二十代最後の最低最悪波乱万丈な私の十二ヶ月

一月は前途多難な始まり

一月三十日（金曜日）

　やっと終わった！　六年間お疲れ様、千尋！
　課長には会わずに済んだ。手続きは梶原さんがしてくれたからさくさくと進んだ。
　梶原さんも今年中には退職するらしい。それがなんとハワイに行くんだって。
　去年旅行に行ったときに知り合った日系の現地の人と帰ってきてからもメールでやり取りしてたら結婚しようって。
　すごいすごいすごい！
　結婚式は身内だけでやるけど、遊びに来てねって。
　ハワイは大学の卒業旅行以来だからぜひ行きたい。ハワイ挙式は憧れだよな～。海岸で写真撮ったり。
　その後、副社長に遭遇。
「川上ぃー辞めるなんて聞いてねぇーよー」って六十手前のおじさんとは思えないゆるい口調で話しかけられた。挨拶が遅くなってすいませんとは謝ったけど、飲み会でしか話したことないんだよね。
　それなのに「俺お前のために部署作ろうと思ったのになぁー」だなんて調子がいい。
　しかもうち、システム開発会社なのに、中国との貿易をするってなにそれ。胡散臭さしかない。
　もちろん丁重にお断りした。もう逢うこともないだろう。

　予定通りミキちゃんのお店に。そういえば哲様からもらった名刺ではじめて店名を認識した。
「カフェ＆バー　エイトフラッグ」って八幡さんだから？　これどっちが考えたんだろう？
　あの顔で哲様が決めたんだとしたらちょっとおもしろい。
　今日のおすすめケーキとコーヒーのセットを頼んだら、ケーキはイチゴのタルトだった。
　タルト生地に砕いたアーモンドがアクセントになっていて、イチゴとの間にはチョコレートのクリームが敷いてあった。
「これも美味しい～っ」
　思わず声をあげたらミキちゃんに「でしょ？」って。この間かつき君に逢った話をしたら、かつきもまた会いたいって言ってるって。やだ、わたしモテ期かしら。