短篇まとめて置いておくところ

三谷玲

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君だけが知る、秋の大三角形

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 はじめてオメガの発情期を見たのは、僕が10歳のころだった。

 僕の家族はアルファとオメガの夫夫な両親、それから兄、姉、兄、そして僕の四兄弟。小さいころから近所では評判の美人四兄弟だった。みなオメガの母さんに似たのだろう。

 母さんはつややかな黒髪に、まっすぐの眉は眉尻だけが少し垂れていて、優しい雰囲気。くっきりした二重のアーモンドアイはキュートさを、小さいながらも厚みのある唇に細い顎は色気を醸し出している。四人それぞれ違いはあるけれど、そんな母さんにそっくりだった。

 左の泣きぼくろが色っぽい12歳上の長兄、景冬ケイトにいには、第二性が判明した直後の14歳のときに出逢った10歳年上の運命の番に溺愛されている。成人してすぐに結婚し、番になった。小さな顎下にあるほくろがセクシーな10歳上の初夏ウイカねえねは運命の番ではないけれど、高校で知り合った同級生の彼女と今もラブラブな毎日だ。そして唇の左上にあるほくろが印象的な8歳上のちいにい、乎春コハル。にいにと運命の番との出逢いを間近で見てしまったちいにいは、運命の番にひどく憧れていた。だけど、なかなか巡り合うことがなかったちいにい。

 そのちいにいの発情期のセックスを、僕は目の当たりにしたのだ。

 その日、両親は仕事、にいにとねえねはすでに結婚していたから家には僕とちいにいだけ。そのちいにいも発情期で部屋に閉じこもっていた。

 学校から帰った僕は、家の中から大好物のブドウのような甘酸っぱい匂いがして、その匂いをたどるとちいにいの部屋の前で、その扉が少し開いていた。発情期が終わったのかと思って覗くと、そこにはすっぱだかで抱き合うちいにいとその友達。

 しかもちいにいは発情期のせいでとろりととろけるような顔をしていた。イケナイものを見てしまったと思った僕の目に飛び込んできたのは、ちいにいの友達のアルファの人のちんこだった。

「ふぁ、ぁっ♡ ら、めっ♡ にんしん、しちゃ、うっ♡ んぁっ♡ イくっ、奥トントン、らめ、っ♡ やっ、イイっ♡」

 ちいにいはダメとイイを繰り返して、完全に支離滅裂だった。アルファのでっかいちんこはちいにいの小さな身体を串刺しにして、奥を突いている。それなのに、まだ全部は挿っていないのがわかるのは、その根本にある亀頭球だ。

 アルファのちんこにある一回り大きいコブは、ちいにいのアナルには入り切らず、その尻にぶつかっていた。アルファの彼はちいにいに番になってと項を舐めながら懇願していて、ちいにいはそれを切れ切れの意識の中拒絶していたけど、僕にはそんなやりとりよりも釘付けなものがあった。

 アルファのデカチンだ。

 勃起したちんこも、アルファのちんこも初めてみた。全部挿入されていないのに、ちいにいの奥を突くほどの長さ。抜いた瞬間見えたちいにいのアナルは僕の腕が入ってしまうくらいに拡げられている。

 僕の中で、ちんこの基準はそのアルファのちんこになった。

 ドキドキしたままふたりに見つからないように自分の部屋へ戻った。あんな太いのに更に亀頭球まで挿入されたらどうなってしまうのだろう? ちいにいはとろとろになっていたけど、そんなに気持ちいいのだろうか?

 その日から僕の頭はそのことでいっぱいになってしまった。

 にいにもねえねも、もちろんちいにいもオメガだ。10年経った今、みなそれぞれ番と結婚し幸せそうに暮らしている。オメガ蔑視なんて言葉があるけど、ここまで美人だとそういうやっかみも影を潜めるらしい。圧倒的な美しさの前で、人はひれ伏す生き物なのだ。

「良かったな、知秋チアキ! アルファだよ! おめでとう!」

 第二性の検査の結果、僕、知秋がアルファだと判明した14歳の春。家族は大喜びでお祝いしてくれたけど、僕の心は千千に乱れた。

 アルファのちんこを見てから4年間、ずっとオメガだと思って生きてきたのに!

 この美貌でアルファを虜にし、そのデカチンで幸せにしてもらえるのだと思っていたのに!



 成人を迎えた僕はアルファとして立派に成長していた。

 家族の中でも父さんを抜いて身長は一番高く、春に測ったときには185センチを越えていた。自分で言うのもなんだが、頬に三角を作る印象的なほくろが魅力的な美少年なのは変わらない。

 しかし僕の美しさはにいにたちと違い、儚げで色艶のある僕の理想の美少年とは遠いものになった。アルファだからか、僕は凛々しく静謐で白眉な美少年へと成長したのだった。



「ちーあきっ! また俺を置いて遊びに行ったって? んで? どうだった?」
「冷たっ! 何するんだよ、凌志。結果わかってて聞くな」
「またダメだったん? もう諦めたら?」

 授業終わりに待ち合わせをしていた凌志リョウジが、頬の三角ほくろに押し当てるようにして渡してきたのは大学の自販機で売っている大好きなブドウジュース。それをちゅーちゅー飲みながら、凌志に昨日の話をはじめた。

 凌志は大学で知り合った僕の数少ない友人のひとり。僕より劣るけど、ベータにしては整った顔立ち。僕とほとんど変わらない長身で、いつも派手な服を着ている。

 アッシュグレーに染めた髪はよく似合ってるし、カラコンの緑のタレ目はチャーミング。チャラい見た目の割には性格はまっすぐで真面目。偏見なく僕と付き合ってくれる、いいやつだ。

 なんとなく授業が重なって、隣の席になったりして、気付けば友人関係を築いていて、高校まで規則正しい生活ばかりをしてきた僕に夜遊びを教えてくれたのも凌志だ。ただの友人から、今みたいに親友とも呼べる間柄になったのは互いのカミングアウトがきっかけだった。

