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第三部 竜の棲む村編
71 救出
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「私なら、自分のことを何でも隠さずに話します。ロザリーにそんな悲しい顔はさせません」
「ありがとう――でも、気持ちだけで十分よ」
竜神さまからめげずにアプローチされたけれど、変に期待させるのも悪かったので、きっぱりと断った。
……もしかして、私の最大のモテ期なのかしら?
前に王国で囚われたときは、フィアルから二人で遠くの町に逃げないかと誘われたり、こうして竜神さまから熱っぽい視線を送られたり。もちろんロウと気持ちが通じ合って……。
チラリと竜神さまを見たら苦笑していたので、また私の心の中を覗いていたのだとわかった。
これでは心の中が筒抜けで、隠しごとができないわね……。
「わかりました。……ですが、ロザリーはずっと私の一番でしたよ」
「竜神さま……」
竜神さまの赤い瞳と目が合って、何度も振ってしまったことが申し訳なくて視線をそらせなかった。
と、急に沈黙を打ち破られた。
「大変です! 竜神さま、侵入者が!」
ドジョウが悲鳴を上げながら部屋に入ってくる。
急いで来たのか、彼女が入ってきた途端に、大きな水の振動が肌にぶつかった。
「どうしましたか?」
「人間がバリアを突き破って入ってきました! 槍を振り回しながらこちらにやってきます!」
竜神さまの問いかける声に少し落ち着きを取り戻したのか、ドジョウは慌てながらも詳細を報告した。
「侵入者ですか……そんなことをする人間は初めてですね」
やれやれと竜神さまは前髪から頭をかき上げると、はらりと水中で髪が揺れる。
思い当たることがあるのか、面倒くさそうな顔だ。
私の考えていることと、おそらく一緒。
ロウが私を探しに来てくれたのに違いない。
「ロザリーに怪我があってはいけないので、念のためバリアを張っておきますね」
竜神さまはそう言うと、竜の言葉の呪文を口ずさみ、部屋の入り口に白く光る樹脂の膜のようなバリアを張った。
「ロウが私に怪我をさせるとは思わないですけれど……」
「万が一のこともありますからね。この宮が破壊されても困りますし」
私の意見にも、竜神さまは冷静だった。
槍を乱暴に振り回したら、この水中宮殿が破壊される危険があるかも。それもそうか。
「ロザリー! そこにいるか!」
聞こえてきたのは、ずっと会いたいと願っていたロウの声。
「ロウ! やっぱりロウだったのね!」
叫び返すも、竜神さまのバリアがあって、すぐにはこの部屋に入って来られないようだ。
部屋の入り口に行こうとしたら、竜神さまに手を引かれた。
「危険です。ロザリーはここで待っていてください」
「で、でも……」
そうしている間に、バシャーン! と破裂音が響く。
床にはガラスの破片のようなものが散らばっていた。
あ、だから竜神さまは近づくなって止めてくれたんだわ。バリアが破壊されて怪我しないように。
「招いてもいないのにやってくるとは、礼儀がなっていませんね」
両腕を組んだ竜神さまは、ロウを挑発するようなことを平気で言った。
ちょっと! 油に火を注いでどうするの⁉︎
それを聞いたのか、ロウは槍を構えたまま、部屋に入ってきた。
金髪の毛は怒りで燃えるように浮き上がって、ゆらゆらと揺れる。
睨みつけるロウと竜神さまの間で視線が合わさり火花が散った。
︎
「礼儀がなっていない、だと……?」
怒気を含んだ声に、自分が怒られている訳でもないのに身震いした。
ロウ、怒っているわ……!
全身で怒っているのがわかる。触れたら火傷しそうだ。
普段は沸点が高くないのか、私が王国に拘束されたときでも、ここまでは怒らなかった。
おそらく、これが今までで一番。
そして、ロウは口を開いた。
「ロザリーを連れ去るとは、竜神さまであっても許せない!」
「ありがとう――でも、気持ちだけで十分よ」
竜神さまからめげずにアプローチされたけれど、変に期待させるのも悪かったので、きっぱりと断った。
……もしかして、私の最大のモテ期なのかしら?
前に王国で囚われたときは、フィアルから二人で遠くの町に逃げないかと誘われたり、こうして竜神さまから熱っぽい視線を送られたり。もちろんロウと気持ちが通じ合って……。
チラリと竜神さまを見たら苦笑していたので、また私の心の中を覗いていたのだとわかった。
これでは心の中が筒抜けで、隠しごとができないわね……。
「わかりました。……ですが、ロザリーはずっと私の一番でしたよ」
「竜神さま……」
竜神さまの赤い瞳と目が合って、何度も振ってしまったことが申し訳なくて視線をそらせなかった。
と、急に沈黙を打ち破られた。
「大変です! 竜神さま、侵入者が!」
ドジョウが悲鳴を上げながら部屋に入ってくる。
急いで来たのか、彼女が入ってきた途端に、大きな水の振動が肌にぶつかった。
「どうしましたか?」
「人間がバリアを突き破って入ってきました! 槍を振り回しながらこちらにやってきます!」
竜神さまの問いかける声に少し落ち着きを取り戻したのか、ドジョウは慌てながらも詳細を報告した。
「侵入者ですか……そんなことをする人間は初めてですね」
やれやれと竜神さまは前髪から頭をかき上げると、はらりと水中で髪が揺れる。
思い当たることがあるのか、面倒くさそうな顔だ。
私の考えていることと、おそらく一緒。
ロウが私を探しに来てくれたのに違いない。
「ロザリーに怪我があってはいけないので、念のためバリアを張っておきますね」
竜神さまはそう言うと、竜の言葉の呪文を口ずさみ、部屋の入り口に白く光る樹脂の膜のようなバリアを張った。
「ロウが私に怪我をさせるとは思わないですけれど……」
「万が一のこともありますからね。この宮が破壊されても困りますし」
私の意見にも、竜神さまは冷静だった。
槍を乱暴に振り回したら、この水中宮殿が破壊される危険があるかも。それもそうか。
「ロザリー! そこにいるか!」
聞こえてきたのは、ずっと会いたいと願っていたロウの声。
「ロウ! やっぱりロウだったのね!」
叫び返すも、竜神さまのバリアがあって、すぐにはこの部屋に入って来られないようだ。
部屋の入り口に行こうとしたら、竜神さまに手を引かれた。
「危険です。ロザリーはここで待っていてください」
「で、でも……」
そうしている間に、バシャーン! と破裂音が響く。
床にはガラスの破片のようなものが散らばっていた。
あ、だから竜神さまは近づくなって止めてくれたんだわ。バリアが破壊されて怪我しないように。
「招いてもいないのにやってくるとは、礼儀がなっていませんね」
両腕を組んだ竜神さまは、ロウを挑発するようなことを平気で言った。
ちょっと! 油に火を注いでどうするの⁉︎
それを聞いたのか、ロウは槍を構えたまま、部屋に入ってきた。
金髪の毛は怒りで燃えるように浮き上がって、ゆらゆらと揺れる。
睨みつけるロウと竜神さまの間で視線が合わさり火花が散った。
︎
「礼儀がなっていない、だと……?」
怒気を含んだ声に、自分が怒られている訳でもないのに身震いした。
ロウ、怒っているわ……!
全身で怒っているのがわかる。触れたら火傷しそうだ。
普段は沸点が高くないのか、私が王国に拘束されたときでも、ここまでは怒らなかった。
おそらく、これが今までで一番。
そして、ロウは口を開いた。
「ロザリーを連れ去るとは、竜神さまであっても許せない!」
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