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12 トウコが言うには〇〇
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「化粧室に行ってもよろしいでしょうか?」
「かしこまりました。どうぞこちらへ」
メイドに化粧室の入り口まで案内してもらう。化粧室の中にはいくつかの個室のトイレがあったので、空いている場所に入った。
個室のトイレの扉を閉めると、私は思わずため息をついた。
ゲームに夢中で気が付かなかったけれど、いつの間にか喉が渇いていたみたい。
私は手洗い場に向かい、蛇口をひねった。冷たい水が流れ出るのを待つ。
手を洗っていると、背後で突然カチャリと音がした。他にもトイレに入ってきた人がいたようだ。私がペーパーで手を拭きながら鏡越しに入り口を見ると、一人の女性が入ってくるのが見えた。
彼女は私の顔を見ると「あ……」と小さな声を上げて立ち止まった。トウコだった。
「さっきの最後の問題、あなたよくわかったわね」
トウコは私に話しかけてきた。フルーツパニックの第5問のことだ。
「昔ハマったゲームに出てきたんです。『英語でりんごの体の部位は?』って問題がね」
「へえ……そんなことがあったのね」
トウコは感心したように頷いた。
私はしばらく黙っていたけど、思い切って気になっていたことを尋ねてみた。
「あなたは花嫁ゲームについてどんな印象を持っていますか?」
「そうね……『アダムに相応しいイブを決めるゲーム』という感じね。生存者をツリーのりんごに見立てるところとか、そんな感じがしない?」
私は頷いた。
「イブ……。なれると良いなぁ」
私は独り言のように言った。すると彼女は私に近付いてきて、耳元で囁いた。
「実は……私、ホステスではなくて、潜入中の警察官なのよ」
私が驚いて目を丸くする。
潜入中の警察官。このゲームの闇を暴こうとしてくれているのなら心強い。
だけど……。
「どうして私に教えてくれたんですか?」
「ミノリを助けたところを見て、あなたなら大丈夫だと思ったからよ。ねえ、最後まで一緒に生き残らない?」
私は少し迷ったけれど、うなずいた。私も事務員と嘘を付いて、潜入中の探偵だったからだ。自分の正体を明かすつもりはないが、味方がいるのはお互い助かるだろうと思って、彼女に協力することにした。
トウコが私の返事にホッとしたような表情を浮かべた。
「本当に助かるわ……ありがとう」
私たちは笑って頷き合った。
「それにしても、意外だったわね」
トウコがため息交じりに言った。私は首を傾げる。
「何がですか?」
彼女は肩をすくめて答えた。
「まさか、ユウがあんなに簡単に脱落しちゃうなんて……。もっと粘るかと思ったわ」
そうかしら……。と私は思ったけれど、口には出さなかった。気に障ることを言って敵に回したくなかったからだ。
そんな私の気持ちに気が付いたのか、トウコは私の顔をじっと見てから言った。
「あなたも気を付けた方が良いわよ」
「え?」
私が聞き返すと、トウコはニヤリと微笑んだ。
「だってユウの本性を見たでしょう? それにユウを殺したネル……あの子はかなりの危険人物よ」
トウコの言葉に私は思わず身震いをした。それは彼女に対する恐怖心ではなく、嫌な予感がしたからだ。
この会場で最後まで生き残れる人はいるのだろうか……。
そして、もし私が誰かに襲われたら助けが現れるのだろうか……?
「かしこまりました。どうぞこちらへ」
メイドに化粧室の入り口まで案内してもらう。化粧室の中にはいくつかの個室のトイレがあったので、空いている場所に入った。
個室のトイレの扉を閉めると、私は思わずため息をついた。
ゲームに夢中で気が付かなかったけれど、いつの間にか喉が渇いていたみたい。
私は手洗い場に向かい、蛇口をひねった。冷たい水が流れ出るのを待つ。
手を洗っていると、背後で突然カチャリと音がした。他にもトイレに入ってきた人がいたようだ。私がペーパーで手を拭きながら鏡越しに入り口を見ると、一人の女性が入ってくるのが見えた。
彼女は私の顔を見ると「あ……」と小さな声を上げて立ち止まった。トウコだった。
「さっきの最後の問題、あなたよくわかったわね」
トウコは私に話しかけてきた。フルーツパニックの第5問のことだ。
「昔ハマったゲームに出てきたんです。『英語でりんごの体の部位は?』って問題がね」
「へえ……そんなことがあったのね」
トウコは感心したように頷いた。
私はしばらく黙っていたけど、思い切って気になっていたことを尋ねてみた。
「あなたは花嫁ゲームについてどんな印象を持っていますか?」
「そうね……『アダムに相応しいイブを決めるゲーム』という感じね。生存者をツリーのりんごに見立てるところとか、そんな感じがしない?」
私は頷いた。
「イブ……。なれると良いなぁ」
私は独り言のように言った。すると彼女は私に近付いてきて、耳元で囁いた。
「実は……私、ホステスではなくて、潜入中の警察官なのよ」
私が驚いて目を丸くする。
潜入中の警察官。このゲームの闇を暴こうとしてくれているのなら心強い。
だけど……。
「どうして私に教えてくれたんですか?」
「ミノリを助けたところを見て、あなたなら大丈夫だと思ったからよ。ねえ、最後まで一緒に生き残らない?」
私は少し迷ったけれど、うなずいた。私も事務員と嘘を付いて、潜入中の探偵だったからだ。自分の正体を明かすつもりはないが、味方がいるのはお互い助かるだろうと思って、彼女に協力することにした。
トウコが私の返事にホッとしたような表情を浮かべた。
「本当に助かるわ……ありがとう」
私たちは笑って頷き合った。
「それにしても、意外だったわね」
トウコがため息交じりに言った。私は首を傾げる。
「何がですか?」
彼女は肩をすくめて答えた。
「まさか、ユウがあんなに簡単に脱落しちゃうなんて……。もっと粘るかと思ったわ」
そうかしら……。と私は思ったけれど、口には出さなかった。気に障ることを言って敵に回したくなかったからだ。
そんな私の気持ちに気が付いたのか、トウコは私の顔をじっと見てから言った。
「あなたも気を付けた方が良いわよ」
「え?」
私が聞き返すと、トウコはニヤリと微笑んだ。
「だってユウの本性を見たでしょう? それにユウを殺したネル……あの子はかなりの危険人物よ」
トウコの言葉に私は思わず身震いをした。それは彼女に対する恐怖心ではなく、嫌な予感がしたからだ。
この会場で最後まで生き残れる人はいるのだろうか……。
そして、もし私が誰かに襲われたら助けが現れるのだろうか……?
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