鬼退治に必要なのはきびだんごではなく桃太郎のピーーーーーでした

三谷玲

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雉も鳴かずば撃たれまい

そのさん

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 雉明の話を聞いて一行は明日にでも島へ渡ろうと決意した。そのためには早く身体を休めなければと近くにあったボロい漁師小屋を見つけると今日の宿に定めた。ほこりと蜘蛛の巣の様子からも今は使われてないのだろう。きっとオメガの漁師が使っていたに違いない。
 二人を代わる代わるハメた桃太郎は、それでもまだ余力が残っていた。それというのも犬斗のキャンキャンという可愛らしい啼き声と猿弥のキィキィという叫び声の中に、キ、ギという聞き慣れない甲高い声が聞こえたからだ。それは小さいながらも桃太郎の耳に届いた。
 いつもより若干激しめに抱き潰して二人を無理矢理寝かせると、桃太郎は裸のまま腰袋だけを手にして川岸へと歩いた。月を写した川面のようにきらめく白い髪が、昼間の大きな岩場の陰から見え隠れしていた。

「あっふっ♡ き、っ♡ んっ♡ あぁ、っ♡ たりないっ、これ、じゃ……」
「お貸ししましょうか?」

 岩陰に隠れたつもりの雉明は身体をビクリと跳ねさせた。その拍子に彼のペニスからはぴゅっと白濁が飛び出した。

「は、っあっ、ダメ、です……、私……故郷に、番候補が、いるのです……っん♡」
「そうですか……。ならなぜ故郷へ帰らないんですか?」
「だって、私、は……鬼に、穢されてっ」

 雉明は弁明していた。していたがその指は一向に止まることなく雉明自身の中を抉っていた。細い指では足りないのだろう。泣きながら目の前に差し出された桃太郎のペニスの匂いを嗅いでいた。

「そうだ、これ食べませんか? きびだんごというお菓子です」
「きび、だんご?」

 自分のペニスの横に腰袋から取り出したきびだんごを一つ掌に載せて雉明に差し出した。月のあかりだけの川岸でもその色は桃色に光っていた。

「これを食べるとオメガは発情してしまうんです。だから、どうぞ。これのせいにしてしまえばいい」
「そ、んな強引な……」
「アルファのフェロモンだって同じです。強力なフェロモンにオメガは逆らえない。番の方だって許してくれますよ」

 桃太郎の言葉がストンと胸に落ちた。鬼のフェロモンに負けて故郷を離れたことに罪悪感を覚えた雉明は帰れなかった。帰れるはずがなかった。しかしあの強烈なフェロモンに打ち勝てるオメガなどいなかった。島には子供も一緒につれてきている母親だっていた。それくらい、鬼のフェロモンは強力だった。
 しかし、今日桃太郎に逢って雉明は気付いた。桃太郎のフェロモンは鬼のフェロモンに似ている。しかし何かが決定的に違う。意識を奪ってしまうような強制力とは違う何かを感じ取っていた。
 恐る恐るきびだんごを手にし、一口齧る。見た目通りに甘い味が口いっぱいに広がった。どう見ても瑞々しい食べ物ではないのに、口の中には汁が溢れた。

「……桃の味がします」
「桃、ですか? ……なるほど、ばあさん俺のはいってた桃の種を取っておいたのか……」

 犬夫婦と共に燃やしたと聞いていたが、実はあのとき、桃太郎の手には桃の種が握られていた。桃の種は元来、人の血の巡りを良くするものとして利用されていたが、桃太郎のはいっていた桃である。オメガの血の巡りを良くする、ひいては発情を促す効果があっても不思議ではなかった。

「おいしい……、これもっといただけ、ますか?」
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