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第三部 竜の棲む村編
73 私を見つけて
「ロザリーを連れ去るとは、竜神さまであっても許せない!」
ロウはそう言い放ち、彼の鋭い視線が竜神さまを射抜く。
私が横から口を出してはいけないような気がして、オロオロとするばかりだった。
「ロザリーをこちらに招いたことで……心配をかけて申し訳ありませんでした」
竜神さまはすぐに自分の非を認めて、謝罪した。
それでもロウの怒りが収まらないのか、詳しい説明を求めて口を開けた。
「では、なぜロザリーを連れ去った?」
「彼女には、過去に命を救っていただいたことがありまして……。彼女の気配を感じて、懐かしさのあまり力を暴走させてしまいました」
「ロザリー、それは本当なのか?」
ロウに確認するように聞かれて、私は「はい」と返事する。
「勇者パーティの時代に、倒れていた竜神さまを助けたことがあったのよ。そのときはトカゲの姿だったから、竜神さまだとは知らなかったけれど……」
「人間だけでなく、トカゲにも慈悲の心で助けるとは、さすがロザリーだな」
ロウは一瞬、目元に笑みを滲ませたが、体の向きを変えて竜神さまには厳しい目をした。
「急に連れ去るのではなく、貴方から訪ねて来られても良かったのでは?」
「おっしゃる通りです。この機会を逃すと会えなくなるのではと焦り、このような事態を招きました。大変申し訳ありませんでした」
その言葉を聞いて、ようやくロウの心が落ち着いてきたのか、水中に持ち上がって揺れていた髪の毛は下に降りていた。
「ロザリーが奇跡的に無事だったから良かったものの、このようなことは二度としないでほしい」
「わかりました」
「じゃあ、ロザリー帰ろうか。地上に戻ろう」
すぐにでもこの場から去りたかったのか、ロウから手を差し出された。
待って! 竜神さまから一つだけ望みを叶えてくれると言われているの!
まだ、何を頼もうか迷っていて……。
戸惑う私の前を遮って、竜神さまが立った。
「待ってください。入り口の門の破壊、調度品の破損、部屋の半壊……そのままにして帰られるつもりですか?」
見に行かなくても被害状況がわかるのか、竜神さまはスラスラと言った。
ロウは硬い表情のまま言葉を絞り出した。
「……そのつもりだが?」
「それは大目に見ていいとしましょう。私がロザリーを連れてきたのが悪かったのですから。ですが、放っておけないことがあります。ロザリーから、ロウから隠し事をされていると相談を受けました」
その言葉に、ハッとした顔のロウと目が合う。
……言いたくて言ったわけじゃない。心の中を覗かれて、白状させられてしまったのよ!
そう弁解したかったけれど、相談した事実は変わらない。言い訳がましくなるのが嫌だったので、このまま話を見守ることにした。
竜神さまは続けて言う。
「そこで私から一つ試練を出しましょう。リダーナ、ロザリーを横の部屋に案内してください」
リダーナと呼ばれた、部屋の壁際で控えていたドジョウから「お嬢さま、こちらへ」と案内された。
その状況に慌てたロウは叫んだ。
「ロザリーを一体どうする⁉︎」
「心配いりません。隣の部屋で待ってもらうだけです」
ロウに睨まれた竜神さまは「危害は一切加えないと約束します」と付け加えた。
私はドジョウに連れられて、海藻のカーテンを抜けると広間に出た。
そこには……。
狐のお面を顔に付けた、ピンク髪のショートカットの集団がそこにいた。二十人以上いる。
姿は私とほぼ同じだ。狐のお面を付ければ差がない。
「お嬢さまもこれをどうぞ」
ドジョウから狐のお面を渡された。
白い顔に赤い耳、三日月のような黒い目、先端が大きく釣りあがった口。
怪しく笑う顔がどこか異様だ。竜神さまにゆかりのあるお面だろうか。
「これを被って、この集団の中に混じれってことよね……?」
おそらくそうだと思うけれど、確認する。
「そうです」
やっぱり。この中から私を見つけられれば、ロウの勝ちってことね。
背格好はみんな同じ。私を見つけられるはずがない。
無謀な勝負にロウが乗らないといいんだけど……。
渋々とお面を付けて集団の間に入ると、緊張感が高まった。
しばらくして、竜神さまと一緒にロウがこの部屋に入ってきた。
「ロザリーはお面を被ったこの集団の中にいます。気持ちが通じ合えば、探し出せるかもしれません。ロザリーを見つけたら、彼女を返します」
無理よ! やめて!
叫んだらルール違反になるだろうと、諦めたら……。
「ロウ! 無謀なことをしないで!」
「挑戦を受けないで!」
横からダミーの子たちが、私と同じ声でそう言ってきた。
声までそっくり作ってくるなんて! 彼女たちの擬態が上手すぎるわ!
……でも、まあ、私の心の声は伝わったわよね。
叫ぶのはダミーに任せて、ロウには挑戦を断ってほしいと願っていたら……。
「やりたくもない挑戦だが、拒否できないのだろう? やらせてもらう」
落ち着いた声で、ロウはそう言った。
あああああ! ロウったら、挑発を受けてしまったわ!
大丈夫? 私を見つけられなかったら、帰してもらえないのよ?
「では、ロザリーを見つけてもらいましょうか」
竜神さまが開始を宣言した。
お面には覗き穴がないので、暗闇の中で待っているしかなかった。
見た目が一緒なので、区別できるはずがない。
……でも、ロウが負ける勝負に真正面から挑むかしら。
そこが気になるところだ。
何か、考えがあるのかな?
考えがあるとしたら、どうやって私を見つけるの?
