていたウィノは、その睡眠不足を明日、明後日で回復しなければならないらしい。
「寝てる間、俺たちが守ってやるぜ!」とヘロンはウィノを自分たちの寝床へと誘ったが、やはりまだ完全に信用されていないからか、バッサリと断られてしまったのだった。
「ちぇー、信用ねぇなー」
「妖精ってどこで寝るんだろうね。木の上とかかな?」
「お花の中とか?」
「ウィノの言い方からすると、仮死状態になって寿命を延ばす方法は妖精にしか適応できなかったっぽいな」
「だろうな。できたなら、人魚もドワーフも生き残ってたはずだろうさ」
「年齢をどう数えていいかわからないって言ってたのは、だからなのかな」
「ユエ、それどういう意味?」
「仮死状態のままの何十年、何百年は、なにもしないで寝てるだけだったってことでしょう?その間って、ほんとに『生きている』とは言えない、みたいな」
「あー、なるほど。確かに千年のうちのほとんど眠って過ごしてたら、堂々と千才です、とはならないかも」
「もしかしたら起きてる時間の合計だけでいくと、ウィノも妖精の本来の寿命の二百年以内に収まってるのかも」
ウィノの話の検証で熱気冷めやらぬ小屋から、カイトはこっそりとユエを散歩に誘った。仲間たちはそっと抜け出す二人を見ないフリしてくれる。
夜の山に白い息が雲のように漂う。
「きれい……」
冬の澄んだ夜空には、星が手で掴めるほど近く瞬いている。
体温を分け合うように寄り添ってしばらく見上げていたが、赤くなったユエの鼻にチュッと音を立ててキスを落として、カイトは近くの鉱山の入り口のひとつである洞窟に向かって手を引いた。
寒さを凌ぐためなら小屋へ戻ればいいが、ここで帰っては、わざわざ抜け出して二人きりになった意味がない。
岩場に腰を下ろしたカイトは、自分の外套で包み込んだユエを膝の上に座らせると、「耳、冷たくなってるな」外気にさらされているそこを指でくすぐる。
するとそんなつもりはなかったのに、「んっ」とくすぐったさに震えたユエが潤んだ目で見つめてくるから、思わず、冷えた唇も労ってやりたくなってしまった。
唇の表面が口の中と同じ温度になるまで口づけを交わしていると、いつのまにかカイトも本来の目的を忘れて、このために二人になったような気がしてきたが、「それで……なにか話があったんじゃないの?」ユエの言葉で思い出し、服の中に侵入しようとしていた手を止める。
「ユエ、ウィノのことをどう思う?」
仕切り直して、カイトは目的を果たす。
「どうって?信用できるかってこと?」
「ああ」
「うーん……まだよくわからないけど、種族よりも個人を見てる人なんじゃないかなって気はする」
それはカイトの中にはなかった新しい視点で、「もう少しくわしく」とユエをせっついた。
「えっとね、ウィノはおれのことを人魚だからってすぐ信じてもいないし、アスカのこともそんな感じだ。でも人間だからって理由で軽んじたりもしてない。山津波のことを話すとき、妖精の仲間とメーディセインの人間たち、どっちのことも悼んでいたでしょう?」
「確かに、そうだった」
「それに、今、妖精の仲間たちを捕らえているのは人間だけど、だからって人間ぜんぶを恨んだりはしてない。なんというか……うん、公平な人だと思う」
「公平、か」
ユエの評価を聞いて、カイトは自分の感じた不信感を伝えることはやめた。先入観を与えるよりも、ユエ自身の目で見極めてもらったほうがいいと考えを変えたのだ。
ユエの人を見る目を、カイトはけっこう信頼している。
「ね、」
「うん?」
「話ってそれだけ?」
「ああ」
「なら……はやく、続きしよ」
用事は先に済ませて、これで集中できるとばかりに、ユエはカイトの手を自分の服の中に導いていく。
結局最後には、どちらが本題だったのかわからなくなるほど、触れ合う時間のほうが長くなってしまったのだった。
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