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第三部 竜の棲む村編

63 作戦会議

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 村長の息子から屋敷の説明を簡単に受けると、私たちを歓迎してくれる晩餐会まで少し時間があったことから、二階のテラスでロウと村の景色を眺めて過ごすことになった。
 言わば、明日の作戦会議だ。

「村長の話では、亀を助ければ竜神さまに会える可能性があるのよね」

 私が話を切り出すと、ロウも同じことを話そうとしていたようだ。

「竜神さまは湖の守り神と言われている。そうだとしたら、亀だけでなく他の生き物でも竜神さまが現れるんじゃないか。あくまでも俺の予想だが」

 何やらロウに考えがあるようだ。私は先の言葉を促す。

「湖の生き物を助けるには、どうしたらいいかってことね」

「……といいつつも、恩を着せるというやり方は好まないが、他に試せる方法がないから仕方ない」

「言われてみればそうだったわね……」

 恩返しされるのは善良な心を持った人だから。
 欲望や見返りのために親切にするのは、破滅を招くだろう。

 本当にこの方法で良いのか、と変に心にシコリがあったのは見返りを期待した行動だったからだ。
 しかし、試せるのはこれしかないのだ。

 名誉や金が欲しい訳じゃない。一目会いたいだけ。
 褒められた方法ではないけれど、やってみないときっと後悔する。

「報復がないように手を尽くそう。ロザリーには危険がないように守る」

「ロウも……皆が無事であるように、私も警戒するわ」

 私とロウが決意を込めて頷き合うと、ロウは口を開いた。

「話を戻して、湖の中に俺の魔道具を仕込ませてもらおうか。怪我を感知するような機能を付けて」

 さも簡単のようにロウは言った。
 まさか、旅先なのに新しい魔道具を作っちゃうの⁉︎
 ロウならやりかねない。

「即席で魔道具を作るなんて、さすがロウね」
 
「一から作るわけではなく、既存のものの組み合わせだから、それほど難しくはない。水の中で生き物を見つける魔道具と、怪我を感知する魔道具を合わせればいい」

 二つの機能を組み合わせるのが至難の技なのに、ロウはいとも簡単のように言う。
 天才のロウにしかできない発想だ。

「竜に会いたいって、私の我儘に付き合ってもらって悪いわね。魔道具の作成をよろしくお願いします」

 頭を下げて顔を上げると、不適な笑みを浮かべたロウと目が合った。
 
「ロザリーの望みが叶うと、俺も嬉しい。我儘だとは思わないな。もっと甘えてくれてもいいぐらいだが」

 私は慌てた。動揺が走る。
 えー! もっと我儘を言ってもいい⁉︎ いいえ、そんな訳にはいきません!

「――ちなみに、水の生き物の怪我を探知する魔道具は、もうできている」

 ロウはさらりと驚くべきことを言った。

 もう、できている……⁉︎ いつの間に……⁉︎

 ずっと行動を共にしていたから、それぞれの部屋を案内されて、荷物を置いてきた数分ぐらいしか離れていなかったはずよ?

 唖然とした私とは対照的に、ロウは真顔で説明を始める。

「魔道具の収納に、水の中で生き物を見つける魔道具と、怪我を感知する魔道具があったからな。それを魔法で繋ぎ合わせた。見栄えは悪いが、ちゃんと機能するはずだ」

 さすが、仕事が早いことで……。
 呆気に取られて何も言えないでいる私に、ロウは自信ありげに唇の両端を上げた。

「明日の準備は万端だ」
「……頼りになるわね。よろしくお願いします」

 ロウのおかげで、竜神さまに会える可能性が一歩近づいた。それだけでも楽しみだ。
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