上 下
5 / 81
第一部 勇者パーティ追放編

05 妖精占いをしてもらう

しおりを挟む
「ご馳走さまでした。とてもおいしかったです!」
「喜んでもらえて嬉しいわ」

 ロザリーのところにリアが飛んできて、手を胸に当てた。

「ご主人さま。助けていただいたお礼をしたいのです」
「お礼? そんな気を使わなくていいの。元気になってくれただけで嬉しいんだから」

 断ろうとしても、リアは「それでも……」と食い下がってきた。

「命の恩人であるご主人さまの役に立ちたいんです。……そうだ、占いに興味ありますか?」
「興味ある……! というか、好き!」

 占いと聞けば心が躍る。行商の占い人に、興味本位で手相を見てもらったこともある。そのときに言われたことは、記憶にない。一喜一憂して、忘れてしまった。覚えてないけど、自分の隠れた部分を知るのは楽しかった。

「それならぜひ、占ってみましょう!」
「楽しみだわ。お願いします」
「占いの材料に花びらが何枚か必要なんですが、この家にありますか?」
「庭で育ててるカモミールのハーブとかどうかな?」
「それで大丈夫です」

 カモミールの白い花を摘んで、花びら一枚ずつ取った。ちょっと可哀想だけどね。
 リアの言う通りに、机の上に花びらを円を描くように並べる。
 さて、準備は整った。

「知りたいことはありますか?」
「憧れのあの人に再会できるか教えてほしいわ」
「再会できるか、占ってみますね」

 リアは花びらにフーッと息を吹きかけた。甘いにおいとともに花びらが空気に巻き上げられて、机に散らばる。
 その花びらの位置を見たリアは、「これは……!」と驚きの声を上げた。
 どうなったの? 気になる。私はゴクリと唾を飲み込んだ。

「どうかな?」
「……これは、すでに出会っているということですね」

 出会っている? つまり、どういうこと?
 リアの占いの結果を聞いて、謎が深まった。

「そうなの? 昔、助けてもらったことがあったから、そのことかしら。もう一つ占ってほしいわ。これからは出会える可能性ある?」
「占ってみますね」

 もう一度、花びらを並べ直す。
 そして、リアは花びらにフーッと息を吹きかけた。
 机に散らばった花びらの位置をリアは見る。
 さあ、先生。結果はいかに……!?

「実現します……そう遠くない未来に出会っているはずです。そうだ、いつ出会えるのか見てみましょうか?」
「それは大丈夫よ。詳しく占っちゃったら、これからの楽しみがなくなっちゃうからいいわ。いつか出会えるとわかっただけでいいの」
「そうですか。……あの、ご主人さまの憧れのあの人ってどんな方でしょうか? もしかして、ご主人さまの好きな人ですか?」

 ずっと気になっていたのだろう、リアは聞いてきた。
 好きな人かと聞かれると照れてしまう。そんなんじゃなくて、もっと崇高な感じ。遠目で見ているだけで嬉しいのに、同じ空間にいたら死んでしまいそうなレベル。もし再会してしまったら、私、呼吸できるの?

「好きっていうか、大尊敬していてね。大魔法使いのグロウさまよ。小さい頃に助けてもらったことがあってね。昔からずっと憧れなの」
「大魔法使いさまですか! 再会できるといいですね!」

 妖精界でも名前が轟いているのかな。きっとそうだろうな。
 「大魔法使いさま」だけで話が通じたんだから。

「そうね」
「ご主人さま。私も一緒に探します!」
「ありがとう。リアも一緒に探してくれると頼もしいわ」
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

失敗したクラス転移をやり直して復讐+無双する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:631pt お気に入り:5

わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:29,203pt お気に入り:2,541

乗っ取られた令嬢 ~私は悪役令嬢?!~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,689pt お気に入り:115

ただ、あなただけを愛している

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,364pt お気に入り:259

精霊に愛された少女の妹は叶わないからこそ平凡を願う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:859pt お気に入り:3,863

異世界に転移したからモンスターと気ままに暮らします

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:156pt お気に入り:7,193

悪役令嬢は断罪イベントから逃げ出してのんびり暮らしたい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,563pt お気に入り:466

処理中です...