 凌志の友達がバーテンダーをやっているクラブのパーティーに誘われた。初めてのクラブに緊張してか飲みすぎた僕がVIPルームのソファでだらけていると、凌志が隣に座った。
 凌志も酔っていたのか、僕の肩にもたれながら「俺さ、ベータだけどゲイなんだよね」とさらりと告げられた言葉に僕もつい「そうなんだ? 僕もアルファなんだけど、実はアルファに抱かれたいって思ってるから、そういう意味ではゲイ、なんだよね」と答えていた。

 凌志はびっくりしていたけれど、僕を否定することはなかった。

 協力する、と言ってくれた凌志に連れられてクラブ通いが始まった。ふたりとも身長は高いし、顔もいいから行けば人は集まるけれど、ほとんどがオメガかよくてベータ。アルファなんて絶対見つけられない。

 むしろ僕たちはオメガ狙いのアルファやベータから敵視されていた。面倒を起こしたくないと凌志に誘われて、結局フロアで踊り明かすのが常だった。

 凌志といるからダメなんだと悟った僕は、ときおりひとりで出歩いている。もちろんひとりだからってアルファは当然僕に声を掛けてくることはない。抱いて欲しいって来る子は無視して、純粋に僕を好きになってくれそうな子にだけ話しかける。最初は無理でも、もしかしたら僕に挿れてくれるかもしれないからだ。

 でも、だいたい結果は同じ。ちんこのデカさはアルファの強さっていうように、僕のちんこがでかすぎるのが悪い。ベータですら、僕のちんこを見ると僕の精を搾り取ろうとするメスになってしまうのだ。

 昨夜知り合った彼は、180センチはあるだろう長身で、アルファのような立派な体躯だった。話を聞くとオメガで女の子を抱いたこともあると言っていた。「オメガだって男だもんね」と伝えると抜け出さないかと誘ってきた。もしかしたら、と僕は期待してついていった。

 けれど僕のちんこ見てからはもうずっと釘付けって感じで受け入れる気しかないのがありありとしていた。うっとりとした目で見つめ、丹念に愛撫してくれた。いざ挿入すると、彼を満足させることは出来たようだ。しかし、僕が射精することはなかった。

「ごめんね。やっぱり無理みたい」
「俺みたいなオメガじゃ、ダメっすよね」

 下手に慰めて今後を期待させては悪い。傷付けたいわけではないが無理なものは無理だった。

「僕たちが運命ではなかった。ただそれだけだよ。君にはもっと素敵なアルファが見つかるはずだから」

 体の良い言い訳をしながら彼の頭を撫でると彼はまた泣きそうになったが、最後には少しはにかんでありがとうとつぶやいて身支度を始めた。

 フロアで踊っている様子では僕と変わらないくらいの体格だと思ったけど、やっぱりオメガだな。腰のラインはなめらかで、きゅっと引き締まっているのに柔らかそうな尻。抱き心地の良さそうなきめ細やかな肌。ついじっと見つめてしまう。

 あぁ! 羨ましい!

 なんで僕はアルファなんだろう?

 ちいにいの発情期のセックスを見てから僕はずっと憧れていたんだ。あの立派なアルファの亀頭球つきちんこに。

 初めての発情期のときでもきちんと奥まで突っ込んでもらえるように、あれから毎晩自分で自分の穴を準備していた。最初は指一本入るのがやっとだった尻の穴は、入念に拡げた結果、今では立派な縦割れアナル、いやケツマンコに成長した。結婚して家を出たにいにの部屋で見つけたアダルトグッズは、僕の毎晩のお供となり、今じゃ自由自在にアナルビーズを出産することが出来る。

 ちなみにこのアダルトグッズはにいにの番からの贈り物だ。未成年の番に手を出すわけにはいかないからと、にいにの慰め用に買い与えていたらしい。相当の数があったけど、にいにはお気に入りがひとつあれば良いタイプで、ほとんどが未開封だった。もったいない。

 10歳のあの日からずっと僕はオメガとして立派に勤めを果たせるよう努力してきた。今じゃちんこだけの快感じゃイけないくらいだ。それなのに第二性がわかった14歳の春。

 すべてが無に帰した。

 僕の熟れ穴はアルファのためではなく、ただの排泄器官で、憧れのアルファのデカチンは自分の股間にあるのだった。



「なんで僕、アルファなんだろう? オメガだったら良かったのに」
「それなら俺だってアルファになりたかったよ」

 昨夜の事の顛末を話し終えた僕が机に突っ伏すと、凌志は慰めるように頭を撫でてくれた。これをされると癒やされるから、僕もうまくいかなかった子たちの頭を撫でることにしている。凌志の大きな手の感触を楽しんでいたらふとその手が止まって、どうしたのかと見上げたら、凌志が渋い顔をした。

「そうだ、さっき妙なことを聞いた。知秋、気をつけろよ」
「気をつけるって何を?」
「先月知秋を襲ったオメガの子が、ファンクラブで知秋のことを罵っていたらしい」

 先月……? ファンクラブが出来るほどかわいい子なんていただろうか? 僕が首を傾げていると凌志は呆れていた。

「確かに、知秋より美人なんてそうそういないけどな? 先月の子、読モやっててこの間もメンズ雑誌の表紙飾ってるようなかっこかわいい系イケメンだったからな? 俺みたいなベータは絶対相手しない、アルファ至上主義らしいんだけど、裏じゃランキング付けてるらしい」

 読モと言われて思い出した。その日は好きなDJで凌志を誘ってフロアで踊りまくっていた。そんなときに話しかけられた子で、その時は何もなかったけど、その後別のクラブにひとりで行ったときにまた声を掛けられた。やたら読モであることを自慢げに話していたけど、30歳で3児の母の景冬にいにのほうが断然かわいいなと思ったから覚えてる。

