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喜劇の舞台裏
私の嫌いなふたりの天才 6
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王女との政略結婚はある意味絶好の機会だと思った。
リーレイのこれまでの功績を考えれば公太子を降りることは不可能だ。
彼はそのために努力をし周りもそれを認めていた。
アビゲイルもまたこの二年ほどで婚約者としての立場を確立していたが、うるさい外野がいるのは子供の頃から変わらない。
ふたりが婚約を解消すれば、外野は静かになるだろう。
私ならアビゲイルの新たな婚約者として妥当であり、彼女なら次期辺境伯としてもその力を奮うことが出来るのは、私もリーレイも分かっていた。
私とリーレイは策を講じた。
イーノックの失踪に少なからず加担していた私達は自分たちの手でこの問題を解決する必要があったのだ。
つまり、リーレイがファネットゥ王女と婚約し、アビゲイルを次期辺境伯として立てる。
ファネットゥ王女が何かしら問題を起こし、リーレイとの関係を破綻させることで政略結婚そのものを潰す。
たとえ、サウスラーザンに侵攻したとしても戦力差は明らかで、返り討ちにすることができるができれば戦争は避けたい。
表向き、政略結婚が破綻したことを理由にリーレイが公太子の座を降りれば、アビゲイルとの婚姻も可能になる。
「僕にはジェスリーという弟がいて、替えが利くけれど、アビーの替わりはどこにもいないからね」
それは辺境伯としてのアビゲイルなのか、リーレイの相手としてのアビゲイルなのか。多分どちらもだろう。
リーレイと共に大公へ伝えると彼は苦渋に満ちた表情をしたが、リーレイの決意を覆せないとわかると好きにしなさいと認めた。
大公としてではなく、父親として。
しかしこの計画に穴があることは最初から分かっていた。不確定要素の多いファネットゥ王女だ。
彼女がリーレイとの婚約を円満に解消させられるかは未知数。
だから私はもう一つ、策を講じることにした。
「アシュリー、それでいいのか?」
「たかが女一人を娶るだけで爵位が手に入る、こんな楽なことはありませんよ」
「しかしそれでは……」
「どうせ好きな人とは結婚出来ないなら、せめて爵位くらいはもらっておかないと」
「アシュリー……」
私がファネットゥ王女を貰い受けることを進言すると、リーレイは父親そっくりの苦渋に満ちた表情をした。
私がなによりも爵位を欲していることはリーレイも理解している。彼の役に立つことが私の存在意義なのだ。
「なら、最上級のものを用意するから期待していろ」
「最上級ですか? 私は寒いのは苦手なのですが……」
「今から鍛えておけばいいだろ?」
仕方がないのでノースフレイル辺境伯の悪事を探すことに専念した。違法薬物の輸入が判明したときはふたりして大笑いをしたものだ。
「アシュリー・スローン。あなたはそれでいいの?」
「おや? 君は私の一番の理解者だと思っていたけどね。アビゲイル・コースティ辺境伯令嬢」
「そうね。誰よりも勤勉で、努力家、そして野心家でもあり……私の恋敵……でもあったわね」
「そういうことです。どうせ好きな人とは結婚出来ないなら、せめて爵位くらいはもらっておかないと」
「でも、あれよ?」
「少しバカなほうが扱いやすいんですよ」
私がファネットゥ王女を貰い受けることが決まった後、要塞で叙爵の時を待つアビゲイルが不安げに問いかけた。
私が何よりも爵位を欲し、リーレイの役に立つことを望んでいることをアビゲイルは理解している。彼女の不安を取り除くのは私の役目ではない。
それはあの黒い尾を持つ男だけの特権であり、今ここで私が秘密を明かすのは面白くない。
リーレイのこれまでの功績を考えれば公太子を降りることは不可能だ。
彼はそのために努力をし周りもそれを認めていた。
アビゲイルもまたこの二年ほどで婚約者としての立場を確立していたが、うるさい外野がいるのは子供の頃から変わらない。
ふたりが婚約を解消すれば、外野は静かになるだろう。
私ならアビゲイルの新たな婚約者として妥当であり、彼女なら次期辺境伯としてもその力を奮うことが出来るのは、私もリーレイも分かっていた。
私とリーレイは策を講じた。
イーノックの失踪に少なからず加担していた私達は自分たちの手でこの問題を解決する必要があったのだ。
つまり、リーレイがファネットゥ王女と婚約し、アビゲイルを次期辺境伯として立てる。
ファネットゥ王女が何かしら問題を起こし、リーレイとの関係を破綻させることで政略結婚そのものを潰す。
たとえ、サウスラーザンに侵攻したとしても戦力差は明らかで、返り討ちにすることができるができれば戦争は避けたい。
表向き、政略結婚が破綻したことを理由にリーレイが公太子の座を降りれば、アビゲイルとの婚姻も可能になる。
「僕にはジェスリーという弟がいて、替えが利くけれど、アビーの替わりはどこにもいないからね」
それは辺境伯としてのアビゲイルなのか、リーレイの相手としてのアビゲイルなのか。多分どちらもだろう。
リーレイと共に大公へ伝えると彼は苦渋に満ちた表情をしたが、リーレイの決意を覆せないとわかると好きにしなさいと認めた。
大公としてではなく、父親として。
しかしこの計画に穴があることは最初から分かっていた。不確定要素の多いファネットゥ王女だ。
彼女がリーレイとの婚約を円満に解消させられるかは未知数。
だから私はもう一つ、策を講じることにした。
「アシュリー、それでいいのか?」
「たかが女一人を娶るだけで爵位が手に入る、こんな楽なことはありませんよ」
「しかしそれでは……」
「どうせ好きな人とは結婚出来ないなら、せめて爵位くらいはもらっておかないと」
「アシュリー……」
私がファネットゥ王女を貰い受けることを進言すると、リーレイは父親そっくりの苦渋に満ちた表情をした。
私がなによりも爵位を欲していることはリーレイも理解している。彼の役に立つことが私の存在意義なのだ。
「なら、最上級のものを用意するから期待していろ」
「最上級ですか? 私は寒いのは苦手なのですが……」
「今から鍛えておけばいいだろ?」
仕方がないのでノースフレイル辺境伯の悪事を探すことに専念した。違法薬物の輸入が判明したときはふたりして大笑いをしたものだ。
「アシュリー・スローン。あなたはそれでいいの?」
「おや? 君は私の一番の理解者だと思っていたけどね。アビゲイル・コースティ辺境伯令嬢」
「そうね。誰よりも勤勉で、努力家、そして野心家でもあり……私の恋敵……でもあったわね」
「そういうことです。どうせ好きな人とは結婚出来ないなら、せめて爵位くらいはもらっておかないと」
「でも、あれよ?」
「少しバカなほうが扱いやすいんですよ」
私がファネットゥ王女を貰い受けることが決まった後、要塞で叙爵の時を待つアビゲイルが不安げに問いかけた。
私が何よりも爵位を欲し、リーレイの役に立つことを望んでいることをアビゲイルは理解している。彼女の不安を取り除くのは私の役目ではない。
それはあの黒い尾を持つ男だけの特権であり、今ここで私が秘密を明かすのは面白くない。
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