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雉も鳴かずば撃たれまい
そのに
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のどかな田園を眺めながら歩いていると上空から一羽の白い鳥が飛んできた。地上に降り立つとその姿は見る間に人の姿に変わった。長く白い髪に透き通った肌、それとは真逆の朱色の瞳は髪と同じ白いまつげに覆われていた。
「この先に行ってはいけません」
大きな羽を広げて道を塞ぐ美しい男はそう言うと桃太郎たちを睨んだ。
「なんでだよっ! ぼくたちは鬼ヶ島って人のところに行かないといけないんだっ!」
「そうだぞ、オレは鬼ヶ島さんに子種をもらわないといけねぇんだから」
それを聞いた白い男は顔をさらに白くした。
「なりません! あれは……あれは鬼です、正真正銘の鬼なのですよ? そんな人から、こ、子種などとっ」
「貴方はなにか知ってるんですか? あそこにはこの子の母親もいるんです。もし酷いところならば助け出さないと」
桃太郎は怯える男の肩を優しく撫でると、男は羽を小さく畳んだ。なぜか桃太郎が近付くと落ち着かない気持ちとそれとは真逆の穏やかな気持ちにさせられた。
「あなたは一体……? 獣の匂いがしない……、まさか人間?」
「わかるんですか? 確かに俺は獣人ではないですが……」
「分かります。あの島にいたのも人間でしたから……」
どうやら鬼ヶ島というのは人名ではないらしい。そしてそこには桃太郎と同じ人がいる、鬼と呼ばれる人が。
川沿いの土手を下り、川岸へと降り立つと四人は車座になって座った。胡座をかいた桃太郎の左右を犬斗と猿弥が。その向かいには大きな石にきれいに膝を揃えて腰掛けた白い男。彼は自らを雉明と名乗った。
「あそこはもともとは誰もいない島だったそうです。いつしかそこに一人の男が住み着いたのが始まりです。彼は……強烈なフェロモンを持つ、アルファでした。彼のフェロモンに当てられてオメガが集まりだしたのですが、彼はそれだけでは飽き足らず、各地のオメガを浚いはじめました」
桃太郎はそれを聞いて激怒した。自分のしたかったことを先にやられていたのだから。いや、桃太郎はなにもオメガを浚いたいわけではない。きちんと合意の上で酒池肉林をしたかった。それを……っ。桃太郎おは怒りをあらわにして話の続きを促した。
「私はこのように飛ぶことが出来ます。彼のフェロモンの薄い日にたまたま、久しぶりに島を出て故郷へ帰ろうと思ったのです。するとどうでしょう? 島から離れれば、いえ、彼のフェロモンから離れると頭がスッキリするのです。あの島にいる間はモヤのかかっていた思考は明白になり、あの島にいてはならないと気付きました。ですから、こうしてあの島へ向かおうとするオメガを監視していたのです」
猿弥の集落ではフェロモンに当てられて島へと渡った者が多く、桃太郎と犬斗の集落ではフェロモンは届かず、そのかわり人攫いが横行したと。
「しかし人攫いというのは? その島には鬼の彼以外にもいるんですか?」
「えぇ、彼のおこぼれに与ろうとするベータや弱いアルファ等が……。それに彼に頼まれて動くオメガもおりました」
鬼というのはそれほどまでに強い力を持っているのか……。犬斗は震え耳を下げ、猿弥は尾っぽを立てて警戒していた。
「……ですが、貴方なら鬼に勝てるかもしれません」
「どうして?」
「それは……ただの、勘です……」
雉明はそれ以上を口にしなかった。夕日を受けた白い長い髪は茜色に染まっていた。
「この先に行ってはいけません」
大きな羽を広げて道を塞ぐ美しい男はそう言うと桃太郎たちを睨んだ。
「なんでだよっ! ぼくたちは鬼ヶ島って人のところに行かないといけないんだっ!」
「そうだぞ、オレは鬼ヶ島さんに子種をもらわないといけねぇんだから」
それを聞いた白い男は顔をさらに白くした。
「なりません! あれは……あれは鬼です、正真正銘の鬼なのですよ? そんな人から、こ、子種などとっ」
「貴方はなにか知ってるんですか? あそこにはこの子の母親もいるんです。もし酷いところならば助け出さないと」
桃太郎は怯える男の肩を優しく撫でると、男は羽を小さく畳んだ。なぜか桃太郎が近付くと落ち着かない気持ちとそれとは真逆の穏やかな気持ちにさせられた。
「あなたは一体……? 獣の匂いがしない……、まさか人間?」
「わかるんですか? 確かに俺は獣人ではないですが……」
「分かります。あの島にいたのも人間でしたから……」
どうやら鬼ヶ島というのは人名ではないらしい。そしてそこには桃太郎と同じ人がいる、鬼と呼ばれる人が。
川沿いの土手を下り、川岸へと降り立つと四人は車座になって座った。胡座をかいた桃太郎の左右を犬斗と猿弥が。その向かいには大きな石にきれいに膝を揃えて腰掛けた白い男。彼は自らを雉明と名乗った。
「あそこはもともとは誰もいない島だったそうです。いつしかそこに一人の男が住み着いたのが始まりです。彼は……強烈なフェロモンを持つ、アルファでした。彼のフェロモンに当てられてオメガが集まりだしたのですが、彼はそれだけでは飽き足らず、各地のオメガを浚いはじめました」
桃太郎はそれを聞いて激怒した。自分のしたかったことを先にやられていたのだから。いや、桃太郎はなにもオメガを浚いたいわけではない。きちんと合意の上で酒池肉林をしたかった。それを……っ。桃太郎おは怒りをあらわにして話の続きを促した。
「私はこのように飛ぶことが出来ます。彼のフェロモンの薄い日にたまたま、久しぶりに島を出て故郷へ帰ろうと思ったのです。するとどうでしょう? 島から離れれば、いえ、彼のフェロモンから離れると頭がスッキリするのです。あの島にいる間はモヤのかかっていた思考は明白になり、あの島にいてはならないと気付きました。ですから、こうしてあの島へ向かおうとするオメガを監視していたのです」
猿弥の集落ではフェロモンに当てられて島へと渡った者が多く、桃太郎と犬斗の集落ではフェロモンは届かず、そのかわり人攫いが横行したと。
「しかし人攫いというのは? その島には鬼の彼以外にもいるんですか?」
「えぇ、彼のおこぼれに与ろうとするベータや弱いアルファ等が……。それに彼に頼まれて動くオメガもおりました」
鬼というのはそれほどまでに強い力を持っているのか……。犬斗は震え耳を下げ、猿弥は尾っぽを立てて警戒していた。
「……ですが、貴方なら鬼に勝てるかもしれません」
「どうして?」
「それは……ただの、勘です……」
雉明はそれ以上を口にしなかった。夕日を受けた白い長い髪は茜色に染まっていた。
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