「で、その子がどうしたの? ランキングって?」
「どうやら知り合ったアルファをランク付けしているらしくて、知秋は見た目は一位だけどセックスはビリ、だそうだ」
「まぁやれなきゃそう思われても仕方ないね」
「それがまぁヒドイ言いようでさ。独りよがりのセックスで心まで傷付けられた、って」
「ちょっと待て。それじゃ僕が彼を無理やり抱いたみたいじゃないか。トイレについてきて勝手に咥えてきたのは向こうなのに」
「知秋がそう言ってたから、その話を教えてくれた子には訂正しておいたけど……。まぁそういうわけだから、ファンクラブのやつら怒り心頭らしくて、知秋を貶めようと息巻いてるらしい」
「まじかー」
「まじだー」

 あの日はひとりで凌志がいないのは当然だけど、なんとなく体調もよくなくて、踊るのもそこそこにソファでぐったりしてた。読モくんに吐いたほうがいいよっ言われてトイレに連れ込まれた。

 警戒心がないと言われてしまうとそれまでなんだけど、こういうことはよくある。それに、どうせイくことはないから投げやりの気分でなすがままだった。便座に座らされて、無理やりちんこを引っ張りだされ、強制的に勃たされて、無理やり襲われたんだ。

 読モくんは盛大に盛り上がっていたけれど、僕のちんこは射精することなく、まさに独りよがりに彼はイった。正直、こんな中途半端な勃起ちんこでイけるなんて羨ましいって思ったくらいだ。僕のケツマンコはもっと大きなものでないとイけないくらいに成長している。



 僕は飲み終わった紙パックを丁寧に潰すとそれをゴミ箱へと投げ入れた。

「こんな話をしても冷静でいられるのは感心だけど、ほんとくれぐれも気をつけろよ?」
「気をつけるって言ってもどうしたらいい?」

 夜遊びは控える? でももし、今日に限って僕を抱きたいって男がいたら? 渋る凌志の手を引いて、僕は今夜も夜の街ふらつくことにした。



 気をつけろと言った凌志がそうそうに捕まるとは思いもよらなかった。

「凌志! 大丈夫か?」
「わりぃ、知秋。まさか俺が盛られるとは……」

 全裸で縛られている凌志が申し訳無さそうな顔で謝ってきた。

 クラブで僕たちに声を掛けてきたのはかわいらしいベータの男の子。珍しく、というと悪いが、アルファの僕よりベータの凌志が目当てらしく身体をぴったり寄せてフロアで踊っていたので、僕はひとり寂しく赤ワインをジンジャーエールで割ったキティを飲んでいた。

 凌志は僕が気になるのか、ちらちらとこちらを見ていたが、気にするなと笑顔で手を振ると彼に渡されたドリンクを一気飲みしていた。多分それに薬でも盛られていたんだろう。いつの間にかふたりはフロアから消えていた。気をつけろと言われたし凌志もいない。そうそうに退散しようと思ってクラブを出たところでむさ苦しい雰囲気の男に呼び止められた。

「あんたのお気に入りの貞操の危機だぜ?」

 そう言って見せられたのが、今目の前にいるのと同じ、裸に剥かれて、後ろ手に縛られ、開脚させられた足の真ん中でギンギンのちんこを晒している凌志だった。

「凌志に何をした!」
「まだ挿入はしてねぇよ、まだな。あんた次第だ」

 まさしく脅しの言葉に僕は素直に従い、凌志が囚われているラブホへとやってきたのだ。部屋に入るとベッドには裸の凌志。それから読モくんと僕を連れてきた男と他にも数人いた。

「オレをコケにした知秋くんなんてずたずたに犯してやるんだっ」

 かっこかわいいらしい顔を歪めた読モくんは腕を掴まれて連れてこられた僕を指差し、悪党らしいセリフを吐いた。なんてこった。そのまわりにはちょっとどころかとても見るに堪えないブサイクが三人揃っていた。犯されるなんて憧れてたシチュエーションではあるけれど僕にだって好みがある。僕よりきれいな男とは言わないけれど、せめて並の顔が良かった。

「僕が犠牲になれば凌志は助けてくれるんだろうな」
「潔さは褒めてやるけど、そんなこと言ってられるか? アルファが男に犯されるなんてそんな惨めなことなんてないだろ? その立派なちんこから一滴も出すことなくイかせてやるんだっ。みんなオレの復讐に付き合ってくれる優しいファンだからな」
「カノ、カノくんのためなら、こんなアルファでも、ぼく、ぼく達がんばる、よ!」
「ヒャハハ! きれいな顔して卑劣な男にはお仕置きだぜっ!」

 ああもう。ほんと小悪党っていうのはどうしてこんなつまらないことをするんだろう? いや、こんなつまらないことをするから小悪党なのだろうか? 縛り直した腕は、天井にあるフックから下がっていた鎖に繋がれた。どうやらこの部屋、SM部屋らしい。こんだけの人数が入れるのは不思議だが、撮影にも使われる部屋かもしれない。読モくんのお仲間のひとりで僕を連れてきた男はプロ仕様のカメラを抱えていた。

「親友にもぶざまな姿、見てもらいなよ」

 カメラマンが言うと僕の隣にいた太った男が僕の身体を凌志のいるベッドのほうへと向けた。視線の先にいる凌志は眉根を寄せている。

「巻き込んでごめんね、凌志」
「俺のことなんてほっとけばよかったのに」

 放っておけるわけがない。

 凌志は僕の性指向を理解してくれる唯一の友人だ。頼めば抱いてくれるかもしれないと思ったこともないこともないが、数少ない友人を失う度胸は僕にはない。それに凌志の好みは多分僕とは似ても似つかないオメガらしいオメガの子。僕が羨ましいなとそのオメガの子を見ていると、決まって凌志も見ていた。

 僕がオメガだったら良かったのに。

 無駄に暴れて疲れても嫌なので、おとなしくしているとチノパンをパンツごと引き抜かれた。ボロンと出てきたのは僕の平常時のちんこ。

「でけぇ……」

 誰かのつぶやきが聞こえた。そうだろうそうだろう。おそらくこの中の誰よりも大きいはずだ。……悲しい。読モくんは一瞬うっとりした表情を見せたが、頭を振ってから僕のちんこにコックリングをつけようとした。