ぐるぐると考えを巡らせていると……。
「彼女がロザリーだ」
ザッと足音がして、私の肩が優しく叩かれた。
ロウはそう言い放ち、彼の鋭い視線が竜神さまを射抜く。
私が横から口を出してはいけないような気がして、オロオロとするばかりだった。
「ロザリーをこちらに招いたことで……心配をかけて申し訳ありませんでした」
竜神さまはすぐに自分の非を認めて、謝罪した。
それでもロウの怒りが収まらないのか、詳しい説明を求めて口を開けた。
「では、なぜロザリーを連れ去った?」
「彼女には、過去に命を救っていただいたことがありまして……。彼女の気配を感じて、懐かしさのあまり力を暴走させてしまいました」
「ロザリー、それは本当なのか?」
ロウに確認するように聞かれて、私は「はい」と返事する。
「勇者パーティの時代に、倒れていた竜神さまを助けたことがあったのよ。そのときはトカゲの姿だったから、竜神さまだとは知らなかったけれど……」
「人間だけでなく、トカゲにも慈悲の心で助けるとは、さすがロザリーだな」
ロウは一瞬、目元に笑みを滲ませたが、体の向きを変えて竜神さまには厳しい目をした。
「急に連れ去るのではなく、貴方から訪ねて来られても良かったのでは?」
「おっしゃる通りです。この機会を逃すと会えなくなるのではと焦り、このような事態を招きました。大変申し訳ありませんでした」
その言葉を聞いて、ようやくロウの心が落ち着いてきたのか、水中に持ち上がって揺れていた髪の毛は下に降りていた。
「ロザリーが奇跡的に無事だったから良かったものの、このようなことは二度としないでほしい」
「わかりました」
「じゃあ、ロザリー帰ろうか。地上に戻ろう」
すぐにでもこの場から去りたかったのか、ロウから手を差し出された。
待って! 竜神さまから一つだけ望みを叶えてくれると言われているの!
まだ、何を頼もうか迷っていて……。
戸惑う私の前を遮って、竜神さまが立った。
「待ってください。入り口の門の破壊、調度品の破損、部屋の半壊……そのままにして帰られるつもりですか?」
見に行かなくても被害状況がわかるのか、竜神さまはスラスラと言った。
ロウは硬い表情のまま言葉を絞り出した。
「……そのつもりだが?」
「それは大目に見ていいとしましょう。私がロザリーを連れてきたのが悪かったのですから。ですが、放っておけないことがあります。ロザリーから、ロウから隠し事をされていると相談を受けました」
その言葉に、ハッとした顔のロウと目が合う。
……言いたくて言ったわけじゃない。心の中を覗かれて、白状させられてしまったのよ!
そう弁解したかったけれど、相談した事実は変わらない。言い訳がましくなるのが嫌だったので、このまま話を見守ることにした。
竜神さまは続けて言う。
「そこで私から一つ試練を出しましょう。リダーナ、ロザリーを横の部屋に案内してください」
リダーナと呼ばれた、部屋の壁際で控えていたドジョウから「お嬢さま、こちらへ」と案内された。
その状況に慌てたロウは叫んだ。
「ロザリーを一体どうする⁉︎」
「心配いりません。隣の部屋で待ってもらうだけです」
ロウに睨まれた竜神さまは「危害は一切加えないと約束します」と付け加えた。
私はドジョウに連れられて、海藻のカーテンを抜けると広間に出た。
そこには……。
狐のお面を顔に付けた、ピンク髪のショートカットの集団がそこにいた。二十人以上いる。
姿は私とほぼ同じだ。狐のお面を付ければ差がない。
「お嬢さまもこれをどうぞ」
ドジョウから狐のお面を渡された。
白い顔に赤い耳、三日月のような黒い目、先端が大きく釣りあがった口。
怪しく笑う顔がどこか異様だ。竜神さまにゆかりのあるお面だろうか。
「これを被って、この集団の中に混じれってことよね……?」
おそらくそうだと思うけれど、確認する。
「そうです」
やっぱり。この中から私を見つけられれば、ロウの勝ちってことね。
背格好はみんな同じ。私を見つけられるはずがない。
無謀な勝負にロウが乗らないといいんだけど……。
渋々とお面を付けて集団の間に入ると、緊張感が高まった。
しばらくして、竜神さまと一緒にロウがこの部屋に入ってきた。
「ロザリーはお面を被ったこの集団の中にいます。気持ちが通じ合えば、探し出せるかもしれません。ロザリーを見つけたら、彼女を返します」
無理よ! やめて!
叫んだらルール違反になるだろうと、諦めたら……。
「ロウ! 無謀なことをしないで!」
「挑戦を受けないで!」
横からダミーの子たちが、私と同じ声でそう言ってきた。
声までそっくり作ってくるなんて! 彼女たちの擬態が上手すぎるわ!
……でも、まあ、私の心の声は伝わったわよね。
叫ぶのはダミーに任せて、ロウには挑戦を断ってほしいと願っていたら……。
「やりたくもない挑戦だが、拒否できないのだろう? やらせてもらう」
落ち着いた声で、ロウはそう言った。
あああああ! ロウったら、挑発を受けてしまったわ!
大丈夫? 私を見つけられなかったら、帰してもらえないのよ?
「では、ロザリーを見つけてもらいましょうか」
竜神さまが開始を宣言した。
お面には覗き穴がないので、暗闇の中で待っているしかなかった。
見た目が一緒なので、区別できるはずがない。
……でも、ロウが負ける勝負に真正面から挑むかしら。
そこが気になるところだ。
何か、考えがあるのかな?
考えがあるとしたら、どうやって私を見つけるの?
ぐるぐると考えを巡らせていると……。
「彼女がロザリーだ」
ザッと足音がして、私の肩が優しく叩かれた。
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