「うそだろっ! XL用意したのに」

 サイズが合わないそれを投げ捨てた。そうだろうそうだろう。僕だって試したくてわざわざ特注したんだ。思わずため息が漏れた。

「ば、馬鹿にしてっ! しゃ、射精を止める道具は、他にもあるんだっ! アレ、やって!」

 射精させないのは僕のフェロモンで自分がヒートを起こすのが嫌なのかな? 読モくんに言われて、汗臭い太った男が取り出したのは螺旋状になっている尿道ブジーだ。おぉ、それは初めてだ。思わず興味深く見てしまう。

「ぼ、ぼくは、医者、医者だからね。傷付けたり、はしない、からね」
「それは助かるな」

 先が湾曲したブジーにゼリーをまとわせると、指で開いた尿道につぷっと押し当てゆっくりと挿入していく。医者というだけあって痛みはない。

「ふっ……」

 これは悪くない。異物が吸い込まれていく自分のちんこを見下ろすと、思わず笑みが漏れた。今度自分でも試してみよう。おそらく一番長いブジーを選んだのだろうが、ぎりぎり僕の前立腺に届いたようだ。丸い輪っかを引っ張って小刻みに動かされると、うっすら刺激を与えられた前立腺によってちんこが持ち上がる。もう少しで全部入ってしまいそうで、医者の男も驚きを隠せないでいる。

「すご……こんな、ペニスははじめてだ……」

 きっとそれは僕が悔し紛れに言わなければいけない言葉のような気がする。尿道と前立腺への刺激に集中していたら、今度は僕の尻のほうにも誰かの手が回った。

「ウヒヒ。こんなとこ、いじられるなんて屈辱でしょう」

 気持ちの悪い笑い方をしたのは、ガリガリメガネくんだ。ローションまみれの細い指がいきなり挿入された。無遠慮な動きだけど、細すぎて正直ほんとうに挿入されているのか分からないレベルだ。それとこの男、見ていないのか、見たことがないのか。でなければ、僕のきれいな縦割れアナルを見ての感想は違ったものになるはずだ。屈辱? 普段のオナニーでももっと気持ちがいいぞ。

 初体験の尿道ブジーは楽しめたけれど、アナルのほうはまったく楽しめそうにない。指を増やしてもただ前後にこするだけで前立腺にすら触れてこない。せっかくブジーで刺激されて良かったのに、気持ちが萎えてきた。

「ふぅ……」

 またため息をこぼしてしまうと、読モくんが喚き散らしてきた。

「そうやって何でもないって顔してるけど、悔しいんだろ? それとも慣らさずに挿入されるほうが良かったか? それなら望み通りそうしてやるよ! ほら、挿れてやれ!」

 ガリガリメガネくんを押しのけて僕の後ろに立ったのは、この中では一番屈強そうな男だった。髭面でモヒカン、顔にタトゥやピアスを入れてる狂人風の男。

「ヒャハハ! オレのアンパラングちんこはキッツいぜ~っ!」

 アンパラング? ああ、亀頭にぶっ刺すピアスのことか。薬でもやってるのか、すでに勃起しているピアスちんこを僕の尻になすりつけてきた。さすがに初めてのちんこに緊張が走った。

「知秋っ!」

 凌志が僕の名前を叫んだ。あぁ、もうそんな顔するなよ。これからレイプされるのは僕だというのに凌志のほうが辛そうな顔をしていた。

 胸が痛い。

 凌志もイヤなら見なきゃいいのに、険しい表情のまま僕を見ていた。

 凌志に見られながら受け入れた生ちんこは、一気に全部挿れられた、ようだ。ようだ、というのは僕の尻に男の腹が当たっているからで、決して僕の結腸に触れたわけではない。

「ガリガリくん、慣らすのうめぇなぁ~っ! ずっぷし挿ったぜ~っ! ヒャハハ!」
「そ、そうですかな? 小生のフィンガーテクもまんざらではないようですな、ウヒヒ」

 気持ちの悪い会話が背後でされている。勘違いしないで欲しい。フィンガーテク? そんなものは一切なかったからな。

 これだけすんなり挿入できたのはこれまでの僕の努力の結果だ。どんな立派なアルファのデカチンでもすぐに挿入できるよう、自ら身体を創り上げた珠玉のアナルなのだ。

 ピアスちんこは鎖がきしむくらいに激しく腰を振ってきたが、いかんせん雑な動きで気持ちよくない。おそらくピアスでごまかしてきたのだろう。動きが単調で退屈過ぎる。

 それとも一般人のちんことはこんなにも物足りないものなのだろうか? 少し、期待していただけに残念な気持ちになる。せっっかく尿道側から前立腺を押されても、肝心の中から刺激してもらえないと中途半端だ。気持ちとともに、身体も萎えてきた。強制的に勃たされた僕のちんこはしぼみはじめていた。

 もうこうなったらさっさと終わらせよう。僕は自由自在に動かせる絶品ケツマンコを蠢かせた。

「ヒャ、ハっ! なんだ、これっ、こんな、ケツアナ、初めてっ、ハッハッ、出る、っ! 出ちまうっ! ヒィィィ」

 あっけない。僕がほんの少し動かしただけで、ピアス男は果てた。射精されそうなタイミングでアナルビーズの出産を思い出しながら押し出したら、すぽんと抜けてくれて中出しだけは免れた。やれば出来るもんだな。振り返るとピアス男はよろよろとよろけて僕から離れると、ぺたりと座り込んでいた。

「僕に、屈辱を与えるんじゃなかったの?」

 目があってしまった読モくんに笑いかけると読モくんは顔を真っ赤にしていた。

「な、なんでそんなに冷静でいられるんだよっ! 知秋くん、不感症なんじゃない? あのときだってイかなかったしっ」

 彼の苛立ち紛れに発した言葉に、まわりの男は色めきだった。

「カノくん、コイツにレイプされたんじゃなかったの?」
「は、発情期に、避妊、避妊なしに、なか、中出しされてポイ捨て、されたって。だ、だから、うちの病院、病院で緊急避妊薬を……」
「まさか、カノくん、小生らを、騙したのですか?」

 カメラマン、医者、ガリガリくんが順に読モくんに問いただす。ピアス男は僕に搾り取られたからなのか、まだぐったりとしていた。

「ち、違うっ! オレは、この男に、ひどい目に遭わされたって言っただけだっ! オレの誘いに乗らないばかりか、オレが咥えてもぜんぜん反応しなくって、それでもって思って挿れたのに、イきもしなければなにも感じもしないなんてっ! ヒドイじゃないかっ!」

 あぁ自爆だな。男たちは白い目で読モくんを見ている。いくら可愛くても襲った相手を襲われたとウソをついて男たちに犯罪の片棒を担がせたんだ。男たちも簡単に彼の言葉を信じすぎだ。

 縛ったままの僕と凌志をほったらかして読モくんの糾弾が始まったが、きっと強く言われるのに慣れていないのだろう。読モくんはすぐに床に座り込み泣き出してしまった。



 なんとも悲しい、いや間抜けな幕引きだった。僕と凌志の拘束は解かれたが、汚れていたため服を着るのがためらわれてシーツやタオルで隠しただけのまま、彼らから謝罪を受けた。

 読モくんは医者の男とガリガリ君に腕を取られ、沈黙している。きっとこのあと彼らから何かしらの罰が与えられるのだろう、ふたりとも嬉しそうな顔をしている。まぁ僕には関係ないけど。ようやく起き上がったピアス男は僕をうっとりした目で見つめてきたが、よしてくれ。いくら餓えていても粗チンに興味はない。

 カメラマンの男が一番良識があるようだ。

「申し訳ない。謝っても許されることではないのはわかっているが……」
「いや。彼に襲われたとはいえ、僕にも否がないわけではない。ちゃんと拒めば良かったんだから」

 あのときちゃんと拒めば良かったんだ。僕が挿れられるわけではないのをわかっていても、オメガの子と寝るのは嫉妬が絡んだ復讐の気持ちがある。受け入れるのが当然だと思っている彼らと寝て、アルファが射精しなかったら? それは彼らにとっても屈辱的なことじゃないだろうか、と。今回の事件は屈折した僕の気持ちが起こしたようなものだ。

「このデータも削除する。約束しよう」

 男は手にしていたカメラを持ち上げた。

「それデジタル? なら、そのまま僕が引き取ろう。信用していないわけではないが、万が一そのデータが流出するようなことがあれば僕の名誉に関わるからね」

 僕の建前にカメラマンは逡巡したあとカメラを渡してきた。カメラの代金と犯罪歴を天秤に掛けたのだろう。懸命な判断だ。いくら僕がきっかけだとしても集団強姦されたとあらば、当然彼らは罪に問われる。

「訴えることはしない。ただし、今回のことを口外すればそれ相応の措置を取るということはわかるね?」

 一様にはっと息を飲み込んで、頭を下げた。僕は渡されたカメラをカバンにしまった。

 建前としては、これを証拠に彼らを牽制すること。でも本音は、これをおかずに出来ると思った。自分の処女喪失シーンなんてそうそうお目にかかれるものではない。楽しめるかどうかは別としても。一瞬、これが流出して僕が処女じゃないと分れば、襲ってくれるアルファが現れる可能性も期待したが、今回みたいな虚しい結果になりそうなので却下した。

 彼らには口外しないことを念書に書かせて部屋を追い出した。

 部屋に残ったのはシーツをかぶった凌志と、シャツにタオルを巻いただけの僕のふたりきり。
 ようやく、ほっとした。
 すっかり疲れたので座っている凌志の横に身体を投げ出して寝転んだ。

「まったく、とんだ災難だったな。凌志は無事?」
「あ、あぁ……」
「どうかしたのか?」

 端切れの悪い凌志がかぶったシーツで顔を隠した。

「み、見るな」

 見るなと言われると見たくなるのが人の性。かぶっていたシーツを剥ぎ取ると真っ赤な顔と、写真で見せられたときと同じくらいにギンギンに勃起したちんこが現れた。写真じゃわかりにくかったけれど、悪くない。さっきのピアスちんこよりは断然立派だ。

 ベータだから当然コブはないけれど、太さ長さともに申し分はない。少し上反りしていて、くっきりとしたくびれのある雁。サイズは若干劣るが、僕のお気に入りのディルドと同じ形だ。親友だからと、これまで見ないようにしてきたけれどもったいないことをした気分だ。今度から、これをおかずにすれば……。

「あれ? なんでまだ勃ってるんだ?」
「うるさいっ! 知秋のせいだろっ!」
「盛られた薬に媚薬でも入ってた? それは僕のせいじゃなくて――」
「違ぇよ! 親友がレイプされて勃起するなて最低、だと思ってる、けど、知秋の顔、エロすぎんだよっ」
「エロい? さっきほとんど感じてなかったんだけど」
「あれで感じてない、だと? 知秋、ほんとうに不感症?」
「失礼なっ! オナニーだったらちゃんと射精もするし、中イキだってするよっ!」

 何を暴露させられているんだろう。

「そ、そうか。いや、ときおりすっげぇやらしい顔になってたからな?」

 多分それ、今度のおかずにしようと思ったときじゃないんだろうか? 身体をいじられるよりそっちのときのほうが断然興奮したから。あとは凌志に見られてるのも……。

「それ……僕がしようか?」

 思わず口に出してしまった。

「知秋?」

 凌志は驚いた顔をしていたけれど、後には引けなかった。これってチャンスなんだと思う。こんなに気の合う友人がこの先できるとは思わないけれど、こんな状況じゃなきゃきっと凌志に挿れてもらうことなんてないだろう。

 セカンドバージンにはなってしまうが、このちんこを挿れてもらって、それで終わりだ。男に抱いてもらうっていう夢は叶う。その代わり、親友は、失うが……。

 固まったままの凌志のちんこに手を伸ばす。見た目より重量感があった。これを勃起させたのがあいつらの誰かなのか、さっきのベータの子なのか気になるけれど、お膳立てしてくれてありがとうと思うことにする。

 口の中で唾液をためて先端に落とすと、びくんと脈打った。ディルドは反応がないから嬉しい。そのまま舌を伸ばして雁のくびれをペロペロ舐めると、また反応があった。良かった、僕でも反応してくれて。

 僕の小さい口をさらにすぼめて吸い付く。わざと雁に引っかかるようにするためだ。凌志は気持ちがいいのか、僕の頭を撫ではじめた。さらりと落ちた前髪をかき分けるようにして梳かれると、凌志の手が僕の頬に触れた。

 途端、顔が引き剥がされる。

「やめろ! 知秋!」
「やっぱりイヤだった? ごめ――」
「イヤなのは知秋だろ?」

 イヤなわけがない。むしろ僕は積極的に凌志を咥えようとしている。やっていることは読モくんと変わらない。無理やり勃たせて、無理やり挿入しようとしている。僕が首を横に振ると凌志は眉をしかめた。

「じゃあなんで泣いてるんだよ」

 泣いてる?

「ほら」

 僕の三角に並んだほくろに凌志の指が触れる。差し出してきた凌志の指は濡れていて、僕は初めて自分が泣いていることに気付いた。

「なんで?」
「なんでって、それは俺が聞いてるんだけど? まさか、いまさらレイプされたことが悲しかった、とか?」
「それは、ない、かな? ああでも、これで凌志とセックスしたら、親友がいなくなるんだなって」
「……それは俺のセリフ。これまでだって知秋を襲おうとしたことは何度かあったけど、知秋が俺に幻滅しないか不安だったんだよ。知秋はさ、俺に心許してくれたから教えてくれたんだろうけど、アルファのちんこと比べられたら俺のなんて並だろ?」
「並、ってことはないと思う。大きさはともかく、形は好き」

 確認のために下を見ると、凌志のちんこの反りが強くなった。

「あんま、見んな」
「見たら大きくしたくせに」
「知秋の顔がエロいんだって。いつもは性欲なんてありませんって顔して、オメガに襲われたあとだって変わらないくせに。なんで俺のちんこ見てそんな物欲しそうな顔してんだよ」
「だって……欲しいから」
「いいのか? 親友がいなくなるかもしれないんだぞ?」

 そう言ったのは僕のはずなのに、凌志のほうが泣きそうな顔をした。さっきもそうだ。僕がレイプされそうになってるのに、凌志のほうが辛そうだった。僕の頬を撫でる凌志の手を握り込んで、押し付ける。

「怖い、けど……恋人ができる可能性に賭けてみたい。あ、でももしセックスが悪くても僕は凌志のことは好きだし、友達として一緒にいたい、ってのはダメ?」

 ワガママかなと自分でも思う。セックス出来ない恋人同士もいるけれど、僕は恋人とは互いが満足できるセックスができるほうがいい。もし付き合うことになって凌志とのセックスの相性が悪かったら、きっといつか不満が爆発してしまう気がする。

「いや、そうならないように努力する」

 そう言って凌志が僕にキスをした。

「知秋の唇、やらかいな」
「……言わなくていい」

 なんだろう。すっごい恥ずかしい。顔が赤くなるのがわかる。襲われたときだって、レイプのときだってもっと恥ずかしいことをしているのに、ただただ唇が触れ合うだけのキスなのに。恥ずかしくて顔をそらしたら、無理やり顎を掴まれてまた口付けられた。今度はガッツリ舌が入ってきた。これまでアルファを受け入れるために身体のあちこちを性感帯にしてきたけど、こんなところも感じるんだ。凌志の舌が僕の舌をおびき出して、軽く噛まれる。何度も出入りして、上顎をくすぐられるのも気持ちいいけど、喉奥まで舌先が届くとゾクゾクする。なにこれ。ディルドを舐めてるときにたまにあたることがあったけど、あの感覚に似てるかもしれない。その時はこれから挿入する高揚感で感じていたんだと思ったけど、違うんだな。

 人ってこんなところにまで性感帯があるんだ。

 キスを続けながら、凌志が僕の肩を指でなぞる。これ以上筋肉質にならないようにしているけれど、細く華奢なオメガの身体とは違う男の身体。なのに凌志の指は触れたら割れる薄氷をなでるくらいに優しく触れる。

「またおっきくなった」

 密着してるからすぐにバレてしまう。キスと凌志の指でまた僕のちんこが脈打つ。

「言うなよ。僕にとってはコンプレックスの塊なんだから」
「そうか? 俺が触れたからそうなったんだと思ったら、かわいい」

 ちゅっという音を立てて僕の三角ほくろにキスをする。かわいい? 僕が? 子供の頃ならまだしも、アルファだとわかってから初めて言われた。あたふたしてる僕に凌志がくすりと笑った。直接エロいことをされているわけじゃないのに、気持ちがいい。不思議だ。

 いや、不思議じゃないのかも。
 わからない。
 わからないけど、気持ちがいい。

 肩を撫でていた手が背を通って僕の尻に届く。一応さっき塗られたローションのおかげであっさり一本入る。まぁなくても指一本くらいなら余裕だけど、やっぱりあるとないとじゃ大違い。すぐに二本に増やしてどこまで開くか試すように指を拡げた。

「なぁ、見てもいい?」
「ふぇ? あの、引くなよ?」
「いまさら引くかよ。あのピアスちんこ咥えたとこも見てんだぞ?」

 四つん這いになるとぐわっと尻を割り開かれた。

「すげ……。アルファでもこんなきれいな縦割れになるんだな。ほんと、知秋の努力家なとこ、尊敬するわ」
「こんなことで尊敬するな、って見すぎ」
「いや……。なぁ、知秋知ってた? ここにもほくろあるの」

 そう言って凌志が触れたのは僕のアナルのすぐ横、割り開いた尻と足の境界のあたり。自分じゃ見えそうで見えない、普段はきっと尻の肉で隠れているような部分だ。とん、とん、とんと三角を描くように指が僕の尻を突く。

「知秋の三角形。なぁ、これ誰かに言われたことないか? もしくは見られたこと」
「ない、と思うけど」

 多分さっきのやつらも立ってたから見えてないと思うし、襲われるときに用があるのは僕のちんこだから誰も僕の尻なんて見てないと思う。

「じゃあ俺だけが知ってる秋の大三角だな」

 そう言って頬にしたようにちゅっと音を立ててキスをした。まるで、自分だけの宝物みたいに何度もそこに唇が触れる。

「凌志、凌志!」
「ん?」
「続き、して」
「ああ悪ぃ。って、なんでパクパクしてんの?」
「凌志が、焦らすからだろっ! ふぁ♡ あっ、りょーじっ♡ きた、ないからっ、ふぇ♡ あふっ♡」
「だからきれいにしてんだろ?」

 指で押し開いたアナルに凌志が舌を伸ばしてた。軽く拭いたとはいえ、さっきのローションとかピアスちんこの精液とかついてるはずじゃ……?

「ああムカついてきた。こんなきれいな縦割れ愛でないで挿れるなんてアホだろ、あいつら」
「そういう、もんだ、いぃぃ♡」
「ほりゃほうだろ?」

 凌志は尻のほうと会陰のほう、両方に指を挿れて縦に開くとその中に舌を挿れた。ちゃぷちゃぷって唾液を送り込む音がする。すっかり濡れたところで本格的に指が入り込む。さっきのガリガリくんの指と全然違う。探るように挿れてきた指は的確に前立腺を見つけて、ふにふにと揉んだり、ぐっぐと押したり緩急をつけて刺激してくれる。自分でするときと同じか、それ以上に気持ちがいい。

 凌志は僕の背中にかぶさるようにして、今度はさっき触られもしなかった乳首を探しだした。当然乳首も開発済みだ。ただし、色が黒くなるのは困るからちゃんとクリームも塗って手入れしている。

「弾力すげぇ……。跳ね返ってくる」
「ふっ……んッ♡」

 当然だろう。乳首でも感じるように、何年かけて育てあげたと思っている。夜遊びをしない日はニップレスで保護しているくらいだ。

「な、んで、きもちい、の? ふ、あぁ♡」
「他のやつらと一緒にするなよ。俺のは気持ちがこもってるからな」

 気持ち?

「知秋は身体ばかり敏感にしてきたみたいだけどさ、ほんとは心のほうが敏感だったんじゃないか? だから気持ちのないセックスだと萎えちゃう」
「そっか……ん、ふっ♡」

 これまでしたどのセックスとも、さっきみたいなレイプとも違う。初めて気持ちがこもったセックスをしてるんだ。刺激されて勃起しても、気持ちが萎えると急速にしぼんでしまう僕のちんこが今はしぼむどころか、今にもイきそうに尿道からぷくりとよだれを零している。

「凌志、も、挿れて?」
「ちょっと待ってろ」
「まだ、待たすの? 大丈夫だよ。ていうかこんな解さなくても挿るのに」
「ばーか。ゴムしないとまずいだろ?」
「妊娠するわけじゃないのに」
「知秋が大事だからするんだ。ゲイの嗜みみたいなもんだ」

 凌志はラブホの備品であろうパッケージから取り出すと、軽く上下させたちんこにかぶせするするとブルーのゴムを装着した。どうせ射精しないからってゴムなんてしたことなかったけど、そっか。妊娠するしないとは関係ないんだな。ほんと、チャラい見た目と違って真面目だな。

「なに? ゴム付けてるの見ても感じちゃうわけ?」
「ほぇ? もしかしてエロい顔してた?」
「だいぶ? かなり? 結構?」

 鏡がないからわかるわけじゃないけど、僕は顔を前後左右、上下に動かしてみて、ふと思った。

「多分、これ、エロい顔、じゃなくてさ。凌志のことが好きだなって顔だと思うんだけど」

 だって今エロいことなんて考えてなかった。凌志の真面目なところがいいなあって思ったから。言った自分も驚いているけど、それ以上に驚いている凌志が笑った。

「まじかー」
「まじだー」

 なんだろうなぁ。このセックスの最中とは思えないゆるい会話。僕は猫みたいに尻を振って凌志を待っているし、凌志はゴムにローション垂らしている。

 楽しい。
 多分また僕は凌志の言うエロい顔になってるはずだ。
 だって、楽しい。
 セックスってこんなに楽しいもんなのかな。

 一度も楽しいなんて思ったことないけど、こんなに楽しい気分になるなら、例え凌志のちんこに満足しなくてもまたしたい。

「挿れるけど、ほんと、物足りなかったら言えよ?」

 満足しなくてもいいって思ってる僕の心を読んだような凌志の言葉に、冗談が口を突く。

「そしたらおもちゃも一緒に挿れたらいいよ」
「それはそれで俺としてはプライドがゆるさないんだけ、どっ!」

 腰を掴んで切っ先を充てがうと凌志が一気に、だけどぬるっとゆっくり挿入してきた。

 僕たちが不安に思ってたことは杞憂だった。

「ひぁっ♡ りょーじ、待ってっ! なんか、変っ! ふ、ぁ、っ♡ な、にこれ……っ」
「うぅ……すっげ。こんなとこまで努力でどうにか出来るもんなのか? めっちゃやらかいのに、締め付けてくるっ」
「ね、りょーじ、待ってって! ん、ぁう♡ なんか、僕、変だって、ば……」
「へん、ってなにが? やっぱダメ?」

 凌志が心配そうな顔で覗き込んでくる。一瞬止まった動きに、僕のアナルは引き止めるように収縮を繰り返してしまう。挿入されてからずっと、身体が勝手に凌志に媚を売っているみたいだ。

「ちがう、っ、きもちいい、けど、あ、動いちゃ、ダメっ、なん、なの? りょーじのちんこ、凄い気持ちいぃ♡」
「なら、続けるからな? ここが前立腺、だろ?」
「ん、そこっ♡ 雁でかりかりするの、好きっ♡ あ、やっぱりりょーじのちんこ、好きぃ♡ いいとこ、あたるの、ふあっ♡ あァ♡」

 押しても引いても張ってる雁のおかげで、僕の前立腺がこすられている。繰り返しているうちにどんどん奥に入ってるはずなのに、まるで凌志のちんこの血管さえも感じ取ってるみたいに、敏感になっていた。

「亀頭球はないけど、悪くないだろ?」
「いい、いい♡ 奥、突いてっ♡」

 家にあるディルドのほうが長いはずなのに凌志のちんこが僕の一番奥を叩きつけてくる。オメガや女の子が言う子宮が下りてきてるってこういうことを言うのだろうか?

「まじ、すげぇ。吸い付いてくるっ」

 知らないから。これまで何度か突っ込んだことはあるけどそんな吸い付いてくるなんて感覚、なかった。力が抜けて腰だけを凌志に持たれたまま、僕はベッドに身体を投げ出した。


「三角形が、ふたつ揃ったな……」

 凌志の指が僕の尻にある三角に触れ、唇が頬に触れた。僕はもう、限界ぎりぎり。自慰以外で初めての射精感を味わっている。多分あと一回、奥を突かれたらそれだけでイくと思う。

「凌志……」
「あぁ悪ぃ」
「ヒャァっ♡ ちが、っ、ァァァァァァァッ♡ イっちゃ、うっ♡ イっちゃうから、ま、ってって言おう、と、あぁっ♡ やぁ、とま、んないっ♡」

 アルファの射精は長いんだよ。一度出すと止まらないから、僕のちんこからはびゅーびゅーと精子が溢れシーツに吸い込まれていく。ここがラブホで良かった。

「なぁ、射精も気持ちいい?」
「ん、イイ、ふぁ……ァ♡ りょーじ、だめ、今ちんこ、触っちゃ」
「これがアルファのコブか、すげぇな」

 確認するように、凌志の大きな手が僕のちんこを握った。オメガのアナルよりも気持ちがいい。へこへこと腰が動いてしまう。

「これ何分くらいだっけ?」
「さ、んじゅっぷん……んっ♡」
「じゃあその間に俺もイかないとな」
「ふぇ? りょーじ、まだ、イってない、のっ? んぁっ♡」
「我慢強いからな」

 我慢でどうにかなるの? 僕、何年も開発してきて結構自慢の縦割れアナルなんだけど?

「知秋がアルファに抱かれたいなんていうから、俺特訓したんだよ?」

 特訓ってなんだろう? というか僕のこと努力家って言ったけど凌志も大概努力家なのでは……? あれ? もしかしてそれって……。

「それ、って最初の、ころの?」
「そ、最初から俺は知秋が好きだったんだよ」

 僕たち、遠回りしてたみたいだ。ばかみたいで思わず笑ってしまった。

「なにそれ、ははっ、あっ♡ ふぁっ♡」
「あ、知秋、待て。締めんな、っ!」
「むり、っ♡ かってに、なってる、っ♡」

 笑ったせいで、凌志をさらに締め付けてしまった。不意に訪れた刺激に、さすがの凌志も限界が来たらしい。

「イく、っ! 知秋、知秋っ! ああっ! 出るっ!」

 もう僕は自分の意思じゃケツマンコを制御出来なくて、凌志のなすがまま受け入れるしかなかった。



 
 結局僕たちは親友のままだ。親友兼恋人。それが多分僕たちを言い表すのに一番いい言葉だと思う。

 普段は一緒に大学で授業を受けて、クラブも一緒に行ってる。やっぱり凌志と踊り明かすのは楽しくて、しばらくはやめられそうにない。これまで群がってた子たちはほとんど遠巻きにしか見てこなくなった。

「最近誰も寄ってこなくなったな」

 凌志が買ってきてくれたキティで喉を潤す。

「そりゃそうだ。知秋は俺しか見ないんだし。俺は前から知秋しか見てなかったけどな」
「はぁ? 前は僕がオメガの子見てたら一緒に見てたじゃないか」
「わかってないなぁ。あれは睨んでたんだよ。俺の知秋に手を出すなってな」
「まじかー」
「まじだー」

 けらけらとふたりで笑いあうと遠くできゃっきゃと声が上がる。

「あの子たち俺達がいちゃついてるのを見るのも好きって奴らも多いんだよ。なんだっけ? チャラ男と美少年の組み合わせがイイって」
「なんだそれ。ていうかなんで知ってるの?」
「目の保養ってやつだな。たまに俺に声掛けてくる子が頑張ってくださいって言うから聞いてみただけだよ」

 ふぅん。

「もしかしてヤキモチ?」

 凌志が僕の頬にある三角のほくろを親指で撫でる。それをされるとなんとも言えないむず痒い気持ちになる。

「もう帰ろっか」
「……まだ、キティ残ってるんだけど?」
「ダメ。いま、知秋めっちゃエロい顔してるから」

 取り上げられた僕のキティを凌志が一気に飲み干した。エロい顔じゃないんだけど。

「リョーちゃんもう帰っちゃうの? ふたりがいるとカワイコちゃんが集まるから店助かるのにぃ」

 凌志の友達のバーテンダーに引き止められると、凌志は悪いなって笑いながら、空いたグラスを渡した。

「秋の大三角形を見に行くんだ」
「秋の大三角形? それって星の? 夏は知ってるけど秋にも大三角形ってあるんだっけ?」
「あるんだよ。俺だけが知ってる、秋の大三角形」

 凌志が自慢げに言うので、恥ずかしくなった僕はその腕を引っ張ってクラブをあとにした。

 都心の真っ暗な空に星はまったく見えなかった。
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